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夏至前二日~飛ぶ~
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レイは、何を当たり前のことを聞いているんだろうという顔をしながら、いとも軽く頷いた。
昔、兄さんが、アバダンには妖精がいるので、花は摘まないようにしましょうとか、小人のために小石を蹴らないようにしましょうとか言ってたけど、あれ、お伽話じゃなかったんだ……。
「あなたは、ほ……本当にそ、外から来たの? アバダンに入れたのに……その髪をもって……まさか、本当に、と、飛べないの?」
「髪は関係ないでしょ。飛べないわよ。言ってるでしょ」
「そ、そんなはずない。本当ならあなたはこの国に……ましてやここには入れないはずなんだ」
「だから、言ったでしょ。見たでしょ。飛行機から落ちてワンバウンド、あなたのベッドがなかったらとっくにこの
世にいないわよ」
しつこいなあ。
「……本当にひ、飛行機に乗ってきて、落ちたの?」
「そう。本当に」
「こ、この時期に?よりにもよって……夏至の飛行機から、こ、ここに落とされた?」
レイは地面を指さした。
「ここに落としたのは鳥だけどね。飛行機からは、落とされたっていうか、落ちちゃったんだよ。事故だよ」
あたしはマールがどうなったかは考えないようにした。
飛んでる飛行機の扉が開いていることへの業務上過失致死傷罪は置いといて、一応あたしは自分から落っこちたのだ。
「っじ、事故? それこそ、ま、まさかだよ。夏至の期間に飛ぶ飛行機がじ、じ、事故を起こすわけがない」
紫の目が疑わし気に細くなった。
「こ、ここをどこだと思っているの? あ、アバダンの首都、ば、バルーカの、さらに中心。アバダンの心臓部。ここら上空は飛行禁止区域になっていて……ひ、飛行機なんて、も、もちろん、あ、アヴォイド以外の生き物はすべてこの塔にも近づくことすらできない」
「そんなこと言ってもその鳥さんがここに落としたんだもん」
「ああ、そうか。あ、あなたはアヴォイドに乗ってきたと言ってたな。そ、それだったら……」
あるかも。
まだ納得いかない顔で彼の声はしぼんで消えていく。
「あたしは鳥に落とされた糞と同じよ。何の意図もないってば。でも、そうか。ここがアバダンの首都なんだ。アバダンのバルーカって言ったら、お城があるとこよね。そうか、ここがバルーカ。あたしが乗ってきた鳥さんの名前、よく聞き取れないんだよね。えっと……」
「あ、アヴォイド。」
「アヴォイド。飛行機から落ちたとき、あのふわふわの胴体のとこに着地したからなんとか生きてたんだよ。あの、首のとこと、長い尻尾の、鱗みたいなものに覆われているとこに落ちていたら、絶対死んでいたと思う。」
「あ、あなたは、なんで、ア、アヴォイドを知らないんだ?」
「いや、ばかにしないでよ。あたしだって来る前に色々下調べして来たかったけど、この国のことって、どこにも詳しいこと何も載ってないんだもん」
小さい頃、母さん曰く「ドがつくほど優秀な兄さん」がこの国の歴史や文化をあたしに叩きこんだらしいんだけど、あたしはまるっと忘れている。
あたしがおばかさんなのか、必要ないから覚えなかったか、おそらくはその両方。
兄さんがあのまま家で一緒に暮らしていたら、違っていたかもしれない。
でも、兄さんはいなくなった。
あたしにご飯を食べさせるのも忘れるような母さんが手間暇かけてあたしに何かを教えるはずもなく、あたしのアバダン英才教育は自然に頓挫した。
今、あたしがアバダン語を話せるのは、ひとえに、母さんがめんどくさがって家では自分の母語のアバダン語でしか会話をしなかったからだ。
照美ってば、あたしがアバダン語を話せると聞いて驚いていたっけ。
今頃ラインで泰治とあたしの誕生日の準備をして……。
あたしは急にあの文明の利器を思い出した。
電話だ。
空港に電話をしよう。
