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【ROUND:2 貴方たちは、ある1人の図書館司書だ。】
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目が開く。さっき居た神社ではなく、照明の着いた天井。畳ではなくフローリング。そして──俺を不安げに見下ろす翔。
「あっ……! よかった、起きてくれた……!」
「待て待てっ! そんな揺するな、くらくらするだろ~!」
翔が泣きそうな顔でオレを見て、しかし安堵している。……ついさっきまでの実稲ならば。その表情にすら興奮を、昂ぶりを覚えただろうけど。今の智樹はそういった衝動のようなものが湧き上がらない。同じ『自分』だったはず、なのだけど。頭の中の整理がつく前に、別の声が響く。
≪キャンペーン1、クリア~! 二人ともおめでとう! 次のゲームの準備は良いかな?≫
咄嗟に智樹は時計を見る。あの空間で過ごしたのは少なくとも15分以上だが──時間が進んでいない。突然不思議な場所に飛ばされたと思ったら、自分が2つに分かれて、あまつさえ親友をあんな風に想ってしまった上に──あんな事をしてしまって。
「だ、ダメだ! これ以上このゲームは続けられない! あんな風に、翔にまた変なことをしてしまうかもしれないだろ!」
≪おやおや~? ゲームからの途中退場は禁止だよ? あと2回、一緒に付き合ってもらうよ。さもないと……≫
タブレット越しの少女の声が、僅かに脅すように変わって。
≪──月に1回犬のウンチを踏んづけたり、鳥のフンが目の前に落ちたり、カレー味のウンチとウンチ味のカレーのどっちを食べたいかって友達みんなに聞かれる呪いをかけちゃうぞ~! こわ~い!!≫
「ダメ、だ……ドア、開かない!」
からかうような少女の声を無視するように翔が部屋のドアを開こうとしていたが、何故かドアが開かないようで。窓を確かめたが、確かにビクともしない。──不思議な力で、オレたちはこの部屋に閉じ込められてしまったらしい。
「ぐっ、2回か……ショウ、どう思う」
「怖い、怖くて、わけがわからないけど……痛い目に合う事は、ないかもしれない……」
ついさっき、オレたちに渡された絵馬を思い出す。あれはまるで、劇の役を指名しているようなものだった。ひょっとしたら──この幾つかの劇を正しく上映できれば、無事に解放されるんじゃないか。そして、劇の途中で片方が大変な目に合うとも思えない。1人芝居というものもあるらしいが、基本的に劇は複数人でやるものだ。どちらかが「脱落」することも、最終版まではないかもしれない。
≪ほらほら、次のサイコロだよ~? 回さないと強制的に「6」だよ、10、9……≫
「だーっ、分かったよ!」
ほとんど勢い任せに、オレはサイコロをタップした。画面の下でそれは跳ねて数回転がると……
≪出た数字は「3」! 今度はショウ君から順番にね!≫
名前を言っていないにもかかわらず。画面の向こう側の声は、オレ達の名前も、存在も知っている。抵抗は難しい。おずおずと、ショウはカードに手をかける。
1枚目。「あなた達は」。
2枚目。「おっとりとした性格の司書さんになって」。
3枚目。「オナニーをする」。
≪ふむふむ……よ~し! マスタ準備完了! 3, 2, 1...GO!≫
再び。この部屋が歪み、世界が、空間が、時間が。全てが曖昧に消えて。オレと翔だけが残って──
────────────────────────────────────────────
気が付くと。オレたちは硬い床に倒れこんでいた。周囲を見渡すと、オレたちの身長よりも、下手をすると大人でも届かないほどの大きさの本棚が無数に置かれていて。そこにぎっちりと、革で表紙をとめられた分厚い本が収められている。
「はぁ……大丈夫か、ショウ?」
