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雪の魔女とその氷像の
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毛皮越しでも冷たい空気が伝わる程の吹雪。勢いを増した雪と暴風。目的地は近い、と炎の魔法石を握った男は、防寒具を飛ばされないよう強く握って歩みを続ける。もう何日も、陽の光を見ていない。
――雪の魔女が悪しき魔術で全てを凍らせようとしているのです――
――もう何人も吹雪で連れ去られた、次は誰なんだ――
――いつかこの村も全て凍ってしまうんだ、何もかも――
「……馬鹿馬鹿しい」
ふと、直前の村を離れる前に住人達がこぼした一言を思い出し、雪道を歩く男、ローランは反論するように呟く。彼らが言うには、『雪の魔女』とやらが村の近くに一夜にして氷の巨城を創り出し、そこから強大な魔法を放って全てを凍らせるべく吹雪を起こしているらしい。
(吹雪が続くのもタダの偶然。一夜城とやらも、捨てられた古城を誰かが見間違えたものだ)
ローランはそう確信している。しかし、恐慌に陥った村人たちは存在するかもわからない雪の魔女討伐を冒険者に依頼するほどまでになっていた。その任務を請け負ったのは熟練の4人パーティ。戦士と騎士、盗賊に弓使いとバランスも良かった。――しかし、彼らが何日経っても帰ってこなかったのだ。
この地域は寒冷で、モンスターも少ない。仮に襲撃されたとしても、問題なく撃退できる程度の獣しか発見されていない。そして、仮に冒険者たち全員が倒れたとしても。彼らは必ず村に戻ってこれるはずだったのだ。
(だが……『帰還の腕輪』が作動しなかったとなると……考えられるのは未だに何処かで遭難しているか、どこかに囚われてしまったかだ)
冒険者が危険な稼業を続けることが出来る『魔法』の1つに、冒険者ギルドから支給される『帰還の腕輪』がある。装備した者が望むか、命の危機に陥る程の怪我をした場合に自動で発動し、ギルド支部に瞬間移動できる腕輪だ。テレポート技術を応用したもので、この腕輪により冒険者の死亡率が著しく低下した優れ物である。
(あるいは……腕輪を無効化された?)
ローランは失踪した4人の居場所の特定と『雪の魔女』の存在を確認するため、単独調査を請け負った。斥候任務を数多く請け負い、時には敵国や未開の地を一人で調査してきた彼にとっては、この任務はさほど厳しい物ではない。
(腕輪の位置は1か所に固まっている……)
帰還の腕輪は、冒険者ギルドによって逆に探知できる仕組みになっている。万が一の捜索の際に便利なのと、武力を持つ冒険者に文字通りの『腕輪』をつける効果もある。それを嫌って、腕輪を装備せずに冒険者を続ける人間もいる。
(いや……いい。俺はあくまで調査専門だ。腕輪の人間を見つけても救助まで出来るとは限らん)
4つの腕輪が集まる1か所に向けて、ローランは雪で重くなった脚を進める。吹雪は、まるで彼の行く手を拒むかのように強烈な向かい風を吹かせ続けた。
―――――――
暗色が続く景色で、ようやくローランの目前に『何か』が現われる。ちょうど、捜索していた腕輪の位置がすぐ近くにあった。
「何だよ、これ……?」
予想外の出来事に、彼は思わずそう口にする。ローランが辿り着いたのは――見上げるほどの凍り付いた古城であった。こんな所に城があったという情報は無い。村人たちが言っていた氷の巨城、それが現実のものであったことに彼は動揺する。
「ギルドの情報が不完全だったか……いや、いずれにしても」
失踪した4人分の腕輪がソコにある。一度村に帰還して腕輪の情報だけを持ち帰る事を考えたが、ローランは頭を振る。この出自不明の城に彼らが囚われているのか、それともあえて吹雪の中留まっているだけなのか。後者であれば、単なる取り越し苦労に終わってしまう。
「中を見てみない事には分からない、な……」
警邏する者も居ない正門を通り、城の内部へと進む。床すらも凍っているため、転倒しないようゆっくりと歩みを進める。腕輪の位置は城の中央、そして上方を指していた。通常であれば玉座がある場所に、誘われるかのようにローランは警戒しつつ進む。
「ぐっ……何でこんなに冷えるんだ……」
城に入って、吹雪は防げている。だが腕輪探知機の指し示す方向に進むたびに、底冷えするかのような寒さがローランを襲い続ける。身体の芯に雪の塊を詰められたような凍え。炎の魔石を強く握りしめ、何とか暖を取ろうとするが、それでも震えが止まらない。防風ランプを頼りに、暗くて冷たい階段を進む。
(――着いた)
階段の最上段、玉座の間の寸前で男は足を止める。腕輪の位置は、3つが同じ位置で1つだけ僅かに別の場所。まずは3人の様子を確認したい。壁越しに、奥の様子を伺う。――灯りが見えた。時々不安定に揺らめく明かりは松明のものだろうと推察する。
音を立てないよう注意を払い、影に隠れながら3人分の腕輪の位置までジリジリと距離を詰める。すぐ近く、腕輪の感知距離限界。ここまで来たら、身じろぎ一つで腕輪の位置がブレるはずなのに、探知機は全く彼らの動きを察知しない。まさか、彼らは既に動くことも出来なくなっているのか。それならば、一瞬様子を伺うだけで良い。ローランは賭けに出た。
「……!?」
――帰還の腕輪3つ分を見つける。冒険者たち3人の腕に、ではなかった。雪を押し固めて彫ったかのような彫像。その3体の右腕に腕輪が付けられている。その事実は、彼を更に混乱させる。
(腕輪は外部から取り外せないよう、冒険者ギルドの各支部ごとの魔法で厳重に守られているはず……なのに、何故3人分の腕輪がここにある?)
周囲を警戒する。ここに誰かが来る様子はない。もう一度腕輪のはまった雪像を確認する。彫像は女性の形に彫られている。冒険者のようで、装備品の細かい所や髪の毛の流れなど、雪で良くここまで細かい部分まで形成したものだと平時なら感動しただろう。しかし、今のローランには何処か嫌な予感がしていた。――まるで、この彫像が人間をそのまま凍らせたかのように見えてしまって。
「戦士アドリアン=フェティアの腕輪……これは女魔法使いの像か? 弓使いエドワルド=ガーリン……こっちも女の僧侶の像についている。盗賊フリスト=パークの腕輪……こいつは女性の……侍か?」
それぞれの腕輪を個人ごとに照合する。腕輪はそれぞれ捜索していた本人のものだった。だがそれが取り外され、女性の形の雪像に着けられている。一体どのようにして外したのか、そして3人の冒険者たちは何処へ行ったのか?
(カツン――キィン――)
「今の、音は……」
更に玉座の中央、何かを研ぐような鋭い音。このままでは情報が足りない、危険を承知で音の原因を探るしかない。ちょうど離れていた1人分の騎士オスカル=ビューストの腕輪もそこにあった。慎重に進み、所々に遺された調度品に身を隠し、徐々に音の発生源まで近づいて。
それは、不思議な光景であった。ローブを被った何者かが、氷の彫像に向かって立っている。左手に呪杖、右手に蚤を握りしめ、ソレは氷の彫像を鋭い音を立てて彫ってゆく。荒っぽい動作でありながら、氷像は丸みを帯びた曲線を形作る。騎士のものだろうプレートアーマーの部分を勢いよく割り、その胸元に2つのふくらみを創り上げる。全身きっちり固めた鎧を壊し、足先はすらりとしていながら太ももは柔らかそうな厚みを残す。頭部に氷を埋め込み、その氷を細かく引き裂くことで長髪がウェーブしているかのように変化する。
最後にその人物が顔に手を加える前に。ローランはその顔を見てしまった。
任務前、冒険者たちの似顔絵を忘れないよう覚えていた。
顔は、騎士オスカルのものだった。
そして、気が付いてしまった。
『あの氷像は凍り付かされた冒険者たちそのものだ』という事に。
「――お客さんね、これを彫り終えるまで待ってもらえるかしら」
氷像を彫る手を止めて『魔女』がそう言う。ローランはほぼ同時に帰還の腕輪を作動させた。急いでこの事をギルドに伝えなければ。だが。
「あら、おもてなしもしていないのに帰るなんて。もっとくつろいでもらっていいのに」
右腕に強烈な寒さを感じる。ローランが装備していた帰還の腕輪が、ガチガチに凍らされていた。炎の魔法石を近づけて温めるが、腕輪は作動しない。逃走手段が断たれた。
「極度の低温下では魔法も作動せず故障する。『帰還の腕輪』の重大な欠陥よね」
「貴様、一体……!」
素早く左手にナイフを持ち、魔女の心臓目掛けて投げつける。しかし、ローランの投げたナイフは空中で止まる。魔女の近くの床から生えた氷柱が、瞬時にナイフを止めたのだ。
「このままじゃ私の作業まで進まなくなっちゃうわ……そうね、新しい仔の試験も兼ねて……」
ローランの背後で、どさりと雪の落ちる音がした。そして、何者かの気配。カシャ、カシャと金属音を立てて近づいてくる。身体のあちこちに霜を付けた状態で、先ほどの雪像が目の前で動いていた。その右腕には、盗賊フリストの帰還の腕輪。
「フリスト改め、フミエ=ユキゾノ……あるじさまの命に従い参上しました♡」
右手には氷の刀を携え、黒髪のポニーテールを揺らし、赤い甲冑を纏った侍。盗賊フリストが創り変えられ、従わされた姿。
「……舐めるなッ」
