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1.溶ける肉体、変化するカラダ
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かつて無数の魔物を従え、人間の存在を脅かした『魔王』と呼ばれる存在。魔物たちの首魁として君臨していたソレが、人間たちのあらゆる力を携えた『勇者たち』によって封印されて百数十年経って、その戦いが吟遊詩人の語る物語になっていたころ。しかし、『魔物』の存在は、未だ残っていた。
人里離れた森の奥、誰も定住しない砂漠の中心、打ち捨てられ廃墟と化した古城──そして、深く地の底まで続くような洞窟。『迷宮』と呼ばれるそこには、闇に追いやられた魔物たちが未だ棲息していた。他種族の魔物同士が互いを喰らい合い、時折迷い込んだ冒険者を襲い、光のない生を送っている。だが、百年もの時は更なる闇を生み出していた。
迷宮の奥深く、強き闇の気配と魑魅魍魎が蔓延るそこには。『一人の人間』が居た。『彼』はこの迷宮に迷い込んだ来訪者でも、探窟に来た強き冒険者でもない。普通の人間であれば魔物の群れに瞬時に襲われ命を奪われるであろう環境で、しかし彼は。
「深部に3人……上層にはまだ十数人といったところか……まずは4人をどうにかせねばな」
魔物の巣窟、その奥に眠る神秘を守護するもの。『迷宮の支配者』と呼ばれる人間は、迷宮の魔物を支配し、探索する人間を襲うように仕向ける。そうする理由は、表の人間には分かっていない。一説には、迷宮の奥に眠る『魔王の力』の欠片を守護しているとか、魔物を操る事の出来る人間が他の人間に悪意を持って襲っているとか。その理由は定かではないにしろ、魔物を操る存在が迷宮の探索を妨げているのは事実であった。
「……だが、いい。ちょうど実験の成果を試してみたい所だ」
独り言と共に、小さく彼は詠唱する。魔法視の呪文。地の底に居ながら、迷宮のどこであっても彼の監視下から逃れる事は出来ない。──彼が視界に捉えたのは、迷宮深部に潜っていた4人の冒険者だった。
────────────────────────────────
誰も最深部に潜った事のない迷宮。踏破すれば、得られるのは名誉だけではない。魔物の一種には宝物を溜め込む修正を持つモノも居る。宝の隠し場所を見つけてしまえば、元の所有者の分からない財宝はほとんど冒険者たちの手に転がり込む。他にも、鉱石の地脈を見つけてしまえば、その情報だけでも金になる。
「……しっかし、未だに面白いモンに出会わねぇな」
深部まで潜っていた冒険者パーティの1人、戦士ヨハンはそう呟く。異様なほど静かだ。迷宮入口で弱い魔物と戦った以外は、ここに来るまでほとんど何も、敵すら見つけていない。いつでも振りぬけるよう剣から手を放してはいないが──こうも何も起きないと、拍子抜けする。
「ま、何も起きないってのは良い事だよ。……お宝も見つからないけど」
警戒心の薄い僧侶ニックは、杖先から光を放出しつつ辺りを探る。さっきから全く変わらない、茶色の土壁がずっと続く洞窟。彼にとっては戦闘が無い分、味方の治療に魔力を費やさずに済むので気が楽だった。一方、もう一人のパーティーメンバーである盗賊のルーカスは、『何も起こらない』事に不自然さを抱いていた。
「ヨハン、ニック。魔物が全く居ない分、危険な罠が仕掛けられているかもしれん。お前らも注意を怠るな」
「……あぁ」
「わーかってるって!」
────────────────────────
