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44. 一番嫌な相手に見つかったの回
しおりを挟む僕のお嫁さん候補はとても魅力的だ。
「僕の妃……お嫁さんですか?」
ある日、両親に「そろそろ、あなたの妃を選びましょうか?」と言われた。
「正確には、候補よ」
にこにこと母様が言う。
その横で母様の手を握りながら父様も言う。
「レオもそろそろ年頃になってきたからね。そういうこと考えないといけないかなって」
いつ見ても仲睦まじい両親を前に、僕はちょっと困ってしまった。
僕のお嫁さん。
つまりこの国の次期王妃を選ぶってことだよね?
僕は今十四歳。ちょっと早くないかな?
僕の戸惑いに気づいたように母様が続けて言った。
「別に今すぐ選びなさいってわけじゃないのよ。探しはじめましょうって話だから」
「そうそう。レオの相手は次期王妃になる子だからね。慎重に選ばないとね」
「それも大事なことですが、まずはレオの気持ちですよ、ユリウス様」
「まぁ、そうだけど。でも変な子選んだら困るじゃないか」
「レオは大丈夫ですよ。人を見る目ありますから」
「君に似てしっかりしているもんね」
「あら、ユリウス様だって、人を見る目をきちんと養われていますよ?」
「本当?エヴァに褒められて嬉しいな」
「あの」
二人だけで話が進むと脱線しそうだったので、声をかけた。
このままだと惚気話に突入しかけない。
両親の仲が良いというのは、子供としては嬉しいけど、今は遠慮してほしい。
「どうしたの?レオ」
「僕の妃は、僕が選ぶんですか?」
僕は王太子だから、両親が選んだ子と結婚するんだと思っていた。いわゆる政略結婚。でも今の口ぶりだと、僕が選んでいいみたい?
「ええ。ある程度こちらで候補を絞ることにはなるけれど、その中からあなたがいいと思った子を選んでほしいのよ」
「さすがに下級貴族の娘はダメだから上級貴族の中になるけどね」
まあ、それはそうだろうなと思ったので頷いた。
そっか、僕が選ぶのか。
どんな子がいいのかな?
「それでね、候補の令嬢達を招待したお茶会を開こうと思うの」
「まずは、気軽に話す場を設けようって話だね」
なるほど、お茶会で候補のご令嬢達と話をしろってことだね。
候補の令嬢一人ひとりと会うのも大変だから、一度に済むのはありがたいかも。
「わかりました」
「じゃあ、そういうことでよろしくね」
こうして僕は、僕の妃(候補)を選ぶお茶会にでることになった。
候補の子達と会う前に、ある程度どんな子がいいか考えておこうと思ったのだけど、正直、どんな子がいいのかわからない。
いや、自分で選ぶとは思っていなかったからね。
父様に相談してみたけど、両親はがっつり政略結婚だったため、参考にならない。あげくに「僕はエヴァが相手で本当に幸運だったよ」って惚気られた。確かに母様は王妃としてふさわしい人だけどね。子供相手に惚気ないでほしい。
母様にも「王妃に向いている人ってどんな方ですか?」と聞いてみたら、父様とは違っていろいろ挙げてくれた。でも最後には「王妃に向くかどうかも大事だけど、まずはレオが一緒に居たいと思う方を見つけてみたらどうかしら」と言われた。
僕が一緒に居たい子。
外見は、あんまりこだわりはないかな。というか、上級貴族ってだいたい外見が麗しい人達を選んで血を繋いできたから、みんな大抵綺麗なんだよね。
だとすると中身で選ぶことになるけど……そうだなぁ、自分の意見を持っている子がいいかな。一緒に考えてくれる子がいいから。あとは、あとは……何だろうな。
そんな風に考えていたら、お茶会の日がやってきた。
会場は、城にある庭の一つになった。王妃である母様が好きな場所で、よく王妃主催のお茶会が行われている場所だ。
今回は、上級貴族で僕の年齢に近い令嬢が二十人くらい参加するらしい。多いのか少ないのかはよくわからない。お茶会は、最初は令嬢達が四人一組で座っているテーブルを僕が順番に回ることになっている。それが終わったら、軽い立食形式になり自由に動き回れるようになるらしい。
どんな子がいるのかな?と最初はドキドキワクワクしていたんだけど、お茶会が進むにつれて、僕はだんだん疲れてきた。
令嬢達は、にこにこ笑いながらお互いを牽制しあっている。言葉は丁寧だけど相手を貶めようとしたりしているし。僕へのアピールも強い子が多い。媚を売ってくる子もいた。女の子ってこんな感じだっけ?
