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6巻
6-1
しおりを挟む第一章 ふたたびの花姫
あなたには、苦しくても目を逸らさない勇気がありますか?
十一月某日。
その日、王都ライデールは、五年ぶりの豊穣祭に沸き立っていた。
豊穣祭自体は毎年行われるものの、五年に一度の大祭は特別だ。
故事にのっとって花姫と呼ばれる五人の娘が選ばれ、王都の大神殿にて奉納舞を披露するのだ。
大神殿での奉納舞は、王族や上位貴族しか観覧できない。しかしその後、大神殿前の広場で再度花姫たちの舞が披露される。
すでに神殿での奉納舞を終えた五人の少女たち――花姫は、広場に設置された舞台に勢ぞろいし、その美しさと衣装の華やかさで民衆の目を釘付けにしていた。
今回花姫に選ばれたのは、十三歳から十五歳の少女たち。
波打つ濃茶の髪をひとすじだけ垂らして結い上げ、青紫の藤の花で飾るのは、最年長のシュレイ伯爵家の令嬢マリア。
真っ直ぐな小麦色の髪を頭の左右で結い上げ、アマリリスで作られた花冠を身に着けているのは、十四歳になるロクシーニ侯爵家の双子姉妹、エリスとアリスだ。
それぞれ白と赤の花を選ぶことで、同じ顔ながら受ける印象が大きく変わっている。
四人目は、クライン伯爵家令嬢コーデリアだ。肩までの藍色の髪には、凛とした彼女の雰囲気に似合う紅色のダリアが飾られている。
そして最後のひとりは、現在十三歳――来月には十四歳になる、リヒトルーチェ公爵家の末娘ルーナだった。
濃さを変えた赤い薔薇の花冠が、銀色の長い髪によく映えている。
皆、それぞれ違ったタイプの美しい少女たち。そんな少女たちが、各々自分に合った花をイメージした衣裳に身を包み、神々への奉納舞を踊るのだ。一目それを見ようと、民衆が会場を埋め尽くすのも無理はない。
特に、ルーナは五年前に最年少で花姫を務め上げており、史上初となる二度目の花姫として注目されていた。
五年前の彼女を覚えている者は、その成長ぶりに深い感慨を覚えていた。
ルーナが前回花姫を務めたのは、八歳。
他の花姫たちに比べてひと際小柄な少女だったが、愛らしい仕草と他の花姫にも引けを取らない美しさで、人々の視線を一身に集めていた。
そして五年の歳月を重ねた今、幼い少女は期待通り――いや、それ以上に美しくなっていた。
身長も伸び、体つきも女の子らしく成長している。花の蕾というよりは、もはや綻ぶ寸前といった様子だろうか。清らかでありながら色香さえ感じられるほどだ。
人々の歓声に笑顔で応えながら、花姫たちは舞台の上を優雅に移動し、円を描くように立ち止まった。途端、割れんばかりの歓声がピタリと止む。
広場の観客たちが息を呑む中、少女たちは右手を高く突き上げる。
シャンッ、シャンッ、シャンッ。
腕に巻かれた鈴のついたバングルが、その動きに合わせて涼やかな音をかき鳴らす。
続いて少女たちが右足を前に出すと、同じく鈴のついたアンクレットからシャンッという音が奏でられ、辺りに響いた。
花姫たちがクルリとターンすれば、その都度花冠を戴いた美しい髪が、古めかしくも優美な衣裳が、風になびく。
だんだん激しくなる動きに合わせ、鈴の音も大きくなっていく。その様子に、人々は息をするのも忘れたように一心に視線を向けた。
やがて奉納舞は終盤に差し掛かり、少女たちが軽やかに跳躍することで終わりを迎えた。
会場は一瞬の静寂の後、大きな歓声に包まれる。
熱狂する観客を前に、ホッと安堵した花姫たちは、その顔に自然と笑みを浮かべた。
「――はぁ、やっと終わったぁ」
淑やかな見た目を裏切るような軽い口調で、花姫のひとり――エリスがつぶやいた。すると、彼女の隣にいたうり二つの少女――双子の姉であるアリスも同感だとばかりに、コクコクとうなずいた。