ローランは一気に距離を詰める。甲冑の隙間、首の部分。侍の刀が届く範囲ギリギリで一気に横にスライド。侍がローランを見失うその瞬間を狙い。真横から首に目掛けて、愛用のダガーを突き刺して抉る。
――はずだった。だが、手ごたえがない。刃は間違いなく刺さった。なのに、まるで「雪をかいただけのように」手に伝わる感触が軽い。マズイと瞬時に判断し、距離を取る。ローランの居たところに氷の刀が突き刺さった。
「あるじさまの前で暴力はだめですよっ♡ それに……わたくしたちは氷像。切られても貫かれても、また氷同士がくっつくように壊れないんです」
「ならば……砕く!」
素早くバックパックから、小型の爆薬弾を取り出す。火薬と鉄鉱石の欠片を混合させ圧縮したもので、投げてから炎の魔法石で遠隔爆破する事で、敵に傷を負わせる武器。投げたモノが十分に敵に近づいた瞬間、手元の魔法石で起爆させた。
ズドン、と重い音が響く。土煙が辺りにまき散らされ、ローランは敵の侍を見失う。殆ど直撃、人間どころか大型の魔物でも、マトモに喰らえばタダでは済まない威力。今の爆撃を喰らわせれば、確実に倒せているとローランは確信していた。――しかし。殺気が、消えない。何者かが煙の中で揺らいでいる。
「……ちィッ」
舌打ちが漏れる。あろうことか、鉄の雨を耐え抜いて侍は立っていた。彼女の目の前に光の壁が張られているのをローランは視認する。僧侶の防壁呪文。だが、あの氷の魔女のモノではない。嫌な予感がするのを、彼は感じていた。
「あわわ、間に合ったみたいです……!」
ローランの背後から聞こえる、知らない女性の声。振り返ると、身体に大量の雪を纏ったまま白いローブに身を包んだ女神官の姿が有った。……つい先ほど、氷像の3体の内にいた1つ。
「エドワルド改めエリス! ただいま御主人様を御守りするため参りましたっ!」
氷像として『造りかえられる』と、その職業も性別も変化するのだ、とローランは察知する。この状況で戦うのは不可能だ、と判断した彼は脱出を試みる。帰還の腕輪が使えない今、まずは包囲している2人から逃走する事が先決。再びバックパックから煙玉を取り出し着火。侍に向けて投げつけたのと同時に、脱出口側にて杖を構える、エリスに向かって突っ込む。
「ぐっ……!?」
「邪魔だッ――」
ダガーを振りぬく。刺さっても効果は無いと分かっているが、氷像どもが人間並みの知能であれば思わず回避してしまう。その予想通り、エリスは飛びのくように下への階段への道を開けた。その隙を見逃さず、ローランは素早く階下に降りようとした――
「待ちなさいっ!」
その目の前に現れたのは。3体目の氷像、戦士アドリアンが造りかえられ魔法使いになった姿であった。彼女の詠唱と共に、ローランの足元が急激に冷えるのを感じる。足が床ごと凍らされてしまって、身動きが取れなくなってしまったのだ。
「なっ……クソッ、炎よ――」
炎の魔法石を使い、足元の氷を溶かそうと試みる。しかしその刹那、追いついてきた侍が氷の刀を振りぬき、一閃する。ズブリ、と肉の斬れる重い音がした。
「ガっ――うがあ゛あ゛あぁっ!!?」
自分の右腕が跳ね飛ばされたのだと、激痛の中で思考する。凍らされた足を溶かすことも、攻撃することも――最早、ローランに打つ手が無いのは本人にもわかってしまった。
「あっ……コラ! 侵入者は傷つけちゃダメだって御主人様が言ってたじゃない!」
「し、しまった! すまない……」
「どうしましょう、私の魔法で回復できるでしょうか……」
寒さのせいではない、自分の身体が強烈に体温を失ってゆくのをローランは感じていた。残った左手でなんとか止血をしようと試みるが、凍えた手をうまく動かせない。コツリ、コツリと足音がする。
「……そのままじゃ、死ぬわよ」
「ぐぅっ……何者だ、お前、は……」
彫刻の手を止めたのか、『氷の魔女』はローランに近づく。うすら寒い笑みを口元に浮かべたまま、彼女は倒れこんだ彼の顔を確かめるようにしゃがみ込んだ。
「私も元はただの研究者よ。この吹雪が始まった頃に、何が原因なのかを突き止めにこの古城にやってきた。そうしたら……この城の地下には大量の氷の魔法石が埋まっていたのよ。誰が起動させたかは分からないけど、その魔法石の塊が暴走して吹雪を発生させていたみたいでね」
「ぐっぅ……お前が、吹雪を起こしたのでは……ないのか……」
「アレは勝手に起こった現象よ。だけど……偶然出来てしまったのよ。『この子達』はね」
ローランを取り囲む、元冒険者の3人。今は、魔女を守るための傀儡。
「聞いたことは無いかしら。生まれつき魔法を扱える人物にはもちろん、そうでない人間にも一定量の魔力は存在するって。そしてその魔力は人それぞれ要素が違う――」
「何が……言いたい……ッ!?」
「私は実験してみたの。これだけ大量の魔法石にある魔力を、『人間に注ぎ込んだらどうなるか』って! そうしたら……出来上がったの。全く新しく生まれ変わった『彼女達』が!」
膨大な氷の魔力を注ぎ込んで、人の魔力ごと凍結させ、その存在ごと書き換えてしまう。傀儡どもが『御主人様』と慕うその存在は、禁忌を犯した魔導士であった。その事実は、ローランにとって慰めにもならない。彼は理解してしまった。自分の終わりを。
「……しくじった、か……」
「何もかもを全て諦めたような顔をしないで。アナタは死なないわよ」
魔女の背後から、もう一人現れる。……つい先ほどまで、魔女が彫っていた氷像と同じ姿の女。騎士オスカルの変わり果てた姿――金髪を靡かせ、氷の鎧を身に纏った、美しさすら感じさせる容貌。ギシリ、と重い鎧の音を立てて近づいてきた彼女は、魔女に跪く。
「騎士オディーリア、私を造り変えて下さったこと感謝いたします。……この者は?」
「オディーリア。彼に接吻を。アタシの研究もこれで最終段階よ」
意図を理解した彼女は、倒れ伏したローランの元に歩み寄り。凍てつくような蒼い瞳で彼を射抜く。こんな状況でなければ、素直に美しいと評しただろう。そのまま、彼女の顔が近づいて。
「んっ……」
唇が触れ合う。ローランは一瞬、腕の激痛が和らいだ気がした。オディーリアの体温は、さっきまで氷像であったことなど感じられない程に暖かい。――それなのに、ローランは自分の身体の芯が急に冷えてゆくのを感じた。彼女の舌先が、己の口の中に入り込むのと同時に、全身の熱が奪われてゆく。
ふわり、と痛みと絶望が溶けてゆく感覚。このまま彼女に身体を委ねてしまいたいという思いが湧き上がる。全身が重い。身体の寒さも、もう感じることも出来ない。じわじわと、目の前が暗くなってゆく。まどろみに近い眠気が
彼を満たして行く。身体の力が抜けてゆき、もはやボンヤリとした思考の中で、何も思うことも無く。
そして、彼は目を閉ざした。
―――――――――――――――――――――
熱を奪う口づけは、意識を失ったローランの身体を急激に冷やす。やがて彼の身体に霜が出来上がり、極低温まで落ち込む。4人の従者は彼の身体を持ち上げ、玉座へと再び戻す。流れ出していた血は、雪で塞がって僅かに赤色が染み出すだけ。呼吸も止まったが、彼の命はまだ失われていなかった。
「ここでいいわ。さて……Glacio kaj neĝo, envolvu」
雪の魔女――錬金術師のルイーゼは魔法を詠唱する。城の地下にて未だ暴走を続ける、巨大な氷の魔法石から魔力を引き出してローランの身体を凄まじい勢いで凍らせ、雪で包んでゆく。虫が作る繭の様に、純白の覆いが彼を保護するかのように包み込む。顔も、斬られた腕も、脚も、全てを覆い隠して。
「優れた冒険者だったみたいね……少なくとも先の子達よりもずっと。氷像に造り替えてなかったら、たとえ4人がかりでも止められなかったかもしれないわ」
そうして4人に持ち上げさせて、縦に立たせた雪氷の塊に、ルイーゼは槌とノミを振り下ろす。この城に落ちていた彫刻用の器具は、振るう者の意思を読み取るかのように、細部まで自在に形作る事が出来る。彼女自身も、まるでこの城や氷の魔石に魅入られているのかもしれない、と思いながら。
「本当に優れた暗殺者だったみたいだけど……いえ、だからこそ私の手で造り替えてあげたら、どんなに素晴らしい子になるでしょう……」
徐々に繭の形から、人の形を取り戻して行く。より細かく彫ろうとしたとき、ルイーゼは一瞬思案する。
「だけど、私を守ってくれる子達はもう居るから……かわいいかわいい、私だけのメイドさんにしようかしら」
筋肉質だった脚を細く彫り変えて、大きかった手のひらも小さく細い指先に。肩回りも一回り削り取り、身長も小さくなってゆく。ノミと槌を机に置き、より細かい彫刻刀を握って、今度は手先足先、そして服の装飾まで創り上げてゆく。細かい作業が得意では無かったルイーゼだが、この作業をやっているときだけは何故か心が軽やかになる。
「……ふふっ。我ながら完璧ね」
髪の毛の先まで彫りきって、ツインテールを創り上げたところでルイーゼは手を止める。既に氷の繭は、全く新しい姿へと変貌していた。ミニスカートとメイド服を身に着け、頭にはホワイトブリムを被った少女の姿をした氷像。その完成の証として、ルイーゼは眠ったように目を閉じた彼女にキスをする。
「ちゅっ……」
ルイーゼに伝わる唇の感覚は、紛れもなく冷たい氷の温度。だが、同時に膨大な氷の魔力がルイーゼを通して氷像に流れ込んでゆく。優れた魔導士が持つ魔力をゆうに超えた、『人間そのものを書き換える』ほどの魔力。ゆっくりと、ルイーゼは氷像から離れてゆく。
