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夏至前二日~塔の外~
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「だ、大丈夫?」
レイが私を見下ろしながら言った。宙ぶらりんのままだが、レイの片手と片足は、きちんとトネリコネリの蔦とつながっていた。
「だいじょーーぶーー。たぶん」
両手と両足を空に向かってあげながら、私は答えた。
「よっと」
レイは蔦から手と足を離して、私が埋もれているすぐ横に飛び降りた。
とたんに綿毛が飛び散り、あたりがぱっと明るく光った。
綿毛の残骸はレイの膝の上まで降り積もっており、落ちたあたしを受け止める柔らかな布団の役割をしていた。
「どうぞ」
レイは黄色の花粉でまみれた片手を出した。
コミュニケーションは学習で向上する。
「ありがとう」
あたしはにっこり笑ってその手をとった。
上から、絶え間ない雪のように綿毛が降ってくる。
落ちてくる綿毛がレイの体に当たるたびに、ぼんやり黄色く光る。
「すごい。ほ、ホントに、ち、『力』がない」
レイがそう言いながら、面白そうに自分の手を見つめた。
「そんなの、わかるの?」
「わかる。生まれた時からあるものがごっそりなくなっている。トネリコネリに触ると、ち、『力』がなくなるって、あの話は、ほ、ほんとだった」
「大丈夫?体とか、変じゃない?ケガしてるとことか、ない?」
「どこもケガしていない。ほら」
レイの手のひらに小さな青い火が浮かんだ。
「……なんだ。『力』ってやつ、まだあるじゃない」
降ってくるトネリコネリの綿毛が音もなく青い火に焼かれた。百合のような匂いが辺りに広がる。
「ほとんどない。これが精一杯。でも、いい。なんだか気が楽だ」
レイは屈託なく笑った。
「そっか……それならよかった」
あたしはほっと胸をなでおろした。
「あそこから出られそう」
あたし達はうっすらと光がもれている箇所に向かった。
足下にうずたかく積もる綿毛に足をとられて、レイもあたしも何回も転んだ。
田んぼの中に足を突っ込んだ時のように、一歩一歩が重く感じられる。
差し込む光は古びた扉に遮られていた。押しても引いても動かない。
「この国って扉は使わないもんの?」
「いや、使うけど……これ、こうじゃない?」
レイは、ガタガタと扉を横に引いた。
日本の襖よろしく横に引く扉だったらしい。
もう。疲れるなあ。
あたしははやる気持ちを抑えて、外に出た。
「まぶし」
暗闇から目が慣れるまでしばらくかかった。
扉は木の根に隠されるようにあり、カーテンのように垂れ下がっている木の根をよけて外に出ると、土や根が崩れるように落ちてきた。
後ろを振り返ると、思っていた以上に高い塔が建っていた。
蔦で降りて正解。ここから落ちたら、と思うとぞっとした。
「レイ君……髪、真っ黄色だけど。いつ染めたの?」
あたしの後からごそごそと木の根の間から出てきたレイを見て、驚いた。
太陽の光に照らされて、彼の真っ黒な長い髪が金色に変わっている。
紫だった目も青っぽくなっている。
「あなたも」
「え?」
自分の髪を確認する。
真っ黒な黒髪が黄色の髪に変わっている。
この髪の色とあたしの顔を合わせると、似合わないことこの上ない。
「うわー。似合わないー。これってさっきのぽわぽわのせい?洗って落ちないかなあ」
泰治には見せられない。彼はこういうの、あまり好きじゃないはず。
「あ、洗っても落ちない。は、早く行くよ。このあたりはちょいちょい人がくるんだ」
レイは薄汚れた長衣を翻してさっさと先を歩いていく。
その後を追っかけながら、気になっていた事を聞いた。
「ねえ。レイ。君はもう帰った方がいいんじゃない?」
「な、なんで?」
「いや、家の人が心配するしさ。あのさ、それパジャマでしょ?寝間着でしょ?ちょっとさ、これから街出て」
一緒に歩くのはさー。
