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11:虎の口
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いつもは講義が終わってからも少しだけ友人と無駄話をしてから部室に向かうが、その日は4限が終わった途端に声をかけてくる友人に「ごめん!俺、急ぐから」とだけ言い残して速攻で部室に向かった。
もちろん理由は、ヒロ先輩から昼休憩中に聞いてしまった小日向教授のユキへのちょっかいを妨害する為だ。
ユキが講義を受けているであろう理学部棟より俺が現在いる文学部棟の方が部室に近いのだから、授業を終えてすぐに向かえばユキより絶対に早く部室に着ける。
だから、ユキより先に小日向教授に会えるはずだ。
知ってしまったからには早めに釘を刺しておかなくては。
ユキにはもう触るんじゃねぇとしっかり牽制してやる。
会った事もない、しかも教授だから一筋縄ではいかないだろうけど俺のこの話術があればきっとなんとかなる、そう自分を信じて部室へと急いだ。
息を切らしながら階段を駆け上がり部室棟2階の1番奥にある映画研究部の部室に近づくと、その扉の前には黒いジャージの上下でその上に白衣を着た男性が立っていた。
俺の気配を感じたのか、その男はふとこちらを向いた。
そいつは身長も体格も俺と同じ位だったが、あっさりした典型的な日本人顔の俺とは全く違い、東南アジア系のかなり濃い顔立ちではあるが、そこそこ整った顔をしていた。
白衣を着ているから多分こいつが小日向教授なのだろうけど……俺が予想していたよりずっと若い。
見かけ的には30代半ばといったところだろう。
「君はもしかして、速水君……かな?」
にっこり微笑んだその顔は、まるで最近見たインド映画の俳優のようだった。
過去に脚本賞を取ったような優秀な教授なら60代くらいの年配だと勝手に想像していたので、俺はまずその若さに驚いたし、日本人離れした顔の濃さに更に驚いてしまっていた。
「はい……え、っとぉ……あの、小日向、教授……ですか?」
ついさっきまで『釘を刺してやる』なんて息巻いていたのに、すっかり毒気を抜かれてしまった。
「あぁ僕が『映画研究部』の顧問の小日向ですよぉ。いやぁ~ごめんねぇ~全然挨拶出来ずで……いつも九条君から君の話は聞いてるよ~とても話し上手な上にアイデアマンらしいじゃなぁ~い……」
もの柔らかにのんびりと話すその男の口元は微笑んでいるが、目が笑っていなかった。
俺を見るその目はゾッとするほどに冷たかった。
その冷たい目を見た途端に普段は滅多に汗を掻かない俺だが、じんわりと背中に汗が吹き出す感覚がした。
一見穏やかに微笑んでいるように見えるのに酷く恐ろしく、見る者を凍えさせるような冷笑がこの男の本性を表しているようだった。
俺の第六感が即座に『こいつはヤバい』と知らせている。
「ねぇ速水くぅ~ん……君はさぁ……とても、とぉ~っても……九条君と仲良しらしいねぇ~?」
わざとらしまでにゆっくり戯けたように話すが、その目は値踏みをするように冷たいままでじっと俺を見据えている。
それはまるで獲物を狙う空腹の虎のようで恐ろしい。
だが俺はこつの獲物になんてなってやるつもりはない。
こんな脅しみたいな視線に負けるもんかと精一杯の虚勢を張って「はい、俺とユキは仲良しです。とっても仲良しです」と『とっても』をかなり強調し、おまけに『それが何か?』とばかりに不敵に笑ってやった。
俺のその態度に、小日向教授は「へぇ……」と両眉を上げ面白いおもちゃを見つけた時のような嬉しそうな声を出した。
そして今度は右口角だけを大きく引き上げ、ニヤリと笑ってみせた。
「君ぃ……いいねぇ……今ままで九条君の周りにはいなかったタイプだなぁ~面白いなぁ~~……」
どうやらこの空腹の虎は狩る前に獲物で少し遊ぼうと考えたらしい。
さて、どう躱してやるかな。
「あっ!!はやみぃ!!?」
張り詰めた空気の中で俺が身構えた途端にそれを突然ぶち破るような馬鹿みたいに明るい、ユキの大きな声が廊下中に響いた。
その声を聞いた途端、小日向教授の視線は即座に俺からユキへと動いた。