まあ、僕に気にいられたら未来の王妃になれるわけだから、こんな風になるのは当たり前かもしれないけど、僕はあからさまなのは好きじゃないんだよね……と考えながらも、顔は微笑みを浮かべて、令嬢達の話を聞いている。これくらいは対応できる。
それにしても、今はみんな行儀よく座っているけど、これ、自由になったらどうなるんだろう?あんまりいい想像ができない。
案の定、立食形式に移行すると、僕は令嬢達に囲まれてしまった。見た目は可愛いけど、迫力がありすぎて、嬉しい気分にはなれない。正直鬱陶しい。とはいえ、今回は王家側が主催なわけだし、令嬢達に失礼な態度をとれるわけでもないから、当たり障りないように接するしかないのが辛い。
僕の周りでは、熱心に自己アピールしている令嬢達の声が左右から聞こえてきて、とても姦しい。ああ、妃選びって大変なんだな。この中から選ばないとダメなのかな。とやや現実逃避をしていたら、涼やかな鈴のような声が聞こえた。
「皆さま、失礼いたします。……殿下、恐れながら御気分が優れないのでは?顔色がよくありません」
「え?」
「よろしければ、少し静かな場所でお休みになられてはいかがでしょうか?」
声の主は、その声と相まって立ち姿も凛とした令嬢だった。
意志が強そうな瞳が目を惹いた。
その令嬢の声に、周りの令嬢が一瞬あっけにとられた隙に、するりと僕の傍に来て、「さぁ、殿下、参りましょう」と僕を連れ出そうとする。僕が令嬢達の輪から抜けきったところで、令嬢達は我に返ったようだ。
「で、殿下。私もお供いたします」「わ、わたくしも」と令嬢達が口々に言ってきたけど、それを聞いた彼女は、くるりと令嬢達に向き合った。
「皆さま方、殿下は御気分が優れないのです。周りに人が多くいては、お休みの妨げになると思いませんか?ここは、ご遠慮くださいませ。……それに、さきほどの振る舞いは淑女として如何なものかと。少し頭を冷やされては?」
ぴしゃりと彼女が言った。言われた令嬢達は、ぱくぱく口を動かすだけで二の句が継げないようだ。指摘されたことに真っ赤になっている子もいる。確かに淑女というより獲物を狙う狩人みたいだったものね……。
その様子を一瞥してから、彼女はくるりと僕に向き合い、先導してくれた。
連れてきてくれた場所は、お茶会会場から少し離れた所にある四阿だった。
僕が座ると、彼女は離れた場所で立ち、礼をした。
「殿下、私も失礼させていただきます」
そう言って、さっさと立ち去ろうとした彼女を引きとめた。
「あ、ちょっと待って!」
「……はい」
「少しだけ話してもいいかな?」
「……殿下のお望みなら」
座るように勧めると、彼女は、僕から離れた場所に腰を下ろした。
「えっと、まずはお礼を。助けてくれてありがとう」
「いえ、殿下の助けになったのなら幸いです」
にっこりとあどけない微笑みを浮かべて返事をしてくれた。さっき令嬢達を冷たくやり込めた時とは雰囲気が違って、僕はドキッとしてしまった。
「うん。ちょっと令嬢達の迫力が怖くて困っていたんだ」
「……そうですか。確かに彼女達、ちょっと鬼気迫るものがありましたからね」
「女の子が怖いって初めて思ったよ」
「まぁ」
クスクスと笑ってくれて、なんだか嬉しくなった。
それから少しの間他愛もない話をした。そして、もっと話がしたいと思ったところで、彼女が席を立ち「私がこれ以上長く殿下のお傍にいると、他の方がこちらに来てしまいますから」と言った。今度は引き留めることができなくて、彼女はそのまま会場に戻ってしまった。
彼女の後姿を見送りながら、傍に控えていた護衛に聞いた。
「ねえ、あの子、確かバーベリって言っていたよね?」
「はい。バーベリ侯爵家のご令嬢です」
「そっか」
散々かと思ったお茶会だったが、どうやら僕は見つけることができたようだ。
その後、しばらく休んでからお茶会会場へ戻ると、令嬢達は大人しくなっていた。よほど彼女の言葉が響いたのだろうか?何にしても、僕としては有難い。そうして、お茶会は穏やかなまま終了することができた。
そして、お茶会終了後、両親に告げた。
「バーベリ侯爵家のご令嬢がいいと思いました」
「え!?バーベリ侯爵家のご令嬢?」
「はい」
僕の言葉に、両親はお互いの顔を見合わせていた。
一体何だろう?