「ち、違う! こ、これは、ね、寝間着じゃない。この国の伝統的な衣装だ。あ、あ、あなたのほうが変な恰好をしている。そんなに、ぴ、ぴったりした服を着るのは……だから、か、勘違いした」
「ぴったりって。ただのジーンズだけど。何を勘違いするの?」
「……だ、だから」
レイはぐっと言葉につまる。
「だから?」
「な、何でもない! か、か、恰好を何とかするなら、あ、あなたの方だよ! そして、心配するような人は誰もいない!」
ぷんすか怒って先を行く彼に、置いて行かれないよう、あたしは小走りに走った。
よく手入れのされた明るい森だった。風もなく、鳥の声と乾いた落ち葉を踏むあたしたちの足音だけが森の中に響いていた。
落葉が敷き詰められただけの道なき道はやがて、細い山道に出た。太陽はすっかり高く上っている。
「道、わかるの?」
迷わず歩くレイをたのもしげに見ながら聞いた。
「う、上から毎日、見ていたから。こ、ここら辺くらいならわかる」
なるほど。本当にやることなかったんだな。
そう思ったことは言わなかった。
しばらく歩くと、森の向こうに赤い煉瓦づくりの屋根が見えてきた。
かすかな人の話し声が聞こえ、パンの焼ける匂いがあたりにただよってきた。
とたんにあたしのお腹の音が鳴る。
そう言えば、朝から飲まず食わずだ。
ほっとしたせいか、体が一気に栄養補給モードに入っている。
「お、お腹減った?」
「うん」
「い、今は夏至の祭りの準備が始まっているはず……さっき、う、上から見て、何か面白そうなものが……出ていた……けど」
そう言うと、レイは、歩いていた道から外れて、屋根が見える方へまっすぐ突き進んだ。
森は急に途切れた。
足下は削り取られたように土がむき出しになっており、小高い丘を越えて、石畳の町並へとつながっていた。
町は同じような赤色の屋根と白い漆喰の壁が所狭しと建っている。
遠くから鐘の音が聞こえ、時計がはめ込んである建物の近くに、何人か飛んでいる人が見える。
これも慣れると、まあ、なんてことないんだな。と思うから、人間の順応力ってスゴイと思う。
「ほら、あ、あそこになにか、た、食べられそうなものがある」
レイはそう言うと、土埃をあげて坂を下った。
土の道から石畳の道に入ると、急に人が増えた。
緑の肌をした人や、身長50cmくらいの人を人とするならばだが。
みんなレイのようにゆったりしたネグリジェのような服を着ている。
色はカラフル。頭からすっぽりフードをかぶっていたり、腰の高い美しい女性が長い髪を透けるような布で巻いたりしている。
あたしは急にここがアバダンであることを実感した。
「ユキ。早く。早く」
粗末な屋台の前でレイが大きく手をあげていた。
店先には、焼きたてのパンが山のように積まれている。
隣の屋台には見たこともないような色とりどりの野菜や果物が整然と並べられており、その隣の屋台には肉の焼いたものがこれまた山盛りで積まれていた。
肉が焼ける匂いがあたりにただよい、肉汁が皿からこぼれそうになっている。
「お金とか、どうやって払えばいいのかな」
どの店にも人がいない。歩いている人は足早に通り過ぎるだけで、食べ物をちらとも見ない。
「だ、大丈夫。げ、夏至祭りには、お、王宮から、こ、国民に食べ物が振る舞われているはずだから。はやくふふぁにゃにゃよ」
すでにレイは口いっぱいに食べ物を詰め込んでいて、最後の方が聞こえない。
まあ、とにかく、お祭りの時は食べ物タダなのね。
なんて良い国なんだ。
「いただきます」
おそるおそるレイが食べているパンをつまんだ。
口に入れると中からはちみつのような甘い蜜が出てくる。
「おいふぃいねー」
こちらも口いっぱいにつめこみながら、レイと目を合わせて頷いた。
「二十ゲルだよ」
ひっと変な声をあげてしまった。
「お嬢ちゃん達が食べているそれは、二十ゲル。あっちの坊やが食べようとしている羊牛の肉は三十ゲルだよ」
声のした方をおそるおそる振り向くと、三メートル近くあるような背の高い、禿げたおっさんが太陽を遮るように立っていた。腕の筋肉が並じゃない。
