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第一章【理不尽】~何故俺の○○はすぐ壊れるのか~
2.俺と騎士と国王と~俺の受難の日々~(後編)
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いつまでもわめく騎士を適当に流し、ウィリアムはギルドホールへと足を踏み入れる。
先ほどまでの街の喧騒とは打って変わり、世界が変わったかのように静かなホールにある酒場のようなスペースに座る一人の老人を横目にバーカウンターへと向かう。
このギルドホールの入り口には転移魔法が刻まれており、資格を持つ者のみ入れるスペースであるこの酒場には騎士達は転移できず、彼らが飛ばされるだろう場所で説明を受けてる姿を思い浮かべ、苦笑する。
「マスター彼にいつものをおごってやってくれ」
先ほど横目に見た老人のその声で現実に戻り訝し気な表情を浮かべつつも、手渡されたグラスに口をつける。
「…ふぅ、仕事終わりの一杯は染みるねぇ…」
そんな言葉を吐きながら警戒は怠らず老人から視線を離すことはしないウィリアムの姿に苦笑しつつ、老人は口を開く。
誰なのか解った上で酒を奢ってもらっているウィリアムはそれを止めることは無く、とくに何も答えずその話に耳を傾ける。
「このたびは世話に成ったな、【断罪者】よ…いや、今はウィリアムとだけ名乗っているのだったな…」
「んなこったろうとは思ったが…糞野郎…はめやがったな…」
普段ならば無駄に絡んで来たり、知らぬ間に昇級試験相当のクエストを受けさせようと画策するギルドマスターを睨み付ける
「はめた、といえば確かにそうなるが…とっくに気づいていたのだろう?偶然お前があそこでワイヴァーンを狩り、偶然にも彼らがお前の通る街道を無駄に回り道をして通り、偶然お前が帰り道に魔物の大群に襲われている彼らを助ける事になり、偶然にも彼らが向かう先がこの街だった…しかもお前が通りかかるのを計算したかのようなタイミングで群れに襲われている…そんなことがあるわけがないと」
実際その通りだった。
同じ方向に狩りに出たハンターも居らず、さらに言えば街道とは言え、ワイヴァーンを狩ってから一度もモンスターが出ない…
あり得ないとは言わずともあまりにも出来すぎていた。
「わかっちゃいたが…相変わらずやり口が汚ねぇな…まぁお貴族様方の頂点に立つにゃそのくらい薄汚れてねぇとやってられねぇわな」
先ほどウィリアムが言った通りその老人は国王…この国の頂点に君臨し、この度の政変により死んだとされた人物だった。
そんな国王を捕まえ、あまつさえ薄汚いとすら評するウィリアムに対し、国王は憤慨するでもなく口角を上げる。
その態度に舌打ちを隠すでもなく堂々とするウィリアムに、やれやれとバーカウンターの中に居るギルドマスターが肩を竦める。
「まぁ…俺だけじゃなく他の奴らもおめぇさんに戻って来てほしいんだろうよ」
この場所に、という意味ではなく元の地位に、という意味だろう。
幾度と無く打診された昇級を蹴り続けている彼を昔の仲間たちは心配しているのだろう。
「バカ言えよ…こんなスキル持っちまった時点で上なんざ目指してねぇ、むしろ俺を早死にさせてぇのかって話だろうが」
この世界には龍種が居り、以前の地位に戻ると言うのは万が一龍種が攻めてくるなようなことがあれば彼も最前線に立たなければならない。
壊れる事の無い武器を持ち龍種と戦う事すら一歩間違えれば即死のこの世界で、いつ壊れるかもわからない武器を持ちそれを行うのは自殺行為ともとれる。
そんなウィリアムの姿に国王は眼を細め、ギルドマスターはため息をつき、言い放つ。
「ふん…意気地なしめ…」
その言葉に沸点の低いウィリアムはバーカウンターに身を乗り出しギルドマスターにつかみかかる。
そんないい年をしたおっさん共の子供のような喧嘩を肴に酒場は盛り上がり、夜は更けていく。