「んだよぉ!お前、今日はもう来てんのかよぉ!!いつも俺が一番乗りなのにぃ~~!!ちくしょ~~負けたぁ!あ、そうだ!速水、そちらが昼に話してた小日向先生なんだぞぉ!先生!今日もありがとぉ!」
いつものようにガキみたいにはしゃいで、ベラベラ喋りながらユキが早足でこちらへと向かってくる。
するとさっきまでの恐ろしげな様子などは俺の夢だったのか?!というくらい一切合切さっきまでの殺気を消し去り、心の底から嬉しそうな声を出した満面笑顔の小日向教授がユキに向かって大きく両手を広げ駆け寄ろうとした。
「いやぁぁ~~いいんだよぉぉ~!九条君はやっぱり可愛いなぁぁぁ~~!」
その小日向教授のあまりにも素早い態度の変化と行動に俺は言葉を失い、その場でただ目を見開いて驚いてしまった。
「うあぁ!先生、マジやめろって!!昼間もそうやってたけど、俺は抱きついたりしませんからっ!いっつもそんな冗談ばっかして!ほら速水も驚いちゃってますよ!な?!速水ぃ……!」
ユキに触ろうと必死にバタバタと両手を動かす小日向教授を中心にユキは大きく円を描くようにして避け、素早く俺の背中に駆け込んでその身を隠した。
「えぇぇぇ~!?なんでぇ!?柴田君だけじゃないのぉ?速水君も君のガードマンなのぉ?まさか……彼も君に触れるの?」
最後の言葉は多分、俺に投げかけられていた。
だってユキが俺の背中に隠れた途端に、俺はさっきの冷たい目で再び鋭く睨まれたからだ。
「はい、速水も……大丈夫なんですぅ……!」
背中にぎゅっとしがみつくユキのその声はどこか頼りなく、酷く庇護欲をくすぐられてしまった。
ユキの体温を背中に感じながら、俺は一旦目を閉じてゆっくり息を吐いた。
そして心を決めた。
よっしゃ!じゃあ俺がこの虎から、可愛い子猫の様なユキを守ってやろうじゃないか!
俺はさっきよりも大胆不敵に笑い、背中に隠れるユキを庇うようにずいと一歩前に出て自分から小日向教授に近寄った。
「ええ、そうなんですよ!俺はね、ユキの身体のあっちこっち、どこでも触れますよっ!なんせ俺とユキは『特別』仲良しなもんでねっ……!」
はっきりきっぱりその目を見つめて宣言してやると、小日向教授にとって俺のその言動は意外だったのか、さっきのように興味深そうに両眉をクイッと上げた。
「なるほど……『特別』ねぇ……」
小日向教授は自分で言ったその言葉を噛み締めるように目を閉じて何度か頷き、そっと目を開いて今度は俺に対しても優しい目で微笑んだ。
「じゃあ……これからもちゃんと守ってやってよ。九条君はすぐ狙われちゃうからさぁ……」
さっきまでの俺に対しての肉食獣のような恐ろしさはどこに行ったんだ!というほど突然ころっと変わったその穏やかな笑顔に俺は呆気に取られてしまった。
図らずも俺が気を抜いてしまったその瞬間、小日向教授はたちまちさっきまでの意地悪な顔に戻り「こんなふうに、ねっ……!」と素早く俺の背後に向けて手を伸ばした。
「ぅああっ!!!やぁ……ッツ!!」
本当にほんのちょっと気を抜いただけだったのに、その一瞬の隙に小日向教授は俺の背中に隠れていたユキの手首を掴み、自分の腕の中に引き寄せてしまっていた。
小日向教授の腕の中でバタバタと暴れるユキを一瞬だけ呆然と眺めてしまったが、俺はすぐに我に返ってユキを取り返そうと怒りを込めて手を伸ばした。
「て、めぇっ……!!」
ニヤニヤと嬉しそうにユキの上半身を触りまくる小日向教授を突き飛ばしてでもユキを奪い返そうと勢いよく手を伸ばしたのに、いきなり聞こえた「Hi、Professor」の一言が全てを止めた。
その声が聞こえた途端、ユキを抱きしめていた小日向教授の両腕が「うひゃあぁっ!!」という無様な声と共にユキから離れた。
「うぁ~~んっ!!はやみぃっ!!!」
すぐに小日向教授の腕から逃れたユキが正面から勢いよく俺に抱きついてきたから、俺はそれを困惑したままで受け入れて抱き返した。
ユキを抱きしめながらも目の前で身体を捩ってくすぐったがる小日向教授を何事だと眉を寄せたままで見ていたら、その背後から小日向教授の脇をくすぐる高野がチラッと見えた。
「Hi、Boys……今日も仲良しだねぇ……フフフ……」
極めて冷静に俺たちに挨拶しつつも小日向教授の脇をくすぐり続ける高野に、俺は驚いて何も言えずただあんぐりと口を開いた。
こいつ、やっぱり只者じゃねぇ……!!
