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短編
内側に潜むモノ
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終礼を終え、皆が部活だ、帰宅だと鞄を抱えて教室を出る。しばらく帰れない俺は、一度椅子に座ってふぅ、とひと呼吸置いた。週に一回とはいっても、保健委員の作業は正直面倒ではある。ササッと済ませようにも、手洗い場の石鹸やらトイレットペーパーやらの交換は、放課後しばらくしてからじゃないと確認できない。
「ありゃ、また一眠りするつもりなの」
机で眠気に誘われてた俺に話しかけてくる、いつもの幼馴染の声。授業中から眠かったので、素直に寝させてほしかった。
「しょうがないだろ、恵理。皆が部活行ってからじゃないとトイレットペーパーの在庫が確認できないんだから」
机に伏せたまま、くぐもった声をあげる。毎回余るぐらいトイレ倉庫に持ち込みたいぐらいなのだが、学校がケチなので足りない分だけしか持って行ってはいけない。無駄に仕事を増やしやがって、とは隣クラスの保健委員談。
「でももう佐奈ちゃん行っちゃったよ。あの子も保健委員だったよね」
「……マジか」
急に眠気が覚めて、ガバっと体を起こした。うわっ、とちょっとだけ驚いた声を恵理が出す。俺の目の前の机に座っていた。少しだけ短くしているスカートは、気持ちだけのお洒落であるとは、大道(おおみち)恵(え)理(り)本人の談。
「ほんと分かりやすいよね、ゆーくんは」
「なっ……何がさっ」
動揺を何とか隠そうとするも、言い淀んでしまった。
「なーんでもないよ、あたしは応援してるからさ」
ポンポンと恵理に肩を叩かれる。まさかとは思うが俺の恋心がバレているはずなど。
「早く告白しないと。あんな可愛い子あっという間に誰かに取られちゃうんだから」
ずっこけるように俺は机に突っ伏した。じゃあねーと、恵理が出ていってしばらくするまで俺は動けないままだった。
「いつからバレてたんだよ……こっ恥ずかしい……」
――――――――――――――――――
各トイレのロール、手洗い場の石鹸数をメモした紙を手にして俺は保健室に到着した。まだ佐奈は保健室に居るだろうか。互いに部活なので一緒に帰れないけど、多少話せるだろうか。
ガラリと扉を開く。空調の聞いた、少し薬品っぽい匂いのする空気。保健室には、先生も居なかった。部屋の奥にあるベッドが一台だけカーテンで仕切られている。誰かが体調不良で寝込んでいるのだろうか。
「……や……か……たす……け……」
か細い声で、何かが聞こえる。気分が悪くなった生徒でも居るのだろうか。
「もしもし、大丈夫です?」
カーテンを開いていいものか、一瞬躊躇する。女子の声だった分、確認するのも本当は保健の先生の方が良いはず。だけど、事態が酷くなるのは避けたい。
「ゴメンナサイ、開けますよー。大丈夫です……か………あ!?」
カーテンの中には、二人居た。一人は、先程教室で俺に話しかけてきた恵理。手元には裁縫に使う針のような物を持っている。
もう一人は―――――――――
「……木崎……く……ん」
「……たちば……あ……?」
橘(たち)内(ばな)佐(さ)奈(な)、だった。顔は青ざめて体調が悪そうである。だが、俺が驚いたのは別の事。佐奈から伸びている手は、ダラリとベッドの下に垂れている。……その『腕』は、まるで骨や肉が全く無く、一切の厚みを失っている。一瞬だけ、空気を入れる前の浮き輪を想起した。
その異常は、腕だけではない。ベッドに横たわっている筈の脚も、胴も、見当たらない。有るのは靴下と制服が、ペタンとベッドに置かれているだけ。コヒュ、コヒュと息苦しそうな呼吸音。この状況で、恵理は眉の一つも動かしていない。
「恵理、橘内さんに一体何が……」
「に……げ……」
ハッキリと聞こえなかったが、何かを伝えようとしている佐奈。聞き取ろうとして近づくと、恵理はポーチから制汗剤のようなスプレー缶を取り出し――それを俺に吹きかけてきた。
「ッ!?」
急に、全身の感覚が失われる。背筋に氷柱を当てられたような寒気。足元がおぼつかなくなり、目の前が暗く…………