「お金……とるの?」
半分しか食べてないパンを差し出しながら、聞いた。
「当たり前だよ。夏至祭りは明後日だぞ。今から『お振る舞い』をしていたら商売あがったりだ。おい、そこのぼうずも!金もってるんだろうな!」
あたしのおびえぶりで無一文なのがすぐにわかったおっさんは、棒についた肉をすばやく飲み込むレイの首根っこをつかんだ。
「ねえ……お金ある?」
どう考えても手ぶらな彼に一応聞いてみる。
レイは悪びれもせず首を振った。
ですよね。
あたしも一応、ポケットの中を探ってみる。あるわけがない。
携帯電話も、お財布も全て飛行機の中。
全財産をつめこんだあたしのカバンは運が良ければ、今日のうちに空港に着いて、真っ青になっている兄と、めんどくさそうな母とご対面するはずだ。
「無銭飲食はムチ打ちだ」
筋肉の化け物のようなおっさんが低い声で言った。
いや、ちょっと待った。その太い腕でそれをやられるのは、嫌。
「あの、すみません。ちょっと、あたし、今日この町に着いたばかりなんです。夏至祭りでは、食べ物が振る舞われるって聞いていたので、てっきりお金は必要ないかと思って黙って食べてしまいました。すみません」
「なんだって」
男の手が緩み、レイがけほけほと咳をした。
「日付を勘違いしたようでした。ごめんなさい」
男がレイを離すと、すぐにレイはあたしの後ろに隠れた。
「その腕輪、金だろ。それでいい。それを出せ。釣りもやれるぞ」
男は私の左腕を指した。
「だめ!これは父さんの形見なの。」
あたしは左腕を隠しながらぶんぶんと首を振った。
「そ、そのくらい……だ、出したら? ぼ、僕に命を救われたって、い、言ったよね」
ようやく肉を飲み込んだレイが、背中からこっそり言った。
「それとこれとは別! あんたの命、こんな偽物の金の腕輪で買えるくらい安くないでしょ。自分を安売りしない!」
そこでその説教……。
多分そこにいた三人同時に思ったはずだけど、賢明にも誰も言葉にしなかった。
「お金はないんですが、何でもします。お皿洗いとか、何かお仕事ないですか?」
男は上から下まであたし達を値踏みするように見て言った。
「……夏至祭りまで、猫の手も借りたい忙しさだったからな。お前らツイてたな。普段だったら問答無用でしょっ引いてたぞ。こっち来い」
等価交換の世界万歳!
まだもぐもぐ口を動かしているレイを引っ張って、あたしは男の後をついて行った。
「ちょっと。レイ。いつまで食べてんの!そんでもって、お金必要なんじゃない!嘘つき」
こそこそとレイに文句を言う。
「ま、祭りの時は、た、食べ物が振舞われる……今日はまだ、ま、祭り……じゃなかった」
嘘はついていない。
レイは指に着いた肉汁をなめながら言った。
ここまで悪気がないと怒るに怒れない。
そもそも、何が悪いのか、わかってんのかね。この子は。
あたし達は、とぼとぼと筋肉男の後についていった。
連れて行かれたのは、一台の馬車の前だった。
馬車っていっても、観光地に置いてあるような綺麗な馬車じゃない。
木で作られた大きな箱に車輪が着いているだけの荷馬車だ。
荷台の先には足の太い馬が一頭つけられていた。
馬の足が八本あることを抜かせば、一見、普通の馬に見える。
「乗れ。お前等のひよこ頭じゃうちの牧場まで飛べないだろ。お前らが食べた分、一日働いてもらうぞ」
あたし、まだパン半分しか食べてないんですけど。
抗議したい気持ち一杯だったが、隣にいるお腹が一杯、満足げな命の恩人を見て、ぐっとこらえた。
「お、お腹もいっぱいだし、べ、別にそんなところに行くことはない。あ、あそこに置いてあった食べ物を食べただけだから、な、何も悪いことをしていない。ひ、人がいないのが悪いんだ。さ、先を進むべきだ」
レイが耳元でこっそり魅惑的な提案をしてきた。
「何言ってんの! お金もないのにご飯は食べちゃったんだから、しょうがないでしょ。みんな働いて、ご飯を食べるの! 学校で習ったでしょ!」