「ちょ、ちょぉ~~っとぉぉぉ!!高野くぅ~ん!!たんま!!ほんと!待って!!うひゃひゃひゃっ……!!ちょぉ~~~!高野君ッ!!」
身体全体を捻りながらなんとか高野の手から逃れた小日向教授が、はぁはぁ息継ぎをしながら高野に向き直った。
きっと凄い顔で高野を睨んでいるんだろうと背後から見てても容易に予想できたが、高野は小日向教授の様子など全く気にした様子も見せず、いつものように不気味に口元を歪めニヤリと笑い、右手の人差し指でずり落ちた眼鏡を直した。
「Professor ……ダメですよぉ……ユッキーに悪戯したらぁ~本当にNaughtyですね……」
高野はそう言うとそのままスルリと猫のように小日向教授の横をすり抜けて、俺達の方へと向かってきた。
「By the way、実は僕もユッキーに触れるんですよぉ~Professor……」
そのまま俺達に近寄ってきた高野は眼鏡を押さえていた右手の人差し指をゆっくりと前に出し、ちょうど何事かと振り返ったユキの頬に突き立てた。
「Oh、ユッキー……今日もSo Cuteだねぇ……フフフ……」
不気味な笑顔のままでぐりぐりとユキの頬を無遠慮に押しまくるから、俺もユキも固まってしまった。
「See?触れるでしょ?フフフ……なんせ僕とユッキーは去年のFestivalではお互いの毛を剃り合った……」
「!!ばぁっかっッツ!!それは内緒だってっ……!!!」
高野が最後まで言う前に、ユキが凄い勢いで俺の腕の中から離れて高野に飛びかかり、その口を両手で塞いだ。
ユキに口を塞がれなからも高野は何かを言い続けていたが、残念だがユキがそれをかき消すように奇声を上げており、何を言ってるかは聞こえなかった。
それにしても……『毛を剃り合った』って何だ!?
どこの毛だぁっつ!??
去年のフェスティバルってきっと学祭の事だから、あの女装だろ……?
比較的、露出は少ない衣装に見えたが……
一体、どこの毛を剃り合ったっていうんだっ!??
俺がそんな事を悶々と考えている間に、ユキはやっと高野の口から両手を離した。
ユキから解放された高野は別段、なんの感情の変化も見せず、ユキの頬に突き立てていた人差し指を少しじっと眺めてから、そのままくるりと後ろを向いた。
そして高野はその人差し指を立てたままで、それまで背後にいた小日向教授へと歩を進めた。
こいつの行動パターンはいつも奇抜で予想が出来ず、俺は困惑しながらその背を無言で見つめた。
ユキも肩で息をしながら、高野が次は何をするつもりだと不安そうに眺めていた。
きっと小日向教授もそんな高野が不気味だったのか、明らかに狼狽した顔をして怯えたように一歩後ずさった。
みんなが困惑して見つめる中で高野はそのまま一直線で小日向教授に向かって行き、その人差し指をおどおどする小日向教授の口の中にいきなり突っ込んだ。
「んッッ!!!」
「フフフ……Professor……これがユッキーの味ですよぉ……Is it good?」
そんな訳の分からない事を言いながら高野がその指をドリルのように口の中で動かすから、小日向教授は唸りながら涙目になっていた。
一頻り嫌がらせのようにそんな事をしてから、高野はその指を呆然とする小日向教授の口からこれまたいきなり引き抜いた。
そしてぬらぬらと唾液で濡れたその指を見てニヤリと笑った高野がその指を躊躇いもなく自分の口元に持っていき、そのまま咥え込んだ。
「「「!!!!!!」」」
俺もユキも小日向教授までもが、驚き過ぎて声にならない悲鳴を上げた。
こ……こいつは本当に、マジで只者じゃねぇぇぇッツ!!!
