神蛇の血

ぺんぎん

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帰京

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「結局、紘子の水をひっかぶった神蛇が村の周囲を飛んでいってくれたおかげで、浄化がざぶっと済んでいたし、村人達の鱗は消えていたし、めでたし。めでたし。だな」

 牛車に揺られながら、忠義は満足気に言った。

「椎は、本当にいいのか?」

 外には、椎が帰京の途について来ていた。

「母御前は尼におなりだ。会いたければいつでも会いに行けるし、あの村にも居づらかろう。何より、鄙びた別邸なんぞを管理させておくには惜しい人材だ。ちい姫の京での居心地を、少しは良くしてやりたいしな」

 清灯は紘子からもらった新しい黒水晶の数珠を左足につけながら言った。

「僕にばかりちい姫に甘い甘いって言うけど、清灯だって、かなりだよね」

 猛然と抗議する忠義に向かって、清灯がすらりと言った。

「お前も、そろそろどこかの姫君の元に通わねばならないようだしな。ちい姫にばかりかまってはおれまい」

「……思い出させないでくれ……」

 忠義ががっくりと肩を落としながら言った。

 紘子が弾けるように笑った。

 空は青く、牛の歩みはどこまでものんびりしていた。




               <おわり>
                                                  




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