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43. いつのまにか溺愛でした
しおりを挟む今日はまだ残してくださっているかつての私の自室にルーファスと泊まることになっているのです。
「相変わらずエドガーお兄様とルーファスは仲が良いのね。」
「あの筋肉バカが勝手に絡んでくるだけだけどな。」
「それでも、エドガーお兄様も騎士団長となって日々お疲れのこともあるでしょうから、良い気晴らしになったでしょう。」
昼間のエドガーお兄様とルーファスの言葉の応酬を思い出してフッと笑ってしまいました。
「この部屋で、貴方と初めて出会ったのよね。あの夜に見た貴方の姿は今でも目に焼き付いているわ。」
窓から入る月光に照らされて控えめに輝く銀糸のような髪とガーネットのように紅い瞳は本当に美しかったのです。
「そういえば、あの日寝ていた私は涙を拭われたような気がして目が覚めたのよ。ルーファスが拭ってくれたの?どうして?」
そういえば、あの時そんな感触で目を開けたことを思い出したのです。
「エレノアのことをずっと前から親父殿に頼まれて見守っていたし、それであのボンクラ婚約者の所業も知っていたからあの時はそれでお前が泣いていると思って……。窓の外からお前の目尻に流れる涙を見た瞬間、お前の部屋に入ることは許されていなかったにも関わらず、つい涙を拭ってやりたくなった。」
「あら、じゃあお父様の命令に違反したのね。」
「そうだな。それでも泣いているお前のことを放っておくことができなかった。」
『今思えば、その時にはすでにお前の事を愛していたんだろう』と話すルーファスの頬は瞳と同じように紅く染まっていたのです。
「さすがに口づけで黙らせたことは親父殿には報告していないがな。」
「そうなの?きちんとありのまま報告しないなんて、いけない子飼いさんね。」
ふふっと笑って揶揄うと、ルーファスも目を細めて微笑んでくれました。
「ねえ、きっと私たちはこうなる運命だったのよ。あの月夜の日に出逢ってから私は本来の私を取り戻せたのだから。」
「だが……。お前が足を切られた時に俺がすぐに侯爵家へと連れ帰っていれば、王宮医にでも診てもらえて後遺症が残ることも無かったかもしれない。俺は自分勝手な気持ちもあってお前をあの小屋へ連れ帰ったんだ。そのことは今でも悔やんでるよ。」
初めて聞くルーファスの後悔の呟きでした。
「ルーファス、私は後悔なんかしていないわ。あの小屋での生活は私にとって初めて侯爵令嬢としてではなく、ただのエレノアとして生きた時間だったのよ。あの時、貴方との時間はとても幸せだったの。」
私が心から微笑むと、ルーファスは眉を下げて今にも泣きそうな顔をしたのです。
「ルーファス、抱きしめて。」
私はいつかのように、寝台の上で両手を広げてルーファスに抱きしめてもらいました。
「ルーファス、私はとても幸せなのよ。とても過保護な貴方のことも嬉しい時があるしね。」
「ただ子飼いとしていつ死んでもいいと淡々と生きてきた俺が、生きる喜びと自分の価値を見出せたのはお前のおかげだよ。」
私とルーファスは額をくっつけてお互いの温もりを確かめました。
そして、どちらともなく『愛してる』と囁き合ってからあの日と同じであの日と違った口づけを交わしました。
ボンクラ婚約者がぶりっ子の愛人を作って、その愛人が雇った殺し屋に命を狙われましたけれど、その殺し屋はお父様の子飼いでした。
そしてその子飼いは私を翻弄して、いつの間にやら溺愛されていたのです。
今では子飼いの彼は伯爵となり、私とともに領地を平和に収めています。
そんな箱入り娘の私は愛する彼と大切な家族や友人とともに幸せになりました。
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