だけど、高野の奇行はこれだけじゃなかった。
高野はその指をちゅぽんと音を立てて自分の口から引き抜き、今度は俺の方を向いてニヤリと笑った。
俺はさっき小日向教授に睨まれた時よりも背中に汗を掻き、引き攣った顔で後ずさったが、そこにはまだ施錠されたままの部室の扉があるだけでそれ以上逃げられなかった。
「さぁコウ君……It’s your turnだよぉ……今、この指にはねぇ……ユッキーとProfessor、その上、僕の味がついてるよぉぉ……さぁTry this……フフフ……」
そんな不気味な事を呟きながら濡れた指を立てたままこちらに来ようとするもんだから、俺は背中だけじゃなく額にも汗を掻きながら必死に無駄だと分かっているのに後ろ手で部室の扉のノブを捻った。
俺の前にいるユキは俺を何とかして守ろうとは思っているようだが、潔癖症だと言っているユキにあの指をどうにかする事など出来るはずもなく、ただオロオロとするばかりだった。
「フフフ……コウ君、さぁ……Don’t be afraid……」
ゆっくりと一歩ずつ着実に近づく高野にもうダメだと観念して目を閉じた瞬間、「ちょっと待ってぇ!!蓮君!!!」と叫ぶ声と共に、ドスンドスンと人が駆けてくる大きな足音が聞こえた。
「良かったぁ!!ひぃ君!!」
あからさまにホッとしたユキの声がして俺はそっと目を開けると、そこには大きな身体のヒロ先輩が必死の形相で高野の手首を後ろから掴んでいる姿があった。
ヒロ先輩も混乱していたが、それでもどうにか今のこの状況を把握しようと「何があったの!?」と息を切らしながらも唖然とする俺に尋ねた。
「た、高野が……教授と高野が舐めたその指を俺に……」
「No、ユッキーの味もついてるよぉ」
困惑しながら話す俺に被せるように飄々と高野がニンマリと笑って振り返り、ヒロ先輩を見た。
「あぁコウ君の前に……Captainもこの味に加わる?フフフ……じゃあサクちゃんがLastだねぇ、フフフ……」
やけに嬉しそうな高野がヒロ先輩に掴まれた手の人差し指を回しながら押し上げ、ヒロ先輩の顔に近づけようとした。
「あっ……」
が、その指はヒロ先輩の背後から突然現れた豊国が手にしていたティッシュによって拭き取られてしまった。
「蓮先輩、エチケットとして人に触れる手は清潔にしましょうね?あ、このウエットティッシュは除菌率99%なのに肌にも優しいやつですから敏感肌でも大丈夫ですよ!」
特徴的な大きな口で穏やかに笑いながら豊国がバトンタッチするように高野をヒロ先輩から引き取り、腕を掴んで脇に寄せた。
微笑んだままで高野を自然に脇へと誘導しながらも、豊国は扉の前から退くようにと俺に目配せをしてきた。
最初はその目配せの意味が分からなかったが、ヒロ先輩が鞄から部室の鍵を取り出している姿が見え、その意図を瞬時に把握した。
だから俺はすぐに俺の前で呆然としているユキの肩を掴んで、豊国とは逆の方向の脇へと寄って扉の前から退いた。
その隙にヒロ先輩がすぐに部室の鍵を開け、扉をわざとらしいまでに大きく開いた。
「さぁ今日も張り切って脚本の話をしようかぁ!さぁさぁみんな、中に入って!あ、教授はお忙しいでしょうからどうぞご自分の研究室にお戻り下さい!ではっ!!」
「そうですね!俺、実は少しプロット書いてきたんでご意見下さい!あぁ是非、蓮先輩からもご意見欲しいですッツ!さぁ中に入りましょうね!教授はまた来週の飲み会でゆっくりお話させて下さい!ではっ!」
見事なコンビネーションでヒロ先輩と豊国が有無を言わさずに高野を部室の中に連れ込んでいった。
2人の見事な高野の扱いっぷりに感嘆しつつ、俺はユキの肩を掴んだまま部室に入ろうとしたが、背後から聞こえた小日向教授の咳払いがそれを止めた。
俺はユキに「先に中に入ってろ」とだけ言ってユキの背を押して部室に押し込み、すぐに振り返って小日向教授と対峙した。
「さっきは隙を突かれましたがもうあんなミスは犯さない。次は絶対にあんたにユキを触らせない」
真っ直ぐに目を見て言った俺に、小日向教授は「そう」と穏やかに微笑んだ。
「速水君、君は分かっているのかい?君は今、『虎の口へ手を入れる』ような事をしているんだよぉ?」
穏やかに微笑んでいた顔が、一瞬で冷笑に変わった。
しかしさっきの無様な小日向教授を見た後では、そんな脅しなど俺には何の威力もなかった。
「虎もネコ科の動物でしょう?『鳴く猫は鼠を捕らぬ』ってことわざを、あなたはご存知でしょうか?」