「う、うん……ここ、どこだろう……?」
少なくともオレたちがたまに通う公共の図書館や、学校の図書館とは明らかに違う。天井には白色の照明がずらっと並んでいるのに、人が座って読めるようなスペースが見当たらない。あるとすれば、今オレたちが居る場所かもしれないけど──ここは、明らかにカウンター。司書さんが本を貸し出す場所だ。より辺りを調べようとした、その時。
「トモくんっ!? 身体、溶けてる……ッ!」
「なっ……翔、お前もっ!!」
水泳の授業でプールに飛び込んだ時みたいに。自分の身体が、ショウの身体が。床に沈んで──
【共通ルール:PC1はこの図書館の司書である。欲求不満になった貴女は、自らを慰める。】
【PL1: 芝原智樹】+【PL2:熊谷翔也】→【PL1:音喜多 綾子】
オレとショウが──結びつく感覚。自分の身体が、さっきのようにスライムみたいに溶けてしまったのだろう。だけど、今度は。スライムになってしまったショウとオレが、混ざり合って1つの塊になって。そして、水面から顔を上げた時のように、自分の顔を上げて呼吸する。
「っ……ぷはっ……」
人間同士が溶けて、混ざり合って、1つになる。そんな事が起こるわけがないなんてことは、子供と言われる智樹たちだって理解していた。だけど。
「っう……? うわわわっ!? ボク、こんなに背が高くなってっ……それに、胸元がなんだかキツイ……!」
智樹が声を発しようとした時。自分の喉から、困ったような女の人の声がした。この口調は。
「ショウ、お前か? ……えっ、何で勝手に声が!? …………変な感じだけど、どうにもオレたちは1つの人間になったみたい、だな。 ──ど、どうしてそんなに冷静に受け入れてるの!?」
さっきの『ゲーム』で既に異常に巻き込まれてたのも影響しているかもしれない。どこか、この状況を受け入れつつあるオレが居る。そして、これが『演劇』の続きであれば。『台本』がさっきみたいに現れる、はず。丁度、図書館のカウンター部分に一冊の本と、それに付属するようにメモが置いてあった。
【特殊ルール/HO1:貴女は本が好きだ。目の前にある本を読み進めてしまうだろう。】
オレたちが普段学校で読む、教科書ぐらいの大きさと厚さの本。だけど、ただ一つの場所を除いてすべてが紺色のカバーが掛かっていた。そして、金色の刺繡で。『音喜多 綾子』と書かれている。
「よ、読むの……? ──読むしか、ないだろ……!」
左手は震えて、だけど右手でしっかりと。1ページ目を開く。
【この本は貴女であり、貴女はこの本そのものでもあります。この本は貴女を映し、貴女自身をより深く理解するのに助けになるでしょう。】
「どういうことだろう……? ──多分。図書館の司書さんって確か、首元にカードとか掛けてるよな、あ、あった」
『自分』の首元に掛かっていたタグを見る。本の表紙と同じ名前、そして顔写真の付いたカード。『音喜多 綾子』。……それが、今のオレたちの名前だった。
【綾子さんはこの図書館で司書をしています。しかし、通常の図書館と違いここは閉架書庫。誰かが本を借りたいときにはそれを持っていくのですが、生憎と利用者の少ないこの図書館で、本を借りる人は少なく。司書である綾子さんは、とても暇を持て余していました】
ページの片方には、ある女性の格好が挿絵の様に描かれていた。ネイビーのジャケット、ホワイトグレーのタートルネックに、白色のロングスカート。メガネをかけていて、優しそうな雰囲気に賢そうな雰囲気のある、黒色のポニーテールをしたお姉さんの絵。…………【これは綾子だ】、と何故か腑に落ちた。図書館内で鏡があるかは分からない。だけど、【この絵が私自身を完璧に映している】。
「じゃぁ、胸のあたりがキツく感じるのって……? ──着てるモノの関係じゃないか?」
次のページをめくる。