「神殿での舞は、陛下の御前ということで緊張しましたけれど、こちらはこちらであれほど多くの人の前で舞わなければならないのですもの。また緊張してしまって、わたくし、手足が震えそうになりましたわ」
おっとりした雰囲気に似合う、丁寧な口調の少女――マリアは、胸の前で軽く手を握り合わせて双子姉妹に微笑んだ。
「なにはともあれ、上手くいったみたいでよかった」
緊張から解放されたせいか、大きく息を吐いて言ったのは、中性的な容姿と相まって凛々しい雰囲気を持つ少女――コーデリア。
そんな彼女の腕を、隣に立つ五人目の花姫――ルーナがぽんぽんと叩いて口を開いた。
「あとは祭礼行列だけだね」
「そういえばルーナ様。前回の花姫の時は、確か雨のせいで中止になってしまわれたのですわよね」
「う、うん。そうなんだよね」
マリアに尋ねられ、ルーナは歯切れ悪く答える。
それというのも五年前のことに触れられたからだ。
五年前、雨が降って祭礼行列が中止になったのは間違いではないが、実はその裏に、ルーナが誘拐されたからという理由もあったのだ。
(そっか、思い返せばあの時、しぃちゃんとれぐちゃんの二人に出会ったんだよね……)
もうすっかり一緒にいるのが当たり前になった、狼の神獣シリウスと獅子の神獣レグルス。彼らとの出会いは、ルーナが誘拐された森の小屋から逃げ出した先でのことだった。
(誘拐されたのなんて楽しい思い出じゃないけど、それがなければしぃちゃんたちとは出会えなかったわけだよね。あの時は、皆が助けに来てくれて無事だったし、そう考えると、あれは必要な出来事だったのかな)
ルーナは当時のことを思い出し、そんなことを内心でつぶやく。
(それに、あれからも色々なことがあったし……というか、ありすぎだよね)
自分で自分に突っ込みを入れ、彼女はクスリと笑った。
もうすぐ十四歳という短い生の中で起こった大きな出来事は、誘拐だけではない。無実の罪に陥れられたカインのために他国へ冒険に出たり、何度も魔物と対峙したりした。
クレセニアの最高学府、レングランド学院に十歳で入学してからも、何事もなかったとはとても言えない状況だった。
つまり彼女は、普通の貴族令嬢では絶対にありえない危機を、何度も経験しているのだ。
それでも心身共に健やかでいられるのは、ルーナが『前世の記憶』というものを持って生まれたからだろう。しかも、このサンクトロイメとは違う、地球と呼ばれる別世界で暮らしていた、高崎千幸という少女だった時の記憶だ。
様々な小説やゲーム、テレビに映画といった娯楽ものの影響により、経験しているわけではないのに溜まる知識。そして十八年という、千幸であったころの体験が加わり、 今のルーナに精神的なタフさと、柔軟さを付与していた。
そうでなければ、転生してからの怒涛の出来事は、彼女のトラウマとなりかねなかっただろう。
ルーナがぼんやりとそんなことを考えていると、ふいに誰かの手が腕に触れた。
「どうした? ぼーっとして」
「あ、ごめんね」
心配そうに小首を傾げるコーデリアに、ルーナは笑みを浮かべて首を横に振った。
コーデリアもルーナと同じレングランド学院に通っており、入学時から三年間、同じクラスに在籍している友達だ。
「ルーナでも緊張するのか?」
少しばかり悪戯っぽく訊かれ、ルーナはわざと頬を膨らませた。
「わたしでもって、どういう意味よ」
「ははっ。緊張とか、しなさそうだから」
「コーデリアったらひどいよ。わたしって結構繊細なんだからね?」
「そうかぁ?」
なおもからかうコーデリアに、ルーナは反論しながらも頬が緩むのを抑えきれない。
