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#1 幼馴染の管理者権限を所得する.rft

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授業が開始する直前。使っているスマホの電池が赤色を示していた。悲しい事に、モバイルバッテリーの類は持ち合わせていない。放課後に音楽を聴きながら帰りたいのだから、何としても電池切れは避けたい。

「ええと……」

 妙なものが『視え始めた』のは、数週間前。俺、加古かこ龍司りゅうじを含む人間の体に、本来ありえない物がくっついている。複数の電子機器を接続するために使われる規格、USBユニバ―サルシリアルバス。その接続口が体の一部に見えるようになったのだ。流石に顔面に見える人は居なかったが、肩や腕、背中や手の平。服を貫通するように存在するソレは、人によって接続口は違う。そして俺の場合はというと。

「この辺なら見えないかな」

 自分の接続口を認識している状態で、動かすことが出来る。そして、実際にケーブルをつなぐことも出来た。その上このUSBハブはただの飾りではないようで。

「……よし」

 USBケーブルをつなぐと、スマホの画面が充電画面を示す。俺自身が電源になることもできるのだ。幸い電気を抜くことで、体の異常などは起こったりしていない。だが、副作用が分からない以上あまり使いたくないのは事実。……結構な回数で使ってしまっているが。

「はーい授業始めるよー」

 教室に入ってくる、物理教師の西浜にしはま梨乃りの先生。大学を卒業してからすぐこの学校に赴任しており、他の教師と比べてかなり若い。しかし経験が少ないながらも教える授業は分かりやすく、本来高校の授業で範囲外とされる部分についても生徒の興味があれば詳しく勉強し、かみ砕いて教える。優秀な生徒にも、勉強が苦手な生徒にもウケが良いという珍しいタイプの教師だった。

「化学の授業では電気を流す物質を導体、通さない物を不導体って呼びますけど。その中間、半導体。半導体の金属には2つあるけど分かる人、はい岡倉さん」

 黒板に文字が書かれる。と同時に質問が飛んだ。

「シリコンと……ゲルマニウム?」

 SiとGeと書かれた円が描かれ、そこから4本の線が伸びる。

「正解! この2つは価電子が4つで、それぞれの手が結合できる。両方とも金属と呼ばれてるけど、金属が電気を通すのは自由電子があるからですね。ただシリコンがずっと繋がっているだけでは自由電子はできない」

 『正孔と自由電子』という文字が書かれた。

「半導体の一部に別の金属を加える。電子を加えたものがn型半導体、電子が1個少ないのがp型半導体と呼ばれます。それぞれネガティブとポジティブ」

 同じように更に文字が書かれた。それと同時に、チョークが置かれる。おや、と思った。先生がチョークを置くと、大抵話がそれて黒板をあまり使わなくなる。生徒は板書する量が減るため、楽な時間ができるのだ。

「ちなみに最近どんどんUSBの容量が多くなってるね。私が学生の頃だと2GBのUSBがやっとだったよ。最近のUSBだと1TBとかも出たんだっけ? パソコンもどんどん高性能になるし。でも、人間の脳も凄いんだよ」

 『1PB=1024TB』と書かれる。

「脳の容量がこれぐらい、と最近の研究では言われてます。勿論、直接脳を記録容量として考えるのもおかしな話ですが、最新の電子機器ですら嵩張るものを人間の脳は内包している。同じものを機械で作っても、生物程コンパクトなものには出来ない。人間の体は物凄く高性能に出来ているんです」

 なんとなく、数式をノートに写す。あらいけない、と先生は授業を再開した。

――――

 生徒会のメンバーがちょうど2年生に変わり、引継ぎが終わったころ。先代が掃除をしていなかった生徒会室の棚について、清掃活動をすることになった――2人だけで。生徒会長の岡倉おかくらと、副会長のリュウジ。他の連中は部活やら用事やらでさっさと帰ってしまった。