【さて、そんな手持ち無沙汰な綾子さんはというと。地下で電波も届かず、スマホは使えません。なので、暇を潰す方法として、オナニーをする事が日課になっていました。おかげで、常に身体が火照って仕方が無いのです。】
「っぅうっ……♡♡ ひゃ、ぁうっ♡♡」
──そう。良くない事だと分かっているのに。綾子は、他の司書や来客が居ないことを良い事に、こうやってタートルネック越しに自分の乳首を弄ってしまうのが癖になってしまっていた。更衣室には私のブラがある。だから……こうして服越しに、直に乳首がピンと勃つ感覚が分かってしまって。
「し、知らなっ……♡♡ ボク、こんなのっ……♡♡♡ あひゅっ♡♡♡♡」
左手で乳首をコリコリとすると、じんわりと身体が火照ってくる。【本を読む手は止まらない】ので、右手でページを捲る。
【この行為に恥じらいを持ちつつも、毎日のように長時間のオナニーを続けていた綾子さんの身体は、ちょっと弄っただけでも愛液が漏れだして仕方ないのです。】
「ふ~っ……♡♡♡ はぁ、っ……♡♡♡♡ オレ、どうしちゃったんだ、ぅゔっ♡♡♡」
小学校の低学年の時に漏らしてしまった時の様に、パンツにじんわりと湿った感覚が伝わる。だけど、それが不快ではなくて。ページを捲る手は止まらない。
【自分自身の身体を慰めるのには飽き足らず、綾子さんはえっちな本を読みながら、そのシチュエーションにどっぷりと浸かって『自分もこうしたい』と想いながら、いやらしい行為をするようになったのです。例えば──】
【とある神社に住まう、神の御使いである母娘。彼女たちは白狐と呼ばれる、地域に住まい神を信仰する人々にご利益を与える存在でした。ですが……ある時を境に、1人の少年に虜になってしまったのです。彼女たちは何も知らない少年を籠絡し、ふわふわなおっぱいときゅうきゅう締め付けるおまんこで、あっという間に彼の初めてを奪ってしまいました。】
「こ、れ゙……っ♡♡ さっきの、オレたちっ……ひゃぅっ♡♡♡」
自分達の身体で味わった事だ。一体となった『ボクたち』にとっては、忘れる事の出来ない感覚。柔らかいおっぱいに包まれ、甘い匂いに蕩けさせられて。大好きな人に射精した時の記憶。自分の膣内に、愛しい子のモノが挿入って来る時の思い。そして、子宮に注がれた熱くて濃いハジメテのもの。
【綾子さんの妄想癖。それは、自慰をする度に強くなっていきました。男の子として、女の子に弱いところをイジられたい。女の子として、男の子の事を思いっきり愛したい。どちらの思いも強く──色んな官能小説を読んで、この退屈な時間を刺激的に過ごしてしまっていたのです。】
「ぁ、ぐっ……♡♡♡ 『わたし』っ……♡♡♡ 我慢できない、かも……♡♡♡♡」
今の言葉はオレが発したのか、或いはショウが発したのか──そのどちらでもないのか。ページを捲る。
【物語の登場人物のように感じたい。そう思いながら、綾子さんの自慰行為は激しくなっていきます。左手でスカート越しに子宮を擦るだけでは、もう満足できない。着ている服なんて脱いでしまって、直接愛撫したい。そんな思いに突き動かされます。】
「くうっ……これ、邪魔っ……」
──どうせ誰も来ない。監視カメラは閉架の入口にしか置いてない。だから……ここで服を脱いだところで、何の問題も無い。それよりも、『わたし』の身体の疼きを早く収めたい。火照った身体を今すぐ絶頂させないと、おかしくなってしまう。スカートのチャックを外して、ワタシは椅子に座って左手で、ずっとぐちょぐちょになっているパンツを晒す。冷えた空気が、少し気持ちいい。ページを捲る。
【黒タイツを脱ぐのは大変だ。そう考えた貴女は、タイツ越しにクリトリスを弄るでしょう。貴女自身の身体で味わう快楽。貴女の身体に存在している2人分の魂にも、深く、深く刻まれます。──そして、もう貴女を縛る理性の鎖も、正気の類も存在しません。次が最後の1ページ。】