「が、学校なんて行ってない。あ、あんなとこ。ぜ、ぜ、ぜ、絶対行かない」
あーー。そうでしょうとも。
あたしはしぶるレイを引っ張って馬車の荷台に乗った。
「いいから乗んなさい。あんたどうやって暮らしが成り立っているか、一度じっくり考えて見なさいよ!」
経済の成り立ちくらい知っているとかなんとか。レイはぶちぶち言いながらしぶしぶ荷台に腰を下ろした。
「お前ら、うるさい!だすぞ!」
男は怒鳴りながら馬を走らせた。
石畳の道をがらがらとした車輪の音が響く。
最初は八本足で走っていた馬は、そのうち四本足になり、残りの足はお腹の脇に折りたたまれている。
なるほど、普通は四本足で、必要な時に八本になったりするのね。
どなどなどーなーどーなー荷馬車がいーくーよー
リアル「どなどな」を頭の中で歌いながら、周りを見ると、飛んだり、浮いている人間はほとんど居ないことに気が付いた。
皆どこか忙しそうだが、歩いたり、馬や馬車を使っている。
「ねえ。ずいぶん、馬車があるんだね。移動ってみんな飛ぶんだと思ってた。」
「と、飛べるのは、あ、ある程度『力』を持っているものだけ。そ、そんなに多くはない。人口の……十パーセント……」
レイは、そう言いながら、ぶかぶかの服の中からさっきのふわふわパンのつぶれたものを取り出した。
こいつ。隠してたな。
馬車を駆っている男がこちらを見てないことをいいことに、ゆうゆうと食べている。
あたしなんかより、ずっと神経が図太い。
ふたたびあたしのお腹が盛大に鳴る。
「お前ら腹へってんだろ。袋に入ってるのを食べて良いぞ」
その音を聞いたのか、男は、前を向いたまま麻の袋を投げてよこした。
袋の中には水の入った瓶と一緒に、大きなパンが入っていた。
さっき屋台に置いてあったパンとは似ても似つかない硬そうなパンだが、贅沢はいえない。
「あり……いただきます」
ありがとうを言わないって難しい。
あたしは大好きなその言葉を飲み込んだ。
あんなに食べたはずのレイの腕が横から伸びてくる。
「いただきますは?」
あたしは目の前のレイの手をペチッと叩いた。
「な、なに……それ……」
うん。怒るなあたし。この子が悪いわけではない。
「ご飯を食べる時は「いただきます」を言うんです。作ってくれた人と、命に感謝して。ほら。ありがとうじゃなければいいんでしょ。」
「……いただきます」
レイは小さな声でしぶしぶ言った。
「はっはっはっ。姉ちゃんも大変だな。はいよ。全部お食べ。」
男は笑いながら大きな声で言った。ありがたい。お腹ぺこぺこだった。
「うまいだろ。かみさんが料理上手でね」
男は物も言わずにガツガツ食べているあたしたちに満足そうに言った。
「お前らどっから来たんだ」
「ひ」
飛行機に乗って日本から……と言う前にレイに口をふさがれた。
「ロッドの町の方って言って」
レイがささやくように言った。
「……ロッドの町の方」
訳も分からずあたしは言った。
「そうか。あそこは軍の本隊があるとこだな。景気はどうなんだ?」
「うん……それなりかなあ」
無難な受け答えをするあたしをレイはほっとした顔で見た。
なるほど、飛行機の話は「なし」なのね。
「まあ、お貴族様は金があるからな、お前等ひよこ頭でも、シー族なら食うのには困らねえだろうよ。」
ひよこ頭って……。
頭が悪いと言われているように聞こえるけど、髪の色のことだよねえ。
あたしはちらっとレイを見た。
レイは興味なさそうに無言でパンをほおばっている。
やれやれ。
そうこうしているうちに、馬車は町を抜けて、緩やかな牧草地帯に入っていった。
榛の木村の風景によく似ている。
小さな鳥がさえずりながら太陽の光に吸い込まれるように飛んでいった。
お腹がくちくなり、眠くなったんだろう。寝転んだレイから、すぐに寝息が聞こえてきた。
見習って私もごろりと寝転がった。
空の高いところでさっきの小鳥が鳴いている。