冒険者たちが歩む様子を。ダンジョンマスターは察知されることなく、自らの視界に捉え続けていた。罠などは仕掛けていない。……その必要もない。彼は口元を歪ませて。右手に魔力を握りしめ、彼らの元へ放った。
────────────────────────
ゾクリ、と直感で。3人はほぼ同時に察知する。何か良からぬ雰囲気、魔力が洞窟内に満ちるのが、経験を積んだ冒険者たちである彼らにはすぐに分かった。自分たちを害するものだと分かってからは、彼らの動きは素早かった。緊張感なく笑っていた僧侶ニックはすぐさまワンドを振り、全員を防御する結界を張る。戦士ヨハンも盗賊ルーカスも、魔力を遮断する聖水を握りしめ、暗闇から襲い掛かるであろう魔物に警戒する。
……だが。
「な、にぃっ……!?」
ずぶりと、足元が抜ける感覚に襲われる3人。泥沼に沈み込んだかのように錯覚する。──しかし、目の当たりにしたのは恐るべき事態。自分たちの脚が洞窟の地面に染み込んで、溶け出しているのだ。彼ら全員の足元に広がる、巨大な魔方陣。今まで味わった事のない魔力圧を放つソレは、痛みもなく彼らの身体をどんどんと溶かしてゆく。
「オイっ……!? これマズイぞっ! なんとか逃げ、ねぇと……」
「ぐっ……ダメだっ! 地上に転移できない!」
「が、ぁっ……! 魔力に呑まれて、動けねぇッ!」
喚いて叫ぶ、その猶予すら無かった。ドポンと水に落ちたかのように、彼らの身体は迷宮の床に吸い込まれて。シン、と静寂が広がる。遠くからその様子を見ていたダンジョンマスターが無言で拳を握ると、青白い光を放っていた魔方陣は音もなく消え去った。跡に残されていたのは、透明な水たまり。ちょうど冒険者3人が居た所に残された装備品と、ほんのわずかに厚みを持った、スライム状の物質がポツンと残っていた。
迷宮の主は。『3人の冒険者だったもの』を再び視界にとらえ、魔力を与えた。離れていた3つの水たまりの表面が、静かに震える。……すると、分離していた粘液たちが徐々に近づき、接触し。1つの丸まった塊へと変化してゆく。わずかにピンク色をした『スライム』は、くちゅ、と水音を立てて跳ねる。数回、鼓動するかのように振動し、時折ぐねりと歪む。
突然、潜っていた水中から浮かんでくるかのように。スライムの内側からぷしゃ、と水音を立てて『何か』が現れた。ぶわり、と長い金色の髪を靡かせた『粘性の液体』は頭を振り、水を振り払って、水面からその身体を現す。一糸まとわぬ姿の彼女は、先程3人の冒険者が溶け出していったのと逆に、徐々にスライムの状態から肩、乳房、腰、そして足を形成し、徐々に人型に変化してゆく。
「っはぁっ……♡♡」
熱っぽい吐息と共に立ち上がった『彼女』は。まだ粘液の塊になっていた頭の部分をかきあげて、一度靡かせる。すると、繋がっていた粘液が細かい髪へと変化してゆき、ウェーブのかかったセミロングの金髪へと、色素も変わってゆく。水たまり状になっていたスライムから、徐々に細い手先が伸びて。
「ぅあっ……!? なんだっ、これ!? どうなってんだよ俺たちっ!? 身体も、なんかおかしなことにっ……!」
青白く発光する魔方陣、その効果はあくまで彼らの肉体の変質。3人分の精神を無理やり変化させ1つの肉体に形作ってしまう闇の魔術。間髪入れず、迷宮の主は再び指揮者のように手を振る。すると、『彼女』の足元の魔方陣が妖しく紫色に輝いて、彼女の身体を足元から包み込んでゆく。
「ぐぁっ、足が動かないッ!? 違う、そっちに逃げるんじゃなくてコッチだっ! あぁっ!! 自分の中に僕が居て、頭がぁっ……!」