(コーデリアとも、すっかり仲良くなれたよね。出会ったばかりの頃が信じられないくらいだよ)
最初はあらぬ誤解や行き違いから、ルーナはコーデリアから一方的に嫌われていた。
しかし、レングランド学院に入学し、数か月後の校外学習の時だ。魔物に襲われた事件をきっかけに誤解も解け、二人は仲良くなれたのだった。
今では、親友といっても過言ではない関係だと、ルーナは自負している。
もちろん、クラスメイトたちとは皆、良好な関係を築いているが、同年代となれば圧倒的に男子が多い。そのためルーナにとっては、『同い年の女の友人』は、やはり特別な存在なのだ。
その中性的な容姿や、ややぶっきらぼうな話し方のせいで、ボーイッシュな印象のあるコーデリア。しかしその実、愛らしい動物や可愛らしい雑貨が好きという、女の子らしい一面を持っている。
そんな彼女の新しい一面を知るたび、ルーナはコーデリアのことが大好きになっていった。だからこそ、今のような彼女との軽いやり取りが嬉しくて仕方ないのだ。
ニコニコと笑うルーナに、コーデリアは舞台のそでから指示をする神官を目で示す。
「そろそろ、引っ込んでもいいみたいだ」
「そうだね。もうここにいなくてもいいなら、控室に戻ろう」
ルーナはうなずくと、他の花姫たちと一緒に神官に促されるまま歩き出した。
舞台から去ろうとする花姫たちに、観客から贈られる惜しみない歓声と拍手は、いつまでも鳴り止むことはなかった。
†
大神殿に用意された控室に戻り、ルーナは花姫たちとお茶の時間を楽しんでいた。
花姫としての仕事も、あとは祭礼行列だけだ。
行列は神官長を先頭に、花姫や神官たちが色鮮やかな花弁を撒きながら、西区を練り歩くというもの。
これは夕刻から夜半に行われるため、彼女たちはそれまでの時間、ゆったりと過ごすことができるのだ。
五人の花姫のうち、レングランド学院に通うのはルーナとコーデリアのみ。他の三人はお嬢様学校として名高いロメリア女学院に通っている。
通っている学校は違うものの、同年代の少女たちであれば共通の話題は尽きない。奉納舞の練習を重ねるうちに、すっかり打ち解けていた。
「――レングランド学院では、四年生から選択授業ばかりなのですわよね?」
思い出したようにマリアが話題を振ると、すぐさまアリスがそれに乗った。
「わぁ、それってどういうものがあるの? 楽しそう!」
「ロメリアだと、高学年になればなるほど、社交や貴婦人としての立ち居振る舞いについての授業が増えるんだもの。アリス、わたしたちもレングランドにすればよかったわね」
エリスが唇を尖らせて言うと、アリスはうなずいた後、憂鬱そうに言った。
「でもわたしたちの学力じゃ、レングランド学院に入学するのは無理なんじゃない?」
「それを言ってしまってはおしまいよ」
天を仰ぐアリスと、それを見て肩を竦めるエリス。双子のやり取りに、ルーナたちは明るい笑い声をあげる。
「それで、選択授業ってどういうものがあるの?」
ひとしきり笑い合った後、アリスが改めてルーナとコーデリアに尋ねた。
「白魔法や黒魔法の講座、それに魔道工学とか、魔法大国と言われるクレセニア王国だもの、魔法関係のものは多いかな。でも、医学や薬草学といった講座も充実してるよ。とにかくいろいろな分野の講座が選べるの」
ルーナが言うと、すぐにコーデリアが口を挟んだ。
「魔法に関してルーナはすごいぞ。白、黒の上級課程をもう終わらせている」
「え、すごい!」
「レングランドの上級魔法課程が修了できれば、魔法師団からスカウトされるって聞いたよ」
「まぁ、ルーナ様は本当に優秀でいらっしゃるのね」
コーデリアの暴露に、アリスとエリス、マリアは次々に驚きの言葉を口にする。