「やれやれ…そろそろ退散するとしよう…」
国王はそんな言葉を残し自分にあてがわれた部屋へと帰って行った。
先ほどまでの街の喧騒とは打って変わり、世界が変わったかのように静かなホールにある酒場のようなスペースに座る一人の老人を横目にバーカウンターへと向かう。
このギルドホールの入り口には転移魔法が刻まれており、資格を持つ者のみ入れるスペースであるこの酒場には騎士達は転移できず、彼らが飛ばされるだろう場所で説明を受けてる姿を思い浮かべ、苦笑する。
「マスター彼にいつものをおごってやってくれ」
先ほど横目に見た老人のその声で現実に戻り訝し気な表情を浮かべつつも、手渡されたグラスに口をつける。
「…ふぅ、仕事終わりの一杯は染みるねぇ…」
そんな言葉を吐きながら警戒は怠らず老人から視線を離すことはしないウィリアムの姿に苦笑しつつ、老人は口を開く。
誰なのか解った上で酒を奢ってもらっているウィリアムはそれを止めることは無く、とくに何も答えずその話に耳を傾ける。
「このたびは世話に成ったな、【断罪者】よ…いや、今はウィリアムとだけ名乗っているのだったな…」
「んなこったろうとは思ったが…糞野郎…はめやがったな…」
普段ならば無駄に絡んで来たり、知らぬ間に昇級試験相当のクエストを受けさせようと画策するギルドマスターを睨み付ける
「はめた、といえば確かにそうなるが…とっくに気づいていたのだろう?偶然お前があそこでワイヴァーンを狩り、偶然にも彼らがお前の通る街道を無駄に回り道をして通り、偶然お前が帰り道に魔物の大群に襲われている彼らを助ける事になり、偶然にも彼らが向かう先がこの街だった…しかもお前が通りかかるのを計算したかのようなタイミングで群れに襲われている…そんなことがあるわけがないと」
実際その通りだった。
同じ方向に狩りに出たハンターも居らず、さらに言えば街道とは言え、ワイヴァーンを狩ってから一度もモンスターが出ない…
あり得ないとは言わずともあまりにも出来すぎていた。
「わかっちゃいたが…相変わらずやり口が汚ねぇな…まぁお貴族様方の頂点に立つにゃそのくらい薄汚れてねぇとやってられねぇわな」
先ほどウィリアムが言った通りその老人は国王…この国の頂点に君臨し、この度の政変により死んだとされた人物だった。
そんな国王を捕まえ、あまつさえ薄汚いとすら評するウィリアムに対し、国王は憤慨するでもなく口角を上げる。
その態度に舌打ちを隠すでもなく堂々とするウィリアムに、やれやれとバーカウンターの中に居るギルドマスターが肩を竦める。
「まぁ…俺だけじゃなく他の奴らもおめぇさんに戻って来てほしいんだろうよ」
この場所に、という意味ではなく元の地位に、という意味だろう。
幾度と無く打診された昇級を蹴り続けている彼を昔の仲間たちは心配しているのだろう。
「バカ言えよ…こんなスキル持っちまった時点で上なんざ目指してねぇ、むしろ俺を早死にさせてぇのかって話だろうが」
この世界には龍種が居り、以前の地位に戻ると言うのは万が一龍種が攻めてくるなようなことがあれば彼も最前線に立たなければならない。
壊れる事の無い武器を持ち龍種と戦う事すら一歩間違えれば即死のこの世界で、いつ壊れるかもわからない武器を持ちそれを行うのは自殺行為ともとれる。
そんなウィリアムの姿に国王は眼を細め、ギルドマスターはため息をつき、言い放つ。
「ふん…意気地なしめ…」
その言葉に沸点の低いウィリアムはバーカウンターに身を乗り出しギルドマスターにつかみかかる。
そんないい年をしたおっさん共の子供のような喧嘩を肴に酒場は盛り上がり、夜は更けていく。
「やれやれ…そろそろ退散するとしよう…」
国王はそんな言葉を残し自分にあてがわれた部屋へと帰って行った。
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