「く、ぁああ゛っ♡♡♡♡ や、っうあっ♡♡♡♡♡」
『何時もやっている自慰』なのに。初めてやったときみたいに、ゾクゾクが止まらない。知っている感覚なのに、知らない恐怖と、好奇心で一杯になる。この小さな突起をクリクリさせるだけで、ゾクゾクした気持ちよさがずっと襲ってくるのに。もしも、これをぎゅってしたらどうなるんだろう。おっぱいも、おまんこも、もっと味わいたい。
ページを捲る。
【溶けた君たちの意識は『綾子』になって────そして、貴女の身体は何十秒もの絶頂に揺さぶられるでしょう。】
「ぁ、ぁああ゛っ♡♡♡♡ うぁあああ゛っ♡♡♡♡ だめ、だめだめだめっ♡♡♡♡♡ っぁああ──ッ♡♡♡♡♡♡」
私の喉から、誰に向けることも無い叫び声が。溺れてしまいそうな快楽。私の身体の制御が効かず、電気ショックを受けたカエルみたいにビクビクと動いて。その不随意運動が気持ちいい。膣がどろどろと愛液を漏らして、私の脳を快楽漬けにしてしまう。椅子の上で、私は盛大に恥ずかしい姿を晒してしまった。……その事すら、おまんこを疼かせる。がくがくと震えた膝で、本の裏表紙に書かれていた文字を目にする。
【望めば、ゲームの残り時間で貴女の身体を慰めるだけの道具を『綾子さんが持っていたことにしても構いません』。】
──そうだ。ずっと自分の指でオナニーするのに、そろそろ飽きてきたのだ。だから今日は、いつもは家で使っているディルドに、乳首責め用の電池式ローターだって用意してきた。
「うふっ……♡♡♡ 流石にブラ無しだと、タートルネックネック越しにローターが見えちゃうわね……本当に変態になっちゃったみたい……♡♡♡♡ ん゛っ♡♡♡♡♡」
……いや、変質者そのものだろうけど。今はもう、これなしじゃ退屈に耐えきれなくなっちゃったから。綾子は、それぞれの道具の準備をして。一気に出力を上げた。
「イ゛っ♡♡♡♡♡ おぉおおお゙ゔっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
脳が焼き切れそうな快楽と共に、意識がトんで────
「あっ……! よかった、起きてくれた……!」
「待て待てっ! そんな揺するな、くらくらするだろ~!」
翔が泣きそうな顔でオレを見て、しかし安堵している。……ついさっきまでの実稲ならば。その表情にすら興奮を、昂ぶりを覚えただろうけど。今の智樹はそういった衝動のようなものが湧き上がらない。同じ『自分』だったはず、なのだけど。頭の中の整理がつく前に、別の声が響く。
≪キャンペーン1、クリア~! 二人ともおめでとう! 次のゲームの準備は良いかな?≫
咄嗟に智樹は時計を見る。あの空間で過ごしたのは少なくとも15分以上だが──時間が進んでいない。突然不思議な場所に飛ばされたと思ったら、自分が2つに分かれて、あまつさえ親友をあんな風に想ってしまった上に──あんな事をしてしまって。
「だ、ダメだ! これ以上このゲームは続けられない! あんな風に、翔にまた変なことをしてしまうかもしれないだろ!」
≪おやおや~? ゲームからの途中退場は禁止だよ? あと2回、一緒に付き合ってもらうよ。さもないと……≫
タブレット越しの少女の声が、僅かに脅すように変わって。
≪──月に1回犬のウンチを踏んづけたり、鳥のフンが目の前に落ちたり、カレー味のウンチとウンチ味のカレーのどっちを食べたいかって友達みんなに聞かれる呪いをかけちゃうぞ~! こわ~い!!≫
「ダメ、だ……ドア、開かない!」
からかうような少女の声を無視するように翔が部屋のドアを開こうとしていたが、何故かドアが開かないようで。窓を確かめたが、確かにビクともしない。──不思議な力で、オレたちはこの部屋に閉じ込められてしまったらしい。
「ぐっ、2回か……ショウ、どう思う」
「怖い、怖くて、わけがわからないけど……痛い目に合う事は、ないかもしれない……」