俺が皮肉たっぷりに言い捨ててやると、冷笑を浮かべていた小日向教授が幾分表情を和らげ「ほぉ……」と感嘆の声を出した。
「ことわざにことわざで言い返すとは……速水君、君は本当に頭がいいんだねぇ。そういう子は嫌いじゃないよぉ。面白いなぁ……いいね……君と話していると創作意欲がどんどん湧き上がってくるよぉ……ククク……」
心底楽しそうにひとしきり笑ってから、小日向教授は白衣のポケットに手を突っ込み、そのまま俺に背を向けた。
「でもまぁ今日はこの位にしておくよぉ。でもね、僕は口先だけで行動しないなんてことはないからねぇ……また飲み会でいっぱい話そうよぉ……じゃあね、ネズミ君」
俺に背を向けたままでそう言い残すと、小日向教授は振り返りもせずにそのまま立ち去っていった。
もちろん理由は、ヒロ先輩から昼休憩中に聞いてしまった小日向教授のユキへのちょっかいを妨害する為だ。
ユキが講義を受けているであろう理学部棟より俺が現在いる文学部棟の方が部室に近いのだから、授業を終えてすぐに向かえばユキより絶対に早く部室に着ける。
だから、ユキより先に小日向教授に会えるはずだ。
知ってしまったからには早めに釘を刺しておかなくては。
ユキにはもう触るんじゃねぇとしっかり牽制してやる。
会った事もない、しかも教授だから一筋縄ではいかないだろうけど俺のこの話術があればきっとなんとかなる、そう自分を信じて部室へと急いだ。
息を切らしながら階段を駆け上がり部室棟2階の1番奥にある映画研究部の部室に近づくと、その扉の前には黒いジャージの上下でその上に白衣を着た男性が立っていた。
俺の気配を感じたのか、その男はふとこちらを向いた。
そいつは身長も体格も俺と同じ位だったが、あっさりした典型的な日本人顔の俺とは全く違い、東南アジア系のかなり濃い顔立ちではあるが、そこそこ整った顔をしていた。
白衣を着ているから多分こいつが小日向教授なのだろうけど……俺が予想していたよりずっと若い。
見かけ的には30代半ばといったところだろう。
「君はもしかして、速水君……かな?」
にっこり微笑んだその顔は、まるで最近見たインド映画の俳優のようだった。
過去に脚本賞を取ったような優秀な教授なら60代くらいの年配だと勝手に想像していたので、俺はまずその若さに驚いたし、日本人離れした顔の濃さに更に驚いてしまっていた。
「はい……え、っとぉ……あの、小日向、教授……ですか?」
ついさっきまで『釘を刺してやる』なんて息巻いていたのに、すっかり毒気を抜かれてしまった。
「あぁ僕が『映画研究部』の顧問の小日向ですよぉ。いやぁ~ごめんねぇ~全然挨拶出来ずで……いつも九条君から君の話は聞いてるよ~とても話し上手な上にアイデアマンらしいじゃなぁ~い……」
もの柔らかにのんびりと話すその男の口元は微笑んでいるが、目が笑っていなかった。
俺を見るその目はゾッとするほどに冷たかった。
その冷たい目を見た途端に普段は滅多に汗を掻かない俺だが、じんわりと背中に汗が吹き出す感覚がした。
一見穏やかに微笑んでいるように見えるのに酷く恐ろしく、見る者を凍えさせるような冷笑がこの男の本性を表しているようだった。
俺の第六感が即座に『こいつはヤバい』と知らせている。
「ねぇ速水くぅ~ん……君はさぁ……とても、とぉ~っても……九条君と仲良しらしいねぇ~?」
わざとらしまでにゆっくり戯けたように話すが、その目は値踏みをするように冷たいままでじっと俺を見据えている。
それはまるで獲物を狙う空腹の虎のようで恐ろしい。
だが俺はこつの獲物になんてなってやるつもりはない。
こんな脅しみたいな視線に負けるもんかと精一杯の虚勢を張って「はい、俺とユキは仲良しです。とっても仲良しです」と『とっても』をかなり強調し、おまけに『それが何か?』とばかりに不敵に笑ってやった。
俺のその態度に、小日向教授は「へぇ……」と両眉を上げ面白いおもちゃを見つけた時のような嬉しそうな声を出した。
そして今度は右口角だけを大きく引き上げ、ニヤリと笑ってみせた。
「君ぃ……いいねぇ……今ままで九条君の周りにはいなかったタイプだなぁ~面白いなぁ~~……」
どうやらこの空腹の虎は狩る前に獲物で少し遊ぼうと考えたらしい。
さて、どう躱してやるかな。
「あっ!!はやみぃ!!?」
張り詰めた空気の中で俺が身構えた途端にそれを突然ぶち破るような馬鹿みたいに明るい、ユキの大きな声が廊下中に響いた。