「ふぃー、これで一息。加古くんもお疲れ様」
「先輩たち掃除ほとんどしてなかったな、昔の学生名簿とか処分しないといけないんじゃないか?」
「その辺は先生に聞いとこうよ、ふわぁ~ぁ……」

 疲れたのか、岡倉はあくびをしている。男女2人だけで同じ部屋となると、話題に迷って多少気まずくなったりするものだが、幸いな事に俺たちは昔なじみの間柄。夕方になると彼女は眠くなるのも昔からの事。猫か。

「まだ5時でしょ? ちょっと休憩させてぇ~……すぅ……」
「ちょっと待て……ってマジで寝よったわコイツ」

 揺すっても起きない。少なくとも狸寝入りではない、幼稚園の頃から「寝る」と言ったら瞬間的に眠るのが岡倉の特徴だった。無人島に漂流するといった極限状態に陥っても、割とこういうタフなやつが生き残るのかもしれない。眠っている彼女の背中にも、USBハブが見えた。

 ふと、思いついたことがある。生徒会室のノートパソコン、それとUSBケーブル。そして岡倉の背中にあるUSBハブ。

「繋いでみたらどうなるんだろうか」

 記録媒体としてのUSBメモリなり、スマートフォンでも、回線をつなげば中のデータを閲覧したり、保存したりが可能になる。今まで自分に対して充電用バッテリーとして使っていたが、人間を――岡倉をPCに繋いでみたら反応するのだろうか。幸いぐっすり眠っている彼女は、多少の音がしたりケーブルをつないでも起きたりしない。

「やってみる……か」

 生徒会室には、事務作業や簡単な計算を行うためにノートPCがある。古いモデルなので挙動は遅いが、一応ネットに繋いでも大丈夫な程度にはセキュリティソフト等も入っている。動画編集など、生徒会で行うイベントに必要なソフトウェアがデスクトップに広がっている画面。適当なフォルダを開き、エクスプローラの左側にある「PC」のタブをクリック。パソコンに接続された機器が表示される画面。

「よいしょっと」

 鞄から長めのケーブルを取り出し、先にパソコンのハブに繋ぐ。自分が後ろめたい事をしているのが内心分かっているのか、音がしないよう、そして突然生徒会室に誰かが入ってこないよう、鍵を掛けた。そしてゆっくりと、若干自分の手が震えるのがわかりつつ、ケーブルの逆側を岡倉に接続した。

「うむぅ……」

 一瞬身じろぎした岡倉。ばれてしまったか、と冷や汗が噴き出る。

「んぁぁ……すぅ……」

 再び寝息がたつのを聞いて、ほっと胸をなでおろす。岡倉の様子を伺いつつPCモニタを見ると、右下にポップバルーン。「Miyu_Oのインストールが完了しました」との表示、USBが初めて接続されたときのドライバーがこのPCに入ったという事。開いていたエクスプローラの画面には、「Miyu_O」と表記された外付けHDDハ―ドディスクドライブの表示。

「接続できた……!?」

 マウスカーソルをアイコンに合わせ、クリック、再度クリック。カーソルがグルグルと回転し、読み込み中であることを示す。しばらくして、画面にウィンドウが現われた。

〈このフォルダにアクセスする許可がありません:【続行】をクリックすると管理者権限を付与し、永続的なアクセスを所得します〉

 盾のマークが描かれた【続行】をクリック。すると、エクスプローラの画面に大量のフォルダと無数のデータが溢れ出した。画面を下にどんどん下げても、大量にデータが現われる。

「一体いくつあるんだ……?」

 画面を戻し、"Miyu_O"のプロパティを開く。円グラフが現われ、2割程度が使用領域になっている。データ容量は、1024TB。

「1024TBテラバイトは……1PBペタバイト……」

 人間の脳と同じ容量。つまり、今このUSBケーブルを伝って岡倉の脳のデータを閲覧しているということ、なのだろうか。あまりにも信じられない、だがそもそも人間にUSBハブが現われる事自体が非現実的なのだ。だとすると、この非現実的な事ももしかして――

