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2.王太子と王太子妃
18.この国で、あなたと ※
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体中を電流のような快楽が駆け巡る。一際高い声をあげた後に体の力を抜いたマリッサが大きな呼吸を繰り返していると、掠れたハロルドの声がした。
「触ったら駄目だって言ったのに、マリッサは酷いな」
見ると、荒い息を吐くハロルドは瞳に明々と欲望の炎を点したままニヤリと笑っている。
「もしかして僕を果てさせようとした? 本当は挿れて欲しくないのかな?」
そんなはずはない。ぐったりとした体の中で一か所、意思を持ったようにひくひくとしている部分がある。彼のものを今か今かと待ち望んでいる場所が。
「さて、このあと僕はどうしたらいいんだろう。教えていただけますか、王太子妃殿下」
これまで半年ほどの間、寝室で黙ったままだったのが嘘のように今日のハロルドは饒舌で、情熱的だ。身を寄せて来た彼が誇示するように大きなものをマリッサの太ももへ寄せた。
せがむ気持ちを籠め、見上げたマリッサはハロルドの首に腕を絡める。熱い息を吐く唇へぎこちなく口付けたあと、彼の耳元でそっと囁いた。
「あなたのものが欲しいわ」
ため息をついたハロルドは、マリッサを組み敷く。
「……マリッサは本当に可愛いな。今まで顔を背けていた僕は本当に愚かだったよ」
獰猛な笑み浮かべる彼を見ながら、マリッサは口を開きかけ、迷って閉じる。
(今日も後ろからなのかしら。できればハロルドの顔を見ながら……したいのだけれど。……でも、言うのは恥ずかしい……)
そんな心配は無用だった。ハロルドはマリッサをうつぶせにさせることなく足元へ向かった。両膝を掴んで大きく開かせ――そして、喉の奥で笑った。
「今日のマリッサは本当にすごいね。ほら、シーツが湖のようになっているよ」
「そんな……」
「隠さないで」
顔を覆うマリッサの手を、力強い手が取り払う。
「今日はいろんな君を見たいんだ」
彼の手は熱い。そして瞳もまた熱を帯びていた。その熱が伝わって下腹部の奥が切なくなり、花弁からはまた蜜があふれ出る。
「いくよ」
彼が体を沈めた。
この半年ほどの間に何度もハロルドを迎え入れているマリッサは、彼のものに関して少しばかり分かったつもりでいた。しかし今日の怒張はいつもよりもずっと太く、熱く、そして硬く感じる。入ってきた時にはまるで初めてかと思うような苦痛を伴ったのだが、それはあっという間に去り、すぐにいつもとは比でないほど大きな快楽の波が押し寄せてきた。
「――っ、ぁ、ぁぁあっ!」
奥まで到達する間に目が眩む。中の壁が痙攣する。ハロルドが動きを止め、肩を上下させて荒い息を吐く。
「はっ……はっ、は……入れただけでもう達したんだね。……でも」
彼がちろりと唇を舐める。その赤い色が妙に艶かしくて、達したばかりだというのに体がまた疼く。
「僕は達してない。――まだ、これからだよ」
そこからは文字通り、めくるめくような時間だった。ハロルドの腰は時に激しく、時に緩やかに動き、いつものような規則正しい律動がまるで嘘のようだ。普段ならば最初は乾いた音が聞こえる結合部も、今日は最初からぐちゅぐちゅと湿った水音ばかりを響かせる。いつもとは違う体の感覚が、マリッサの欲も刺激する。
しかも今日はハロルドの緑の瞳がマリッサを見つめている。切れることなく高い声をあげ続ける様子も、そのせいでだらしなく開いたままの口元も、きっと流れ出ているであろう銀の糸も、全部見られている。
それが恥ずかしいと思ったのは最初のうちだけだった。どんな姿になろうとも、マリッサの叫びに交ざってハロルドの声が聞こえてくるからだ。
「なんて可愛い。なんて綺麗なんだ。マリッサ、マリッサ、乱れる姿をもっと見せて」
応えてマリッサは声をあげ、身をくねらせる。今まで寝室では無言だった夫が熱に浮かされたように紡ぐ言葉が嬉しく、今まで向けてくれなかった瞳を独り占めできている事実に高揚し、自身の体で彼が感じてくれていることに言い知れぬ幸福を覚えた。
やがてハロルドがマリッサに覆いかぶさり、強く抱く。
「限界だ。出すよ……!」
熱が押し寄せる。今までで一番の快楽がマリッサを襲った。
「あ、ああ、あああああーっ……!」
声をあげてハロルドの首にしがみつくと、膣壁も肉棒を強く締め付ける。ハロルドが小さなうめきを漏らし、マリッサの奥に向けて欲望を吐き出すのが分かった。
あまりにも悦くて、マリッサはハロルドに抱き着いたまま動けない。荒い息を吐きながら細かく痙攣を続けていると、やはり荒い息を吐くハロルドが額に口付ける。
「とても良かった。こんなに満たされた夜は初めてだよ」
言葉通り、彼は穏やかで満ち足りた様子だ。
「遠くばかりを見ていた今までの僕は、なんて愚かだったんだろうね。……マリッサ、僕のところへ来てくれてありがとう。妻になってくれたのが君で、本当に良かった」
「私も。あなたと会えて良かった」
マリッサも微笑みを浮かべ、ハロルドを見る。
「私の故郷はもう、この国よ。私はここで、国とあなたのために生きるの」