「あの?」
「ああ、ごめんなさいね。ちょっと不思議な縁を感じたものだから」
「不思議な縁?」
「そうだね。まさかレオがバーベリ家の子を選ぶとは思ってなかったよ」
両親が何をそんなに驚いているのか、僕にはよくわからない。もっと詳しく聞こうとしたけど、教えてくれなかった。すごく気になるんだけど。こうなると二人から話を聞くのは難しいだろう。バーベリ侯爵家との話が進めば教えてくれるかな?
「最終確認だけど、バーベリ侯爵家のご令嬢がいいと思ったのね?」
「はい。彼女ともっと話がしたいと思いました」
「そう。じゃあ、バーベリ侯爵家の方に打診してみますね」
「はい。お願いします」
もう一度、彼女に会えるかもしれない。そう思うと嬉しくなる。彼女は一体どんな子なんだろう?そんな風にあれこれ思っていたら、父様から釘を刺された。
「レオ、もしかしたら断れることもあるから、そのことは忘れないように」
「……はい」
王家からの打診を断るためにはそれ相応の理由がないと難しいのだけど……本当にバーベリ侯爵家と一体何があったんだろうか?
僕としては、彼女とまた会いたいから、受けてくれるといいんだけど。
凛とした姿や、冷淡な対応、あどけない微笑、可愛い笑顔。
今度はどんな君を見られるかな。
「僕の妃……お嫁さんですか?」
ある日、両親に「そろそろ、あなたの妃を選びましょうか?」と言われた。
「正確には、候補よ」
にこにこと母様が言う。
その横で母様の手を握りながら父様も言う。
「レオもそろそろ年頃になってきたからね。そういうこと考えないといけないかなって」
いつ見ても仲睦まじい両親を前に、僕はちょっと困ってしまった。
僕のお嫁さん。
つまりこの国の次期王妃を選ぶってことだよね?
僕は今十四歳。ちょっと早くないかな?
僕の戸惑いに気づいたように母様が続けて言った。
「別に今すぐ選びなさいってわけじゃないのよ。探しはじめましょうって話だから」
「そうそう。レオの相手は次期王妃になる子だからね。慎重に選ばないとね」
「それも大事なことですが、まずはレオの気持ちですよ、ユリウス様」
「まぁ、そうだけど。でも変な子選んだら困るじゃないか」
「レオは大丈夫ですよ。人を見る目ありますから」
「君に似てしっかりしているもんね」
「あら、ユリウス様だって、人を見る目をきちんと養われていますよ?」
「本当?エヴァに褒められて嬉しいな」
「あの」
二人だけで話が進むと脱線しそうだったので、声をかけた。
このままだと惚気話に突入しかけない。
両親の仲が良いというのは、子供としては嬉しいけど、今は遠慮してほしい。
「どうしたの?レオ」
「僕の妃は、僕が選ぶんですか?」
僕は王太子だから、両親が選んだ子と結婚するんだと思っていた。いわゆる政略結婚。でも今の口ぶりだと、僕が選んでいいみたい?
「ええ。ある程度こちらで候補を絞ることにはなるけれど、その中からあなたがいいと思った子を選んでほしいのよ」
「さすがに下級貴族の娘はダメだから上級貴族の中になるけどね」
まあ、それはそうだろうなと思ったので頷いた。
そっか、僕が選ぶのか。
どんな子がいいのかな?