アバダンの空港には母さんと兄さんが待っているはずだった。
きっと大変なことになっている。
母さんはともかく、兄さんは、あたしが到着しないと判明するかしないかの間に、空港の職員の首を絞め殺すに違いない。
ヘビのように執念深い兄に睨まれるなら、ひと思いに殺してあげた方がいっそ親切だ。
「ねえ、レイ君。電話貸して。兄さんも母さんも……はどうだかわかんないけど、とにかく心配しているだろうし。携帯も全部飛行機の荷物の中なの。空港に電話すれば、あたしが無事なのが伝えられるし、迎えに来てもらえる」
「で、で、電話……知ってる。音声を電気信号に変えて会話情報を遠方に伝達するためのもの。チャールズ・ページが伝達原理を発見し、外の社会の主な通信手段となっているもの」
「電話発明したのはベルよ。そんなことより、電話貸してよ」
「ぎ、ぎ、義父に特許申請してもらい、グレイに勝ったベル。ページは……」
「電話! どこ? 」
思わず大きな声を出してしまった。レイはびっくりしたように肩をふるわせた。
「……そ、そ、そんなものはここにはないよ」
「なんで? 電話がないってどんな国よ」
今どきサハラ砂漠のど真ん中だってスマホが通じる。
「ぼ、僕たちは、が、外部に連絡するべきときは、か、鏡を使うんだ。鏡はどこの家にもあるし、こ、効率がいい。書類が必要な時は、鳥たちが届けてくれる」
なるほど。
兄さんがあたしへの手紙を黒鷺で届けるはずだ。
かかる代金はパンくずだけ。死んだら土に戻る。
お財布にも環境にも優しい。
彼らが嵐にあった時、偶然、政敵の屋根の下で雨宿りをしなければ実に有効な手段だ。
「じゃあ、どうにかしてくれない? あんた、できないの? その、鏡を使うなんとかって方法で」
あたしは半ばやけくそで言った。
「こ、ここには、鏡は置いていない」
彼はしごくまともな顔をして言った。
あー。そうでしょうとも。
人と会いたくない人間が鏡を置く理由がない。
まあ、鏡はどこの家にもあるって話は天窓から空にぶん投げられたが。
携帯はポッケにいれること。あたしは頭のメモにしっかりと書き込んだ。
「うん。残念。とにかく、空港行くわ。でないと兄さんに殺される。ていうか兄さんが誰かを殺める前に。ね、アバダンの空港ってどこにあるの?く・う・こ・う。知らないの?飛行機が離着陸する場所よ」
あたしは髪を耳にかけて顔をつきだした彼に、わかりやすいようにゆっくりと繰り返した。
「し、し、知っている。た、多分……ここよりさらに……き、北にある……ロッドという町のはずれが『外』との出入り口という話を聞いたことがある」
やった。あたしは心の中で拍手した。
「ほんと?」
「う、う、嘘はいわないよ。」
レイはぶるっと体を震わせながら言った。
「……た、ただ、ろ、ろ、ロッドは近くに軍事施設がある。い、今は戦時中。き、許可証がなければ、一般人は近づくこともできない」
彼はささやくような声で言った。
「戦時中なの? そんな感じしないけど」
窓から見る町並は平和そのものだ。
「あ、あ、アメリカは、いつだってどこかの国と戦争をしているけど、自分の国の大地で他国と戦争はしていない。あ、アバダンでここが戦地になるときは、戦局は崖っぷち……ただ、建国から今までここ、バルーカが戦火を浴びたことは、い、一度もない」
レイは、ぼそりと言った。
「わかった。アバダンは今、戦争をしているのね。そんな時期に身分証明書も持ってないあたしがロッドって町に近づけないかもなのね?」
あたしはもう一度窓の外を見た。
「でも、とにかく行ってみるわよ。母さんだけだったらともかく、ここに住んでる兄さんも空港まで迎えに来るって言ってたし。近くに行けば何とかなるかもでしょ。ここでこうしていても、しょうがないし。ここからロッドって町まで、どのくらいかかるの?」
「ぼ、僕も行ったことはない。北にあるって聞いたことはあるけど」
「……わかった。とにかく、やっぱ、下に降りて、誰かに聞かなきゃ進まないわ。いくよ」
「ぼ……僕も……?」