身体も上手く動かせず、強制的に統合させられた意識で自我が崩壊しかける『彼女』。動けないままだった『彼女』の足先から徐々に魔方陣が通り抜けてゆく。何か、自分(たち)が致命的に変換させられるかのような。──ソレが頭を通り抜けた瞬間。雑音と叫び声のように聞こえた、他の仲間の2人の声が消える。
「──────あっ」
何一つ身に纏っていない『彼女』の身体が、一瞬ビクンと震えて。その身体がわずかに透き通り、元の姿のスライムのように透明感を増す。……何をしたらいいのか、自分には分かるような気がした。
「んっ……♡♡ はぁんっ……♡♡♡」
その小さな手の平で、包み切れないほどの大きな乳房を形成した彼女は。むんず、とそのおっぱいを絞るかのように握りしめる。軽く力を加えただけで。びゅるる、びゅぅっ、と粘っこい母乳が洞窟の床に放たれてゆく。同時に、『彼女』は甘い声をあげて。
「ぃひゃぁんっ♡♡♡ ぃイっ……♡♡♡♡ このカラダっ、凄く感じるっ……♡♡♡♡」
妖艶な顔つきを悪戯っぽい笑みで歪ませ、彼女は自らのカラダを慰める。──『自分たち冒険者』の元の身体の事など、今の彼女には全く関係のない事。自我が追い混ぜられ、1つになった『彼女』。魔術式で変化させられた彼女の身体と魂は、『迷宮の主』に従う事こそが第一命題へとすり替わってしまった。そして第二には、変貌した『自らの身体』への興味。恐れなどはない、ただこれを愉しめば良い事が分かっていた。
「く……ぁあ゛っ♡♡ や、ぁあん゛っ♡♡♡ こ、ココっ♡♡♡ くりくりって、するとぉ゛っ♡♡♡♡ ぁひぃ゛っ♡♡♡♡」
大人の女性の身体でありながら、初めて女性としての性感を味わうかのように。否、事実『彼女』はこの感覚に頭が灼けつくような快楽を味わっていた。『彼ら』冒険者にあったはずの肉棒は、もはや存在しない。代わりにぷっくりと柔らかいマン肉を掻き分け、小さくも勃っているクリトリスを弄る。
「ぇ、へぇ゛っ♡♡♡♡ ぁあ゛っ♡♡♡ な、なにかっ♡♡♡♡ キて、る゛っ♡♡♡♡」
座り込み、ダンジョンの土壁を背にして。自らの陰部に両手をあてがい、初めての女性としての官能に身悶えする。スライムとはいえ、再構築された女体は本物の快楽を産み出し続けて。クリを弄るたびに、頭がふわふわする。膣の奥をぐりゅ、とかき混ぜるたびに、もっと凄い快楽が頭に登ってくる。
「ぁくぁあ゛っ♡♡ んぅ゛ぁあ゛っ♡♡♡ もぅ゛っ♡♡♡ おさえらんな゛っ♡♡♡♡ ぃひぃい゛っ♡♡♡♡♡」
背筋に痺れるような感覚。全身を貫く、『ハジメテ』の絶頂。ぐりゅんと、世界が回転して。
「────ぃ゛っ♡♡♡ ひゃぁあ゛っ♡♡♡♡ んぁあ゛ぁあっ♡♡♡♡♡♡」
限界を迎えた彼女は、迷宮に響き渡るほど甲高い喘ぎ声を漏らし。全身を跳ねさせ、ぷしぃっと潮を吹く。何度も何度も、絶頂の感覚が続いて。『この身体』に変化したことへの不安は、完全に無くなっていた。ただ幸せな気持ちに包まれていっぱいになる。
「──はぁっ……♡♡ んはぁっ……♡♡♡ ぇ、へへへっ……♡♡♡♡」
口元がにへら、と緩んで。生まれ変わった彼女は、もう一度その快楽に身をゆだねようとした。しかし、その直前に。彼女がイく姿をじっと見つめていた遠見の魔力を持つダンジョンマスターの男は、『彼女』にある命令を下す。
『お前に【名前】を与える──ソフィア。その身体を使い、眷属を増やせ』
念波で彼の声を聞いた彼女は、口惜しそうに唇を尖らせる。
「もう……主様ったら、私の事を『試したり』しないのかしら……」
だが、迷宮の主に逆らうような事はしない。むしろこれはチャンスだ、と『彼女』は分かっていた。