パキリ、と氷の割れる音。少女の氷像が、口づけをしたところからヒビ割れてゆく。パキ、パキと徐々に裂け目が広がって、やがて全身に広がったヒビ。薄い氷が、勝手に落ちてゆく。氷で覆われていた所から、薄橙の肌が露出し始めた。
トサリ、と軽い音を立てて氷の破片が次々に落ちてゆく。僅かに顔に雪化粧を残した状態で、ローランは――『ローランだったもの』はその姿を現す。背丈も体格も、戦闘慣れしていた身体は跡形もなく、あどけなさと小さな可愛らしさを表層に表す少女。
「……ぁ……」
その声は、男性らしい低い物ではない。か細いながらも高く震えた、女の声。そして彼女の表情が、歓喜に揺らぐ。
「ごしゅじん、さまぁっ……♡」
とてとて、と軽い音を立てて彼女はルイーゼに抱き着く。彼女の身体は冷たかったが、雪そのものを触れていた時よりもまだ温かさはある。身長の低い彼女の頭を撫で、ルイーゼは微笑む。
「ローラン……いえ、ローラ。新しく生まれ変わった気分はどうかしら?」
「えへへ、すっごく身体が軽くて、全身がなんだかフワフワしてて……なんだか気持ちがいいです♡」
「わぁ……♡♡ これでローラちゃんも私たちの仲間ですね!」
殺し合いをしていた時の鋭い目つきは何処へやら、赤い瞳を輝かせたローラは『御主人様』に甘えるかのごとく顔を埋める。銀色の髪を揺らして、子供のように無邪気に振舞っていた。彼女を包んでいたのは不思議な多幸感。『御主人様に仕える事が何よりも幸せ』という、狂わされた価値観。
「そう、良かった……ねぇローラ。私の『実験』に協力してもらえないかしら」
「はいっ! 御主人様のお望みとあらば!」
「クスクス……良い子ね……せっかく誂えたメイド服だけど、いったんソレを脱いでくれるかしら?」
自らの身体を提供する事に何のためらいもなく、『ローラ』となった彼女は、魔女ルイーゼの望むがままに従う。寒さを感じることは無い。スカートベルトを外し、上着も全て綺麗にたたんだ後に、下着だけになった彼女。メイド服の下に隠されていたが、ローラの胸の膨らみはルイーゼが想定していたものより大きかった。
「あら……うん、彫刻の時に少し調子を間違えたかしら……まぁ。これでもいいわよね」
「どうしましたか?」
きょとん、とした顔で尋ねるローラに気にしないでとルイーゼは答える。それよりも、と彼女はバックパックから『ローラン』の物であった炎の魔法石を拾う。魔力を引き出さずとも、この凍り付いた城では感じられない熱を感じる。――魔法石を扱える人間は、そう多くない。通常は加工や、錬金術の装置を使用しなければ魔力をコントロールできない。炎の力を自在に引き出していたローランは相当の手練れだっただろう、とルイーゼは思った。
「……そんな優れた冒険者でも、今はこんなに小さくてかわいい女の子なのよね♡」
炎の魔法石にはそれ以上の実験道具としての使い道がある、と魔女ルイーゼは踏んでいた。城の地下で暴走する氷の魔法石は、その魔力の一部を利用するだけで『人間を造り変える』程の魔力がある。しかし、いつこの魔力が枯渇するか分からない。
「氷の魔法は強力で、一瞬で全てを凍てつき固まらせる力……だけど、人間を組成する魔力は複雑に混合している……今の『貴方たち』は完璧な人間とは言えないの」
疑似的には、人間の体に強力な魔力を流し込んで無理やり動かしている状態に近い。錬金術師の端くれでもあるルイーゼは、この特殊な状況を楽しんではいたが……興味は尽きなかった。『人間を造り変えたうえで、より人間らしくさせるにはどうすればよいか?』という疑問。そこには、一つの手法を考えていた。『氷以外の魔力』を与える事。
「ローラちゃん……貴方が持ってきてくれたこの炎の魔法石。これをあなたの身体で受け止めてほしいの」
「……? 分かりましたっ!」
疑問そうながらも、ローラは頷く。氷の魔力で表面を薄く削り取り、薄氷のようになった魔法石の欠片。それを、指先に当てながら。
「あなたの内側……そう、ココから魔力を注いであげる……」
「あっ……♡ はぁっ……♡♡」
小さな純白のショーツをずらし、ローラの秘部を露出させたルイーゼは、そのワレメに薄く切った魔法石の欠片を指先で埋め込んでゆく。前戯も無しの、無理やりに近い挿入。しかしローラの身体に刻み付けられた「命令を聞くことが幸せ」というスイッチは、次第に生温い愛液を漏らさせるよう仕向ける。
「そう……良い子ね、このまま奥深くまで受け止めて……」
「あぁっ……♡♡ ごひゅじんしゃまのゆび、きもちいいでひゅ……♡♡♡」
「……いいなぁ、あんなに愛していただけるなんて」
傍らで構えていた従者の一人がそう漏らすが、その様子を聞いてルイーゼは笑顔を見せる。
「安心しなさいな。この実験が上手く行ったら次はあなた達にも条件を変えて試してあげる」
「本当ですかっ! あぁ、御主人様にああして弄ってもらえるなんて……♡♡♡」
従者たちの表情が一瞬で蕩けるのを尻目に、ルイーゼはローラの変化に注視していた。人差し指を全て入れ込み、本来なら過敏に反応するはずの膣壁を軽く擦る。ローラは幸せそうな表情をしているが――それは官能によるものではないとルイーゼは理解していた。氷像たちは感覚が薄い。先ほどの戦いでも、痛みが薄かったからこそフミエは首を刺されても動けたのだ。
「貴方たちが完璧な人間に近づくためには――まず感覚を取り戻すことからかしら。可能であれば感覚を任意で切りかえれるのが望ましいのだけど」
恋慕の表情でルイーゼを見つめるローラだったが、徐々にその様子が変化してくる。
「あ……あの……ごしゅじん、さま……」
「どうしたのかしら?」
「御主人様に触ってもらえて、実験に使っていただいて、とってもしあわせなんですけど……なんだか、なんだか不思議な感じがずっとしてて……」
白く透き通ったローラの肌に、赤みがさすのをルイーゼは見逃さなかった。ほとんど直観に近いが、この実験は上手くいっていると分かる。
「その不思議な感覚、もっと詳しく説明してもらえるかしら?」
「ぁ……はい……ちょうど、御主人様の指が当たっている所……なんだかソコが、むずむずして……ふわふわして……なんだか、触られていると溶けちゃいそうで……♡♡ えへへ……♡♡」
ポタリ、ポタリとローラの立っている場所から液が漏れ出してくる。氷像が溶解しているのかとルイーゼは考えたが、指先の感覚では魔法石の熱によって溶けているようでは無さそうだ。炎の魔法石から一気に魔力を引き出し、ローラの身体に魔力を流し込む。瞬間、ビクリとローラは小さな体躯を震わせた。
「あ゛っ♡♡」
「ふぅ……さて、どうかしら」
魔力放出により昇華し始めた魔法石を膣内に残し、ルイーゼは人差し指を抜く。ローラはというと、今まで他の氷像が見せた事のない表情を見せていた。何かを期待して、物欲しそうに切ない顔。
「はっ……う゛ぅ……♡♡ ルイーゼ、様……♡♡ からだじゅうが、何だか変な感じです……」
「それって……えっ、ちょっと?」
ルイーゼが何かを命令することなく、しもべであるはずのローラが抱き着いてきた。試しに他の冒険者4体を彫り終わった後に動かしたのと、明らかに違う様子に彼女も驚く。
「おねがい、しますっ……♡♡ わたしのこと……ローラの体を、どうか触ってくださいっ……♡♡ 痺れたみたいで、不安定で落ち着かなくて……御主人様の指が触れてたとこ、アソコが安心するんですっ……♡♡ こうしてルイーゼ様と触れ合ってるだけで、なんだかゾクゾクが止まらなくてっ……♡♡♡♡」
「ぇ……えぇっ……?」
自分が『造った』存在が、自分の思うように動くのはルイーゼにとって愉悦だった。しかし、その氷像が欲望を持ちルイーゼを求めるかのように動いている。初めての状況に、彼女自身もどうすればいいのか分からず当惑してしまう。
「お願いしますっ……♡♡ あるじさまっ……♡♡ どうかわたくしを、主様だけの下僕にして下さいませ♡♡♡♡」
「そっ……そんな事言われたって、アンタはもう私の下僕……ちょっと、急にくっつかないでよっ……?」
身長の低いローラの頭が、ちょうどルイーゼの胸元に埋まり、ローラの膨らみもぎゅうと押し付けられる。後ずさろうにも、抱きつかれて離れることができない。ローラの体温が、他の氷像達よりも異様に高い事にルイーゼは気がつく。
「あはぁ……っ♡♡♡ ごしゅじんさまのむね、やわらかくてきもちいい……♡♡♡♡」
「ちょっとアンタッ……!? いやこれって……炎の魔力の影響……!?」
炎は氷と異なり、実体を持たない。形が存在しないのに激しいという意味合いでは、人間の感情にも例えられる。ルイーゼは仮説を立てる――ちょうど人間という固体を、感情という形のないものが操作しているように、氷像に炎の魔法が付与されることで自律的感情が発生したのではないかと。
「ほらっ……♡♡♡ 見てください、ごしゅじんさまっ……♡♡♡ 私の身体、貴方様とこうして触れ合っているだけで、こんなになっちゃいました……っ♡♡♡」
「へ……? あ……なんでそんなに、姿が変わって……?」
触れ合ったローラから、明らかにドクン、ドクンと止まっていたはずの『脈拍』が伝わる。銀色の髪が徐々にグラデーションのように赤く染まってゆく。小さかったはずの体躯が、ちょうどルイーゼと同じぐらいまで成長し、乳房も膨らみを増す。
「んうぅっ……♡♡ この姿なら、ご主人様の全てを包み込んで、御主人様に全てを愛してもらえるっ……♡♡♡」