一呼吸置いて、レイは消え入るような、震える声で言った。
「当たり前でしょ。たまには外にでて、風呂にでも入りなさい」
「ふ……風呂? そんな……」
あたしは、しどろもどろしている彼を無視して窓の下をのぞいた。
かなりの高さだ。
まっすぐ降りたとしてもだいたい四十メートルくらいある。
下に降りるには、カーテンをつなげてロープにして降りるしかないけど、ここのカーテン全部足しても間に合うかなー。
高いなー。
「ねー。あんた、まさか飛べるなんて言わないよね」
あたしは笑った。
「と、と、と、飛べるよ。そ、そんなに莫迦にしないでよ」
「莫迦になんてしてないよ。ただ、飛べるなんて……あれもホントは風船人形とかじゃないの?」
あたしは遠くで浮かんだり消えたりしている人影を親指でさしながら笑った。
「飛べる」
「え?」
「僕だって飛べるよ。」
「え?」
レイが不機嫌そうにこちらを睨んだ。
「え? 飛べる? じゃ、ちょっと飛んで見せてよ」
あたしは何も考えなかった。
ただ、軽い気持ちで言っただけ。
でも、レイはそれよりも軽く、部屋の隅まで飛んだ。
衝撃だった。
ホントに驚くと人は言葉が出ない。
「……すごい」
すごいを辞書で引くと、一番最初に載っている意味は「怖い」だ。
そう。あたしは怖かった。目の前の男の子に抱くのは、純然たる恐怖心。
「な、なんにもすごくないよ」
そんなあたしの気持ちも知らず、彼は照れたように笑った。
「ねえ、それ、それ、……魔法だよね?」
「ま、魔法?ま、魔法って何?ま、魔術の事?」
「え……と。空飛んだり、手を使わずに物を動かしたりすることをいうの……かな?」
まあ、みたことないけど。今はじめて見たけど。
「ああ。ち、『力』のこと? ち、『力』と魔術は全く違う。ま、魔術は目的があって使われる、ぼ、僕たちシー族にとっての『力』は手や足を動かすのと同じようなもの」
「何が違うのかさっぱりわかんないけど、飛べるんだね……」
そりゃ天窓しかないわけだわ。
レイは首をかしげて、ちらっと私をみた。
その瞬間、周りの空気が明らかに変わった。
空気が意志を持ったように体に迫ってくる。
急に視線が高くなった。
空気に押されるように体が浮かぶ。
「ちょ……ちょ……ちょっと待って! やめて!」
もうごめんなのよ。落ちるのも飛ぶのも。
あたしは叫んだ。
体は弧を描くようにゆっくりと床に降りた。
あたしはその場に座り込んだ。
膝が笑って力がはいらない。なんで助かったか今わかった。そりゃ、飛行機から落ちて無事なわけだ。
「あ……や、や、嫌だった?」
レイは心配そうにあたしの顔を覗き込んだ。
「いや……ありがとう。レイ君、落ちてきた時、こうやってあたしのこと助けてくれたんだね……」
レイは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして、恥ずかしそうに首を振った。
「た、たいしたことしてない」
「たいしたことだよ。レイ君はあたしの命の恩人だよ。本当にありがとう。」
下手すれば二度と大切な人に……照美や泰治にも会えないとこだった。
「いつか、何かあたしにできることがあったら言ってよ」
「命の契約をしてくれるの?」
レイは嬉しそうに言った。
「命の契約?」
なんだ?そのいやな予感しかしない怪しげな名前のモノは。
「こ、この国は等価交換が原則なんだ。お、同じくらいのものを僕に返してくれればいいんだよ」
思わず手背で彼のお腹を叩いた。
「無理だから!あんたの命、助けられないから!そもそも、そんな場面なんて、そうそうないわっ」
やっべ。こわーー。知らない国、こわーー。オッケーが首横に振る程度の文化の違いじゃないわーー。
「え、なになに。じゃあ、あたしが何かしてもらったら、おんなじものを何か返さなければならないわけ?たとえば、あなたにごちそうしてもらったら、次は私がごちそうするとか?原始時代の物々交換みたいなもの?」
そのうちわかんなくなったりしない?かっこいいフリをしたい彼氏なんかはどうするんだ?