「でも、いいわ。主様の命令、ちゃんとこなせたら……きっとアタシの事を『使って』下さるもの……!」
彼女に下された命令。それは、この迷宮の浅層にやって来た冒険者の無力化。その方法は指定されていない。自らも魔力を扱うことの出来るようになった彼女は、自分の身体を転移させ冒険者たちを迎えに行く。『どうするか』は、もう決まっていた。美しい顔を喜色に染めて。彼女は──恐るべき魔物は動き出した。
人里離れた森の奥、誰も定住しない砂漠の中心、打ち捨てられ廃墟と化した古城──そして、深く地の底まで続くような洞窟。『迷宮』と呼ばれるそこには、闇に追いやられた魔物たちが未だ棲息していた。他種族の魔物同士が互いを喰らい合い、時折迷い込んだ冒険者を襲い、光のない生を送っている。だが、百年もの時は更なる闇を生み出していた。
迷宮の奥深く、強き闇の気配と魑魅魍魎が蔓延るそこには。『一人の人間』が居た。『彼』はこの迷宮に迷い込んだ来訪者でも、探窟に来た強き冒険者でもない。普通の人間であれば魔物の群れに瞬時に襲われ命を奪われるであろう環境で、しかし彼は。
「深部に3人……上層にはまだ十数人といったところか……まずは4人をどうにかせねばな」
魔物の巣窟、その奥に眠る神秘を守護するもの。『迷宮の支配者』と呼ばれる人間は、迷宮の魔物を支配し、探索する人間を襲うように仕向ける。そうする理由は、表の人間には分かっていない。一説には、迷宮の奥に眠る『魔王の力』の欠片を守護しているとか、魔物を操る事の出来る人間が他の人間に悪意を持って襲っているとか。その理由は定かではないにしろ、魔物を操る存在が迷宮の探索を妨げているのは事実であった。
「……だが、いい。ちょうど実験の成果を試してみたい所だ」
独り言と共に、小さく彼は詠唱する。魔法視の呪文。地の底に居ながら、迷宮のどこであっても彼の監視下から逃れる事は出来ない。──彼が視界に捉えたのは、迷宮深部に潜っていた4人の冒険者だった。
────────────────────────────────
誰も最深部に潜った事のない迷宮。踏破すれば、得られるのは名誉だけではない。魔物の一種には宝物を溜め込む修正を持つモノも居る。宝の隠し場所を見つけてしまえば、元の所有者の分からない財宝はほとんど冒険者たちの手に転がり込む。他にも、鉱石の地脈を見つけてしまえば、その情報だけでも金になる。
「……しっかし、未だに面白いモンに出会わねぇな」
深部まで潜っていた冒険者パーティの1人、戦士ヨハンはそう呟く。異様なほど静かだ。迷宮入口で弱い魔物と戦った以外は、ここに来るまでほとんど何も、敵すら見つけていない。いつでも振りぬけるよう剣から手を放してはいないが──こうも何も起きないと、拍子抜けする。
「ま、何も起きないってのは良い事だよ。……お宝も見つからないけど」
警戒心の薄い僧侶ニックは、杖先から光を放出しつつ辺りを探る。さっきから全く変わらない、茶色の土壁がずっと続く洞窟。彼にとっては戦闘が無い分、味方の治療に魔力を費やさずに済むので気が楽だった。一方、もう一人のパーティーメンバーである盗賊のルーカスは、『何も起こらない』事に不自然さを抱いていた。
「ヨハン、ニック。魔物が全く居ない分、危険な罠が仕掛けられているかもしれん。お前らも注意を怠るな」
「……あぁ」
「わーかってるって!」
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冒険者たちが歩む様子を。ダンジョンマスターは察知されることなく、自らの視界に捉え続けていた。罠などは仕掛けていない。……その必要もない。彼は口元を歪ませて。右手に魔力を握りしめ、彼らの元へ放った。