厳密に言うと、三年生になった時点でルーナは黒魔法、白魔法双方の上級課程を終わらせていた。天才と呼ばれる彼女の兄ユアンにしても、三年生の時点では黒魔法の講座しか修了していなかったのだから、そのすごさがわかるというものだ。
とはいえ、自分の話をそのようにされれば気恥ずかしいもの。ルーナは赤くなって言った。
「確かにわたし、魔法に関しては頑張ったけど、苦手な教科も多いんだからね。それに、コーデリアの方が学年一の才女と言われててすごいんだよ!」
ルーナの反撃に、今度はコーデリアが顔を赤くする。
「そんなの努力すれば、誰でもできるものだ。だけど、魔法は違う。ルーナの魔法の才能の方がずっとすごい」
「何言ってるの、コーデリア! その人一倍努力してる姿がすごいんじゃない!」
「いや、そもそもルーナだって、魔法以外も十分立派な成績じゃないか」
「ううん、コーデリアに比べたらぜんぜんだよ。それにいつもコーデリアに教えてもらってるからだもん」
お互いを褒め合うルーナとコーデリアを、他の三人の花姫たちは微笑ましく見ていた。二人のやりとりから互いを思い合う気持ちが窺えて、胸があたたかくなる。
「ふふっ。二人とも優秀ってことでいいじゃない」
アリスが笑いながら言うと、エリスも大きくうなずく。
「そうよね。わたしとアリスは、魔法も勉強も至って普通だもの。ま、わたしたちの場合は優秀なお兄様たちがいて、両親にはその点を期待されていないから気楽でいいけど」
「でも、たまにはもう少し期待してって思うけどね」
おどけるようにアリスが言うと、マリアが「ああっ」と上品に手を叩く。
「そういえば、アリス様たちの兄上たちも双子でいらっしゃいましたわよね」
「え、そうなの?」
「他の兄弟も双子なんて珍しい」
ルーナとコーデリアは、マリアの言葉に目を見開いた。そんな彼女たちに、双子の姉妹は悪戯っぽく笑ってみせる。
「本当よ。わたしたちと同じく、二人ともそっくり!」
「そうそう。でもね、おもしろいのよ」
「どういうこと、エリス?」
双子の話に興味深く聞き入っていたルーナは、笑い合う二人に尋ねた。
「わたしとアリスは顔も性格も似てるでしょう? でもね、お兄様たち、顔はそっくりなのだけど、性格は正反対なの」
「ひとりは学問好きで、もうひとりは武芸好きだし」
「でも、ふたりともとっても優しいから、わたしたちは大好き」
アリスがそう締めくくると、同じく兄姉大好きなルーナは勢い込んで同意した。
「うんうん。わたしも兄様たち、大好きだよ」
ルーナの言葉で、彼女の二人の兄を思い浮かべたのか、その場にいた少女たちはうっとりと目を細める。
「ジーン様とユアン様。どちらも素敵ですものね」
マリアがうっすらと頬を紅潮させて言えば、エリスとアリスが身を乗り出すようにして割って入った。
「そういえば、ユアン様って、魔法師団入りされるそうね」
「ええ! さすが天才と称される方よね。ジーン様もリュシオン殿下の側近として手腕を発揮なさってるし」
(やっぱ、兄様たちって人気あるんだぁ)
現在、長男であるジーンは次期公爵として領地運営を学ぶ傍ら、王太子であるリュシオンの側近として政にもかかわっている。
一方、十八歳になったユアンは、レングランド学院の卒業を来月に控えていた。
すでに魔法師団入りすることが決まっているのだが、どうやら彼女たちは、すでにその話を知っていたらしい。
二人とも抜群の容姿と家柄、そして能力とを兼ね揃えているため、少女たちが憧れの眼差しで語るのも無理はないだろう。
皆の可愛らしい反応を前に、ルーナはそんなことを思ってこっそりにやつく。
そんな時だった。
控室がノックされ、全員が一斉にドアへと注目する。
「失礼いたします」