目を開いた。だが、どうもおかしい。まばたきをして見ても、真っ暗な風景に変化はない。目元に何やら感触がある。目隠し、だろうか。
次に気が付いたのは、自分の口元に何かが噛まされて、鼻でしか呼吸が出来ていない事。そして、手足も何かで縛られていて、自分が保健室のベッドに大の字で寝かされていること。くぐもった声を何とか出す。
「……あっ、気が付いたね」
知り合いの声を聞いて安堵し…………全身の身の毛がよだつ。恵理の声だったから。
「ごめんね、どうしてもシておきたいことがあったから」
目元の布が外された。急に光を見たせいか、頭痛が走る。確かに声の正体は恵理だった。両手に、どうやら肌色の布地を持っている。
「佐奈ちゃんには怖い思いさせてしまったけど、どうしてもゆーくんに試してみたいことがあったんだ」
全身タイツのように引き伸ばされた布地の頭部には、長い黒髪がくっついている。その一部には、水色のヘアピン。いつも、佐奈がつけていたもの。
「あたしじゃどうしてもだめだから、佐奈ちゃんに代わってもらおうかなって」
布地の背中部分を、恵理が引っ張る。どうやらそこが体を入れる部分だったらしく、恵理は上履きを脱いで脚を入れ込んでゆく。『アレ』が元々、佐奈であったこと。否応なしに理解はしている。しかし、それを着込んで何をするというのだ。
脚先を入れると同時に、ぐっと布地全体が伸びる。佐奈だった『ソレ』と同じ色をしたタイツは、両足を入れ込まれた事で床面に立つ。
「分かってはいたけど、あたしより佐奈ちゃんの脚のほうが細いなぁ、羨ましい」
恵理の上半身に、何も履いていない佐奈の脚がくっついている。さらに、ダラリと垂れていた佐奈の上半身に、今度は手を入れ込む恵理。
「あはは、佐奈ちゃんと体型が違うから、普段と違う感じがしちゃう。腕が届くかなぁ」
恵理は佐奈よりもひと回り小柄なぶん、腕や脚はだぼついているはず。――だというのに、そんな様子は一切見えない。
「最後に、よいしょっと……」
遂に、佐奈の頭の部分を両手で持った。人の頭を持っているのに、重さも厚みも全く無さそうに見える。ペラペラになっている頭部に付く髪を、サラリと撫でて恵理は自分の頭に『佐奈』を被せた。
「あとは、これでオッケーっと」
背中に空いていた大きな穴を、スッと指先で撫でる。すると、そこにはそんなものなど全くなかったかのように、綺麗さっぱり無くなっていた。そのまま、佐奈の長髪で背中は隠される。
「ほら、木崎君の好きな佐奈(わたし)よ」
そこには、恵理の姿は無い。さっきまで恐怖に歪んでいた佐奈が、ニコニコと笑顔でこちらを見て立っていた。一糸まとわぬ姿に、しかし俺は歓ぶことも、興奮することも出来ない。
絶句した俺に、『佐奈』は近寄ってきた。ふわりと髪をなびかせて、ちょうど俺の方に顔が当たるぐらいまでに躰(はだか)を寄せてくる。少しでもこちらが動けば、肌に触れてしまいそうなほどの距離。
「この姿なら、私はゆーくんの一番近くに居られるかな」
「え……り……?」
「ずるいよね、こんなことしちゃって。でも、アタシはゆーくんの一番近くに居たかったの」
遂には、俺の体を引き寄せて抱き着いてくる。何も言えなかった。恵理が佐奈の姿に変わって、恵理が俺に告白して。
「でも、そっか。ダメなのかな。姿だけ変わっても、ダメなのかな」
彼女の表情は見えない。しかし、悲しげな声であるのは分かる。触れ合った先から、互いの鼓動が伝わっていた。
「……橘内さん、凄く怖がってたぞ」
その当人の姿で抱きしめられているのは妙な話であるが、恐らく彼女は恵理で、凶行に手を染めてしまったのだろう。
――――いや。ひょっとしたら、という疑念が頭をよぎる。
「……何か嘘ついてないか?」
耳鳴りがするかのように、静寂が広がった。少なくとも、恵理はそもそも俺の恋心の行き先を知っていたはずだ。
恵理が言うみたいに、「俺の隣にいる」ことが目的なら、ずっと佐奈のフリをすればいいだけのこと。『恵理』として振り向いてほしいのであれば、これほどの悪手は無いだろう。本当に恵理は、そんなことがしたいのだろうか?