「……ん……うん?まあ、そんなものかなあ……」
なんか違う。という顔で彼は頷いた。
「とにかく、わかった。飛べるような人にあたしができることなんてたかが知れてるし、あなたの命の危機の時にタイミング良くあたしが駆けつけられるのかわかんないけど……でも、助けてもらったのは、本当に感謝してる。ありがとう」
命を助けてもらって。少しまけてほしい。とはさすがに言えない。
「それが、契約だ」
「なにって?」
「……お、お礼を言うことで……と、等価交換の契約をしたことになる……」
「契約?人として、言うでしょう。お礼くらい。」
「こ、この国では、めったに……ほとんど……言わない。お礼の言葉は契約の言葉。じ、自分にとって価値のあることをしてくれた。い、いずれ、自分も同じくらいのものを返す……等価交換の契約。そ、その約束が破られた時は、の、呪いがどこまでも追ってくる。古い。とても古い呪い。逃れることはできない」
「いやいやいや。海外旅行する時にその国の言葉で最初に覚えるのは、お礼の言葉でしょ。サンキューでもスパシー
バでも」
ここまで言って、あたしは小さい頃、この国のお礼の言葉を教わらなかったことに、はたと気が付いた。
お礼の言葉、教わらなかったわ!「ありがとうってアバダン語でなんて言うの?」って、母さんに聞いたら「覚えなくて良い」って吐き捨てるように言ったっけ。
母さんも兄さんも他人にお礼を言うような殊勝な人間じゃないから、今までありがとうを言われなかったことに、なんの疑問もなかった。
えーーまじでーー。
がっくり。
あたしは肩を落とした。
あの礼儀に厳格な兄までもが、なんでその言葉を教えてくれなかったか分かった気がする。
赤べこ並みにお礼とお詫びをいいまくる妹が、いつかアバダンに来たときの布石だったかーーっ。
兄さんと母さんはあたしの教育方法を間違った。
言葉を教えないんじゃなくて、アバダンの習慣を教えておいてくれたらいいのに。
まあ、あたしが忘れただけで、教えたのかもしれないけどさ。
あたしはくらくらする頭を抱えながら、大きくため息をついた。
「まあ、いいわ。あなたには、いずれなんらかの形で返したいと思ってるから。つけにしといて」
「つけって?」
「貸しにしといてってこと。」
「貸しって……」
あたしは説明するのが面倒くさくなって、話題を変えた。
「ねえ、それより、なんとかして下に降りる方法ない?」
「それよりって……そういうレベルの話かな……命の契約……」
「だって、もうしょうがないじゃない。とにかく、日本に帰るのが先。あなたの国に飛べない人とかいないの?そういう人は、どうやってこの部屋にはいってくるの?」
「飛べないぐらいの者は僕に会うことは許されていない」
レイはかたくなに首を振った。
はいはい。そうですね。誰だよこの中二病患っているヤツ。
あたしはため息をつきながら未練がましく部屋のカーテンの陰にドアがないか捜した。
最後のカーテンを確認して、もう一度明るい部屋をぐるりと見渡した。
窓のない所には、背の高い壁に備え付けられたの本棚があるだけだった。
「ねえ、もう一度よっく考えて。」
あたしはレイのそばに戻って言った。
「絶対あるはずなの。この塔を建てた人は誰?東大寺だって天武天皇が建てたんじゃないの。大工さんが建てたの。この建物だってあんたのおじいさんがお金を出したかもしれないけど、建てたのは大工さん。だから、絶対下に降りる方法があるはずなのよ」
「そ、そんなこと言われても……」
「本棚の本のどれかを引けばドアが現れるとか、なんかあるでしょ」
「いや、そんなものあったら……あ……」
「なに!?」
「おじいさまからいつかここを通って遊びにおいでって……昔、僕がこの塔に呪いをかけたときに一度だけ来てくれて……」
レイはそう言うと足下の赤い絨毯をベリベリとめくりあげた。
「その時はなんでそんなことを言うのかとか思ってたけど……」
絨毯の下からは錆びた金属の取っ手がついた木の扉が現れた。
