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3章
9.
しおりを挟む「ぁ、まって、おりのすけさ……、ぁんっ」
――鈴には悪いがもう待てる気がしない。
荒くなる息を隠しながら、ぐちゃぐちゃになった下着の中を指で混ぜ、ぷっくりと膨れた肉芽を探る。
く、と少しだけ力を入れてそこを潰すと、鈴が顎を上げて甘く喘いだ。
ぴくぴく跳ねる体がかわいくてしょうがない。
(……挿れたい)
痛いほど張り詰めた屹立は、ずっと前から限界を訴えている。
急きたてる欲をなんとか抑え込みつつ、鈴のいいところを指でくすぐった。
「あっ……ん、も……おりのすけ、さま……!」
舌足らずで呼ばれると、甘えられているようでたまらなくなる。
ほとんど貪るように胸に吸い付きながら残っていた下着を脱がせれば、鈴が小さく体を強張らせた。
「鈴」
ツンと勃ち上がった突起から口を離して、真っ赤な顔を見下ろす。
潤んだ瞳が織之助を映した。白い体はところどころ熱を持って赤く、鈴の呼吸と合わせて揺れている。
その扇情的な姿にごくりと喉が鳴った。
「……織之助さま」
甘く掠れた声が耳から溶けて頭を働かなくさせる。
優しくしたい。何も考えられなくなるくらい、ひたすら甘やかしてどろどろにしたい。
めちゃくちゃにしたい。隅から隅まで暴いて、欲のままに昂った熱を突き立てたい。
相反した想いがせめぎ合って思考を揺さぶる。
「……鈴」
熱に浮かされたまま鈴の膝裏を掴みあげれば「まっ、だめです、だめ!」と抗議の声があがった。
「だめじゃない」
「織之助さまが決めることじゃ……おふろ、はいってない、し」
恥ずかしげに伏せられたまつ毛に腰が重くなる。
無言になった織之助を不思議に思ったのか鈴がすぐに視線を戻す――その間に織之助が真っ白な内腿に噛み付いた。
「ぎゃあっ」
「……ぎゃあっておまえ」
「だ、だって!」
色気のない悲鳴に思わず苦笑がこぼれる。
真っ赤な顔が織之助を見た。
――ああ、ほんとに。
「……そういうところが鈴らしくてかわいい」
「えっ、んぁ、だめ……っ!」
抗議を無視して足の間に顔を埋める。
もうすでに濡れているそこへ舌を伸ばし、わざと音をたてるように動かした。
逃げようとする腰を押さえつけ、一番敏感な部分に軽く吸い付く。
「あっ、そこ、や……!」
刺激が強すぎるのか首を横に振りつつ、つま先でシーツを蹴った。
片方の足は織之助に掴まれていて動かせない。
なすすべなく快感を与えられ続けて、鈴の呼吸のスパンが短くなる。
「ん、やっ、ぁん、だめ……、まって……!」
甘ったるい声に急き立てられるように、ちゅうっと音をならして強めに突起を吸った。
「あっ――」
一際高い声とともにびくんと大きく鈴が体を跳ねさせて震える。
薄い腹がぴくぴく痙攣するのを見下ろして――、そっと息を吐く。
「ほんとかわいいな……」
余裕なく吐き出し、鈴のまだわなないているそこに指を進めた。
入口を撫でればぐちゅぐちゅと湿った音が部屋に響く。
合わせて漏れる甘い呻きが下半身に熱を集めて、理性を剥ぎ落とそうとしてくる。
堪えるように息吐きつつ、ぬめりを指に纏わせてゆっくりゆっくりナカを押し開いた。
「ふ……」
ぎゅっと鈴のシーツを握る手に力が入った。
堪えるような表情に一度暴く指を止める。
「痛い?」
「……ん、いえ……痛くはないです……」
その言葉に嘘はなさそうで、痛くないならと織之助は再び指を動かし始めた。
隘路を指の腹でなぞり、少しずつ拡げるように揺らす。
鈴が息を詰まらせつつ、たまに小さく喘いだ。
「……鈴」
「は、い……?」
涙の滲んだ瞳にそっとキスを落とし、そのまま薄く開いた唇を奪った。
隙間から舌を差し込んで逃げた薄い舌を吸い出す。そうして捕まえた舌の表面を擦り合わせて――、ナカを探る指を一本増やした。
「んんっ」
こぼれた甘い声を食いながら、二本の指で狭いナカをぐちゃぐちゃにかき混ぜる。
上からも下からもひどい水音が鳴って耳に響いた。そのやらしさにまた息が荒くなる。
「おり、のすけ、さま……もうっ……」
続く言葉が喘ぎ声に消えた。
「もう……?」
あやすようにナカをくすぐりながら訊けば、恨めしそうな顔で鈴が織之助を睨む。
熱の孕んだ瞳で睨まれても怖くない。それどころか、むしろ煽っているように見える。
心の中で笑って指を意地悪く動かせば、鈴は「ひぁっ」と素直に体を跳ねさせた。
「かわいいな」
「そればっかり……!」
困ったように眉を下げて唇を尖らせた鈴に、今度は笑い声が漏れた。
「――ほんとに、かわいすぎて困る」
そう言って尖った唇を啄む。
角度を変えながらキスを深めていき、ゆっくり指を抜いた。
「いいか」
指の代わりに痛いほどに張り詰めた屹立を押し付ける。
下着越しにもわかる熱さに鈴が息を呑んだ。
少し逡巡したように視線が揺れる。
それからぎゅっと目を瞑ったまま、首が縦に振られた。
「……っ」
雑に下着を脱ぎ捨てて、手早くサイドボードに用意していた避妊具を取り出す。
迷うことなく封を切って自身に被せていると、鈴が驚いたように小さく言葉を発した。
「よ、用意いいですね……?」
「いつか我慢できなくなりそうだったからな」
さらりと言ってのければ、「ひえ……」という悲鳴ともとれる声が返ってきた。
「鈴」
余裕なく覆いかぶさって、切っ先で入口をぬるぬるとなぞる。
律儀にぴくぴくと反応を示す鈴がかわいくてしょうがない。
「好きだよ」
耳元で囁き、眼前にある小さな耳たぶをそっと甘噛みした。
鈴が肩を跳ねさせて、それから戸惑うようにゆっくり織之助の首裏に腕を回す。
「織之助さま……」
ぎゅっと腕に力が込められ、自然と肌が密着する。
熱くてやわらかいその感触に眩暈がした。
「私も、織之助さまが好きです……ぁ、んうっ」
鈴から伝えられる「好き」の威力に耐えられず腰が動く。
先端を埋めると、しがみつく腕が強くなった。
「は……鈴、かわいい……」
狭くて、熱くて、やわらかくてどうにかなりそうだ。
思い切り腰を押し付けてしまいたい欲が腹の底を焦がす。
衝動を奥歯で噛み殺し、なるべくゆっくり腰を進めればチリッとした痛みが背中に走った。
「織之助さま……っ」
耳元で熱く息を吐く鈴に爪を立てられて、それさえも気持ちよく感じる。
痕をつけられるのは好きじゃなかったが――鈴ならもっとつけてくれてもいい。
鈴に所有印を刻みたい気持ちと同じだけ、自分にも鈴の痕が欲しい。
惚けた頭でそんなことを考えながら、あやすようにこめかみに口付けつつ、さらに奥へと怒張を押し込んだ。
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