「ううん……ふぁあ……あっ、もうこんな時間!」
「うぇえ!?」

 PCモニタに釘付けだったので、反応が遅れる。岡倉が立ち上がっていた。ケーブルを見ると、彼女の背中に引っかかったままになっている。そんな事に全く気が付かずに、彼女は慌てて帰り支度をしていた。

「ごめんね、今日塾があるから早く帰る! 鍵は職員室に返してもらえるかな!」

 マズイ、このまま背中にケーブルを付けたままの岡倉を帰すわけにはいかない。他の人にUSB挿入口が見えないからといって、ケーブルが背中から生えていたら流石に訝しく思われるだろう。慌てて叫んだ。

「ちょっと待ってくれ!」

 足を止めた彼女の後ろ側に回って、背中のケーブルを引っこ抜いた。そのまま制服のポケットに忍ばせる。

「す……少しゴミが付いててさ、今取れたから」
「んぁ? ありがとー」

 ――だが、数秒経っても岡倉はその場から動かない。おや、と思い声をかける。

「どうしたんだ、塾があるんだろ」
「うん。だけど加古くんに止まれって言われたから……」

 変な事を言うな、と思った。

「突然ヘンテコな事言うなよ、俺が言った事なら何でも聞くみたいに――」
「うん」
「……はい?」

 それが当然、と言わんばかりの表情。からかわれているのだろうか。ケーブルを回収して安堵した途端に変な事を言われたものだから、見当違いとは言え少し腹立たしい。何かの冗談だろうと思い、突拍子も無い事を言ってみる。

「はあぁー……三回転してワンって鳴け、犬の真似でもしてみろ、なんて失礼な事言うぞ」
「くるくるくる、わんっ」
「ぉ、おお……よしよし」
「くぅーん♡」 

 思った以上に岡倉の鳴き声が可愛かったもので、思わず頭を撫でてしまう。そうではなく。シッポがあれば、思いっきり振っているかのように俺にくっついてくる。犬のマネだろうか。……じゃない。

「ああもう、ベッタリくっつきなさんな」
「はーい」

 突拍子もない要求も呑む。一体何を企んでいるのだろうか。だが、先程までの操作を思い出す。あの時俺は、恐らく岡倉の脳に直接アクセスし、「管理者権限」を所得した。その上で、彼女は俺の言う事に従うと言ってのけた。――自分のこれまでの人生を終わらせかねない、破滅的な一言。それを投げかけようと一瞬躊躇する。だが、好奇心がそれに勝った。

「岡倉。ちょっと胸に手を当ててくれないか」
「こう、かな?」

 疑うこともなく、岡倉は両の手を彼女自身の胸の膨らみにあてる。

「ゆっくりと、そのまま揉んでみて」
「うん」

 ふにゅり、ふにゅりと。制服越しでも分かるぐらいには、彼女のオッパイはその大きさを主張している。それを無遠慮に扱うというのだから、肉感を持ってソレが動くのは必然というもの。ごくり、と俺自身が思わず唾を飲みこむほどには、その様子はひどく蠱惑的だった。恥ずかしいのか、彼女の顔は真っ赤になっている。

「な、なあ。胸を揉んでどうよ」
「どう、って……特に何も感じないかなぁ。加古くんに見られてるのは恥ずかしいけど」

 羞恥心こそ持ち合わせていながら、この場に居る事を咎めてはこない。一線を越えてしまっては、歯止めは効かない。エスカレートするように次の命令を下す。

「普段やってるように、さ。オナニーしてみてよ」
「うん。えっと……でも見られてると緊張するなぁ」
「えぇと。その事に関しては『気にしないように』して。あと、何をするかも口で言ってくれると助かる」
「――うん、わかった」