どう考えても地上に通じる階段があるとしか思えない古びた木の扉だった。
「これだ!」
あたしは急いで扉を開け……開け……開けられない。
「あ、開けられない」
「……あ、開かないかな。ぼ、僕も、使ったことないからな」
二人で押したり引いたりしてみたが、扉は開けられるのを拒んでいるかのようにビクともしない。
「どうしよう」
あたしは赤くなった両手をぎゅっと握りしめた。
昔、兄さんが、アバダンには妖精がいるので、花は摘まないようにしましょうとか、小人のために小石を蹴らないようにしましょうとか言ってたけど、あれ、お伽話じゃなかったんだ……。
「あなたは、ほ……本当にそ、外から来たの? アバダンに入れたのに……その髪をもって……まさか、本当に、と、飛べないの?」
「髪は関係ないでしょ。飛べないわよ。言ってるでしょ」
「そ、そんなはずない。本当ならあなたはこの国に……ましてやここには入れないはずなんだ」
「だから、言ったでしょ。見たでしょ。飛行機から落ちてワンバウンド、あなたのベッドがなかったらとっくにこの
世にいないわよ」
しつこいなあ。
「……本当にひ、飛行機に乗ってきて、落ちたの?」
「そう。本当に」
「こ、この時期に?よりにもよって……夏至の飛行機から、こ、ここに落とされた?」
レイは地面を指さした。
「ここに落としたのは鳥だけどね。飛行機からは、落とされたっていうか、落ちちゃったんだよ。事故だよ」
あたしはマールがどうなったかは考えないようにした。
飛んでる飛行機の扉が開いていることへの業務上過失致死傷罪は置いといて、一応あたしは自分から落っこちたのだ。
「っじ、事故? それこそ、ま、まさかだよ。夏至の期間に飛ぶ飛行機がじ、じ、事故を起こすわけがない」
紫の目が疑わし気に細くなった。
「こ、ここをどこだと思っているの? あ、アバダンの首都、ば、バルーカの、さらに中心。アバダンの心臓部。ここら上空は飛行禁止区域になっていて……ひ、飛行機なんて、も、もちろん、あ、アヴォイド以外の生き物はすべてこの塔にも近づくことすらできない」
「そんなこと言ってもその鳥さんがここに落としたんだもん」
「ああ、そうか。あ、あなたはアヴォイドに乗ってきたと言ってたな。そ、それだったら……」
あるかも。
まだ納得いかない顔で彼の声はしぼんで消えていく。
「あたしは鳥に落とされた糞と同じよ。何の意図もないってば。でも、そうか。ここがアバダンの首都なんだ。アバダンのバルーカって言ったら、お城があるとこよね。そうか、ここがバルーカ。あたしが乗ってきた鳥さんの名前、よく聞き取れないんだよね。えっと……」
「あ、アヴォイド。」
「アヴォイド。飛行機から落ちたとき、あのふわふわの胴体のとこに着地したからなんとか生きてたんだよ。あの、首のとこと、長い尻尾の、鱗みたいなものに覆われているとこに落ちていたら、絶対死んでいたと思う。」
「あ、あなたは、なんで、ア、アヴォイドを知らないんだ?」
「いや、ばかにしないでよ。あたしだって来る前に色々下調べして来たかったけど、この国のことって、どこにも詳しいこと何も載ってないんだもん」
小さい頃、母さん曰く「ドがつくほど優秀な兄さん」がこの国の歴史や文化をあたしに叩きこんだらしいんだけど、あたしはまるっと忘れている。
あたしがおばかさんなのか、必要ないから覚えなかったか、おそらくはその両方。
兄さんがあのまま家で一緒に暮らしていたら、違っていたかもしれない。
でも、兄さんはいなくなった。
あたしにご飯を食べさせるのも忘れるような母さんが手間暇かけてあたしに何かを教えるはずもなく、あたしのアバダン英才教育は自然に頓挫した。
今、あたしがアバダン語を話せるのは、ひとえに、母さんがめんどくさがって家では自分の母語のアバダン語でしか会話をしなかったからだ。
照美ってば、あたしがアバダン語を話せると聞いて驚いていたっけ。
今頃ラインで泰治とあたしの誕生日の準備をして……。
あたしは急にあの文明の利器を思い出した。
電話だ。
空港に電話をしよう。