もしかしたら。目の前の『こいつ』は佐奈の姿をした恵理ではなく……
「橘内さんが『皮みたいに着ることができる』のと同じように、お前は恵理を着た誰かなんじゃないのか」
自分でも、何を言っているのか分からない。パニックになった精神で、訳の分からない事を言っているだけなのか。ずっと仲の良かった友達の凶行を、信じられないがために言ってしまったデマカセなのだろうか。
再び、自分の呼吸する音だけが聞こえる。足音が近づき、肩に手を置かれる。思わず身をすくめようとしたが、体は全く動かない。佐奈が耳打ちする。
「女の子の精一杯の告白だよ? ……それなのに、そんなことを言うなんて」
耳元まで、唇を近づけた佐奈が囁いた。
「……面白いな、お前?」
佐奈の声で、彼女が言わないような口遣い。恵理の口調でもない。悪意を持ったナニモノかの声。耳打ちされた言葉を理解するのに、しばらく時間がかかる。
こいつは、佐奈でも、恵理ですらない。
「お前……お前はッ、誰なんだよ!」
「なんだよ、確信もないのに正解したっていうのか?」
面白がっているかのような、佐奈の口調。次の瞬間、腰のあたりにどさりと何かが落っこちてくるような感覚に襲われた。ベッドに横たわる俺のさらに上に、佐奈の体躯がのしかかってきた。
「ご明察、橘内佐奈も大道恵理も、『俺』が着こんでいる皮の一枚に過ぎない」
佐奈が俺に何かを被せようと、手を近づけてくる。くしゃくしゃに丸められた、白色の布のようなもの。どこか生暖かく、やや湿っているように感じた。理髪店でタオルを被せられるかのようにあてられ、思わず目を瞑る。
「さっき正解したから、これは豪華賞品だ。――じゃぁ、第二問! いま木崎くんの眼前にあるこれは、いったい何でしょう?」
いつもの恵理がするように、ちょっとだけ砕けた話し方。一瞬気が緩みかける……だが、また何かされるのではないかと警戒し、息を止める。それすらお見通しとでも言いたいのか、俺の体にわざと密着するように佐奈が這い寄りながら言う。
「だいじょうぶ、さっきみたいな乱暴な事はもうしないから。ほら、よーく見たらきっとわかるはずだよ」
微笑みながら佐奈が言う。しかし、今の俺にはそれが恐ろしい表情にしか見えない。少なくとも、今は笑い合えるような気分でもない。無視したらもっと危険な状態になるのではないか、という恐れもあり眼前の『それ』を確認する。可能であれば、目をつむって黙っていたかったのだが。
佐奈が差し出したソレは、完全に無地の布ではなかった。布地に縫い込まれた、数本レース状の線。よく見ると、それは布に空いている穴を縁取るように描かれている。今、佐奈は布に空いている2つの穴に手を通して『ソレ』を近づけている。――思いついた答えが、真実だとは思えず俺は困惑する。だが、黙っていたら何をされるか分からない。
「その……パンツ、何なんだよ……!?」
「もう、男子ってデリカシーが無いなぁ。こういうのはショーツっていうんだよ。今日は私、お気に入りのを着てきたんだから、こうやって見せてあげてるの」
誰の……だって……?
「えへへ、あたしのぱんつだって聞いた時にアソコが大きくなったの、ばっちり見ちゃった」
目隠し状態になっていた『ソレ』を、ちょうど俺の鼻先に当てるようにずらしてから、俺の上にいる佐奈が体勢を変える。あろうことか、怒張しはじめたそれをゆっくりとズボンごしにさすりはじめたのだ。
「何してるんだよ、お前ッ……!?」
今や、彼女はズボンのジッパーを開きトランクス越しにソレを弄り始め。ついには、膨らみかけていた俺の局部が顕になる。わぁ、と佐奈が驚いたかのような声。
「『わたし』も初めて見たんだけど、君のおちんちんってこんなに大きくなるんだ」
そういって、制服のポケットから何かを取り出す。水色に白の模様が付いた、ハンカチだろうか。
「さっきは間違えてしまったから罰ゲームね。これは恵理ちゃんのぱんつなんだけど、これをつかって君のおちんぽをいじめちゃいまーす」
「……!?」
くぐもった、声にならない声をあげてしまう。懐から取り出したそれを右手に携えて、佐奈は俺の肉棒を掴み、ゆっくりと上下にこすりはじめる。
「ごめんね、あたしも恵理ちゃんになってさっきオナニーしちゃったから、ちょっとだけジメっとしているかも」
恵理の愛液を吸ったパンツで、佐奈が俺のアソコを絞っている。混乱し、錯覚しかけた。違う、今の彼女は佐奈でも、恵利でもないんだ。