 穴があったら入りたい、とでも言いたそうな羞恥の表情は、一瞬で無表情に戻る。無造作に自らの衣服を外そうとする様子を見て、慌てて俺は止める。

「ちょっ、ちょっと待ってくれ。スカートとワイシャツはそのままで。緩めてもいいけど着たままにしてくれ」
「うんっ」

 フェティシズム、という話ではない。万が一誰かが来た時に全裸だったらどうにもならないが、着衣していれば数秒あれば取り繕うことが出来る。無茶な要求の結果、それぞれ制服を着たまま岡倉は下着を脱ぐことにしたようだ。薄桃色のショーツに、花柄の飾りがあしらわれたもの。そっと生徒会室の椅子に置かれたソレは、古い生徒会室の茶色い空間に異質な存在として現れる。

「アソコ……おまんこをっ……んぅ……うぅぅ……♡ 撫でてるっ……♡」

 指先で、ゆっくりと擦るように上下運動。同時に悶えるような甘い声を響かせる。ただ単調に揉んでいるだけだった胸の愛撫が、乳首を少しだけつねるものに変わる。吐息が熱っぽく、先程までの赤い顔とは少し違う顔つき。何かを我慢するかのごとく、唇をキュっと真一文字に。

「ふっ……♡ んっ……♡ ゆび、はいったっ……♡♡」

 PCの排気音だけが響いていた生徒会室に、水音が混じる。ちゅぷり、くちゅりと粘っこさの混じった音は、やがて岡倉の座っていた椅子を濡らす。広がった液体が夕日を反射し、ソコに広がっているものを主張していた。単純な興味で、聞いてみる。

「道具とかって使わないのか」
「家の誰かに見つかるとっ……はぁっ……♡♡ 怖いからっ……んぁっ……♡♡」

 その点については、男子女子関わらず同じなのだろう。コチラもそんなものを家族に見られでもしたら数週間立ち直れないかもしれない。どうでもいい事に気がそれた俺をよそに、岡倉の指は陰核を弄り始めていた。

「んんっ♡ ここっ♡♡ このあたりっ……♡♡」

 まじまじと女性の『ソコ』を見つめた事のない俺は、どのようにして彼女が気持ちよくなっているのかが分からない。だが蕩けた顔をして自分の体を慰めている岡倉を見ていると、俺自身の興奮も抑えられなくなる。

「あっ♡♡ ああぁぅ♡♡ クリっ♡ もっとはげしくっ♡♡♡」

 指先を激しく擦らせ、ともすれば自分の体を痛めつけるかのような行為。だが嬌声と吐息は、発情しきった雌のソレだった。自らの生殖本能を満たすための、必死の自慰行為。

「んっ♡♡ んううううぅ――♡♡♡♡♡」

 悶えるような、唸り声の様な。しかし、数度彼女の躰がビクンと跳ねる。イッたのだ、と俺が理解したのは彼女の椅子から垂れた潮が、生徒会室の床に落ちた時。再び彼女の手が動きだし、水音が激しくなる。中指をそっと彼女のワレメに差し込み、何かを探り当てるかのような動作。

「うぅっ……♡ あっ♡♡ ここっ♡♡♡ いっ♡♡ あっ♡♡♡」

 膣の中のスポット。そこに彼女の指が触れたであろう瞬間に、岡倉はぎゅっと唇を締めた。我慢を止めてしまうと、とめどなく溢れてしまいそうな何か。岡倉が全身で、快楽を味わっているのがわかる。彼女から漂う淫気に侵され、俺自身も鼓動が早まっていた。

「岡倉。…………おっぱい揉んでもいい?」
「はぁ……はぁっ……♡ いいよっ……♡」

 疲れ果てた彼女に、我ながらとんでもないことを要求してしまったと思う。だが、彼女の承諾を得た以上止める道理もない。働かない理性は、既に本能に屈している。自分の手を岡倉の制服に潜り込ませると、暖かくやわらかい感触が手に収まった。ブラに包まれた乳房を、その形を確かめるように軽く摘まむ。