規則正しい馬の足音と太陽の光に誘われて、レイの寝息に吸い込まれるようにあたしは眠り込んでいた。
レイが私を見下ろしながら言った。宙ぶらりんのままだが、レイの片手と片足は、きちんとトネリコネリの蔦とつながっていた。
「だいじょーーぶーー。たぶん」
両手と両足を空に向かってあげながら、私は答えた。
「よっと」
レイは蔦から手と足を離して、私が埋もれているすぐ横に飛び降りた。
とたんに綿毛が飛び散り、あたりがぱっと明るく光った。
綿毛の残骸はレイの膝の上まで降り積もっており、落ちたあたしを受け止める柔らかな布団の役割をしていた。
「どうぞ」
レイは黄色の花粉でまみれた片手を出した。
コミュニケーションは学習で向上する。
「ありがとう」
あたしはにっこり笑ってその手をとった。
上から、絶え間ない雪のように綿毛が降ってくる。
落ちてくる綿毛がレイの体に当たるたびに、ぼんやり黄色く光る。
「すごい。ほ、ホントに、ち、『力』がない」
レイがそう言いながら、面白そうに自分の手を見つめた。
「そんなの、わかるの?」
「わかる。生まれた時からあるものがごっそりなくなっている。トネリコネリに触ると、ち、『力』がなくなるって、あの話は、ほ、ほんとだった」
「大丈夫?体とか、変じゃない?ケガしてるとことか、ない?」
「どこもケガしていない。ほら」
レイの手のひらに小さな青い火が浮かんだ。
「……なんだ。『力』ってやつ、まだあるじゃない」
降ってくるトネリコネリの綿毛が音もなく青い火に焼かれた。百合のような匂いが辺りに広がる。
「ほとんどない。これが精一杯。でも、いい。なんだか気が楽だ」
レイは屈託なく笑った。
「そっか……それならよかった」
あたしはほっと胸をなでおろした。
「あそこから出られそう」
あたし達はうっすらと光がもれている箇所に向かった。
足下にうずたかく積もる綿毛に足をとられて、レイもあたしも何回も転んだ。
田んぼの中に足を突っ込んだ時のように、一歩一歩が重く感じられる。
差し込む光は古びた扉に遮られていた。押しても引いても動かない。
「この国って扉は使わないもんの?」
「いや、使うけど……これ、こうじゃない?」
レイは、ガタガタと扉を横に引いた。
日本の襖よろしく横に引く扉だったらしい。
もう。疲れるなあ。
あたしははやる気持ちを抑えて、外に出た。
「まぶし」
暗闇から目が慣れるまでしばらくかかった。
扉は木の根に隠されるようにあり、カーテンのように垂れ下がっている木の根をよけて外に出ると、土や根が崩れるように落ちてきた。
後ろを振り返ると、思っていた以上に高い塔が建っていた。
蔦で降りて正解。ここから落ちたら、と思うとぞっとした。
「レイ君……髪、真っ黄色だけど。いつ染めたの?」
あたしの後からごそごそと木の根の間から出てきたレイを見て、驚いた。
太陽の光に照らされて、彼の真っ黒な長い髪が金色に変わっている。
紫だった目も青っぽくなっている。
「あなたも」
「え?」
自分の髪を確認する。
真っ黒な黒髪が黄色の髪に変わっている。
この髪の色とあたしの顔を合わせると、似合わないことこの上ない。
「うわー。似合わないー。これってさっきのぽわぽわのせい?洗って落ちないかなあ」
泰治には見せられない。彼はこういうの、あまり好きじゃないはず。
「あ、洗っても落ちない。は、早く行くよ。このあたりはちょいちょい人がくるんだ」
レイは薄汚れた長衣を翻してさっさと先を歩いていく。
その後を追っかけながら、気になっていた事を聞いた。
「ねえ。レイ。君はもう帰った方がいいんじゃない?」
「な、なんで?」
「いや、家の人が心配するしさ。あのさ、それパジャマでしょ?寝間着でしょ?ちょっとさ、これから街出て」
一緒に歩くのはさー。
「ち、違う! こ、これは、ね、寝間着じゃない。この国の伝統的な衣装だ。あ、あ、あなたのほうが変な恰好をしている。そんなに、ぴ、ぴったりした服を着るのは……だから、か、勘違いした」