アバダンの空港には母さんと兄さんが待っているはずだった。
きっと大変なことになっている。
母さんはともかく、兄さんは、あたしが到着しないと判明するかしないかの間に、空港の職員の首を絞め殺すに違いない。
ヘビのように執念深い兄に睨まれるなら、ひと思いに殺してあげた方がいっそ親切だ。
「ねえ、レイ君。電話貸して。兄さんも母さんも……はどうだかわかんないけど、とにかく心配しているだろうし。携帯も全部飛行機の荷物の中なの。空港に電話すれば、あたしが無事なのが伝えられるし、迎えに来てもらえる」
「で、で、電話……知ってる。音声を電気信号に変えて会話情報を遠方に伝達するためのもの。チャールズ・ページが伝達原理を発見し、外の社会の主な通信手段となっているもの」
「電話発明したのはベルよ。そんなことより、電話貸してよ」
「ぎ、ぎ、義父に特許申請してもらい、グレイに勝ったベル。ページは……」
「電話! どこ? 」
思わず大きな声を出してしまった。レイはびっくりしたように肩をふるわせた。
「……そ、そ、そんなものはここにはないよ」
「なんで? 電話がないってどんな国よ」
今どきサハラ砂漠のど真ん中だってスマホが通じる。
「ぼ、僕たちは、が、外部に連絡するべきときは、か、鏡を使うんだ。鏡はどこの家にもあるし、こ、効率がいい。書類が必要な時は、鳥たちが届けてくれる」
なるほど。
兄さんがあたしへの手紙を黒鷺で届けるはずだ。
かかる代金はパンくずだけ。死んだら土に戻る。
お財布にも環境にも優しい。
彼らが嵐にあった時、偶然、政敵の屋根の下で雨宿りをしなければ実に有効な手段だ。
「じゃあ、どうにかしてくれない? あんた、できないの? その、鏡を使うなんとかって方法で」
あたしは半ばやけくそで言った。
「こ、ここには、鏡は置いていない」
彼はしごくまともな顔をして言った。
あー。そうでしょうとも。
人と会いたくない人間が鏡を置く理由がない。
まあ、鏡はどこの家にもあるって話は天窓から空にぶん投げられたが。
携帯はポッケにいれること。あたしは頭のメモにしっかりと書き込んだ。
「うん。残念。とにかく、空港行くわ。でないと兄さんに殺される。ていうか兄さんが誰かを殺める前に。ね、アバダンの空港ってどこにあるの?く・う・こ・う。知らないの?飛行機が離着陸する場所よ」
あたしは髪を耳にかけて顔をつきだした彼に、わかりやすいようにゆっくりと繰り返した。
「し、し、知っている。た、多分……ここよりさらに……き、北にある……ロッドという町のはずれが『外』との出入り口という話を聞いたことがある」
やった。あたしは心の中で拍手した。
「ほんと?」
「う、う、嘘はいわないよ。」
レイはぶるっと体を震わせながら言った。
「……た、ただ、ろ、ろ、ロッドは近くに軍事施設がある。い、今は戦時中。き、許可証がなければ、一般人は近づくこともできない」
彼はささやくような声で言った。
「戦時中なの? そんな感じしないけど」
窓から見る町並は平和そのものだ。
「あ、あ、アメリカは、いつだってどこかの国と戦争をしているけど、自分の国の大地で他国と戦争はしていない。あ、アバダンでここが戦地になるときは、戦局は崖っぷち……ただ、建国から今までここ、バルーカが戦火を浴びたことは、い、一度もない」
レイは、ぼそりと言った。
「わかった。アバダンは今、戦争をしているのね。そんな時期に身分証明書も持ってないあたしがロッドって町に近づけないかもなのね?」
あたしはもう一度窓の外を見た。
「でも、とにかく行ってみるわよ。母さんだけだったらともかく、ここに住んでる兄さんも空港まで迎えに来るって言ってたし。近くに行けば何とかなるかもでしょ。ここでこうしていても、しょうがないし。ここからロッドって町まで、どのくらいかかるの?」
「ぼ、僕も行ったことはない。北にあるって聞いたことはあるけど」
「……わかった。とにかく、やっぱ、下に降りて、誰かに聞かなきゃ進まないわ。いくよ」
「ぼ……僕も……?」