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……だが。
「な、にぃっ……!?」
ずぶりと、足元が抜ける感覚に襲われる3人。泥沼に沈み込んだかのように錯覚する。──しかし、目の当たりにしたのは恐るべき事態。自分たちの脚が洞窟の地面に染み込んで、溶け出しているのだ。彼ら全員の足元に広がる、巨大な魔方陣。今まで味わった事のない魔力圧を放つソレは、痛みもなく彼らの身体をどんどんと溶かしてゆく。
「オイっ……!? これマズイぞっ! なんとか逃げ、ねぇと……」
「ぐっ……ダメだっ! 地上に転移できない!」
「が、ぁっ……! 魔力に呑まれて、動けねぇッ!」
喚いて叫ぶ、その猶予すら無かった。ドポンと水に落ちたかのように、彼らの身体は迷宮の床に吸い込まれて。シン、と静寂が広がる。遠くからその様子を見ていたダンジョンマスターが無言で拳を握ると、青白い光を放っていた魔方陣は音もなく消え去った。跡に残されていたのは、透明な水たまり。ちょうど冒険者3人が居た所に残された装備品と、ほんのわずかに厚みを持った、スライム状の物質がポツンと残っていた。
迷宮の主は。『3人の冒険者だったもの』を再び視界にとらえ、魔力を与えた。離れていた3つの水たまりの表面が、静かに震える。……すると、分離していた粘液たちが徐々に近づき、接触し。1つの丸まった塊へと変化してゆく。わずかにピンク色をした『スライム』は、くちゅ、と水音を立てて跳ねる。数回、鼓動するかのように振動し、時折ぐねりと歪む。
突然、潜っていた水中から浮かんでくるかのように。スライムの内側からぷしゃ、と水音を立てて『何か』が現れた。ぶわり、と長い金色の髪を靡かせた『粘性の液体』は頭を振り、水を振り払って、水面からその身体を現す。一糸まとわぬ姿の彼女は、先程3人の冒険者が溶け出していったのと逆に、徐々にスライムの状態から肩、乳房、腰、そして足を形成し、徐々に人型に変化してゆく。
「っはぁっ……♡♡」
熱っぽい吐息と共に立ち上がった『彼女』は。まだ粘液の塊になっていた頭の部分をかきあげて、一度靡かせる。すると、繋がっていた粘液が細かい髪へと変化してゆき、ウェーブのかかったセミロングの金髪へと、色素も変わってゆく。水たまり状になっていたスライムから、徐々に細い手先が伸びて。
「ぅあっ……!? なんだっ、これ!? どうなってんだよ俺たちっ!? 身体も、なんかおかしなことにっ……!」
青白く発光する魔方陣、その効果はあくまで彼らの肉体の変質。3人分の精神を無理やり変化させ1つの肉体に形作ってしまう闇の魔術。間髪入れず、迷宮の主は再び指揮者のように手を振る。すると、『彼女』の足元の魔方陣が妖しく紫色に輝いて、彼女の身体を足元から包み込んでゆく。
「ぐぁっ、足が動かないッ!? 違う、そっちに逃げるんじゃなくてコッチだっ! あぁっ!! 自分の中に僕が居て、頭がぁっ……!」
身体も上手く動かせず、強制的に統合させられた意識で自我が崩壊しかける『彼女』。動けないままだった『彼女』の足先から徐々に魔方陣が通り抜けてゆく。何か、自分(たち)が致命的に変換させられるかのような。──ソレが頭を通り抜けた瞬間。雑音と叫び声のように聞こえた、他の仲間の2人の声が消える。
「──────あっ」
何一つ身に纏っていない『彼女』の身体が、一瞬ビクンと震えて。その身体がわずかに透き通り、元の姿のスライムのように透明感を増す。……何をしたらいいのか、自分には分かるような気がした。
「んっ……♡♡ はぁんっ……♡♡♡」