ついさっき、オレたちに渡された絵馬を思い出す。あれはまるで、劇の役を指名しているようなものだった。ひょっとしたら──この幾つかの劇を正しく上映できれば、無事に解放されるんじゃないか。そして、劇の途中で片方が大変な目に合うとも思えない。1人芝居というものもあるらしいが、基本的に劇は複数人でやるものだ。どちらかが「脱落」することも、最終版まではないかもしれない。
≪ほらほら、次のサイコロだよ~? 回さないと強制的に「6」だよ、10、9……≫
「だーっ、分かったよ!」
ほとんど勢い任せに、オレはサイコロをタップした。画面の下でそれは跳ねて数回転がると……
≪出た数字は「3」! 今度はショウ君から順番にね!≫
名前を言っていないにもかかわらず。画面の向こう側の声は、オレ達の名前も、存在も知っている。抵抗は難しい。おずおずと、ショウはカードに手をかける。
1枚目。「あなた達は」。
2枚目。「おっとりとした性格の司書さんになって」。
3枚目。「オナニーをする」。
≪ふむふむ……よ~し! マスタ準備完了! 3, 2, 1...GO!≫
再び。この部屋が歪み、世界が、空間が、時間が。全てが曖昧に消えて。オレと翔だけが残って──
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気が付くと。オレたちは硬い床に倒れこんでいた。周囲を見渡すと、オレたちの身長よりも、下手をすると大人でも届かないほどの大きさの本棚が無数に置かれていて。そこにぎっちりと、革で表紙をとめられた分厚い本が収められている。
「はぁ……大丈夫か、ショウ?」
「う、うん……ここ、どこだろう……?」
少なくともオレたちがたまに通う公共の図書館や、学校の図書館とは明らかに違う。天井には白色の照明がずらっと並んでいるのに、人が座って読めるようなスペースが見当たらない。あるとすれば、今オレたちが居る場所かもしれないけど──ここは、明らかにカウンター。司書さんが本を貸し出す場所だ。より辺りを調べようとした、その時。
「トモくんっ!? 身体、溶けてる……ッ!」
「なっ……翔、お前もっ!!」
水泳の授業でプールに飛び込んだ時みたいに。自分の身体が、ショウの身体が。床に沈んで──
【共通ルール:PC1はこの図書館の司書である。欲求不満になった貴女は、自らを慰める。】
【PL1: 芝原智樹】+【PL2:熊谷翔也】→【PL1:音喜多 綾子】
オレとショウが──結びつく感覚。自分の身体が、さっきのようにスライムみたいに溶けてしまったのだろう。だけど、今度は。スライムになってしまったショウとオレが、混ざり合って1つの塊になって。そして、水面から顔を上げた時のように、自分の顔を上げて呼吸する。
「っ……ぷはっ……」
人間同士が溶けて、混ざり合って、1つになる。そんな事が起こるわけがないなんてことは、子供と言われる智樹たちだって理解していた。だけど。
「っう……? うわわわっ!? ボク、こんなに背が高くなってっ……それに、胸元がなんだかキツイ……!」
智樹が声を発しようとした時。自分の喉から、困ったような女の人の声がした。この口調は。
「ショウ、お前か? ……えっ、何で勝手に声が!? …………変な感じだけど、どうにもオレたちは1つの人間になったみたい、だな。 ──ど、どうしてそんなに冷静に受け入れてるの!?」
さっきの『ゲーム』で既に異常に巻き込まれてたのも影響しているかもしれない。どこか、この状況を受け入れつつあるオレが居る。そして、これが『演劇』の続きであれば。『台本』がさっきみたいに現れる、はず。丁度、図書館のカウンター部分に一冊の本と、それに付属するようにメモが置いてあった。
【特殊ルール/HO1:貴女は本が好きだ。目の前にある本を読み進めてしまうだろう。】