「なーに我慢してんだよ、お前。しっかしチンコ握られただけでこんなにガッチガチになっちまって、お前(オトコ)って面白いなぁ?」
違う、と叫びたかった。だが、憎々しいことに自分の体は思うようには動かないし、望まない反応すら起こしている。
「ねぇ、今はあたし下着を穿いてないんだ。だから、こんなこともできるんだよ?」
俺の腰元にゆっくりと、彼女がしゃがみ込むように姿勢を落とす。それと同時に、俺の股間には熱くぬるっとした感覚が伝わってきた。
「はひっ……たっ……♡」
「おま……はっ……!?」
予想外の事が起こると、たとえそれが命の危機であっても人は立ち往生してしまう。どこかで聞きかじった知識を、俺は自分自身で体現している。佐奈の姿をしたソイツは、蕩けた顔で放心している。
「ふふ……ふへ……やっぱりバイブよりもあったかくてキモチいい……♡」
今なら、体勢を変えて反撃に転じれるかもしれない。なんとか拘束から逃れようと、手足を動かそうとする。だが。不意に佐奈が締付けを強くし、緩やかに体を揺らし始める。
「だーめだよぉ……♡ 私が気持ちよくなる邪魔はしちゃだめ……お前は俺の肉バイブになるんだからなぁ……?」
「ッくそ……ふざける……なよ……」
「あーあ……想い人と幼馴染のフリした男なのにぃ♡……ワタシの膣内(なか)でっ……大きくしちゃってるのがわかる……んうっ♡」
揺らす動きに加え、佐奈は上下に動き始めた。パチュン、ピチャンと静寂に水音が響き、アソコからは、ヒダヒダの擦れる感触が襲いかかる。
「もうでちゃうの? はやくっ♡ アタシの♡ オレのナカにっ♡ だしちゃいなよっ♡」
食いしばり、睨みつけるように恵理を見る。だが、ソイツは意にも介さない。何を昂ぶったか、自らの胸を揉みしだき始めた。
「おっぱいもっ♡ こうやってもんだりつねったりっ♡ あはっ♡ このカラダさいこぉ♡」
胸への刺激を自ら与え、さらに肉欲に溺れる佐奈。腰のヌルヌルと湿った感じが更に増す。自分自身でも腹立たしいことに、俺は彼女の痴態から目を逸らすことができないでいた。
「もうげんかいでしょ♡ はやくっ♡ あついの♡ くれよっ♡」
「はっ……ぐっ……」
トドメの一撃とばかりに、ズンと彼女が腰を落としてくる。衝撃は、膣内に突き刺さる肉棒にダイレクトに伝わった。こらえていたものが、一気に決壊する。
「あっ♡ あはっ♡ きたっ♡ あついのきたっ♡ びゅっびゅって♡」
膣内(なか)に放出されたソレに、佐奈が狂喜している。スカートで見えないが、じわりと水気が広がる感触がこちらにも分かる。同時に、ペニスを咥えこむ力が更に増した。
「もっとっ♡ くるっ♡ がまん♡ できないっ♡」
今や、佐奈はほんの僅かしか動けていない。そのはずなのに、俺自身は最後まで放出を止められなかった。
「ふっ♡ ふーっ♡ はーっ……♡はぁーっ♡」
今度こそ、と俺は拘束から逃れようとする。しかし、体の一部がどうしても恵理から抜け出せない。
「――だぁーめ♡ もっと楽しいことをしたいんだからさ」
笑顔のまま、恵理は再び俺にガスを吹きかける。鼻も口も止めれないまま、俺は急激に視界が暗くなるのを感じた。全身の力が抜けていって…………
―――――――――――――――――――
肌寒い空気で目が覚める。やや暗いが、今自分は保健室で寝ているようだ。さっきまでの出来事は、夢だったのだろうか。体を縛っていた縄も無い。ひとまず、保健室の先生に声を掛けなければ。
「すいませーん……?」
声を出した瞬間、違和感を覚える。妙に自分の声が高いのだ。掠れた声になってしまったのだろうか。軽く咳払いをする。
「ん、うん……えっ……?」
違う。明らかに、普段の声と違う。喉元を両手で抑えると、喉仏が無かった。
自分はまだ、奇妙な夢の中に居るのか?
「どういう……こと……だよ……?」
体の異常は、喉や声だけではない。来ていた服は、何やら襟に白い線がある。生地からするに、普段の制服に近いとは思うが。
「なんで俺が、女子の制服を……」
当惑と共に、服のポケットにあったはずのスマホで時間を確認しようとする。胸ポケットを探ろうとするも、そこには目的のものは無かった、のだが。
丁度胸ポケットがあったはずの場所には、見慣れない膨らみがある。触ってみると、同時に触られた感触があった。何かが服に挟まっているのだろうか。
なんだか、普段着ているシャツよりも脱ぎにくい感覚がある。俺はこんなにボタンのあるシャツを着ていただろうか。ボタンがあるのは女子用だというのに……
「…………へっ?」
