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29. アリスティア公国へ
しおりを挟むひと足先にアリスティア公国に着いていたジャンとロワイ家の方々に会えたのは、断罪イベントからすぐだった。
アレクが一瞬で転移したので、私は訳も分からないまま新たな地、アリスティア公国へと降り立った。
「ユリナー!」
「ジャン!大丈夫だった?」
再会の場はアリスティア公国の城の一角で、ここでジャンとロワイ家の方々は国賓扱いで非常に快適に過ごしていたらしい。
「大丈……ぶっ!!…………グゥッ!!……イタタ……なんか、悪かったな。僕のせいで地下牢なんかに閉じ込められてさ。全く、あの御令嬢は本当とんでもないよな。」
久しぶりの再会に思わず抱きつこうとしたら、ジャンがものすごく苦しそうな顔したので、どこか怪我をしたのかと心配になった。
「大丈夫?サブリナ嬢たちにどこか怪我させられたの?」
「……いや、今怪我したというか……。これ以上触れられたらまた怪我するからやめとこう。大丈夫大丈夫!」
両手を前に突き出して抱擁を軽く拒否したジャンは明るい表情だけど、やはりどこか痛むようだ。
あまり詳しく聞いて欲しくなさそうなのでそっとしておくことにした。
「ようこそアリスティア公国へ。偉大なる魔法使いアレクサンドル様、異世界からの御客人ユリナ様。」
「え?」
ふと気づくと豪奢なマントと刺繍が入ったチュニック風の上着、ピタッとしたタイツに高級感のあるブーツ姿の壮年の男性がこちらへとお辞儀をしていた。
「アリスティア公国の君主でアリスティア公だ。」
さり気なく私に告げるアレクはアリスティア公の存在に随分前から気づいていたらしい。
「申し訳ありません!この度はお手数おかけしました。ユリナと申します。」
そう言ってみよう見真似のカーテシーをしてご挨拶してみた。
「アレク、アリスティア公が居たなら教えてよ。」
「いや、気づいていたのかと。」
「そんなわけないでしょ!」
ワイワイと小声ながら言い合いをする私とアレクを、アリスティア公は穏やかな微笑みをたたえて見守っていることに気づいて、また気まずい思いをする。
「アレクサンドル様にユリナ様には、我が公国で過ごしていただける光栄を有り難く思います。この国はまだ大国ではありませんが、民たちは平和で豊かに過ごせる国だと自負しております。特に我が公国では異世界からの御客人は神に等しい存在なのです。ですから、近く存在していただけるだけで民たちは喜びます。お二人もこの公国の民となって、どうかお幸せにお過ごしください。」
「どうもありがとうございます。」
あのマルシャル王国のオジサンとは大違いの考えをお持ちのアリスティア公に深くお辞儀を返した。
隣でアレクは相変わらず飄々としてたけど、アリスティア公とは以前からの知り合いみたいだし、きっととても良い関係なんだろう。
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