その声を聞いた途端、小日向教授の視線は即座に俺からユキへと動いた。
「んだよぉ!お前、今日はもう来てんのかよぉ!!いつも俺が一番乗りなのにぃ~~!!ちくしょ~~負けたぁ!あ、そうだ!速水、そちらが昼に話してた小日向先生なんだぞぉ!先生!今日もありがとぉ!」
いつものようにガキみたいにはしゃいで、ベラベラ喋りながらユキが早足でこちらへと向かってくる。
するとさっきまでの恐ろしげな様子などは俺の夢だったのか?!というくらい一切合切さっきまでの殺気を消し去り、心の底から嬉しそうな声を出した満面笑顔の小日向教授がユキに向かって大きく両手を広げ駆け寄ろうとした。
「いやぁぁ~~いいんだよぉぉ~!九条君はやっぱり可愛いなぁぁぁ~~!」
その小日向教授のあまりにも素早い態度の変化と行動に俺は言葉を失い、その場でただ目を見開いて驚いてしまった。
「うあぁ!先生、マジやめろって!!昼間もそうやってたけど、俺は抱きついたりしませんからっ!いっつもそんな冗談ばっかして!ほら速水も驚いちゃってますよ!な?!速水ぃ……!」
ユキに触ろうと必死にバタバタと両手を動かす小日向教授を中心にユキは大きく円を描くようにして避け、素早く俺の背中に駆け込んでその身を隠した。
「えぇぇぇ~!?なんでぇ!?柴田君だけじゃないのぉ?速水君も君のガードマンなのぉ?まさか……彼も君に触れるの?」
最後の言葉は多分、俺に投げかけられていた。
だってユキが俺の背中に隠れた途端に、俺はさっきの冷たい目で再び鋭く睨まれたからだ。
「はい、速水も……大丈夫なんですぅ……!」
背中にぎゅっとしがみつくユキのその声はどこか頼りなく、酷く庇護欲をくすぐられてしまった。
ユキの体温を背中に感じながら、俺は一旦目を閉じてゆっくり息を吐いた。
そして心を決めた。
よっしゃ!じゃあ俺がこの虎から、可愛い子猫の様なユキを守ってやろうじゃないか!
俺はさっきよりも大胆不敵に笑い、背中に隠れるユキを庇うようにずいと一歩前に出て自分から小日向教授に近寄った。
「ええ、そうなんですよ!俺はね、ユキの身体のあっちこっち、どこでも触れますよっ!なんせ俺とユキは『特別』仲良しなもんでねっ……!」
はっきりきっぱりその目を見つめて宣言してやると、小日向教授にとって俺のその言動は意外だったのか、さっきのように興味深そうに両眉をクイッと上げた。
「なるほど……『特別』ねぇ……」
小日向教授は自分で言ったその言葉を噛み締めるように目を閉じて何度か頷き、そっと目を開いて今度は俺に対しても優しい目で微笑んだ。
「じゃあ……これからもちゃんと守ってやってよ。九条君はすぐ狙われちゃうからさぁ……」
さっきまでの俺に対しての肉食獣のような恐ろしさはどこに行ったんだ!というほど突然ころっと変わったその穏やかな笑顔に俺は呆気に取られてしまった。
図らずも俺が気を抜いてしまったその瞬間、小日向教授はたちまちさっきまでの意地悪な顔に戻り「こんなふうに、ねっ……!」と素早く俺の背後に向けて手を伸ばした。
「ぅああっ!!!やぁ……ッツ!!」
本当にほんのちょっと気を抜いただけだったのに、その一瞬の隙に小日向教授は俺の背中に隠れていたユキの手首を掴み、自分の腕の中に引き寄せてしまっていた。
小日向教授の腕の中でバタバタと暴れるユキを一瞬だけ呆然と眺めてしまったが、俺はすぐに我に返ってユキを取り返そうと怒りを込めて手を伸ばした。
「て、めぇっ……!!」
ニヤニヤと嬉しそうにユキの上半身を触りまくる小日向教授を突き飛ばしてでもユキを奪い返そうと勢いよく手を伸ばしたのに、いきなり聞こえた「Hi、Professor」の一言が全てを止めた。
その声が聞こえた途端、ユキを抱きしめていた小日向教授の両腕が「うひゃあぁっ!!」という無様な声と共にユキから離れた。
「うぁ~~んっ!!はやみぃっ!!!」
すぐに小日向教授の腕から逃れたユキが正面から勢いよく俺に抱きついてきたから、俺はそれを困惑したままで受け入れて抱き返した。
ユキを抱きしめながらも目の前で身体を捩ってくすぐったがる小日向教授を何事だと眉を寄せたままで見ていたら、その背後から小日向教授の脇をくすぐる高野がチラッと見えた。
「Hi、Boys……今日も仲良しだねぇ……フフフ……」
極めて冷静に俺たちに挨拶しつつも小日向教授の脇をくすぐり続ける高野に、俺は驚いて何も言えずただあんぐりと口を開いた。
こいつ、やっぱり只者じゃねぇ……!!