更に不可思議な事に、俺は女子制服を着ていた。その下にはブラウスが。そして、先程の膨らみはまだそこにある。
「まるで、おっぱい、みたいな……」
一瞬、佐奈の膨らみを想像してしまう。まじまじと眺めるのは失礼だが、どうしても気になってしまって見てしまったのは幾度となくある。夏場にワイシャツ姿を見たときも、こんなおっぱいだったろうか。
「俺はこんな時に何を……!」
かぶりをふる。しかし、その時に顔にかかった髪の毛が、普段より長いことに気がつく。同時に香る、ふんわりとした女の子の香り。服の中身を確認するためガバッとワイシャツを脱いだ。
「なん……で……?」
服の間に挟まっていた筈のものは、何も無い。ただ、ほんのりと朱に染まった肌色が、丸い膨らみを帯びているだけ。その先端はピンと尖っていて、明らかに自分の体に異常があるのが分かった。
それだけではない。服を脱いだときに見えた自分の腕は、明らかに華奢なものになっていた。慌ててベッドから飛び跳ね、保健室の全身が映る鏡を探す。
目の前の光景が、信じられなかった。
「何で……恵利が……映って……!?」
乱れた服で、胸元も顕になっている。混乱した表情は、今の自分をそのまま表現しているようで。恵利が鏡に映るはずなんてないのに、目の前の彼女は自分と全く同じように呼吸し、頭を抱えていた。
「ありゃ、また一眠りするつもりなの」
机で眠気に誘われてた俺に話しかけてくる、いつもの幼馴染の声。授業中から眠かったので、素直に寝させてほしかった。
「しょうがないだろ、恵理。皆が部活行ってからじゃないとトイレットペーパーの在庫が確認できないんだから」
机に伏せたまま、くぐもった声をあげる。毎回余るぐらいトイレ倉庫に持ち込みたいぐらいなのだが、学校がケチなので足りない分だけしか持って行ってはいけない。無駄に仕事を増やしやがって、とは隣クラスの保健委員談。
「でももう佐奈ちゃん行っちゃったよ。あの子も保健委員だったよね」
「……マジか」
急に眠気が覚めて、ガバっと体を起こした。うわっ、とちょっとだけ驚いた声を恵理が出す。俺の目の前の机に座っていた。少しだけ短くしているスカートは、気持ちだけのお洒落であるとは、大道(おおみち)恵(え)理(り)本人の談。
「ほんと分かりやすいよね、ゆーくんは」
「なっ……何がさっ」
動揺を何とか隠そうとするも、言い淀んでしまった。
「なーんでもないよ、あたしは応援してるからさ」
ポンポンと恵理に肩を叩かれる。まさかとは思うが俺の恋心がバレているはずなど。
「早く告白しないと。あんな可愛い子あっという間に誰かに取られちゃうんだから」
ずっこけるように俺は机に突っ伏した。じゃあねーと、恵理が出ていってしばらくするまで俺は動けないままだった。
「いつからバレてたんだよ……こっ恥ずかしい……」
――――――――――――――――――
各トイレのロール、手洗い場の石鹸数をメモした紙を手にして俺は保健室に到着した。まだ佐奈は保健室に居るだろうか。互いに部活なので一緒に帰れないけど、多少話せるだろうか。
ガラリと扉を開く。空調の聞いた、少し薬品っぽい匂いのする空気。保健室には、先生も居なかった。部屋の奥にあるベッドが一台だけカーテンで仕切られている。誰かが体調不良で寝込んでいるのだろうか。
「……や……か……たす……け……」
か細い声で、何かが聞こえる。気分が悪くなった生徒でも居るのだろうか。
「もしもし、大丈夫です?」
カーテンを開いていいものか、一瞬躊躇する。女子の声だった分、確認するのも本当は保健の先生の方が良いはず。だけど、事態が酷くなるのは避けたい。
「ゴメンナサイ、開けますよー。大丈夫です……か………あ!?」
カーテンの中には、二人居た。一人は、先程教室で俺に話しかけてきた恵理。手元には裁縫に使う針のような物を持っている。
もう一人は―――――――――
「……木崎……く……ん」
「……たちば……あ……?」
橘(たち)内(ばな)佐(さ)奈(な)、だった。顔は青ざめて体調が悪そうである。だが、俺が驚いたのは別の事。佐奈から伸びている手は、ダラリとベッドの下に垂れている。……その『腕』は、まるで骨や肉が全く無く、一切の厚みを失っている。一瞬だけ、空気を入れる前の浮き輪を想起した。
その異常は、腕だけではない。ベッドに横たわっている筈の脚も、胴も、見当たらない。有るのは靴下と制服が、ペタンとベッドに置かれているだけ。コヒュ、コヒュと息苦しそうな呼吸音。この状況で、恵理は眉の一つも動かしていない。