「やめっ……ひゃうぅんっ♡♡♡ 急にソコっ、揉まないでよっ♡♡♡」
ルイーゼは、どこかボンヤリと思考が鈍る様な感じを覚えていた。彼女も気が付いていない事だったが、ルイーゼ自身もローラを満たす炎の魔力にあてられ、身体が火照りつつある。いつも通りに理知的に、冷徹に振る舞えばいいと分かっているのに、何故か心にある思いが浮かぶ。「このまま彼女に、為すがままにされてみたい」と。
「んっ♡♡ はぁっ♡♡♡ やめっ……そんな急にっ……♡♡」
「あぁっ……♡♡ 御主人様が私の指で、気持ちよくなっているっ……♡♡♡ えへ、えへへっ……♡♡♡」
短かったはずのツインテールは、今は床につくほどに長く伸び、赤い瞳をその情念の様に燃やしながら、ローラは主人であるはずのルイーゼの身体を弄る。魔女ルイーゼは、どうしてこんな事になっているのか分からなくなっていた。ただの操り人形に、主人であるはずの自分がいいようにされている。そんな事が有って良いはずがないのに、もっとこうされていたいという気持ちが湧き上がる。
「ルイーゼ様っ……♡♡ どうか私のココ、もう一度触って確認して下さいませんかっ……♡♡♡♡ きっと、膣内の魔法石の様子、お気になるでしょう? 代わりにっ……♡♡♡ わたくしも、御主人様のナカに触れ合いたいですっ……♡♡♡♡」
――ぼやけた頭で、ルイーゼはローラの提案を受け入れる。確かに、魔法石を入れた後の体内の状態を再確認する必要がある。くちゅり、と今度は明らかに水音の混じる音と共に、ルイーゼはローラの秘部へと指を挿入れてゆく。
「あ゛ぁぁっ♡♡♡♡ ごひゅじんしゃまのがっ♡♡♡♡♡ わらひのなかにぃっ♡♡♡♡♡」
「くぅっ……♡♡♡ ふぅぅっ……♡♡♡♡ あ゛う゛っ♡♡♡ なんで、私もきもちいい、のぉっ……?」
ルイーゼは、ローラから自分自身の性器が愛撫されている事に気が付いていない。ルイーゼの頭にあるのは、ただサンプルを確認しなければならないという探求心。――本来異常を感じなければならないはずの状況が抜け落ちているのは、紛れもなく彼女も炎の魔力に狂わされかけているため。
「ここ、のお゛っ♡♡♡ 体内に魔力が与えられたら、あ゛っ♡♡♡♡♡ 変化があるはず、う゛っ♡♡♡♡」
「はあ゛っ♡♡♡ あたしのなかっ♡♡♡♡ ルイーゼしゃまにっ♡♡♡♡ 搔きまわされてえ゛っ♡♡♡♡」
互いの蜜壺に指を入れ、くちゅり、くちゅり、と粘り気のある水音を立てて。ルイーゼにとっては魔法の研究のための行為、そう思い込んでいるが。全く知らない人が見れば、2人の女性が互いを愛撫し合っている状態でしか無かった。2人とも膝をついて、身体と身体が密着する。
「ちゅっ……♡♡ じゅぅっ……♡♡♡♡」
「ん゛っ……♡♡♡♡ ふう゛ぅっ……♡♡♡♡」
どちらからそうしたかは分からない。ただ、互いの唇が近づいて重なり、舌と舌とが絡まり合う。脈が早まる。舌先がびりびりとする。炎の魔力が、混ざり合った部分を通してどんどんと自分に伝わってくるのが、ルイーゼには辛うじてわかる。
「あっ♡♡♡ はぁっ♡♡♡♡ ルイーゼさまのキスっ♡♡♡ しゅきっ♡♡♡♡♡ だいしゅきっ♡♡♡♡♡♡」
「っぷはぁっ……♡♡♡ なんでっ……私まで、こんなになってんのっ……♡♡♡♡♡」
自分の身体の異常に気付いていながらも、ローラの手を止める事が出来ない。もっとローラから気持ちよくしてほしい。もっとローラをきもちよくしてあげたい。ただの氷像に、不思議な恋慕を覚える。
「いまのご主人様……♡♡♡ すごくえっちな顔してるっ……♡♡♡♡」
「んう゛ぅっ……♡♡♡♡ やめっ、いわないでっ……♡♡♡♡」
氷の魔女でも、錬金術師でもない。ただ、快楽にドロドロに溶かされた女がそこに居た。自らが従えるべき存在に狂わされ、喘がされ、彼女自身がローラに囚われるかのように。
「ほらっ♡♡♡♡ いっしょにっ♡♡♡♡♡ イキましょうっ♡♡♡♡♡」
「ま、まってっ♡♡♡ だめっ♡♡♡♡ やめ゛っ♡♡♡♡♡」
ぐちゅり、と自分の内側を抉られるような感覚。同時に、炎の魔力が自分にも巡る。ルイーゼの身体とローラの身体が魔力で繋がり、増幅された快楽が押し寄せてくる。耐えられるはずも、無かった。
「あ゛ぁぁっ♡♡♡♡ やだっ♡♡♡♡♡♡ ん゛あ゛ぁぁっ♡♡♡♡♡」
「きたっ♡♡♡ きたきたっ♡♡♡♡ あひゃぁぁっ♡♡♡♡♡♡♡」
ビクン、ビクンと2人の身体が同時に跳ねる。指先が互いの身体であたたかい。体中が火照って気持ちが良い。吐息が混ざって顔に当たるのがくすぐったい。全身がびりびりして、もっとしたい。もうなにもわからない。このまま、この感覚に溺れていたい。そんな夢想に、ルイーゼは――
――――――――
ローランが城を訪れてから数日。吹雪は徐々に勢いを弱め、城の地下にある氷の魔法石による魔力の暴走は、少しずつコントロールできるようになってきた。ルイーゼとしては早速この解析に取り掛かりたい、そう考えているのだが……
「ルイーゼ様、起きて下さいまし」
自分が先ほどまで眠っていたのだ、という事をルイーゼは思い出す。玉座の間に近い、王族の寝室。ローラの魔力によって造りかえられた、6人は優に一緒に眠れるだろう巨大なベッドに自分が寝かされている事に気が付く。
「ん゛っう゛……? わたし、どうしてここに……? 昨日、何してたっけ……?」
「おや、お忘れになったんですか? 昨日はエリスとずっと一緒にお休みに……いえ、とてもお楽しみになられたじゃありませんか♡♡♡」
そう返事をしたのは、侍のフミエ。――だが、ルイーゼが『彫った』時とは微妙に姿が違う気がする。彼女はスレンダーな体型で、身を鎧で固めていたはずだったが、今の彼女は明らかに豊満なバスト。それに場違いな水着に、そしてその股間には水着では隠せないナニカがあった。
「……!? ちょ、ちょっと待って!? なんでアンタにそんなものが有るのよっ!?」
「これですか……♡♡ ローラ殿に頼んだのです、ご主人様を愛するために肉体を造り変えて欲しいと。ローラの乳を頂くことで、自分も体を自由に造り変える事ができるようになったのです♡♡♡」
バキバキに勃起した、フミエの股間に備わったペニス。ローラの身体から出るようになった母乳を通じて、炎の魔力が他の4人の下僕達にも備わり、氷と炎の魔力をコントロールすることで自身の姿を変化させられる氷像へと進化したのであった。
「ま、待ってよっ……!? そんなの私のナカに入る訳っ……!?」
「いいえ……これはルイーゼ様の膣壁にピッタリ合うように造ったモノ……♡♡♡ ご主人様を愛して感じさせるのに、一番のモノなんですっ♡♡♡♡」
支配していたはずのモノに押し倒される。亀頭が、自分のワレメに当たるのがルイーゼにも伝わる。――それだけで、昨日まで氷像たちに『愛された』記憶が一気に蘇る。
「ひ……ヒィッ……♡♡♡♡」
「あぁっ……♡♡ いま、私の身体でどんどん赤ちゃんのモトが出来上がってくるのを感じますっ……♡♡♡♡ ルイーゼ様と子を為せたら、どんなに幸せでしょう♡♡♡♡♡♡」
もう、ルイーゼには逃げる事は出来ない。彼女自身も、炎と氷の魔力に狂わされてしまった人間なのだから。彼女よりも魔力に優れ生まれ変わった彼女達に勝てるはずなどない。出来るのは、ただ彼女達の攻めに狂わされ、善がらされ、快楽に溺れる事だけ。
「さぁ……ご主人様、いっぱい愛し合いましょう……♡♡♡♡」
――――――――
やがて吹雪は止み、行方の分からなくなった冒険者の話も忘れられて。
辺境の城に6人が住んでいる事は、誰も知る事はなかった。
――雪の魔女が悪しき魔術で全てを凍らせようとしているのです――
――もう何人も吹雪で連れ去られた、次は誰なんだ――
――いつかこの村も全て凍ってしまうんだ、何もかも――
「……馬鹿馬鹿しい」
ふと、直前の村を離れる前に住人達がこぼした一言を思い出し、雪道を歩く男、ローランは反論するように呟く。彼らが言うには、『雪の魔女』とやらが村の近くに一夜にして氷の巨城を創り出し、そこから強大な魔法を放って全てを凍らせるべく吹雪を起こしているらしい。
(吹雪が続くのもタダの偶然。一夜城とやらも、捨てられた古城を誰かが見間違えたものだ)
ローランはそう確信している。しかし、恐慌に陥った村人たちは存在するかもわからない雪の魔女討伐を冒険者に依頼するほどまでになっていた。その任務を請け負ったのは熟練の4人パーティ。戦士と騎士、盗賊に弓使いとバランスも良かった。――しかし、彼らが何日経っても帰ってこなかったのだ。
この地域は寒冷で、モンスターも少ない。仮に襲撃されたとしても、問題なく撃退できる程度の獣しか発見されていない。そして、仮に冒険者たち全員が倒れたとしても。彼らは必ず村に戻ってこれるはずだったのだ。
(だが……『帰還の腕輪』が作動しなかったとなると……考えられるのは未だに何処かで遭難しているか、どこかに囚われてしまったかだ)
冒険者が危険な稼業を続けることが出来る『魔法』の1つに、冒険者ギルドから支給される『帰還の腕輪』がある。装備した者が望むか、命の危機に陥る程の怪我をした場合に自動で発動し、ギルド支部に瞬間移動できる腕輪だ。テレポート技術を応用したもので、この腕輪により冒険者の死亡率が著しく低下した優れ物である。
(あるいは……腕輪を無効化された?)