その小さな手の平で、包み切れないほどの大きな乳房を形成した彼女は。むんず、とそのおっぱいを絞るかのように握りしめる。軽く力を加えただけで。びゅるる、びゅぅっ、と粘っこい母乳が洞窟の床に放たれてゆく。同時に、『彼女』は甘い声をあげて。
「ぃひゃぁんっ♡♡♡ ぃイっ……♡♡♡♡ このカラダっ、凄く感じるっ……♡♡♡♡」
妖艶な顔つきを悪戯っぽい笑みで歪ませ、彼女は自らのカラダを慰める。──『自分たち冒険者』の元の身体の事など、今の彼女には全く関係のない事。自我が追い混ぜられ、1つになった『彼女』。魔術式で変化させられた彼女の身体と魂は、『迷宮の主』に従う事こそが第一命題へとすり替わってしまった。そして第二には、変貌した『自らの身体』への興味。恐れなどはない、ただこれを愉しめば良い事が分かっていた。
「く……ぁあ゛っ♡♡ や、ぁあん゛っ♡♡♡ こ、ココっ♡♡♡ くりくりって、するとぉ゛っ♡♡♡♡ ぁひぃ゛っ♡♡♡♡」
大人の女性の身体でありながら、初めて女性としての性感を味わうかのように。否、事実『彼女』はこの感覚に頭が灼けつくような快楽を味わっていた。『彼ら』冒険者にあったはずの肉棒は、もはや存在しない。代わりにぷっくりと柔らかいマン肉を掻き分け、小さくも勃っているクリトリスを弄る。
「ぇ、へぇ゛っ♡♡♡♡ ぁあ゛っ♡♡♡ な、なにかっ♡♡♡♡ キて、る゛っ♡♡♡♡」
座り込み、ダンジョンの土壁を背にして。自らの陰部に両手をあてがい、初めての女性としての官能に身悶えする。スライムとはいえ、再構築された女体は本物の快楽を産み出し続けて。クリを弄るたびに、頭がふわふわする。膣の奥をぐりゅ、とかき混ぜるたびに、もっと凄い快楽が頭に登ってくる。
「ぁくぁあ゛っ♡♡ んぅ゛ぁあ゛っ♡♡♡ もぅ゛っ♡♡♡ おさえらんな゛っ♡♡♡♡ ぃひぃい゛っ♡♡♡♡♡」
背筋に痺れるような感覚。全身を貫く、『ハジメテ』の絶頂。ぐりゅんと、世界が回転して。
「────ぃ゛っ♡♡♡ ひゃぁあ゛っ♡♡♡♡ んぁあ゛ぁあっ♡♡♡♡♡♡」
限界を迎えた彼女は、迷宮に響き渡るほど甲高い喘ぎ声を漏らし。全身を跳ねさせ、ぷしぃっと潮を吹く。何度も何度も、絶頂の感覚が続いて。『この身体』に変化したことへの不安は、完全に無くなっていた。ただ幸せな気持ちに包まれていっぱいになる。
「──はぁっ……♡♡ んはぁっ……♡♡♡ ぇ、へへへっ……♡♡♡♡」
口元がにへら、と緩んで。生まれ変わった彼女は、もう一度その快楽に身をゆだねようとした。しかし、その直前に。彼女がイく姿をじっと見つめていた遠見の魔力を持つダンジョンマスターの男は、『彼女』にある命令を下す。
『お前に【名前】を与える──ソフィア。その身体を使い、眷属を増やせ』
念波で彼の声を聞いた彼女は、口惜しそうに唇を尖らせる。
「もう……主様ったら、私の事を『試したり』しないのかしら……」
だが、迷宮の主に逆らうような事はしない。むしろこれはチャンスだ、と『彼女』は分かっていた。
「でも、いいわ。主様の命令、ちゃんとこなせたら……きっとアタシの事を『使って』下さるもの……!」
彼女に下された命令。それは、この迷宮の浅層にやって来た冒険者の無力化。その方法は指定されていない。自らも魔力を扱うことの出来るようになった彼女は、自分の身体を転移させ冒険者たちを迎えに行く。『どうするか』は、もう決まっていた。美しい顔を喜色に染めて。彼女は──恐るべき魔物は動き出した。
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