世話係の女性神官が入ってくると、ルーナは知らず小さく息を吐いた。五年前、誘拐された時と似たような状況に、無意識に緊張していたらしい。
「もう時間ですの?」
聞いていた時間より早いため、マリアが不思議そうに尋ねる。それに神官は、微笑みながら首を横に振った。
「いいえ、違いますわ。ルーナ様にお客様ですの」
「わたしに?」
ルーナは首を傾げつつ、椅子から立ち上がる。すると、ドアから二人の少年が顔を出した。
「ユアン兄様! フレイも!」
声をあげ、ルーナは二人へと駆け寄る。
全身で喜びを表現する妹を、ユアンが優しく抱きとめた。
「ルーナ、今日の舞はとってもよかった。兄として、僕も鼻が高かったよ」
「ありがとう、兄様」
ニコニコと満面の笑みを浮かべるユアンに、ルーナは照れくさそうに礼を言う。
だがやはり、面と向かって褒められるのは恥ずかしいのだろう。ルーナは話題を変えようと、慌てて兄に訊いた。
「ねぇ、何かあった?」
家族の面会が認められないわけではないが、祭事が終わるまで基本的に家族は花姫のもとに顔を出さない。それは花姫が、期間中は神官の末席に数えられるからだ。神に仕える者に身分は必要ないとの考えから、家族との繋がりも一時的にないものと見なされる。
その前提があるにもかかわらず今回ユアンが訪ねて来たというのは、よほどの理由があったということになる。
ルーナが心配そうに顔を曇らせると、ユアンは安心させるように首を横に振った。
「ああ、本当にたいした内容じゃあないんだけど、少し話したいことがあってね」
「話したいこと?」
「そうなんだ。悪いけどちょっとついてきてくれないかな」
ユアンの言葉に、ルーナはきょとんとして首を傾げる。すると、ユアンの後ろで黙って立っていたフレイルが口を挟んだ。
「ルーナ、ここじゃ話しづらい」
「あ、うん」
ルーナはチラリと後ろを見ると、フレイルに向き直ってうなずく。
彼女の視線の先では、他の花姫たちが控えめに、けれど興味津々でこちらを窺っていたのだ。
(これは確かに話しづらいかもしれないね)
ルーナは納得すると、部屋の時計に目をやった。
(うん、まだ祭礼行列が始まる予定時刻までにはかなり時間があるし、平気だよね。あ、でもその前に、兄様たちを皆に紹介しておく方がいいかな。さっきも兄様のことをアイドルみたいに話してたし)
そんなことを思いながら、ルーナはこちらを窺う花姫たちに「おいでおいで」と手招く。
四人は一瞬ぎょっとしたものの、おずおずとルーナに近づいてきた。
「一緒に花姫をした、アリスにエリス、マリアだよ。コーデリアのことは知ってるでしょ? こっちは兄のユアンと、その友人のフレイル」
「ユアン・リヒトルーチェです。今回はルーナが世話になったね」
ルーナの紹介を受け、ユアンはトレードマークの穏やかな笑みを浮かべると、優雅な仕草で挨拶する。
「フレイル・エクルースだ」
ユアンに続いて名乗ったものの、フレイルの方は愛想のかけらもない。
昔は中性的な顔立ちも相まって、二人とも女の子と揶揄されるような容姿だったが、最近では背丈も伸び、すっかり大人びた。
ユアンはジーンに比べると線の細い印象だが、それがまた繊細なイメージを抱かせるようで、一部の女性から熱狂的な支持を受けている。
フレイルのほうは、普段は無表情を貫いているせいか、ミステリアスだと遠巻きに見られていることが多い。
もっとも二人とも――特にフレイルの方に関しては、見た目を裏切ってなかなかに苛烈な性格をしている。それを知っているルーナにしてみれば、あまりにかけはなれた印象を聞くと思わず顔を引き攣らせてしまうのだ。
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