「んっ♡♡♡」

 既に出来上がっていた彼女は、それだけの行為で喘ぐ。罪悪感があったのは事実。でも、理性の声は圧倒的な本能にかき消される。もっと、もっと。コイツをよがらせたい。

「うぁぁっ♡♡♡ むねっ♡♡♡ じんじんするっ♡♡♡」
「指が止まってるぞ、ほら自分でもオナれっ」
「ひぁっ♡♡ あああっ♡♡♡♡」

 幼馴染の女友達だった岡倉が、こんな淫らな姿になっている。俺がそうさせているのだ。今すぐ止めて、彼女に謝るべきだという思いがよぎる。――だが、謝る必要などあるのだろうか。現に彼女は、全身で悦びを表現しているのだ。その彼女をもっと楽しませるだけの行為を、止める理由なんてない。トドメとばかりに乳首に触れる指先の力を、少し強めに摘むと。

「イケっ、イキ狂えっ」
「あっ♡ ――あ゛ぁっ♡♡♡ うぁっ♡♡♡ ああぁ♡♡♡ ひゃだ♡♡ イッてるのに♡♡♡ とまりゃぁっ♡ ないぃ♡♡♡ ひぐぅぅ♡♡♡ ビクビクすりゅのっ♡♡♡♡ どめてぇぇ♡♡♡♡」

 既に吹き出していた絶頂の潮が、何度も何度も彼女から溢れる。その度に体をヒクつかせ、アヘ顔をさらす岡倉。演技なんかじゃない。間違いなく彼女は俺によって、俺の言葉によって淫靡に果て続けている。ならば――

「少し落ち着いて。……なぁ、『コレ』鎮めてくれ。咥えてくれよ」
「はぁっ……はぁっ……♡ うんっ……♡ あむっ♡」

 痛いほどに勃起した俺のペニス。それを制服のチャックから取り出しても、岡倉は悲鳴一つ上げずにフェラしてくれる。生暖かく、粘っこい感覚が全体に伝わってきてとても気持ちいい。舌のザラザラした感覚が敏感なところに伝わってくる。懸命に俺の息子に奉仕している岡倉をみると、余計に自分の興奮が抑えられなくなってしまう。

「じゅるるっ♡ むぅぅ♡ はふぅ♡♡ ふーっ♡♡」

 こんな物を口に突っ込まれたら吐き気もするだろう。でも、岡倉はあくまで俺を感じさせるよう、舌先での愛撫を止めない。まるでソレが愛おしいものであるかのように、繊細にねっとりと口の中でペニスを犯す。犯されているのは、岡倉なのか俺なのか。

「んぐっ♡……ぐぐぅ……♡♡」
「やばいっ、出てしまう……飲んでくれ、飲み込んでくれ!」
「ふぁうぅ……♡♡」

 俺はこんなに早漏だったろうか。いや、余りにも気持ち良かったせいだ。自分で扱いていたときの何倍もの勢いで放出される。岡倉の口に飛び込んだソレは、一瞬彼女の口腔内を満たし、息を詰まらせた。それでも彼女はえづくことなく、肉棒を舌で舐めとっている。ちゅぷり、と水音を立てて肉棒を口オナホから引き抜くと、唇を閉じていた彼女が少し苦しそうにしながら、ごくりと嚥下する。

「ううぅん……♡ にがいなぁ……♡ べたべたするし……」
「綺麗にしてくれよ、これ」
「はい……ちゅっ♡ ちゅぅぅっ♡♡」

 竿の中に残っていた精液すら、全て飲み込まんとばかりの吸い付き。腰が持っていかれそうな快感を覚える。ゆっくりと引き抜きながらも、亀頭を、ソフトクリームでも舐めるかのように舌先でチロチロと触れられる。こそばゆさと快楽と、こんな事をさせている支配感。岡倉のリップの辺りが唾液と、俺の出した液で湿って艶やかに光る。無自覚に色気を出し続けている彼女を前にして、もう一度興奮しそうになる。だが、もうそろそろ時間だ。