「恵理、橘内さんに一体何が……」
「に……げ……」
ハッキリと聞こえなかったが、何かを伝えようとしている佐奈。聞き取ろうとして近づくと、恵理はポーチから制汗剤のようなスプレー缶を取り出し――それを俺に吹きかけてきた。
「ッ!?」
急に、全身の感覚が失われる。背筋に氷柱を当てられたような寒気。足元がおぼつかなくなり、目の前が暗く…………
目を開いた。だが、どうもおかしい。まばたきをして見ても、真っ暗な風景に変化はない。目元に何やら感触がある。目隠し、だろうか。
次に気が付いたのは、自分の口元に何かが噛まされて、鼻でしか呼吸が出来ていない事。そして、手足も何かで縛られていて、自分が保健室のベッドに大の字で寝かされていること。くぐもった声を何とか出す。
「……あっ、気が付いたね」
知り合いの声を聞いて安堵し…………全身の身の毛がよだつ。恵理の声だったから。
「ごめんね、どうしてもシておきたいことがあったから」
目元の布が外された。急に光を見たせいか、頭痛が走る。確かに声の正体は恵理だった。両手に、どうやら肌色の布地を持っている。
「佐奈ちゃんには怖い思いさせてしまったけど、どうしてもゆーくんに試してみたいことがあったんだ」
全身タイツのように引き伸ばされた布地の頭部には、長い黒髪がくっついている。その一部には、水色のヘアピン。いつも、佐奈がつけていたもの。
「あたしじゃどうしてもだめだから、佐奈ちゃんに代わってもらおうかなって」
布地の背中部分を、恵理が引っ張る。どうやらそこが体を入れる部分だったらしく、恵理は上履きを脱いで脚を入れ込んでゆく。『アレ』が元々、佐奈であったこと。否応なしに理解はしている。しかし、それを着込んで何をするというのだ。
脚先を入れると同時に、ぐっと布地全体が伸びる。佐奈だった『ソレ』と同じ色をしたタイツは、両足を入れ込まれた事で床面に立つ。
「分かってはいたけど、あたしより佐奈ちゃんの脚のほうが細いなぁ、羨ましい」
恵理の上半身に、何も履いていない佐奈の脚がくっついている。さらに、ダラリと垂れていた佐奈の上半身に、今度は手を入れ込む恵理。
「あはは、佐奈ちゃんと体型が違うから、普段と違う感じがしちゃう。腕が届くかなぁ」
恵理は佐奈よりもひと回り小柄なぶん、腕や脚はだぼついているはず。――だというのに、そんな様子は一切見えない。
「最後に、よいしょっと……」
遂に、佐奈の頭の部分を両手で持った。人の頭を持っているのに、重さも厚みも全く無さそうに見える。ペラペラになっている頭部に付く髪を、サラリと撫でて恵理は自分の頭に『佐奈』を被せた。
「あとは、これでオッケーっと」
背中に空いていた大きな穴を、スッと指先で撫でる。すると、そこにはそんなものなど全くなかったかのように、綺麗さっぱり無くなっていた。そのまま、佐奈の長髪で背中は隠される。
「ほら、木崎君の好きな佐奈(わたし)よ」
そこには、恵理の姿は無い。さっきまで恐怖に歪んでいた佐奈が、ニコニコと笑顔でこちらを見て立っていた。一糸まとわぬ姿に、しかし俺は歓ぶことも、興奮することも出来ない。
絶句した俺に、『佐奈』は近寄ってきた。ふわりと髪をなびかせて、ちょうど俺の方に顔が当たるぐらいまでに躰(はだか)を寄せてくる。少しでもこちらが動けば、肌に触れてしまいそうなほどの距離。
「この姿なら、私はゆーくんの一番近くに居られるかな」
「え……り……?」
「ずるいよね、こんなことしちゃって。でも、アタシはゆーくんの一番近くに居たかったの」
遂には、俺の体を引き寄せて抱き着いてくる。何も言えなかった。恵理が佐奈の姿に変わって、恵理が俺に告白して。
「でも、そっか。ダメなのかな。姿だけ変わっても、ダメなのかな」
彼女の表情は見えない。しかし、悲しげな声であるのは分かる。触れ合った先から、互いの鼓動が伝わっていた。
「……橘内さん、凄く怖がってたぞ」
その当人の姿で抱きしめられているのは妙な話であるが、恐らく彼女は恵理で、凶行に手を染めてしまったのだろう。
――――いや。ひょっとしたら、という疑念が頭をよぎる。
「……何か嘘ついてないか?」
耳鳴りがするかのように、静寂が広がった。少なくとも、恵理はそもそも俺の恋心の行き先を知っていたはずだ。
恵理が言うみたいに、「俺の隣にいる」ことが目的なら、ずっと佐奈のフリをすればいいだけのこと。『恵理』として振り向いてほしいのであれば、これほどの悪手は無いだろう。本当に恵理は、そんなことがしたいのだろうか?