ローランは失踪した4人の居場所の特定と『雪の魔女』の存在を確認するため、単独調査を請け負った。斥候任務を数多く請け負い、時には敵国や未開の地を一人で調査してきた彼にとっては、この任務はさほど厳しい物ではない。
(腕輪の位置は1か所に固まっている……)
帰還の腕輪は、冒険者ギルドによって逆に探知できる仕組みになっている。万が一の捜索の際に便利なのと、武力を持つ冒険者に文字通りの『腕輪』をつける効果もある。それを嫌って、腕輪を装備せずに冒険者を続ける人間もいる。
(いや……いい。俺はあくまで調査専門だ。腕輪の人間を見つけても救助まで出来るとは限らん)
4つの腕輪が集まる1か所に向けて、ローランは雪で重くなった脚を進める。吹雪は、まるで彼の行く手を拒むかのように強烈な向かい風を吹かせ続けた。
―――――――
暗色が続く景色で、ようやくローランの目前に『何か』が現われる。ちょうど、捜索していた腕輪の位置がすぐ近くにあった。
「何だよ、これ……?」
予想外の出来事に、彼は思わずそう口にする。ローランが辿り着いたのは――見上げるほどの凍り付いた古城であった。こんな所に城があったという情報は無い。村人たちが言っていた氷の巨城、それが現実のものであったことに彼は動揺する。
「ギルドの情報が不完全だったか……いや、いずれにしても」
失踪した4人分の腕輪がソコにある。一度村に帰還して腕輪の情報だけを持ち帰る事を考えたが、ローランは頭を振る。この出自不明の城に彼らが囚われているのか、それともあえて吹雪の中留まっているだけなのか。後者であれば、単なる取り越し苦労に終わってしまう。
「中を見てみない事には分からない、な……」
警邏する者も居ない正門を通り、城の内部へと進む。床すらも凍っているため、転倒しないようゆっくりと歩みを進める。腕輪の位置は城の中央、そして上方を指していた。通常であれば玉座がある場所に、誘われるかのようにローランは警戒しつつ進む。
「ぐっ……何でこんなに冷えるんだ……」
城に入って、吹雪は防げている。だが腕輪探知機の指し示す方向に進むたびに、底冷えするかのような寒さがローランを襲い続ける。身体の芯に雪の塊を詰められたような凍え。炎の魔石を強く握りしめ、何とか暖を取ろうとするが、それでも震えが止まらない。防風ランプを頼りに、暗くて冷たい階段を進む。
(――着いた)
階段の最上段、玉座の間の寸前で男は足を止める。腕輪の位置は、3つが同じ位置で1つだけ僅かに別の場所。まずは3人の様子を確認したい。壁越しに、奥の様子を伺う。――灯りが見えた。時々不安定に揺らめく明かりは松明のものだろうと推察する。
音を立てないよう注意を払い、影に隠れながら3人分の腕輪の位置までジリジリと距離を詰める。すぐ近く、腕輪の感知距離限界。ここまで来たら、身じろぎ一つで腕輪の位置がブレるはずなのに、探知機は全く彼らの動きを察知しない。まさか、彼らは既に動くことも出来なくなっているのか。それならば、一瞬様子を伺うだけで良い。ローランは賭けに出た。
「……!?」
――帰還の腕輪3つ分を見つける。冒険者たち3人の腕に、ではなかった。雪を押し固めて彫ったかのような彫像。その3体の右腕に腕輪が付けられている。その事実は、彼を更に混乱させる。
(腕輪は外部から取り外せないよう、冒険者ギルドの各支部ごとの魔法で厳重に守られているはず……なのに、何故3人分の腕輪がここにある?)
周囲を警戒する。ここに誰かが来る様子はない。もう一度腕輪のはまった雪像を確認する。彫像は女性の形に彫られている。冒険者のようで、装備品の細かい所や髪の毛の流れなど、雪で良くここまで細かい部分まで形成したものだと平時なら感動しただろう。しかし、今のローランには何処か嫌な予感がしていた。――まるで、この彫像が人間をそのまま凍らせたかのように見えてしまって。
「戦士アドリアン=フェティアの腕輪……これは女魔法使いの像か? 弓使いエドワルド=ガーリン……こっちも女の僧侶の像についている。盗賊フリスト=パークの腕輪……こいつは女性の……侍か?」
それぞれの腕輪を個人ごとに照合する。腕輪はそれぞれ捜索していた本人のものだった。だがそれが取り外され、女性の形の雪像に着けられている。一体どのようにして外したのか、そして3人の冒険者たちは何処へ行ったのか?
(カツン――キィン――)
「今の、音は……」
更に玉座の中央、何かを研ぐような鋭い音。このままでは情報が足りない、危険を承知で音の原因を探るしかない。ちょうど離れていた1人分の騎士オスカル=ビューストの腕輪もそこにあった。慎重に進み、所々に遺された調度品に身を隠し、徐々に音の発生源まで近づいて。
それは、不思議な光景であった。ローブを被った何者かが、氷の彫像に向かって立っている。左手に呪杖、右手に蚤を握りしめ、ソレは氷の彫像を鋭い音を立てて彫ってゆく。荒っぽい動作でありながら、氷像は丸みを帯びた曲線を形作る。騎士のものだろうプレートアーマーの部分を勢いよく割り、その胸元に2つのふくらみを創り上げる。全身きっちり固めた鎧を壊し、足先はすらりとしていながら太ももは柔らかそうな厚みを残す。頭部に氷を埋め込み、その氷を細かく引き裂くことで長髪がウェーブしているかのように変化する。
最後にその人物が顔に手を加える前に。ローランはその顔を見てしまった。
任務前、冒険者たちの似顔絵を忘れないよう覚えていた。
顔は、騎士オスカルのものだった。
そして、気が付いてしまった。
『あの氷像は凍り付かされた冒険者たちそのものだ』という事に。
「――お客さんね、これを彫り終えるまで待ってもらえるかしら」
氷像を彫る手を止めて『魔女』がそう言う。ローランはほぼ同時に帰還の腕輪を作動させた。急いでこの事をギルドに伝えなければ。だが。
「あら、おもてなしもしていないのに帰るなんて。もっとくつろいでもらっていいのに」
右腕に強烈な寒さを感じる。ローランが装備していた帰還の腕輪が、ガチガチに凍らされていた。炎の魔法石を近づけて温めるが、腕輪は作動しない。逃走手段が断たれた。
「極度の低温下では魔法も作動せず故障する。『帰還の腕輪』の重大な欠陥よね」
「貴様、一体……!」
素早く左手にナイフを持ち、魔女の心臓目掛けて投げつける。しかし、ローランの投げたナイフは空中で止まる。魔女の近くの床から生えた氷柱が、瞬時にナイフを止めたのだ。
「このままじゃ私の作業まで進まなくなっちゃうわ……そうね、新しい仔の試験も兼ねて……」
ローランの背後で、どさりと雪の落ちる音がした。そして、何者かの気配。カシャ、カシャと金属音を立てて近づいてくる。身体のあちこちに霜を付けた状態で、先ほどの雪像が目の前で動いていた。その右腕には、盗賊フリストの帰還の腕輪。
「フリスト改め、フミエ=ユキゾノ……あるじさまの命に従い参上しました♡」
右手には氷の刀を携え、黒髪のポニーテールを揺らし、赤い甲冑を纏った侍。盗賊フリストが創り変えられ、従わされた姿。
「……舐めるなッ」
ローランは一気に距離を詰める。甲冑の隙間、首の部分。侍の刀が届く範囲ギリギリで一気に横にスライド。侍がローランを見失うその瞬間を狙い。真横から首に目掛けて、愛用のダガーを突き刺して抉る。
――はずだった。だが、手ごたえがない。刃は間違いなく刺さった。なのに、まるで「雪をかいただけのように」手に伝わる感触が軽い。マズイと瞬時に判断し、距離を取る。ローランの居たところに氷の刀が突き刺さった。
「あるじさまの前で暴力はだめですよっ♡ それに……わたくしたちは氷像。切られても貫かれても、また氷同士がくっつくように壊れないんです」
「ならば……砕く!」
素早くバックパックから、小型の爆薬弾を取り出す。火薬と鉄鉱石の欠片を混合させ圧縮したもので、投げてから炎の魔法石で遠隔爆破する事で、敵に傷を負わせる武器。投げたモノが十分に敵に近づいた瞬間、手元の魔法石で起爆させた。
ズドン、と重い音が響く。土煙が辺りにまき散らされ、ローランは敵の侍を見失う。殆ど直撃、人間どころか大型の魔物でも、マトモに喰らえばタダでは済まない威力。今の爆撃を喰らわせれば、確実に倒せているとローランは確信していた。――しかし。殺気が、消えない。何者かが煙の中で揺らいでいる。
「……ちィッ」