オレたちが普段学校で読む、教科書ぐらいの大きさと厚さの本。だけど、ただ一つの場所を除いてすべてが紺色のカバーが掛かっていた。そして、金色の刺繡で。『音喜多 綾子』と書かれている。
「よ、読むの……? ──読むしか、ないだろ……!」
左手は震えて、だけど右手でしっかりと。1ページ目を開く。
【この本は貴女であり、貴女はこの本そのものでもあります。この本は貴女を映し、貴女自身をより深く理解するのに助けになるでしょう。】
「どういうことだろう……? ──多分。図書館の司書さんって確か、首元にカードとか掛けてるよな、あ、あった」
『自分』の首元に掛かっていたタグを見る。本の表紙と同じ名前、そして顔写真の付いたカード。『音喜多 綾子』。……それが、今のオレたちの名前だった。
【綾子さんはこの図書館で司書をしています。しかし、通常の図書館と違いここは閉架書庫。誰かが本を借りたいときにはそれを持っていくのですが、生憎と利用者の少ないこの図書館で、本を借りる人は少なく。司書である綾子さんは、とても暇を持て余していました】
ページの片方には、ある女性の格好が挿絵の様に描かれていた。ネイビーのジャケット、ホワイトグレーのタートルネックに、白色のロングスカート。メガネをかけていて、優しそうな雰囲気に賢そうな雰囲気のある、黒色のポニーテールをしたお姉さんの絵。…………【これは綾子だ】、と何故か腑に落ちた。図書館内で鏡があるかは分からない。だけど、【この絵が私自身を完璧に映している】。
「じゃぁ、胸のあたりがキツく感じるのって……? ──着てるモノの関係じゃないか?」
次のページをめくる。
【さて、そんな手持ち無沙汰な綾子さんはというと。地下で電波も届かず、スマホは使えません。なので、暇を潰す方法として、オナニーをする事が日課になっていました。おかげで、常に身体が火照って仕方が無いのです。】
「っぅうっ……♡♡ ひゃ、ぁうっ♡♡」
──そう。良くない事だと分かっているのに。綾子は、他の司書や来客が居ないことを良い事に、こうやってタートルネック越しに自分の乳首を弄ってしまうのが癖になってしまっていた。更衣室には私のブラがある。だから……こうして服越しに、直に乳首がピンと勃つ感覚が分かってしまって。
「し、知らなっ……♡♡ ボク、こんなのっ……♡♡♡ あひゅっ♡♡♡♡」
左手で乳首をコリコリとすると、じんわりと身体が火照ってくる。【本を読む手は止まらない】ので、右手でページを捲る。
【この行為に恥じらいを持ちつつも、毎日のように長時間のオナニーを続けていた綾子さんの身体は、ちょっと弄っただけでも愛液が漏れだして仕方ないのです。】
「ふ~っ……♡♡♡ はぁ、っ……♡♡♡♡ オレ、どうしちゃったんだ、ぅゔっ♡♡♡」
小学校の低学年の時に漏らしてしまった時の様に、パンツにじんわりと湿った感覚が伝わる。だけど、それが不快ではなくて。ページを捲る手は止まらない。
【自分自身の身体を慰めるのには飽き足らず、綾子さんはえっちな本を読みながら、そのシチュエーションにどっぷりと浸かって『自分もこうしたい』と想いながら、いやらしい行為をするようになったのです。例えば──】
【とある神社に住まう、神の御使いである母娘。彼女たちは白狐と呼ばれる、地域に住まい神を信仰する人々にご利益を与える存在でした。ですが……ある時を境に、1人の少年に虜になってしまったのです。彼女たちは何も知らない少年を籠絡し、ふわふわなおっぱいときゅうきゅう締め付けるおまんこで、あっという間に彼の初めてを奪ってしまいました。】
「こ、れ゙……っ♡♡ さっきの、オレたちっ……ひゃぅっ♡♡♡」
自分達の身体で味わった事だ。一体となった『ボクたち』にとっては、忘れる事の出来ない感覚。柔らかいおっぱいに包まれ、甘い匂いに蕩けさせられて。大好きな人に射精した時の記憶。自分の膣内に、愛しい子のモノが挿入って来る時の思い。そして、子宮に注がれた熱くて濃いハジメテのもの。