「ぴったりって。ただのジーンズだけど。何を勘違いするの?」
「……だ、だから」
レイはぐっと言葉につまる。
「だから?」
「な、何でもない! か、か、恰好を何とかするなら、あ、あなたの方だよ! そして、心配するような人は誰もいない!」
ぷんすか怒って先を行く彼に、置いて行かれないよう、あたしは小走りに走った。
よく手入れのされた明るい森だった。風もなく、鳥の声と乾いた落ち葉を踏むあたしたちの足音だけが森の中に響いていた。
落葉が敷き詰められただけの道なき道はやがて、細い山道に出た。太陽はすっかり高く上っている。
「道、わかるの?」
迷わず歩くレイをたのもしげに見ながら聞いた。
「う、上から毎日、見ていたから。こ、ここら辺くらいならわかる」
なるほど。本当にやることなかったんだな。
そう思ったことは言わなかった。
しばらく歩くと、森の向こうに赤い煉瓦づくりの屋根が見えてきた。
かすかな人の話し声が聞こえ、パンの焼ける匂いがあたりにただよってきた。
とたんにあたしのお腹の音が鳴る。
そう言えば、朝から飲まず食わずだ。
ほっとしたせいか、体が一気に栄養補給モードに入っている。
「お、お腹減った?」
「うん」
「い、今は夏至の祭りの準備が始まっているはず……さっき、う、上から見て、何か面白そうなものが……出ていた……けど」
そう言うと、レイは、歩いていた道から外れて、屋根が見える方へまっすぐ突き進んだ。
森は急に途切れた。
足下は削り取られたように土がむき出しになっており、小高い丘を越えて、石畳の町並へとつながっていた。
町は同じような赤色の屋根と白い漆喰の壁が所狭しと建っている。
遠くから鐘の音が聞こえ、時計がはめ込んである建物の近くに、何人か飛んでいる人が見える。
これも慣れると、まあ、なんてことないんだな。と思うから、人間の順応力ってスゴイと思う。
「ほら、あ、あそこになにか、た、食べられそうなものがある」
レイはそう言うと、土埃をあげて坂を下った。
土の道から石畳の道に入ると、急に人が増えた。
緑の肌をした人や、身長50cmくらいの人を人とするならばだが。
みんなレイのようにゆったりしたネグリジェのような服を着ている。
色はカラフル。頭からすっぽりフードをかぶっていたり、腰の高い美しい女性が長い髪を透けるような布で巻いたりしている。
あたしは急にここがアバダンであることを実感した。
「ユキ。早く。早く」
粗末な屋台の前でレイが大きく手をあげていた。
店先には、焼きたてのパンが山のように積まれている。
隣の屋台には見たこともないような色とりどりの野菜や果物が整然と並べられており、その隣の屋台には肉の焼いたものがこれまた山盛りで積まれていた。
肉が焼ける匂いがあたりにただよい、肉汁が皿からこぼれそうになっている。
「お金とか、どうやって払えばいいのかな」
どの店にも人がいない。歩いている人は足早に通り過ぎるだけで、食べ物をちらとも見ない。
「だ、大丈夫。げ、夏至祭りには、お、王宮から、こ、国民に食べ物が振る舞われているはずだから。はやくふふぁにゃにゃよ」
すでにレイは口いっぱいに食べ物を詰め込んでいて、最後の方が聞こえない。
まあ、とにかく、お祭りの時は食べ物タダなのね。
なんて良い国なんだ。
「いただきます」
おそるおそるレイが食べているパンをつまんだ。
口に入れると中からはちみつのような甘い蜜が出てくる。
「おいふぃいねー」
こちらも口いっぱいにつめこみながら、レイと目を合わせて頷いた。
「二十ゲルだよ」
ひっと変な声をあげてしまった。
「お嬢ちゃん達が食べているそれは、二十ゲル。あっちの坊やが食べようとしている羊牛の肉は三十ゲルだよ」
声のした方をおそるおそる振り向くと、三メートル近くあるような背の高い、禿げたおっさんが太陽を遮るように立っていた。腕の筋肉が並じゃない。
「お金……とるの?」
半分しか食べてないパンを差し出しながら、聞いた。