舌打ちが漏れる。あろうことか、鉄の雨を耐え抜いて侍は立っていた。彼女の目の前に光の壁が張られているのをローランは視認する。僧侶の防壁呪文。だが、あの氷の魔女のモノではない。嫌な予感がするのを、彼は感じていた。
「あわわ、間に合ったみたいです……!」
ローランの背後から聞こえる、知らない女性の声。振り返ると、身体に大量の雪を纏ったまま白いローブに身を包んだ女神官の姿が有った。……つい先ほど、氷像の3体の内にいた1つ。
「エドワルド改めエリス! ただいま御主人様を御守りするため参りましたっ!」
氷像として『造りかえられる』と、その職業も性別も変化するのだ、とローランは察知する。この状況で戦うのは不可能だ、と判断した彼は脱出を試みる。帰還の腕輪が使えない今、まずは包囲している2人から逃走する事が先決。再びバックパックから煙玉を取り出し着火。侍に向けて投げつけたのと同時に、脱出口側にて杖を構える、エリスに向かって突っ込む。
「ぐっ……!?」
「邪魔だッ――」
ダガーを振りぬく。刺さっても効果は無いと分かっているが、氷像どもが人間並みの知能であれば思わず回避してしまう。その予想通り、エリスは飛びのくように下への階段への道を開けた。その隙を見逃さず、ローランは素早く階下に降りようとした――
「待ちなさいっ!」
その目の前に現れたのは。3体目の氷像、戦士アドリアンが造りかえられ魔法使いになった姿であった。彼女の詠唱と共に、ローランの足元が急激に冷えるのを感じる。足が床ごと凍らされてしまって、身動きが取れなくなってしまったのだ。
「なっ……クソッ、炎よ――」
炎の魔法石を使い、足元の氷を溶かそうと試みる。しかしその刹那、追いついてきた侍が氷の刀を振りぬき、一閃する。ズブリ、と肉の斬れる重い音がした。
「ガっ――うがあ゛あ゛あぁっ!!?」
自分の右腕が跳ね飛ばされたのだと、激痛の中で思考する。凍らされた足を溶かすことも、攻撃することも――最早、ローランに打つ手が無いのは本人にもわかってしまった。
「あっ……コラ! 侵入者は傷つけちゃダメだって御主人様が言ってたじゃない!」
「し、しまった! すまない……」
「どうしましょう、私の魔法で回復できるでしょうか……」
寒さのせいではない、自分の身体が強烈に体温を失ってゆくのをローランは感じていた。残った左手でなんとか止血をしようと試みるが、凍えた手をうまく動かせない。コツリ、コツリと足音がする。
「……そのままじゃ、死ぬわよ」
「ぐぅっ……何者だ、お前、は……」
彫刻の手を止めたのか、『氷の魔女』はローランに近づく。うすら寒い笑みを口元に浮かべたまま、彼女は倒れこんだ彼の顔を確かめるようにしゃがみ込んだ。
「私も元はただの研究者よ。この吹雪が始まった頃に、何が原因なのかを突き止めにこの古城にやってきた。そうしたら……この城の地下には大量の氷の魔法石が埋まっていたのよ。誰が起動させたかは分からないけど、その魔法石の塊が暴走して吹雪を発生させていたみたいでね」
「ぐっぅ……お前が、吹雪を起こしたのでは……ないのか……」
「アレは勝手に起こった現象よ。だけど……偶然出来てしまったのよ。『この子達』はね」
ローランを取り囲む、元冒険者の3人。今は、魔女を守るための傀儡。
「聞いたことは無いかしら。生まれつき魔法を扱える人物にはもちろん、そうでない人間にも一定量の魔力は存在するって。そしてその魔力は人それぞれ要素が違う――」
「何が……言いたい……ッ!?」
「私は実験してみたの。これだけ大量の魔法石にある魔力を、『人間に注ぎ込んだらどうなるか』って! そうしたら……出来上がったの。全く新しく生まれ変わった『彼女達』が!」
膨大な氷の魔力を注ぎ込んで、人の魔力ごと凍結させ、その存在ごと書き換えてしまう。傀儡どもが『御主人様』と慕うその存在は、禁忌を犯した魔導士であった。その事実は、ローランにとって慰めにもならない。彼は理解してしまった。自分の終わりを。
「……しくじった、か……」
「何もかもを全て諦めたような顔をしないで。アナタは死なないわよ」
魔女の背後から、もう一人現れる。……つい先ほどまで、魔女が彫っていた氷像と同じ姿の女。騎士オスカルの変わり果てた姿――金髪を靡かせ、氷の鎧を身に纏った、美しさすら感じさせる容貌。ギシリ、と重い鎧の音を立てて近づいてきた彼女は、魔女に跪く。
「騎士オディーリア、私を造り変えて下さったこと感謝いたします。……この者は?」
「オディーリア。彼に接吻を。アタシの研究もこれで最終段階よ」
意図を理解した彼女は、倒れ伏したローランの元に歩み寄り。凍てつくような蒼い瞳で彼を射抜く。こんな状況でなければ、素直に美しいと評しただろう。そのまま、彼女の顔が近づいて。
「んっ……」
唇が触れ合う。ローランは一瞬、腕の激痛が和らいだ気がした。オディーリアの体温は、さっきまで氷像であったことなど感じられない程に暖かい。――それなのに、ローランは自分の身体の芯が急に冷えてゆくのを感じた。彼女の舌先が、己の口の中に入り込むのと同時に、全身の熱が奪われてゆく。
ふわり、と痛みと絶望が溶けてゆく感覚。このまま彼女に身体を委ねてしまいたいという思いが湧き上がる。全身が重い。身体の寒さも、もう感じることも出来ない。じわじわと、目の前が暗くなってゆく。まどろみに近い眠気が
彼を満たして行く。身体の力が抜けてゆき、もはやボンヤリとした思考の中で、何も思うことも無く。
そして、彼は目を閉ざした。
―――――――――――――――――――――
熱を奪う口づけは、意識を失ったローランの身体を急激に冷やす。やがて彼の身体に霜が出来上がり、極低温まで落ち込む。4人の従者は彼の身体を持ち上げ、玉座へと再び戻す。流れ出していた血は、雪で塞がって僅かに赤色が染み出すだけ。呼吸も止まったが、彼の命はまだ失われていなかった。
「ここでいいわ。さて……Glacio kaj neĝo, envolvu」
雪の魔女――錬金術師のルイーゼは魔法を詠唱する。城の地下にて未だ暴走を続ける、巨大な氷の魔法石から魔力を引き出してローランの身体を凄まじい勢いで凍らせ、雪で包んでゆく。虫が作る繭の様に、純白の覆いが彼を保護するかのように包み込む。顔も、斬られた腕も、脚も、全てを覆い隠して。
「優れた冒険者だったみたいね……少なくとも先の子達よりもずっと。氷像に造り替えてなかったら、たとえ4人がかりでも止められなかったかもしれないわ」
そうして4人に持ち上げさせて、縦に立たせた雪氷の塊に、ルイーゼは槌とノミを振り下ろす。この城に落ちていた彫刻用の器具は、振るう者の意思を読み取るかのように、細部まで自在に形作る事が出来る。彼女自身も、まるでこの城や氷の魔石に魅入られているのかもしれない、と思いながら。
「本当に優れた暗殺者だったみたいだけど……いえ、だからこそ私の手で造り替えてあげたら、どんなに素晴らしい子になるでしょう……」
徐々に繭の形から、人の形を取り戻して行く。より細かく彫ろうとしたとき、ルイーゼは一瞬思案する。
「だけど、私を守ってくれる子達はもう居るから……かわいいかわいい、私だけのメイドさんにしようかしら」
筋肉質だった脚を細く彫り変えて、大きかった手のひらも小さく細い指先に。肩回りも一回り削り取り、身長も小さくなってゆく。ノミと槌を机に置き、より細かい彫刻刀を握って、今度は手先足先、そして服の装飾まで創り上げてゆく。細かい作業が得意では無かったルイーゼだが、この作業をやっているときだけは何故か心が軽やかになる。
「……ふふっ。我ながら完璧ね」
髪の毛の先まで彫りきって、ツインテールを創り上げたところでルイーゼは手を止める。既に氷の繭は、全く新しい姿へと変貌していた。ミニスカートとメイド服を身に着け、頭にはホワイトブリムを被った少女の姿をした氷像。その完成の証として、ルイーゼは眠ったように目を閉じた彼女にキスをする。
「ちゅっ……」
ルイーゼに伝わる唇の感覚は、紛れもなく冷たい氷の温度。だが、同時に膨大な氷の魔力がルイーゼを通して氷像に流れ込んでゆく。優れた魔導士が持つ魔力をゆうに超えた、『人間そのものを書き換える』ほどの魔力。ゆっくりと、ルイーゼは氷像から離れてゆく。
パキリ、と氷の割れる音。少女の氷像が、口づけをしたところからヒビ割れてゆく。パキ、パキと徐々に裂け目が広がって、やがて全身に広がったヒビ。薄い氷が、勝手に落ちてゆく。氷で覆われていた所から、薄橙の肌が露出し始めた。
