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ついにやってきました、エリカさんのお店に! エリカさんに連れてきて貰ったお店は、繁華街から一つ奥に入った所にあり、店構えもシックな感じで落ち着ける雰囲気があった。
「ここにお店を開いてから、もう10年近くになっちゃったのよね。だから、ちょっと古びた感じなんだけど……」
「全然古びた感じなんてしないですよ! むしろ、シックで落ち着くというか……。とっても素敵なお店です」
「あら、そう? ふふ、ありがとう、侑吾ちゃん」
僕の言葉に、エリカさんが嬉しそうに笑う。別にお世辞を言ったつもりはなく、本当にそう思ったんだ。日本一有名な繁華街にあるお店だと聞いていたから、ド派手なお店だったらどうしよう、と内心ドキドキしていたなんて言えないけれど
。
「多分、バーテンの子がもう来ているはずだから、紹介するわね」
「はい、よろしくお願いします!」
「ふふ、そんなに緊張しなくても大丈夫よ。貴ちゃんにも言われてるし」
「……は、はい」
エリカさんの言葉に、思わず顔が赤くなる。今回、エリカさんのお店で潜入調査というか、バイトとして働きながら犯人を捜すに当たって、何と東郷さんが僕の恋人役としてお店にやってくると言うのだ。
エリカさん曰く、自分のお店はノンケからバイ、ゲイと様々な性癖の人間が集まるから、僕に目を付ける人間もいるかもしれない。だから、万が一襲われる事のないように、東郷さんが僕の恋人として、お店に客としてくる事になった、らしい。元々、エリカさんのお店に何度も行っているらしいので、客として来ることは別に普通なのだろう。
だが、お店に来る理由が、こ、恋人である僕を心配して、というのが何ともいたたまれない。
だってだってだって! 恋人だよ!? 東郷さんと!! まだまだ子供っぽい僕とは違う、大人で格好いい東郷さんの恋人だなんて、きっと誰も信じないんじゃないかな!?
だが、エリカさんは「大丈夫よ~」とカラカラと笑った。
「確かに貴ちゃんはモテるけど、恋人はいなかったしね。それに、相手が侑吾ちゃんなら皆納得するから!」
エリカさんにはそう言われたけど、納得する、かなぁ……。僕的には不安しかないんですが。
そんな事を考えつつ、エリカさんの後について、店の中へと入っていく。店の中も、外観と同じくシックな感じでまとめられていて、いい感じだ。大人の喫茶店みたいな雰囲気なのかな? 壁やカウンターは全て木材で作られていて、いい味を出していた。
「あれ、オーナー、早いですね」
ドアの開いた音に気付いたのか、カウンターの中から茶髪のイケメンが顔を出した。前髪をちょっと長めにしてサイドに流していて凄く格好いい。切れ長の瞳は、キツそうには見えず、穏やかな色を讃えていた。
「おはよう、ショウちゃん。今日は新しいバイトくんを連れて来たのよ」
「新しいバイトですか?」
「そう。週末は忙しいし、ほら、ちょっと色々アタシも忙しくなりそうだからね」
「……なるほどです。わかりました」
ショウちゃん、と呼ばれた茶髪のイケメンは、エリカさんの言葉に頷いて僕に視線を向ける。
「えっと、君が新しくバイトに来る事になった子だよね?」
「あ、はい。侑吾と言います。よろしくお願いします」
事前に、挨拶の時やお客さんに名前を聞かれた時は、下の名前だけを教えるようにとエリカさんと東郷さんに言われていたので、その通りに挨拶をする。
「オレはショウだよ。主にカウンターの中でアルコールを作ったり簡単な軽食を作ったりしているんだ。何かわからない事があれば遠慮なく聞いてね」
「はい!」
エリカさんに、ショウさんはこの店の古株で、ある程度お店を任せている人だと聞いている。僕が窃盗犯を捜すためにバイトに来た事は言わないけれど、仕事の事はどんどん聞けばいいと言ってくれていた。
「後、2人スタッフとして働いてくれている子がいるんだけど、来たら紹介するわね。それとバイトの子にも」
「はい、お願いします」
エリカさんの言葉にしっかりと頷く。僕はここで誰がお金を盗んだのか調べないといけないからね。
「じゃあ、荷物を置く場所を教えるわね」
「はい」
エリカさんに連れられて、ロッカーのある更衣室に向かう。3畳ほどの広さのそこは、ドアを開けた正面にロッカーが並び、ドア側に椅子が2脚置かれていた。
「うちに休憩室はなくてね、ここで着替えたり休憩とったりして貰ってるのよ。で、あそこにあるのが防犯カメラよ」
「思った以上にドア向けに設置されているんですね」
「そう。男同士の職場とは言え、やっぱり着替える姿を映像に残すのはねぇ。とはいえ、ギリギリ端っこのロッカーは映っているんだけどね」
「そうなんですね」
ロッカーは7個あり、空いている1個を荷物入れとして使うように指示される。と言っても、僕の荷物はダミーだ。僕の鞄の中には、ボイスレコーダーが仕込まれていた。もちろん、東郷さんの指示だ
。
『侑吾に怪しいヤツを探せと言っても難しいのはわかっている。だから、荷物の中にボイスレコーダーを仕込んでおく。荷物はロッカーの中に入れておけば、もし犯人がいれば何らかの音が残るはずだ』
(流石は東郷さんだ。僕じゃそんな事考えつかなかったもん)
とりあえず、僕に出来る事はスタッフさんと仲良くなって、色々話を聞くことだと言われている。僕の外見は害がなさそうに見えるから相手も油断して話す可能性がある、らしい。確かに害はないと思うけど、まともに友人もいたことのなかった僕に出来るかな……。