もしかしたら。目の前の『こいつ』は佐奈の姿をした恵理ではなく……
「橘内さんが『皮みたいに着ることができる』のと同じように、お前は恵理を着た誰かなんじゃないのか」
自分でも、何を言っているのか分からない。パニックになった精神で、訳の分からない事を言っているだけなのか。ずっと仲の良かった友達の凶行を、信じられないがために言ってしまったデマカセなのだろうか。
再び、自分の呼吸する音だけが聞こえる。足音が近づき、肩に手を置かれる。思わず身をすくめようとしたが、体は全く動かない。佐奈が耳打ちする。
「女の子の精一杯の告白だよ? ……それなのに、そんなことを言うなんて」
耳元まで、唇を近づけた佐奈が囁いた。
「……面白いな、お前?」
佐奈の声で、彼女が言わないような口遣い。恵理の口調でもない。悪意を持ったナニモノかの声。耳打ちされた言葉を理解するのに、しばらく時間がかかる。
こいつは、佐奈でも、恵理ですらない。
「お前……お前はッ、誰なんだよ!」
「なんだよ、確信もないのに正解したっていうのか?」
面白がっているかのような、佐奈の口調。次の瞬間、腰のあたりにどさりと何かが落っこちてくるような感覚に襲われた。ベッドに横たわる俺のさらに上に、佐奈の体躯がのしかかってきた。
「ご明察、橘内佐奈も大道恵理も、『俺』が着こんでいる皮の一枚に過ぎない」
佐奈が俺に何かを被せようと、手を近づけてくる。くしゃくしゃに丸められた、白色の布のようなもの。どこか生暖かく、やや湿っているように感じた。理髪店でタオルを被せられるかのようにあてられ、思わず目を瞑る。
「さっき正解したから、これは豪華賞品だ。――じゃぁ、第二問! いま木崎くんの眼前にあるこれは、いったい何でしょう?」
いつもの恵理がするように、ちょっとだけ砕けた話し方。一瞬気が緩みかける……だが、また何かされるのではないかと警戒し、息を止める。それすらお見通しとでも言いたいのか、俺の体にわざと密着するように佐奈が這い寄りながら言う。
「だいじょうぶ、さっきみたいな乱暴な事はもうしないから。ほら、よーく見たらきっとわかるはずだよ」
微笑みながら佐奈が言う。しかし、今の俺にはそれが恐ろしい表情にしか見えない。少なくとも、今は笑い合えるような気分でもない。無視したらもっと危険な状態になるのではないか、という恐れもあり眼前の『それ』を確認する。可能であれば、目をつむって黙っていたかったのだが。
佐奈が差し出したソレは、完全に無地の布ではなかった。布地に縫い込まれた、数本レース状の線。よく見ると、それは布に空いている穴を縁取るように描かれている。今、佐奈は布に空いている2つの穴に手を通して『ソレ』を近づけている。――思いついた答えが、真実だとは思えず俺は困惑する。だが、黙っていたら何をされるか分からない。
「その……パンツ、何なんだよ……!?」
「もう、男子ってデリカシーが無いなぁ。こういうのはショーツっていうんだよ。今日は私、お気に入りのを着てきたんだから、こうやって見せてあげてるの」
誰の……だって……?
「えへへ、あたしのぱんつだって聞いた時にアソコが大きくなったの、ばっちり見ちゃった」
目隠し状態になっていた『ソレ』を、ちょうど俺の鼻先に当てるようにずらしてから、俺の上にいる佐奈が体勢を変える。あろうことか、怒張しはじめたそれをゆっくりとズボンごしにさすりはじめたのだ。
「何してるんだよ、お前ッ……!?」
今や、彼女はズボンのジッパーを開きトランクス越しにソレを弄り始め。ついには、膨らみかけていた俺の局部が顕になる。わぁ、と佐奈が驚いたかのような声。
「『わたし』も初めて見たんだけど、君のおちんちんってこんなに大きくなるんだ」
そういって、制服のポケットから何かを取り出す。水色に白の模様が付いた、ハンカチだろうか。
「さっきは間違えてしまったから罰ゲームね。これは恵理ちゃんのぱんつなんだけど、これをつかって君のおちんぽをいじめちゃいまーす」
「……!?」
くぐもった、声にならない声をあげてしまう。懐から取り出したそれを右手に携えて、佐奈は俺の肉棒を掴み、ゆっくりと上下にこすりはじめる。
「ごめんね、あたしも恵理ちゃんになってさっきオナニーしちゃったから、ちょっとだけジメっとしているかも」
恵理の愛液を吸ったパンツで、佐奈が俺のアソコを絞っている。混乱し、錯覚しかけた。違う、今の彼女は佐奈でも、恵利でもないんだ。
「なーに我慢してんだよ、お前。しっかしチンコ握られただけでこんなにガッチガチになっちまって、お前(オトコ)って面白いなぁ?」
違う、と叫びたかった。だが、憎々しいことに自分の体は思うようには動かないし、望まない反応すら起こしている。
「ねぇ、今はあたし下着を穿いてないんだ。だから、こんなこともできるんだよ?」
俺の腰元にゆっくりと、彼女がしゃがみ込むように姿勢を落とす。それと同時に、俺の股間には熱くぬるっとした感覚が伝わってきた。
「はひっ……たっ……♡」
「おま……はっ……!?」
予想外の事が起こると、たとえそれが命の危機であっても人は立ち往生してしまう。どこかで聞きかじった知識を、俺は自分自身で体現している。佐奈の姿をしたソイツは、蕩けた顔で放心している。