「それでね、候補の令嬢達を招待したお茶会を開こうと思うの」
「まずは、気軽に話す場を設けようって話だね」
なるほど、お茶会で候補のご令嬢達と話をしろってことだね。
候補の令嬢一人ひとりと会うのも大変だから、一度に済むのはありがたいかも。
「わかりました」
「じゃあ、そういうことでよろしくね」
こうして僕は、僕の妃(候補)を選ぶお茶会にでることになった。
候補の子達と会う前に、ある程度どんな子がいいか考えておこうと思ったのだけど、正直、どんな子がいいのかわからない。
いや、自分で選ぶとは思っていなかったからね。
父様に相談してみたけど、両親はがっつり政略結婚だったため、参考にならない。あげくに「僕はエヴァが相手で本当に幸運だったよ」って惚気られた。確かに母様は王妃としてふさわしい人だけどね。子供相手に惚気ないでほしい。
母様にも「王妃に向いている人ってどんな方ですか?」と聞いてみたら、父様とは違っていろいろ挙げてくれた。でも最後には「王妃に向くかどうかも大事だけど、まずはレオが一緒に居たいと思う方を見つけてみたらどうかしら」と言われた。
僕が一緒に居たい子。
外見は、あんまりこだわりはないかな。というか、上級貴族ってだいたい外見が麗しい人達を選んで血を繋いできたから、みんな大抵綺麗なんだよね。
だとすると中身で選ぶことになるけど……そうだなぁ、自分の意見を持っている子がいいかな。一緒に考えてくれる子がいいから。あとは、あとは……何だろうな。
そんな風に考えていたら、お茶会の日がやってきた。
会場は、城にある庭の一つになった。王妃である母様が好きな場所で、よく王妃主催のお茶会が行われている場所だ。
今回は、上級貴族で僕の年齢に近い令嬢が二十人くらい参加するらしい。多いのか少ないのかはよくわからない。お茶会は、最初は令嬢達が四人一組で座っているテーブルを僕が順番に回ることになっている。それが終わったら、軽い立食形式になり自由に動き回れるようになるらしい。
どんな子がいるのかな?と最初はドキドキワクワクしていたんだけど、お茶会が進むにつれて、僕はだんだん疲れてきた。
令嬢達は、にこにこ笑いながらお互いを牽制しあっている。言葉は丁寧だけど相手を貶めようとしたりしているし。僕へのアピールも強い子が多い。媚を売ってくる子もいた。女の子ってこんな感じだっけ?
まあ、僕に気にいられたら未来の王妃になれるわけだから、こんな風になるのは当たり前かもしれないけど、僕はあからさまなのは好きじゃないんだよね……と考えながらも、顔は微笑みを浮かべて、令嬢達の話を聞いている。これくらいは対応できる。
それにしても、今はみんな行儀よく座っているけど、これ、自由になったらどうなるんだろう?あんまりいい想像ができない。
案の定、立食形式に移行すると、僕は令嬢達に囲まれてしまった。見た目は可愛いけど、迫力がありすぎて、嬉しい気分にはなれない。正直鬱陶しい。とはいえ、今回は王家側が主催なわけだし、令嬢達に失礼な態度をとれるわけでもないから、当たり障りないように接するしかないのが辛い。
僕の周りでは、熱心に自己アピールしている令嬢達の声が左右から聞こえてきて、とても姦しい。ああ、妃選びって大変なんだな。この中から選ばないとダメなのかな。とやや現実逃避をしていたら、涼やかな鈴のような声が聞こえた。
「皆さま、失礼いたします。……殿下、恐れながら御気分が優れないのでは?顔色がよくありません」
「え?」
「よろしければ、少し静かな場所でお休みになられてはいかがでしょうか?」
声の主は、その声と相まって立ち姿も凛とした令嬢だった。
意志が強そうな瞳が目を惹いた。
その令嬢の声に、周りの令嬢が一瞬あっけにとられた隙に、するりと僕の傍に来て、「さぁ、殿下、参りましょう」と僕を連れ出そうとする。僕が令嬢達の輪から抜けきったところで、令嬢達は我に返ったようだ。
「で、殿下。私もお供いたします」「わ、わたくしも」と令嬢達が口々に言ってきたけど、それを聞いた彼女は、くるりと令嬢達に向き合った。