「なぁ、岡倉」
「ごくんっ♡ ……なぁに?」
「もしも。実際にやれとは絶対に言わないけど。俺にこの窓から外に出ろ、って言われたら出るか。例えここが校舎の最上階でも」
「うん、出るよ」
「明日学校に行くとき、全裸でオナニーしながら登校しろって言ったらするのか」
「するよ?」

 それがどうかしたのか、と言わんばかりにキョトンとした表情の彼女。暗い感情が湧き上がる。肉体的にも、社会的にも即死しかねない命令でも、岡倉は従ってしまうのだろう。恐ろしい――だけど、ずっと身近にいた女友達を自分の意のままに操れるということにドキドキが収まらない。

「分かった……さっき言った2つは絶対にするな。――――あぁ、その代わりに」

 言おうとして、少し悩む。俺は、いつから昔の事にこだわる様になったのだろう。

「2人きりのときは美優って呼んでいいか」
「うん。――あっ! そしたら私は昔みたいに、リューちゃんでいい?」
「……あぁ、そうだな」

 胸にチクリと棘がささる。昔、いつも遊んでいた時のお互いの懐かしい呼び方。こんな方法を使わずに彼女と仲良くやる方法もあったのかもしれない。自然と、美優とこんな風に呼び合うことも出来たのかもしれない。

――でも、こんな方法があると知ってしまった後で、後戻りはできない。

「それじゃ今日は帰るか……またメールするから、普段どおりに生活してて」
「あはは……それじゃまた。メール待ってるね、今日は楽しかった。鍵はよろしくね!」

 自然な感じで、岡倉は生徒会室を去ってゆく。しばらく椅子に座ったまま、俺は動くこともできずに背もたれに全身の体重を預けていた。

俺は、彼女の一部分を大きく歪めてしまったのかもしれない。あるいは、自分自身すらも。



 あの日から2週間。その間にいろいろな事を調べていた。HDDに自分のデータと岡倉のデータをそれぞれフォルダごとにコピーし、2つのファイルを比較する。一度に全部のファイルをコピーできないから、作業にはかなり時間がかかった。どのファイルも拡張子が無く、直接確認する事ができない。そのため、無理やりテキストファイルに変換してファイルを開いた。

「これも同じか」

 保存されているフォルダ、及びファイルは岡倉と俺とでほとんど同じ。人間のDNAは、99.9%近くが同じもの。個体差を生むのは残り0.1%程度のズレによるものだ、という事を生物の授業で聞いた覚えがある。そうなると、一致しているのは生命を維持するための機能としてのファイルだろう。弄るわけにはいかない。

「おや、これは全く違うやつ……」

 0.1%というほど珍しくは無いが、2人の間でフォルダ名が同じものの、全く中のデータが異なるケースもある。勝手な予想だが、後天的に人間が得るようになったもの、経験や技量、記憶にあたるデータなのではないかと推測している。この一部をコピーして脳に送信すれば、その記憶を手に入れられる。自分で試してみたところ、岡倉の友人と遊んだ記憶を『思い出す』事が出来るようになった。だが記憶とは関係ないファイルもあるため、あまり体にポイポイ入れることが出来るものでもなさそうである。

「さてこれは、同じやつ……じゃないな。何だこれ……?」

 俺と岡倉の同名ファイルで、ほとんどのテキストデータが一致している。だが、末尾の46段目の記述だけが違った。――珍しい。全く同じか、全く違うかしか無かったのに、部分的に似ているファイルが見つかるとは。

「気になるな……?」

 個人差の無い、人間及び生物としての機能に関わっているらしいファイル。個人差の大きい、記憶を司ると思われるファイル。そして3つ目に、人と共通点があるものの微妙に異なるファイル。新しいこのデータをどう扱うことできるのだろう。

 2人だけの比較では足りない。もう1人分誰かのデータが欲しいのだが、と思いつつファイル名をメモしておいた。そろそろデータチェックだけでは飽きてきた、実証実験を行いたいところ。それに学校での活動拠点も欲しい所だ、生徒会室に岡倉と2人っきりになった時だけでは作業が難しい。考えていた作戦を、実行に移す時が来た。
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