「ふふ……ふへ……やっぱりバイブよりもあったかくてキモチいい……♡」
今なら、体勢を変えて反撃に転じれるかもしれない。なんとか拘束から逃れようと、手足を動かそうとする。だが。不意に佐奈が締付けを強くし、緩やかに体を揺らし始める。
「だーめだよぉ……♡ 私が気持ちよくなる邪魔はしちゃだめ……お前は俺の肉バイブになるんだからなぁ……?」
「ッくそ……ふざける……なよ……」
「あーあ……想い人と幼馴染のフリした男なのにぃ♡……ワタシの膣内(なか)でっ……大きくしちゃってるのがわかる……んうっ♡」
揺らす動きに加え、佐奈は上下に動き始めた。パチュン、ピチャンと静寂に水音が響き、アソコからは、ヒダヒダの擦れる感触が襲いかかる。
「もうでちゃうの? はやくっ♡ アタシの♡ オレのナカにっ♡ だしちゃいなよっ♡」
食いしばり、睨みつけるように恵理を見る。だが、ソイツは意にも介さない。何を昂ぶったか、自らの胸を揉みしだき始めた。
「おっぱいもっ♡ こうやってもんだりつねったりっ♡ あはっ♡ このカラダさいこぉ♡」
胸への刺激を自ら与え、さらに肉欲に溺れる佐奈。腰のヌルヌルと湿った感じが更に増す。自分自身でも腹立たしいことに、俺は彼女の痴態から目を逸らすことができないでいた。
「もうげんかいでしょ♡ はやくっ♡ あついの♡ くれよっ♡」
「はっ……ぐっ……」
トドメの一撃とばかりに、ズンと彼女が腰を落としてくる。衝撃は、膣内に突き刺さる肉棒にダイレクトに伝わった。こらえていたものが、一気に決壊する。
「あっ♡ あはっ♡ きたっ♡ あついのきたっ♡ びゅっびゅって♡」
膣内(なか)に放出されたソレに、佐奈が狂喜している。スカートで見えないが、じわりと水気が広がる感触がこちらにも分かる。同時に、ペニスを咥えこむ力が更に増した。
「もっとっ♡ くるっ♡ がまん♡ できないっ♡」
今や、佐奈はほんの僅かしか動けていない。そのはずなのに、俺自身は最後まで放出を止められなかった。
「ふっ♡ ふーっ♡ はーっ……♡はぁーっ♡」
今度こそ、と俺は拘束から逃れようとする。しかし、体の一部がどうしても恵理から抜け出せない。
「――だぁーめ♡ もっと楽しいことをしたいんだからさ」
笑顔のまま、恵理は再び俺にガスを吹きかける。鼻も口も止めれないまま、俺は急激に視界が暗くなるのを感じた。全身の力が抜けていって…………
―――――――――――――――――――
肌寒い空気で目が覚める。やや暗いが、今自分は保健室で寝ているようだ。さっきまでの出来事は、夢だったのだろうか。体を縛っていた縄も無い。ひとまず、保健室の先生に声を掛けなければ。
「すいませーん……?」
声を出した瞬間、違和感を覚える。妙に自分の声が高いのだ。掠れた声になってしまったのだろうか。軽く咳払いをする。
「ん、うん……えっ……?」
違う。明らかに、普段の声と違う。喉元を両手で抑えると、喉仏が無かった。
自分はまだ、奇妙な夢の中に居るのか?
「どういう……こと……だよ……?」
体の異常は、喉や声だけではない。来ていた服は、何やら襟に白い線がある。生地からするに、普段の制服に近いとは思うが。
「なんで俺が、女子の制服を……」
当惑と共に、服のポケットにあったはずのスマホで時間を確認しようとする。胸ポケットを探ろうとするも、そこには目的のものは無かった、のだが。
丁度胸ポケットがあったはずの場所には、見慣れない膨らみがある。触ってみると、同時に触られた感触があった。何かが服に挟まっているのだろうか。
なんだか、普段着ているシャツよりも脱ぎにくい感覚がある。俺はこんなにボタンのあるシャツを着ていただろうか。ボタンがあるのは女子用だというのに……
「…………へっ?」
更に不可思議な事に、俺は女子制服を着ていた。その下にはブラウスが。そして、先程の膨らみはまだそこにある。
「まるで、おっぱい、みたいな……」
一瞬、佐奈の膨らみを想像してしまう。まじまじと眺めるのは失礼だが、どうしても気になってしまって見てしまったのは幾度となくある。夏場にワイシャツ姿を見たときも、こんなおっぱいだったろうか。
「俺はこんな時に何を……!」
かぶりをふる。しかし、その時に顔にかかった髪の毛が、普段より長いことに気がつく。同時に香る、ふんわりとした女の子の香り。服の中身を確認するためガバッとワイシャツを脱いだ。
「なん……で……?」
服の間に挟まっていた筈のものは、何も無い。ただ、ほんのりと朱に染まった肌色が、丸い膨らみを帯びているだけ。その先端はピンと尖っていて、明らかに自分の体に異常があるのが分かった。
それだけではない。服を脱いだときに見えた自分の腕は、明らかに華奢なものになっていた。慌ててベッドから飛び跳ね、保健室の全身が映る鏡を探す。
目の前の光景が、信じられなかった。
「何で……恵利が……映って……!?」
乱れた服で、胸元も顕になっている。混乱した表情は、今の自分をそのまま表現しているようで。恵利が鏡に映るはずなんてないのに、目の前の彼女は自分と全く同じように呼吸し、頭を抱えていた。
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