「ちょ、ちょぉ~~っとぉぉぉ!!高野くぅ~ん!!たんま!!ほんと!待って!!うひゃひゃひゃっ……!!ちょぉ~~~!高野君ッ!!」
身体全体を捻りながらなんとか高野の手から逃れた小日向教授が、はぁはぁ息継ぎをしながら高野に向き直った。
きっと凄い顔で高野を睨んでいるんだろうと背後から見てても容易に予想できたが、高野は小日向教授の様子など全く気にした様子も見せず、いつものように不気味に口元を歪めニヤリと笑い、右手の人差し指でずり落ちた眼鏡を直した。
「Professor ……ダメですよぉ……ユッキーに悪戯したらぁ~本当にNaughtyですね……」
高野はそう言うとそのままスルリと猫のように小日向教授の横をすり抜けて、俺達の方へと向かってきた。
「By the way、実は僕もユッキーに触れるんですよぉ~Professor……」
そのまま俺達に近寄ってきた高野は眼鏡を押さえていた右手の人差し指をゆっくりと前に出し、ちょうど何事かと振り返ったユキの頬に突き立てた。
「Oh、ユッキー……今日もSo Cuteだねぇ……フフフ……」
不気味な笑顔のままでぐりぐりとユキの頬を無遠慮に押しまくるから、俺もユキも固まってしまった。
「See?触れるでしょ?フフフ……なんせ僕とユッキーは去年のFestivalではお互いの毛を剃り合った……」
「!!ばぁっかっッツ!!それは内緒だってっ……!!!」
高野が最後まで言う前に、ユキが凄い勢いで俺の腕の中から離れて高野に飛びかかり、その口を両手で塞いだ。
ユキに口を塞がれなからも高野は何かを言い続けていたが、残念だがユキがそれをかき消すように奇声を上げており、何を言ってるかは聞こえなかった。
それにしても……『毛を剃り合った』って何だ!?
どこの毛だぁっつ!??
去年のフェスティバルってきっと学祭の事だから、あの女装だろ……?
比較的、露出は少ない衣装に見えたが……
一体、どこの毛を剃り合ったっていうんだっ!??
俺がそんな事を悶々と考えている間に、ユキはやっと高野の口から両手を離した。
ユキから解放された高野は別段、なんの感情の変化も見せず、ユキの頬に突き立てていた人差し指を少しじっと眺めてから、そのままくるりと後ろを向いた。
そして高野はその人差し指を立てたままで、それまで背後にいた小日向教授へと歩を進めた。
こいつの行動パターンはいつも奇抜で予想が出来ず、俺は困惑しながらその背を無言で見つめた。
ユキも肩で息をしながら、高野が次は何をするつもりだと不安そうに眺めていた。
きっと小日向教授もそんな高野が不気味だったのか、明らかに狼狽した顔をして怯えたように一歩後ずさった。
みんなが困惑して見つめる中で高野はそのまま一直線で小日向教授に向かって行き、その人差し指をおどおどする小日向教授の口の中にいきなり突っ込んだ。
「んッッ!!!」
「フフフ……Professor……これがユッキーの味ですよぉ……Is it good?」
そんな訳の分からない事を言いながら高野がその指をドリルのように口の中で動かすから、小日向教授は唸りながら涙目になっていた。
一頻り嫌がらせのようにそんな事をしてから、高野はその指を呆然とする小日向教授の口からこれまたいきなり引き抜いた。
そしてぬらぬらと唾液で濡れたその指を見てニヤリと笑った高野がその指を躊躇いもなく自分の口元に持っていき、そのまま咥え込んだ。
「「「!!!!!!」」」
俺もユキも小日向教授までもが、驚き過ぎて声にならない悲鳴を上げた。
こ……こいつは本当に、マジで只者じゃねぇぇぇッツ!!!