一呼吸置いて、レイは消え入るような、震える声で言った。
「当たり前でしょ。たまには外にでて、風呂にでも入りなさい」
「ふ……風呂? そんな……」
あたしは、しどろもどろしている彼を無視して窓の下をのぞいた。
かなりの高さだ。
まっすぐ降りたとしてもだいたい四十メートルくらいある。
下に降りるには、カーテンをつなげてロープにして降りるしかないけど、ここのカーテン全部足しても間に合うかなー。
高いなー。
「ねー。あんた、まさか飛べるなんて言わないよね」
あたしは笑った。
「と、と、と、飛べるよ。そ、そんなに莫迦にしないでよ」
「莫迦になんてしてないよ。ただ、飛べるなんて……あれもホントは風船人形とかじゃないの?」
あたしは遠くで浮かんだり消えたりしている人影を親指でさしながら笑った。
「飛べる」
「え?」
「僕だって飛べるよ。」
「え?」
レイが不機嫌そうにこちらを睨んだ。
「え? 飛べる? じゃ、ちょっと飛んで見せてよ」
あたしは何も考えなかった。
ただ、軽い気持ちで言っただけ。
でも、レイはそれよりも軽く、部屋の隅まで飛んだ。
衝撃だった。
ホントに驚くと人は言葉が出ない。
「……すごい」
すごいを辞書で引くと、一番最初に載っている意味は「怖い」だ。
そう。あたしは怖かった。目の前の男の子に抱くのは、純然たる恐怖心。
「な、なんにもすごくないよ」
そんなあたしの気持ちも知らず、彼は照れたように笑った。
「ねえ、それ、それ、……魔法だよね?」
「ま、魔法?ま、魔法って何?ま、魔術の事?」
「え……と。空飛んだり、手を使わずに物を動かしたりすることをいうの……かな?」
まあ、みたことないけど。今はじめて見たけど。
「ああ。ち、『力』のこと? ち、『力』と魔術は全く違う。ま、魔術は目的があって使われる、ぼ、僕たちシー族にとっての『力』は手や足を動かすのと同じようなもの」
「何が違うのかさっぱりわかんないけど、飛べるんだね……」
そりゃ天窓しかないわけだわ。
レイは首をかしげて、ちらっと私をみた。
その瞬間、周りの空気が明らかに変わった。
空気が意志を持ったように体に迫ってくる。
急に視線が高くなった。
空気に押されるように体が浮かぶ。
「ちょ……ちょ……ちょっと待って! やめて!」
もうごめんなのよ。落ちるのも飛ぶのも。
あたしは叫んだ。
体は弧を描くようにゆっくりと床に降りた。
あたしはその場に座り込んだ。
膝が笑って力がはいらない。なんで助かったか今わかった。そりゃ、飛行機から落ちて無事なわけだ。
「あ……や、や、嫌だった?」
レイは心配そうにあたしの顔を覗き込んだ。
「いや……ありがとう。レイ君、落ちてきた時、こうやってあたしのこと助けてくれたんだね……」
レイは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして、恥ずかしそうに首を振った。
「た、たいしたことしてない」
「たいしたことだよ。レイ君はあたしの命の恩人だよ。本当にありがとう。」
下手すれば二度と大切な人に……照美や泰治にも会えないとこだった。
「いつか、何かあたしにできることがあったら言ってよ」
「命の契約をしてくれるの?」
レイは嬉しそうに言った。
「命の契約?」
なんだ?そのいやな予感しかしない怪しげな名前のモノは。
「こ、この国は等価交換が原則なんだ。お、同じくらいのものを僕に返してくれればいいんだよ」
思わず手背で彼のお腹を叩いた。
「無理だから!あんたの命、助けられないから!そもそも、そんな場面なんて、そうそうないわっ」
やっべ。こわーー。知らない国、こわーー。オッケーが首横に振る程度の文化の違いじゃないわーー。
「え、なになに。じゃあ、あたしが何かしてもらったら、おんなじものを何か返さなければならないわけ?たとえば、あなたにごちそうしてもらったら、次は私がごちそうするとか?原始時代の物々交換みたいなもの?」
そのうちわかんなくなったりしない?かっこいいフリをしたい彼氏なんかはどうするんだ?