いつもの誓いを心からの思いを籠めて言うと、海の瞳――星の瞬く瞳を覗きこんだハロルドが微笑み、今度は唇へ深い口付けをくれた。
「触ったら駄目だって言ったのに、マリッサは酷いな」
見ると、荒い息を吐くハロルドは瞳に明々と欲望の炎を点したままニヤリと笑っている。
「もしかして僕を果てさせようとした? 本当は挿れて欲しくないのかな?」
そんなはずはない。ぐったりとした体の中で一か所、意思を持ったようにひくひくとしている部分がある。彼のものを今か今かと待ち望んでいる場所が。
「さて、このあと僕はどうしたらいいんだろう。教えていただけますか、王太子妃殿下」
これまで半年ほどの間、寝室で黙ったままだったのが嘘のように今日のハロルドは饒舌で、情熱的だ。身を寄せて来た彼が誇示するように大きなものをマリッサの太ももへ寄せた。
せがむ気持ちを籠め、見上げたマリッサはハロルドの首に腕を絡める。熱い息を吐く唇へぎこちなく口付けたあと、彼の耳元でそっと囁いた。
「あなたのものが欲しいわ」
ため息をついたハロルドは、マリッサを組み敷く。
「……マリッサは本当に可愛いな。今まで顔を背けていた僕は本当に愚かだったよ」
獰猛な笑み浮かべる彼を見ながら、マリッサは口を開きかけ、迷って閉じる。
(今日も後ろからなのかしら。できればハロルドの顔を見ながら……したいのだけれど。……でも、言うのは恥ずかしい……)
そんな心配は無用だった。ハロルドはマリッサをうつぶせにさせることなく足元へ向かった。両膝を掴んで大きく開かせ――そして、喉の奥で笑った。
「今日のマリッサは本当にすごいね。ほら、シーツが湖のようになっているよ」
「そんな……」
「隠さないで」
顔を覆うマリッサの手を、力強い手が取り払う。
「今日はいろんな君を見たいんだ」
彼の手は熱い。そして瞳もまた熱を帯びていた。その熱が伝わって下腹部の奥が切なくなり、花弁からはまた蜜があふれ出る。
「いくよ」
彼が体を沈めた。
この半年ほどの間に何度もハロルドを迎え入れているマリッサは、彼のものに関して少しばかり分かったつもりでいた。しかし今日の怒張はいつもよりもずっと太く、熱く、そして硬く感じる。入ってきた時にはまるで初めてかと思うような苦痛を伴ったのだが、それはあっという間に去り、すぐにいつもとは比でないほど大きな快楽の波が押し寄せてきた。
「――っ、ぁ、ぁぁあっ!」
奥まで到達する間に目が眩む。中の壁が痙攣する。ハロルドが動きを止め、肩を上下させて荒い息を吐く。
「はっ……はっ、は……入れただけでもう達したんだね。……でも」
彼がちろりと唇を舐める。その赤い色が妙に艶かしくて、達したばかりだというのに体がまた疼く。
「僕は達してない。――まだ、これからだよ」
そこからは文字通り、めくるめくような時間だった。ハロルドの腰は時に激しく、時に緩やかに動き、いつものような規則正しい律動がまるで嘘のようだ。普段ならば最初は乾いた音が聞こえる結合部も、今日は最初からぐちゅぐちゅと湿った水音ばかりを響かせる。いつもとは違う体の感覚が、マリッサの欲も刺激する。
しかも今日はハロルドの緑の瞳がマリッサを見つめている。切れることなく高い声をあげ続ける様子も、そのせいでだらしなく開いたままの口元も、きっと流れ出ているであろう銀の糸も、全部見られている。
それが恥ずかしいと思ったのは最初のうちだけだった。どんな姿になろうとも、マリッサの叫びに交ざってハロルドの声が聞こえてくるからだ。
「なんて可愛い。なんて綺麗なんだ。マリッサ、マリッサ、乱れる姿をもっと見せて」
応えてマリッサは声をあげ、身をくねらせる。今まで寝室では無言だった夫が熱に浮かされたように紡ぐ言葉が嬉しく、今まで向けてくれなかった瞳を独り占めできている事実に高揚し、自身の体で彼が感じてくれていることに言い知れぬ幸福を覚えた。
やがてハロルドがマリッサに覆いかぶさり、強く抱く。
「限界だ。出すよ……!」
熱が押し寄せる。今までで一番の快楽がマリッサを襲った。
「あ、ああ、あああああーっ……!」
声をあげてハロルドの首にしがみつくと、膣壁も肉棒を強く締め付ける。ハロルドが小さなうめきを漏らし、マリッサの奥に向けて欲望を吐き出すのが分かった。
あまりにも悦くて、マリッサはハロルドに抱き着いたまま動けない。荒い息を吐きながら細かく痙攣を続けていると、やはり荒い息を吐くハロルドが額に口付ける。
「とても良かった。こんなに満たされた夜は初めてだよ」
言葉通り、彼は穏やかで満ち足りた様子だ。
「遠くばかりを見ていた今までの僕は、なんて愚かだったんだろうね。……マリッサ、僕のところへ来てくれてありがとう。妻になってくれたのが君で、本当に良かった」
「私も。あなたと会えて良かった」
マリッサも微笑みを浮かべ、ハロルドを見る。
「私の故郷はもう、この国よ。私はここで、国とあなたのために生きるの」
いつもの誓いを心からの思いを籠めて言うと、海の瞳――星の瞬く瞳を覗きこんだハロルドが微笑み、今度は唇へ深い口付けをくれた。
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