トサリ、と軽い音を立てて氷の破片が次々に落ちてゆく。僅かに顔に雪化粧を残した状態で、ローランは――『ローランだったもの』はその姿を現す。背丈も体格も、戦闘慣れしていた身体は跡形もなく、あどけなさと小さな可愛らしさを表層に表す少女。
「……ぁ……」
その声は、男性らしい低い物ではない。か細いながらも高く震えた、女の声。そして彼女の表情が、歓喜に揺らぐ。
「ごしゅじん、さまぁっ……♡」
とてとて、と軽い音を立てて彼女はルイーゼに抱き着く。彼女の身体は冷たかったが、雪そのものを触れていた時よりもまだ温かさはある。身長の低い彼女の頭を撫で、ルイーゼは微笑む。
「ローラン……いえ、ローラ。新しく生まれ変わった気分はどうかしら?」
「えへへ、すっごく身体が軽くて、全身がなんだかフワフワしてて……なんだか気持ちがいいです♡」
「わぁ……♡♡ これでローラちゃんも私たちの仲間ですね!」
殺し合いをしていた時の鋭い目つきは何処へやら、赤い瞳を輝かせたローラは『御主人様』に甘えるかのごとく顔を埋める。銀色の髪を揺らして、子供のように無邪気に振舞っていた。彼女を包んでいたのは不思議な多幸感。『御主人様に仕える事が何よりも幸せ』という、狂わされた価値観。
「そう、良かった……ねぇローラ。私の『実験』に協力してもらえないかしら」
「はいっ! 御主人様のお望みとあらば!」
「クスクス……良い子ね……せっかく誂えたメイド服だけど、いったんソレを脱いでくれるかしら?」
自らの身体を提供する事に何のためらいもなく、『ローラ』となった彼女は、魔女ルイーゼの望むがままに従う。寒さを感じることは無い。スカートベルトを外し、上着も全て綺麗にたたんだ後に、下着だけになった彼女。メイド服の下に隠されていたが、ローラの胸の膨らみはルイーゼが想定していたものより大きかった。
「あら……うん、彫刻の時に少し調子を間違えたかしら……まぁ。これでもいいわよね」
「どうしましたか?」
きょとん、とした顔で尋ねるローラに気にしないでとルイーゼは答える。それよりも、と彼女はバックパックから『ローラン』の物であった炎の魔法石を拾う。魔力を引き出さずとも、この凍り付いた城では感じられない熱を感じる。――魔法石を扱える人間は、そう多くない。通常は加工や、錬金術の装置を使用しなければ魔力をコントロールできない。炎の力を自在に引き出していたローランは相当の手練れだっただろう、とルイーゼは思った。
「……そんな優れた冒険者でも、今はこんなに小さくてかわいい女の子なのよね♡」
炎の魔法石にはそれ以上の実験道具としての使い道がある、と魔女ルイーゼは踏んでいた。城の地下で暴走する氷の魔法石は、その魔力の一部を利用するだけで『人間を造り変える』程の魔力がある。しかし、いつこの魔力が枯渇するか分からない。
「氷の魔法は強力で、一瞬で全てを凍てつき固まらせる力……だけど、人間を組成する魔力は複雑に混合している……今の『貴方たち』は完璧な人間とは言えないの」
疑似的には、人間の体に強力な魔力を流し込んで無理やり動かしている状態に近い。錬金術師の端くれでもあるルイーゼは、この特殊な状況を楽しんではいたが……興味は尽きなかった。『人間を造り変えたうえで、より人間らしくさせるにはどうすればよいか?』という疑問。そこには、一つの手法を考えていた。『氷以外の魔力』を与える事。
「ローラちゃん……貴方が持ってきてくれたこの炎の魔法石。これをあなたの身体で受け止めてほしいの」
「……? 分かりましたっ!」
疑問そうながらも、ローラは頷く。氷の魔力で表面を薄く削り取り、薄氷のようになった魔法石の欠片。それを、指先に当てながら。
「あなたの内側……そう、ココから魔力を注いであげる……」
「あっ……♡ はぁっ……♡♡」
小さな純白のショーツをずらし、ローラの秘部を露出させたルイーゼは、そのワレメに薄く切った魔法石の欠片を指先で埋め込んでゆく。前戯も無しの、無理やりに近い挿入。しかしローラの身体に刻み付けられた「命令を聞くことが幸せ」というスイッチは、次第に生温い愛液を漏らさせるよう仕向ける。
「そう……良い子ね、このまま奥深くまで受け止めて……」
「あぁっ……♡♡ ごひゅじんしゃまのゆび、きもちいいでひゅ……♡♡♡」
「……いいなぁ、あんなに愛していただけるなんて」
傍らで構えていた従者の一人がそう漏らすが、その様子を聞いてルイーゼは笑顔を見せる。
「安心しなさいな。この実験が上手く行ったら次はあなた達にも条件を変えて試してあげる」
「本当ですかっ! あぁ、御主人様にああして弄ってもらえるなんて……♡♡♡」
従者たちの表情が一瞬で蕩けるのを尻目に、ルイーゼはローラの変化に注視していた。人差し指を全て入れ込み、本来なら過敏に反応するはずの膣壁を軽く擦る。ローラは幸せそうな表情をしているが――それは官能によるものではないとルイーゼは理解していた。氷像たちは感覚が薄い。先ほどの戦いでも、痛みが薄かったからこそフミエは首を刺されても動けたのだ。
「貴方たちが完璧な人間に近づくためには――まず感覚を取り戻すことからかしら。可能であれば感覚を任意で切りかえれるのが望ましいのだけど」
恋慕の表情でルイーゼを見つめるローラだったが、徐々にその様子が変化してくる。
「あ……あの……ごしゅじん、さま……」
「どうしたのかしら?」
「御主人様に触ってもらえて、実験に使っていただいて、とってもしあわせなんですけど……なんだか、なんだか不思議な感じがずっとしてて……」
白く透き通ったローラの肌に、赤みがさすのをルイーゼは見逃さなかった。ほとんど直観に近いが、この実験は上手くいっていると分かる。
「その不思議な感覚、もっと詳しく説明してもらえるかしら?」
「ぁ……はい……ちょうど、御主人様の指が当たっている所……なんだかソコが、むずむずして……ふわふわして……なんだか、触られていると溶けちゃいそうで……♡♡ えへへ……♡♡」
ポタリ、ポタリとローラの立っている場所から液が漏れ出してくる。氷像が溶解しているのかとルイーゼは考えたが、指先の感覚では魔法石の熱によって溶けているようでは無さそうだ。炎の魔法石から一気に魔力を引き出し、ローラの身体に魔力を流し込む。瞬間、ビクリとローラは小さな体躯を震わせた。
「あ゛っ♡♡」
「ふぅ……さて、どうかしら」
魔力放出により昇華し始めた魔法石を膣内に残し、ルイーゼは人差し指を抜く。ローラはというと、今まで他の氷像が見せた事のない表情を見せていた。何かを期待して、物欲しそうに切ない顔。
「はっ……う゛ぅ……♡♡ ルイーゼ、様……♡♡ からだじゅうが、何だか変な感じです……」
「それって……えっ、ちょっと?」
ルイーゼが何かを命令することなく、しもべであるはずのローラが抱き着いてきた。試しに他の冒険者4体を彫り終わった後に動かしたのと、明らかに違う様子に彼女も驚く。
「おねがい、しますっ……♡♡ わたしのこと……ローラの体を、どうか触ってくださいっ……♡♡ 痺れたみたいで、不安定で落ち着かなくて……御主人様の指が触れてたとこ、アソコが安心するんですっ……♡♡ こうしてルイーゼ様と触れ合ってるだけで、なんだかゾクゾクが止まらなくてっ……♡♡♡♡」
「ぇ……えぇっ……?」
自分が『造った』存在が、自分の思うように動くのはルイーゼにとって愉悦だった。しかし、その氷像が欲望を持ちルイーゼを求めるかのように動いている。初めての状況に、彼女自身もどうすればいいのか分からず当惑してしまう。
「お願いしますっ……♡♡ あるじさまっ……♡♡ どうかわたくしを、主様だけの下僕にして下さいませ♡♡♡♡」
「そっ……そんな事言われたって、アンタはもう私の下僕……ちょっと、急にくっつかないでよっ……?」
身長の低いローラの頭が、ちょうどルイーゼの胸元に埋まり、ローラの膨らみもぎゅうと押し付けられる。後ずさろうにも、抱きつかれて離れることができない。ローラの体温が、他の氷像達よりも異様に高い事にルイーゼは気がつく。
「あはぁ……っ♡♡♡ ごしゅじんさまのむね、やわらかくてきもちいい……♡♡♡♡」
「ちょっとアンタッ……!? いやこれって……炎の魔力の影響……!?」
炎は氷と異なり、実体を持たない。形が存在しないのに激しいという意味合いでは、人間の感情にも例えられる。ルイーゼは仮説を立てる――ちょうど人間という固体を、感情という形のないものが操作しているように、氷像に炎の魔法が付与されることで自律的感情が発生したのではないかと。