「……ん……うん?まあ、そんなものかなあ……」
なんか違う。という顔で彼は頷いた。
「とにかく、わかった。飛べるような人にあたしができることなんてたかが知れてるし、あなたの命の危機の時にタイミング良くあたしが駆けつけられるのかわかんないけど……でも、助けてもらったのは、本当に感謝してる。ありがとう」
命を助けてもらって。少しまけてほしい。とはさすがに言えない。
「それが、契約だ」
「なにって?」
「……お、お礼を言うことで……と、等価交換の契約をしたことになる……」
「契約?人として、言うでしょう。お礼くらい。」
「こ、この国では、めったに……ほとんど……言わない。お礼の言葉は契約の言葉。じ、自分にとって価値のあることをしてくれた。い、いずれ、自分も同じくらいのものを返す……等価交換の契約。そ、その約束が破られた時は、の、呪いがどこまでも追ってくる。古い。とても古い呪い。逃れることはできない」
「いやいやいや。海外旅行する時にその国の言葉で最初に覚えるのは、お礼の言葉でしょ。サンキューでもスパシー
バでも」
ここまで言って、あたしは小さい頃、この国のお礼の言葉を教わらなかったことに、はたと気が付いた。
お礼の言葉、教わらなかったわ!「ありがとうってアバダン語でなんて言うの?」って、母さんに聞いたら「覚えなくて良い」って吐き捨てるように言ったっけ。
母さんも兄さんも他人にお礼を言うような殊勝な人間じゃないから、今までありがとうを言われなかったことに、なんの疑問もなかった。
えーーまじでーー。
がっくり。
あたしは肩を落とした。
あの礼儀に厳格な兄までもが、なんでその言葉を教えてくれなかったか分かった気がする。
赤べこ並みにお礼とお詫びをいいまくる妹が、いつかアバダンに来たときの布石だったかーーっ。
兄さんと母さんはあたしの教育方法を間違った。
言葉を教えないんじゃなくて、アバダンの習慣を教えておいてくれたらいいのに。
まあ、あたしが忘れただけで、教えたのかもしれないけどさ。
あたしはくらくらする頭を抱えながら、大きくため息をついた。
「まあ、いいわ。あなたには、いずれなんらかの形で返したいと思ってるから。つけにしといて」
「つけって?」
「貸しにしといてってこと。」
「貸しって……」
あたしは説明するのが面倒くさくなって、話題を変えた。
「ねえ、それより、なんとかして下に降りる方法ない?」
「それよりって……そういうレベルの話かな……命の契約……」
「だって、もうしょうがないじゃない。とにかく、日本に帰るのが先。あなたの国に飛べない人とかいないの?そういう人は、どうやってこの部屋にはいってくるの?」
「飛べないぐらいの者は僕に会うことは許されていない」
レイはかたくなに首を振った。
はいはい。そうですね。誰だよこの中二病患っているヤツ。
あたしはため息をつきながら未練がましく部屋のカーテンの陰にドアがないか捜した。
最後のカーテンを確認して、もう一度明るい部屋をぐるりと見渡した。
窓のない所には、背の高い壁に備え付けられたの本棚があるだけだった。
「ねえ、もう一度よっく考えて。」
あたしはレイのそばに戻って言った。
「絶対あるはずなの。この塔を建てた人は誰?東大寺だって天武天皇が建てたんじゃないの。大工さんが建てたの。この建物だってあんたのおじいさんがお金を出したかもしれないけど、建てたのは大工さん。だから、絶対下に降りる方法があるはずなのよ」
「そ、そんなこと言われても……」
「本棚の本のどれかを引けばドアが現れるとか、なんかあるでしょ」
「いや、そんなものあったら……あ……」
「なに!?」
「おじいさまからいつかここを通って遊びにおいでって……昔、僕がこの塔に呪いをかけたときに一度だけ来てくれて……」
レイはそう言うと足下の赤い絨毯をベリベリとめくりあげた。
「その時はなんでそんなことを言うのかとか思ってたけど……」
絨毯の下からは錆びた金属の取っ手がついた木の扉が現れた。
どう考えても地上に通じる階段があるとしか思えない古びた木の扉だった。
「これだ!」
あたしは急いで扉を開け……開け……開けられない。
「あ、開けられない」
「……あ、開かないかな。ぼ、僕も、使ったことないからな」
二人で押したり引いたりしてみたが、扉は開けられるのを拒んでいるかのようにビクともしない。
「どうしよう」
あたしは赤くなった両手をぎゅっと握りしめた。
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