だけど、高野の奇行はこれだけじゃなかった。
高野はその指をちゅぽんと音を立てて自分の口から引き抜き、今度は俺の方を向いてニヤリと笑った。
俺はさっき小日向教授に睨まれた時よりも背中に汗を掻き、引き攣った顔で後ずさったが、そこにはまだ施錠されたままの部室の扉があるだけでそれ以上逃げられなかった。
「さぁコウ君……It’s your turnだよぉ……今、この指にはねぇ……ユッキーとProfessor、その上、僕の味がついてるよぉぉ……さぁTry this……フフフ……」
そんな不気味な事を呟きながら濡れた指を立てたままこちらに来ようとするもんだから、俺は背中だけじゃなく額にも汗を掻きながら必死に無駄だと分かっているのに後ろ手で部室の扉のノブを捻った。
俺の前にいるユキは俺を何とかして守ろうとは思っているようだが、潔癖症だと言っているユキにあの指をどうにかする事など出来るはずもなく、ただオロオロとするばかりだった。
「フフフ……コウ君、さぁ……Don’t be afraid……」
ゆっくりと一歩ずつ着実に近づく高野にもうダメだと観念して目を閉じた瞬間、「ちょっと待ってぇ!!蓮君!!!」と叫ぶ声と共に、ドスンドスンと人が駆けてくる大きな足音が聞こえた。
「良かったぁ!!ひぃ君!!」
あからさまにホッとしたユキの声がして俺はそっと目を開けると、そこには大きな身体のヒロ先輩が必死の形相で高野の手首を後ろから掴んでいる姿があった。
ヒロ先輩も混乱していたが、それでもどうにか今のこの状況を把握しようと「何があったの!?」と息を切らしながらも唖然とする俺に尋ねた。
「た、高野が……教授と高野が舐めたその指を俺に……」
「No、ユッキーの味もついてるよぉ」
困惑しながら話す俺に被せるように飄々と高野がニンマリと笑って振り返り、ヒロ先輩を見た。
「あぁコウ君の前に……Captainもこの味に加わる?フフフ……じゃあサクちゃんがLastだねぇ、フフフ……」
やけに嬉しそうな高野がヒロ先輩に掴まれた手の人差し指を回しながら押し上げ、ヒロ先輩の顔に近づけようとした。
「あっ……」
が、その指はヒロ先輩の背後から突然現れた豊国が手にしていたティッシュによって拭き取られてしまった。
「蓮先輩、エチケットとして人に触れる手は清潔にしましょうね?あ、このウエットティッシュは除菌率99%なのに肌にも優しいやつですから敏感肌でも大丈夫ですよ!」
特徴的な大きな口で穏やかに笑いながら豊国がバトンタッチするように高野をヒロ先輩から引き取り、腕を掴んで脇に寄せた。
微笑んだままで高野を自然に脇へと誘導しながらも、豊国は扉の前から退くようにと俺に目配せをしてきた。
最初はその目配せの意味が分からなかったが、ヒロ先輩が鞄から部室の鍵を取り出している姿が見え、その意図を瞬時に把握した。
だから俺はすぐに俺の前で呆然としているユキの肩を掴んで、豊国とは逆の方向の脇へと寄って扉の前から退いた。
その隙にヒロ先輩がすぐに部室の鍵を開け、扉をわざとらしいまでに大きく開いた。
「さぁ今日も張り切って脚本の話をしようかぁ!さぁさぁみんな、中に入って!あ、教授はお忙しいでしょうからどうぞご自分の研究室にお戻り下さい!ではっ!!」
「そうですね!俺、実は少しプロット書いてきたんでご意見下さい!あぁ是非、蓮先輩からもご意見欲しいですッツ!さぁ中に入りましょうね!教授はまた来週の飲み会でゆっくりお話させて下さい!ではっ!」
見事なコンビネーションでヒロ先輩と豊国が有無を言わさずに高野を部室の中に連れ込んでいった。
2人の見事な高野の扱いっぷりに感嘆しつつ、俺はユキの肩を掴んだまま部室に入ろうとしたが、背後から聞こえた小日向教授の咳払いがそれを止めた。
俺はユキに「先に中に入ってろ」とだけ言ってユキの背を押して部室に押し込み、すぐに振り返って小日向教授と対峙した。
「さっきは隙を突かれましたがもうあんなミスは犯さない。次は絶対にあんたにユキを触らせない」
真っ直ぐに目を見て言った俺に、小日向教授は「そう」と穏やかに微笑んだ。
「速水君、君は分かっているのかい?君は今、『虎の口へ手を入れる』ような事をしているんだよぉ?」
穏やかに微笑んでいた顔が、一瞬で冷笑に変わった。
しかしさっきの無様な小日向教授を見た後では、そんな脅しなど俺には何の威力もなかった。
「虎もネコ科の動物でしょう?『鳴く猫は鼠を捕らぬ』ってことわざを、あなたはご存知でしょうか?」
俺が皮肉たっぷりに言い捨ててやると、冷笑を浮かべていた小日向教授が幾分表情を和らげ「ほぉ……」と感嘆の声を出した。
「ことわざにことわざで言い返すとは……速水君、君は本当に頭がいいんだねぇ。そういう子は嫌いじゃないよぉ。面白いなぁ……いいね……君と話していると創作意欲がどんどん湧き上がってくるよぉ……ククク……」
心底楽しそうにひとしきり笑ってから、小日向教授は白衣のポケットに手を突っ込み、そのまま俺に背を向けた。
「でもまぁ今日はこの位にしておくよぉ。でもね、僕は口先だけで行動しないなんてことはないからねぇ……また飲み会でいっぱい話そうよぉ……じゃあね、ネズミ君」
俺に背を向けたままでそう言い残すと、小日向教授は振り返りもせずにそのまま立ち去っていった。
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