「ほらっ……♡♡♡ 見てください、ごしゅじんさまっ……♡♡♡ 私の身体、貴方様とこうして触れ合っているだけで、こんなになっちゃいました……っ♡♡♡」
「へ……? あ……なんでそんなに、姿が変わって……?」
触れ合ったローラから、明らかにドクン、ドクンと止まっていたはずの『脈拍』が伝わる。銀色の髪が徐々にグラデーションのように赤く染まってゆく。小さかったはずの体躯が、ちょうどルイーゼと同じぐらいまで成長し、乳房も膨らみを増す。
「んうぅっ……♡♡ この姿なら、ご主人様の全てを包み込んで、御主人様に全てを愛してもらえるっ……♡♡♡」
「やめっ……ひゃうぅんっ♡♡♡ 急にソコっ、揉まないでよっ♡♡♡」
ルイーゼは、どこかボンヤリと思考が鈍る様な感じを覚えていた。彼女も気が付いていない事だったが、ルイーゼ自身もローラを満たす炎の魔力にあてられ、身体が火照りつつある。いつも通りに理知的に、冷徹に振る舞えばいいと分かっているのに、何故か心にある思いが浮かぶ。「このまま彼女に、為すがままにされてみたい」と。
「んっ♡♡ はぁっ♡♡♡ やめっ……そんな急にっ……♡♡」
「あぁっ……♡♡ 御主人様が私の指で、気持ちよくなっているっ……♡♡♡ えへ、えへへっ……♡♡♡」
短かったはずのツインテールは、今は床につくほどに長く伸び、赤い瞳をその情念の様に燃やしながら、ローラは主人であるはずのルイーゼの身体を弄る。魔女ルイーゼは、どうしてこんな事になっているのか分からなくなっていた。ただの操り人形に、主人であるはずの自分がいいようにされている。そんな事が有って良いはずがないのに、もっとこうされていたいという気持ちが湧き上がる。
「ルイーゼ様っ……♡♡ どうか私のココ、もう一度触って確認して下さいませんかっ……♡♡♡♡ きっと、膣内の魔法石の様子、お気になるでしょう? 代わりにっ……♡♡♡ わたくしも、御主人様のナカに触れ合いたいですっ……♡♡♡♡」
――ぼやけた頭で、ルイーゼはローラの提案を受け入れる。確かに、魔法石を入れた後の体内の状態を再確認する必要がある。くちゅり、と今度は明らかに水音の混じる音と共に、ルイーゼはローラの秘部へと指を挿入れてゆく。
「あ゛ぁぁっ♡♡♡♡ ごひゅじんしゃまのがっ♡♡♡♡♡ わらひのなかにぃっ♡♡♡♡♡」
「くぅっ……♡♡♡ ふぅぅっ……♡♡♡♡ あ゛う゛っ♡♡♡ なんで、私もきもちいい、のぉっ……?」
ルイーゼは、ローラから自分自身の性器が愛撫されている事に気が付いていない。ルイーゼの頭にあるのは、ただサンプルを確認しなければならないという探求心。――本来異常を感じなければならないはずの状況が抜け落ちているのは、紛れもなく彼女も炎の魔力に狂わされかけているため。
「ここ、のお゛っ♡♡♡ 体内に魔力が与えられたら、あ゛っ♡♡♡♡♡ 変化があるはず、う゛っ♡♡♡♡」
「はあ゛っ♡♡♡ あたしのなかっ♡♡♡♡ ルイーゼしゃまにっ♡♡♡♡ 搔きまわされてえ゛っ♡♡♡♡」
互いの蜜壺に指を入れ、くちゅり、くちゅり、と粘り気のある水音を立てて。ルイーゼにとっては魔法の研究のための行為、そう思い込んでいるが。全く知らない人が見れば、2人の女性が互いを愛撫し合っている状態でしか無かった。2人とも膝をついて、身体と身体が密着する。
「ちゅっ……♡♡ じゅぅっ……♡♡♡♡」
「ん゛っ……♡♡♡♡ ふう゛ぅっ……♡♡♡♡」
どちらからそうしたかは分からない。ただ、互いの唇が近づいて重なり、舌と舌とが絡まり合う。脈が早まる。舌先がびりびりとする。炎の魔力が、混ざり合った部分を通してどんどんと自分に伝わってくるのが、ルイーゼには辛うじてわかる。
「あっ♡♡♡ はぁっ♡♡♡♡ ルイーゼさまのキスっ♡♡♡ しゅきっ♡♡♡♡♡ だいしゅきっ♡♡♡♡♡♡」
「っぷはぁっ……♡♡♡ なんでっ……私まで、こんなになってんのっ……♡♡♡♡♡」
自分の身体の異常に気付いていながらも、ローラの手を止める事が出来ない。もっとローラから気持ちよくしてほしい。もっとローラをきもちよくしてあげたい。ただの氷像に、不思議な恋慕を覚える。
「いまのご主人様……♡♡♡ すごくえっちな顔してるっ……♡♡♡♡」
「んう゛ぅっ……♡♡♡♡ やめっ、いわないでっ……♡♡♡♡」
氷の魔女でも、錬金術師でもない。ただ、快楽にドロドロに溶かされた女がそこに居た。自らが従えるべき存在に狂わされ、喘がされ、彼女自身がローラに囚われるかのように。
「ほらっ♡♡♡♡ いっしょにっ♡♡♡♡♡ イキましょうっ♡♡♡♡♡」
「ま、まってっ♡♡♡ だめっ♡♡♡♡ やめ゛っ♡♡♡♡♡」
ぐちゅり、と自分の内側を抉られるような感覚。同時に、炎の魔力が自分にも巡る。ルイーゼの身体とローラの身体が魔力で繋がり、増幅された快楽が押し寄せてくる。耐えられるはずも、無かった。
「あ゛ぁぁっ♡♡♡♡ やだっ♡♡♡♡♡♡ ん゛あ゛ぁぁっ♡♡♡♡♡」
「きたっ♡♡♡ きたきたっ♡♡♡♡ あひゃぁぁっ♡♡♡♡♡♡♡」
ビクン、ビクンと2人の身体が同時に跳ねる。指先が互いの身体であたたかい。体中が火照って気持ちが良い。吐息が混ざって顔に当たるのがくすぐったい。全身がびりびりして、もっとしたい。もうなにもわからない。このまま、この感覚に溺れていたい。そんな夢想に、ルイーゼは――
――――――――
ローランが城を訪れてから数日。吹雪は徐々に勢いを弱め、城の地下にある氷の魔法石による魔力の暴走は、少しずつコントロールできるようになってきた。ルイーゼとしては早速この解析に取り掛かりたい、そう考えているのだが……
「ルイーゼ様、起きて下さいまし」
自分が先ほどまで眠っていたのだ、という事をルイーゼは思い出す。玉座の間に近い、王族の寝室。ローラの魔力によって造りかえられた、6人は優に一緒に眠れるだろう巨大なベッドに自分が寝かされている事に気が付く。
「ん゛っう゛……? わたし、どうしてここに……? 昨日、何してたっけ……?」
「おや、お忘れになったんですか? 昨日はエリスとずっと一緒にお休みに……いえ、とてもお楽しみになられたじゃありませんか♡♡♡」
そう返事をしたのは、侍のフミエ。――だが、ルイーゼが『彫った』時とは微妙に姿が違う気がする。彼女はスレンダーな体型で、身を鎧で固めていたはずだったが、今の彼女は明らかに豊満なバスト。それに場違いな水着に、そしてその股間には水着では隠せないナニカがあった。
「……!? ちょ、ちょっと待って!? なんでアンタにそんなものが有るのよっ!?」
「これですか……♡♡ ローラ殿に頼んだのです、ご主人様を愛するために肉体を造り変えて欲しいと。ローラの乳を頂くことで、自分も体を自由に造り変える事ができるようになったのです♡♡♡」
バキバキに勃起した、フミエの股間に備わったペニス。ローラの身体から出るようになった母乳を通じて、炎の魔力が他の4人の下僕達にも備わり、氷と炎の魔力をコントロールすることで自身の姿を変化させられる氷像へと進化したのであった。
「ま、待ってよっ……!? そんなの私のナカに入る訳っ……!?」
「いいえ……これはルイーゼ様の膣壁にピッタリ合うように造ったモノ……♡♡♡ ご主人様を愛して感じさせるのに、一番のモノなんですっ♡♡♡♡」
支配していたはずのモノに押し倒される。亀頭が、自分のワレメに当たるのがルイーゼにも伝わる。――それだけで、昨日まで氷像たちに『愛された』記憶が一気に蘇る。
「ひ……ヒィッ……♡♡♡♡」
「あぁっ……♡♡ いま、私の身体でどんどん赤ちゃんのモトが出来上がってくるのを感じますっ……♡♡♡♡ ルイーゼ様と子を為せたら、どんなに幸せでしょう♡♡♡♡♡♡」
もう、ルイーゼには逃げる事は出来ない。彼女自身も、炎と氷の魔力に狂わされてしまった人間なのだから。彼女よりも魔力に優れ生まれ変わった彼女達に勝てるはずなどない。出来るのは、ただ彼女達の攻めに狂わされ、善がらされ、快楽に溺れる事だけ。
「さぁ……ご主人様、いっぱい愛し合いましょう……♡♡♡♡」
――――――――
やがて吹雪は止み、行方の分からなくなった冒険者の話も忘れられて。
辺境の城に6人が住んでいる事は、誰も知る事はなかった。
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