「当たり前だよ。夏至祭りは明後日だぞ。今から『お振る舞い』をしていたら商売あがったりだ。おい、そこのぼうずも!金もってるんだろうな!」
あたしのおびえぶりで無一文なのがすぐにわかったおっさんは、棒についた肉をすばやく飲み込むレイの首根っこをつかんだ。
「ねえ……お金ある?」
どう考えても手ぶらな彼に一応聞いてみる。
レイは悪びれもせず首を振った。
ですよね。
あたしも一応、ポケットの中を探ってみる。あるわけがない。
携帯電話も、お財布も全て飛行機の中。
全財産をつめこんだあたしのカバンは運が良ければ、今日のうちに空港に着いて、真っ青になっている兄と、めんどくさそうな母とご対面するはずだ。
「無銭飲食はムチ打ちだ」
筋肉の化け物のようなおっさんが低い声で言った。
いや、ちょっと待った。その太い腕でそれをやられるのは、嫌。
「あの、すみません。ちょっと、あたし、今日この町に着いたばかりなんです。夏至祭りでは、食べ物が振る舞われるって聞いていたので、てっきりお金は必要ないかと思って黙って食べてしまいました。すみません」
「なんだって」
男の手が緩み、レイがけほけほと咳をした。
「日付を勘違いしたようでした。ごめんなさい」
男がレイを離すと、すぐにレイはあたしの後ろに隠れた。
「その腕輪、金だろ。それでいい。それを出せ。釣りもやれるぞ」
男は私の左腕を指した。
「だめ!これは父さんの形見なの。」
あたしは左腕を隠しながらぶんぶんと首を振った。
「そ、そのくらい……だ、出したら? ぼ、僕に命を救われたって、い、言ったよね」
ようやく肉を飲み込んだレイが、背中からこっそり言った。
「それとこれとは別! あんたの命、こんな偽物の金の腕輪で買えるくらい安くないでしょ。自分を安売りしない!」
そこでその説教……。
多分そこにいた三人同時に思ったはずだけど、賢明にも誰も言葉にしなかった。
「お金はないんですが、何でもします。お皿洗いとか、何かお仕事ないですか?」
男は上から下まであたし達を値踏みするように見て言った。
「……夏至祭りまで、猫の手も借りたい忙しさだったからな。お前らツイてたな。普段だったら問答無用でしょっ引いてたぞ。こっち来い」
等価交換の世界万歳!
まだもぐもぐ口を動かしているレイを引っ張って、あたしは男の後をついて行った。
「ちょっと。レイ。いつまで食べてんの!そんでもって、お金必要なんじゃない!嘘つき」
こそこそとレイに文句を言う。
「ま、祭りの時は、た、食べ物が振舞われる……今日はまだ、ま、祭り……じゃなかった」
嘘はついていない。
レイは指に着いた肉汁をなめながら言った。
ここまで悪気がないと怒るに怒れない。
そもそも、何が悪いのか、わかってんのかね。この子は。
あたし達は、とぼとぼと筋肉男の後についていった。
連れて行かれたのは、一台の馬車の前だった。
馬車っていっても、観光地に置いてあるような綺麗な馬車じゃない。
木で作られた大きな箱に車輪が着いているだけの荷馬車だ。
荷台の先には足の太い馬が一頭つけられていた。
馬の足が八本あることを抜かせば、一見、普通の馬に見える。
「乗れ。お前等のひよこ頭じゃうちの牧場まで飛べないだろ。お前らが食べた分、一日働いてもらうぞ」
あたし、まだパン半分しか食べてないんですけど。
抗議したい気持ち一杯だったが、隣にいるお腹が一杯、満足げな命の恩人を見て、ぐっとこらえた。
「お、お腹もいっぱいだし、べ、別にそんなところに行くことはない。あ、あそこに置いてあった食べ物を食べただけだから、な、何も悪いことをしていない。ひ、人がいないのが悪いんだ。さ、先を進むべきだ」
レイが耳元でこっそり魅惑的な提案をしてきた。
「何言ってんの! お金もないのにご飯は食べちゃったんだから、しょうがないでしょ。みんな働いて、ご飯を食べるの! 学校で習ったでしょ!」
「が、学校なんて行ってない。あ、あんなとこ。ぜ、ぜ、ぜ、絶対行かない」
あーー。そうでしょうとも。
あたしはしぶるレイを引っ張って馬車の荷台に乗った。