「皆さま方、殿下は御気分が優れないのです。周りに人が多くいては、お休みの妨げになると思いませんか?ここは、ご遠慮くださいませ。……それに、さきほどの振る舞いは淑女として如何なものかと。少し頭を冷やされては?」
ぴしゃりと彼女が言った。言われた令嬢達は、ぱくぱく口を動かすだけで二の句が継げないようだ。指摘されたことに真っ赤になっている子もいる。確かに淑女というより獲物を狙う狩人みたいだったものね……。
その様子を一瞥してから、彼女はくるりと僕に向き合い、先導してくれた。
連れてきてくれた場所は、お茶会会場から少し離れた所にある四阿だった。
僕が座ると、彼女は離れた場所で立ち、礼をした。
「殿下、私も失礼させていただきます」
そう言って、さっさと立ち去ろうとした彼女を引きとめた。
「あ、ちょっと待って!」
「……はい」
「少しだけ話してもいいかな?」
「……殿下のお望みなら」
座るように勧めると、彼女は、僕から離れた場所に腰を下ろした。
「えっと、まずはお礼を。助けてくれてありがとう」
「いえ、殿下の助けになったのなら幸いです」
にっこりとあどけない微笑みを浮かべて返事をしてくれた。さっき令嬢達を冷たくやり込めた時とは雰囲気が違って、僕はドキッとしてしまった。
「うん。ちょっと令嬢達の迫力が怖くて困っていたんだ」
「……そうですか。確かに彼女達、ちょっと鬼気迫るものがありましたからね」
「女の子が怖いって初めて思ったよ」
「まぁ」
クスクスと笑ってくれて、なんだか嬉しくなった。
それから少しの間他愛もない話をした。そして、もっと話がしたいと思ったところで、彼女が席を立ち「私がこれ以上長く殿下のお傍にいると、他の方がこちらに来てしまいますから」と言った。今度は引き留めることができなくて、彼女はそのまま会場に戻ってしまった。
彼女の後姿を見送りながら、傍に控えていた護衛に聞いた。
「ねえ、あの子、確かバーベリって言っていたよね?」
「はい。バーベリ侯爵家のご令嬢です」
「そっか」
散々かと思ったお茶会だったが、どうやら僕は見つけることができたようだ。
その後、しばらく休んでからお茶会会場へ戻ると、令嬢達は大人しくなっていた。よほど彼女の言葉が響いたのだろうか?何にしても、僕としては有難い。そうして、お茶会は穏やかなまま終了することができた。
そして、お茶会終了後、両親に告げた。
「バーベリ侯爵家のご令嬢がいいと思いました」
「え!?バーベリ侯爵家のご令嬢?」
「はい」
僕の言葉に、両親はお互いの顔を見合わせていた。
一体何だろう?
「あの?」
「ああ、ごめんなさいね。ちょっと不思議な縁を感じたものだから」
「不思議な縁?」
「そうだね。まさかレオがバーベリ家の子を選ぶとは思ってなかったよ」
両親が何をそんなに驚いているのか、僕にはよくわからない。もっと詳しく聞こうとしたけど、教えてくれなかった。すごく気になるんだけど。こうなると二人から話を聞くのは難しいだろう。バーベリ侯爵家との話が進めば教えてくれるかな?
「最終確認だけど、バーベリ侯爵家のご令嬢がいいと思ったのね?」
「はい。彼女ともっと話がしたいと思いました」
「そう。じゃあ、バーベリ侯爵家の方に打診してみますね」
「はい。お願いします」
もう一度、彼女に会えるかもしれない。そう思うと嬉しくなる。彼女は一体どんな子なんだろう?そんな風にあれこれ思っていたら、父様から釘を刺された。
「レオ、もしかしたら断れることもあるから、そのことは忘れないように」
「……はい」
王家からの打診を断るためにはそれ相応の理由がないと難しいのだけど……本当にバーベリ侯爵家と一体何があったんだろうか?
僕としては、彼女とまた会いたいから、受けてくれるといいんだけど。
凛とした姿や、冷淡な対応、あどけない微笑、可愛い笑顔。
今度はどんな君を見られるかな。
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