そんな不安を抱えつつ、初めての潜入捜査は始まった。
「ここにお店を開いてから、もう10年近くになっちゃったのよね。だから、ちょっと古びた感じなんだけど……」
「全然古びた感じなんてしないですよ! むしろ、シックで落ち着くというか……。とっても素敵なお店です」
「あら、そう? ふふ、ありがとう、侑吾ちゃん」
僕の言葉に、エリカさんが嬉しそうに笑う。別にお世辞を言ったつもりはなく、本当にそう思ったんだ。日本一有名な繁華街にあるお店だと聞いていたから、ド派手なお店だったらどうしよう、と内心ドキドキしていたなんて言えないけれど
。
「多分、バーテンの子がもう来ているはずだから、紹介するわね」
「はい、よろしくお願いします!」
「ふふ、そんなに緊張しなくても大丈夫よ。貴ちゃんにも言われてるし」
「……は、はい」
エリカさんの言葉に、思わず顔が赤くなる。今回、エリカさんのお店で潜入調査というか、バイトとして働きながら犯人を捜すに当たって、何と東郷さんが僕の恋人役としてお店にやってくると言うのだ。
エリカさん曰く、自分のお店はノンケからバイ、ゲイと様々な性癖の人間が集まるから、僕に目を付ける人間もいるかもしれない。だから、万が一襲われる事のないように、東郷さんが僕の恋人として、お店に客としてくる事になった、らしい。元々、エリカさんのお店に何度も行っているらしいので、客として来ることは別に普通なのだろう。
だが、お店に来る理由が、こ、恋人である僕を心配して、というのが何ともいたたまれない。
だってだってだって! 恋人だよ!? 東郷さんと!! まだまだ子供っぽい僕とは違う、大人で格好いい東郷さんの恋人だなんて、きっと誰も信じないんじゃないかな!?
だが、エリカさんは「大丈夫よ~」とカラカラと笑った。
「確かに貴ちゃんはモテるけど、恋人はいなかったしね。それに、相手が侑吾ちゃんなら皆納得するから!」
エリカさんにはそう言われたけど、納得する、かなぁ……。僕的には不安しかないんですが。
そんな事を考えつつ、エリカさんの後について、店の中へと入っていく。店の中も、外観と同じくシックな感じでまとめられていて、いい感じだ。大人の喫茶店みたいな雰囲気なのかな? 壁やカウンターは全て木材で作られていて、いい味を出していた。
「あれ、オーナー、早いですね」
ドアの開いた音に気付いたのか、カウンターの中から茶髪のイケメンが顔を出した。前髪をちょっと長めにしてサイドに流していて凄く格好いい。切れ長の瞳は、キツそうには見えず、穏やかな色を讃えていた。
「おはよう、ショウちゃん。今日は新しいバイトくんを連れて来たのよ」
「新しいバイトですか?」
「そう。週末は忙しいし、ほら、ちょっと色々アタシも忙しくなりそうだからね」
「……なるほどです。わかりました」
ショウちゃん、と呼ばれた茶髪のイケメンは、エリカさんの言葉に頷いて僕に視線を向ける。
「えっと、君が新しくバイトに来る事になった子だよね?」
「あ、はい。侑吾と言います。よろしくお願いします」
事前に、挨拶の時やお客さんに名前を聞かれた時は、下の名前だけを教えるようにとエリカさんと東郷さんに言われていたので、その通りに挨拶をする。
「オレはショウだよ。主にカウンターの中でアルコールを作ったり簡単な軽食を作ったりしているんだ。何かわからない事があれば遠慮なく聞いてね」
「はい!」
エリカさんに、ショウさんはこの店の古株で、ある程度お店を任せている人だと聞いている。僕が窃盗犯を捜すためにバイトに来た事は言わないけれど、仕事の事はどんどん聞けばいいと言ってくれていた。
「後、2人スタッフとして働いてくれている子がいるんだけど、来たら紹介するわね。それとバイトの子にも」
「はい、お願いします」
エリカさんの言葉にしっかりと頷く。僕はここで誰がお金を盗んだのか調べないといけないからね。
「じゃあ、荷物を置く場所を教えるわね」
「はい」
エリカさんに連れられて、ロッカーのある更衣室に向かう。3畳ほどの広さのそこは、ドアを開けた正面にロッカーが並び、ドア側に椅子が2脚置かれていた。
「うちに休憩室はなくてね、ここで着替えたり休憩とったりして貰ってるのよ。で、あそこにあるのが防犯カメラよ」
「思った以上にドア向けに設置されているんですね」
「そう。男同士の職場とは言え、やっぱり着替える姿を映像に残すのはねぇ。とはいえ、ギリギリ端っこのロッカーは映っているんだけどね」
「そうなんですね」
ロッカーは7個あり、空いている1個を荷物入れとして使うように指示される。と言っても、僕の荷物はダミーだ。僕の鞄の中には、ボイスレコーダーが仕込まれていた。もちろん、東郷さんの指示だ
。
『侑吾に怪しいヤツを探せと言っても難しいのはわかっている。だから、荷物の中にボイスレコーダーを仕込んでおく。荷物はロッカーの中に入れておけば、もし犯人がいれば何らかの音が残るはずだ』
(流石は東郷さんだ。僕じゃそんな事考えつかなかったもん)
とりあえず、僕に出来る事はスタッフさんと仲良くなって、色々話を聞くことだと言われている。僕の外見は害がなさそうに見えるから相手も油断して話す可能性がある、らしい。確かに害はないと思うけど、まともに友人もいたことのなかった僕に出来るかな……。
そんな不安を抱えつつ、初めての潜入捜査は始まった。
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