「いいから乗んなさい。あんたどうやって暮らしが成り立っているか、一度じっくり考えて見なさいよ!」
経済の成り立ちくらい知っているとかなんとか。レイはぶちぶち言いながらしぶしぶ荷台に腰を下ろした。
「お前ら、うるさい!だすぞ!」
男は怒鳴りながら馬を走らせた。
石畳の道をがらがらとした車輪の音が響く。
最初は八本足で走っていた馬は、そのうち四本足になり、残りの足はお腹の脇に折りたたまれている。
なるほど、普通は四本足で、必要な時に八本になったりするのね。
どなどなどーなーどーなー荷馬車がいーくーよー
リアル「どなどな」を頭の中で歌いながら、周りを見ると、飛んだり、浮いている人間はほとんど居ないことに気が付いた。
皆どこか忙しそうだが、歩いたり、馬や馬車を使っている。
「ねえ。ずいぶん、馬車があるんだね。移動ってみんな飛ぶんだと思ってた。」
「と、飛べるのは、あ、ある程度『力』を持っているものだけ。そ、そんなに多くはない。人口の……十パーセント……」
レイは、そう言いながら、ぶかぶかの服の中からさっきのふわふわパンのつぶれたものを取り出した。
こいつ。隠してたな。
馬車を駆っている男がこちらを見てないことをいいことに、ゆうゆうと食べている。
あたしなんかより、ずっと神経が図太い。
ふたたびあたしのお腹が盛大に鳴る。
「お前ら腹へってんだろ。袋に入ってるのを食べて良いぞ」
その音を聞いたのか、男は、前を向いたまま麻の袋を投げてよこした。
袋の中には水の入った瓶と一緒に、大きなパンが入っていた。
さっき屋台に置いてあったパンとは似ても似つかない硬そうなパンだが、贅沢はいえない。
「あり……いただきます」
ありがとうを言わないって難しい。
あたしは大好きなその言葉を飲み込んだ。
あんなに食べたはずのレイの腕が横から伸びてくる。
「いただきますは?」
あたしは目の前のレイの手をペチッと叩いた。
「な、なに……それ……」
うん。怒るなあたし。この子が悪いわけではない。
「ご飯を食べる時は「いただきます」を言うんです。作ってくれた人と、命に感謝して。ほら。ありがとうじゃなければいいんでしょ。」
「……いただきます」
レイは小さな声でしぶしぶ言った。
「はっはっはっ。姉ちゃんも大変だな。はいよ。全部お食べ。」
男は笑いながら大きな声で言った。ありがたい。お腹ぺこぺこだった。
「うまいだろ。かみさんが料理上手でね」
男は物も言わずにガツガツ食べているあたしたちに満足そうに言った。
「お前らどっから来たんだ」
「ひ」
飛行機に乗って日本から……と言う前にレイに口をふさがれた。
「ロッドの町の方って言って」
レイがささやくように言った。
「……ロッドの町の方」
訳も分からずあたしは言った。
「そうか。あそこは軍の本隊があるとこだな。景気はどうなんだ?」
「うん……それなりかなあ」
無難な受け答えをするあたしをレイはほっとした顔で見た。
なるほど、飛行機の話は「なし」なのね。
「まあ、お貴族様は金があるからな、お前等ひよこ頭でも、シー族なら食うのには困らねえだろうよ。」
ひよこ頭って……。
頭が悪いと言われているように聞こえるけど、髪の色のことだよねえ。
あたしはちらっとレイを見た。
レイは興味なさそうに無言でパンをほおばっている。
やれやれ。
そうこうしているうちに、馬車は町を抜けて、緩やかな牧草地帯に入っていった。
榛の木村の風景によく似ている。
小さな鳥がさえずりながら太陽の光に吸い込まれるように飛んでいった。
お腹がくちくなり、眠くなったんだろう。寝転んだレイから、すぐに寝息が聞こえてきた。
見習って私もごろりと寝転がった。
空の高いところでさっきの小鳥が鳴いている。
規則正しい馬の足音と太陽の光に誘われて、レイの寝息に吸い込まれるようにあたしは眠り込んでいた。
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