【綾子さんの妄想癖。それは、自慰をする度に強くなっていきました。男の子として、女の子に弱いところをイジられたい。女の子として、男の子の事を思いっきり愛したい。どちらの思いも強く──色んな官能小説を読んで、この退屈な時間を刺激的に過ごしてしまっていたのです。】
「ぁ、ぐっ……♡♡♡ 『わたし』っ……♡♡♡ 我慢できない、かも……♡♡♡♡」
今の言葉はオレが発したのか、或いはショウが発したのか──そのどちらでもないのか。ページを捲る。
【物語の登場人物のように感じたい。そう思いながら、綾子さんの自慰行為は激しくなっていきます。左手でスカート越しに子宮を擦るだけでは、もう満足できない。着ている服なんて脱いでしまって、直接愛撫したい。そんな思いに突き動かされます。】
「くうっ……これ、邪魔っ……」
──どうせ誰も来ない。監視カメラは閉架の入口にしか置いてない。だから……ここで服を脱いだところで、何の問題も無い。それよりも、『わたし』の身体の疼きを早く収めたい。火照った身体を今すぐ絶頂させないと、おかしくなってしまう。スカートのチャックを外して、ワタシは椅子に座って左手で、ずっとぐちょぐちょになっているパンツを晒す。冷えた空気が、少し気持ちいい。ページを捲る。
【黒タイツを脱ぐのは大変だ。そう考えた貴女は、タイツ越しにクリトリスを弄るでしょう。貴女自身の身体で味わう快楽。貴女の身体に存在している2人分の魂にも、深く、深く刻まれます。──そして、もう貴女を縛る理性の鎖も、正気の類も存在しません。次が最後の1ページ。】
「く、ぁああ゛っ♡♡♡♡ や、っうあっ♡♡♡♡♡」
『何時もやっている自慰』なのに。初めてやったときみたいに、ゾクゾクが止まらない。知っている感覚なのに、知らない恐怖と、好奇心で一杯になる。この小さな突起をクリクリさせるだけで、ゾクゾクした気持ちよさがずっと襲ってくるのに。もしも、これをぎゅってしたらどうなるんだろう。おっぱいも、おまんこも、もっと味わいたい。
ページを捲る。
【溶けた君たちの意識は『綾子』になって────そして、貴女の身体は何十秒もの絶頂に揺さぶられるでしょう。】
「ぁ、ぁああ゛っ♡♡♡♡ うぁあああ゛っ♡♡♡♡ だめ、だめだめだめっ♡♡♡♡♡ っぁああ──ッ♡♡♡♡♡♡」
私の喉から、誰に向けることも無い叫び声が。溺れてしまいそうな快楽。私の身体の制御が効かず、電気ショックを受けたカエルみたいにビクビクと動いて。その不随意運動が気持ちいい。膣がどろどろと愛液を漏らして、私の脳を快楽漬けにしてしまう。椅子の上で、私は盛大に恥ずかしい姿を晒してしまった。……その事すら、おまんこを疼かせる。がくがくと震えた膝で、本の裏表紙に書かれていた文字を目にする。
【望めば、ゲームの残り時間で貴女の身体を慰めるだけの道具を『綾子さんが持っていたことにしても構いません』。】
──そうだ。ずっと自分の指でオナニーするのに、そろそろ飽きてきたのだ。だから今日は、いつもは家で使っているディルドに、乳首責め用の電池式ローターだって用意してきた。
「うふっ……♡♡♡ 流石にブラ無しだと、タートルネックネック越しにローターが見えちゃうわね……本当に変態になっちゃったみたい……♡♡♡♡ ん゛っ♡♡♡♡♡」
……いや、変質者そのものだろうけど。今はもう、これなしじゃ退屈に耐えきれなくなっちゃったから。綾子は、それぞれの道具の準備をして。一気に出力を上げた。
「イ゛っ♡♡♡♡♡ おぉおおお゙ゔっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
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