27 / 45
27. 夢のような話かも知れないけれど
しおりを挟むそれからは簡素だけれど木の香りの爽やかなその小屋で、食事や不浄事にもルーファスに手伝ってもらいながらという恥じいる日々を過ごしていました。
「私、またきちんと歩けるようになるのかしら?ずっとこのままなんてことないわよね?」
好いた男性に何から何まで手伝ってもらうなんていう日々を早く脱却したいと思って、思わず呟いてしまいました。
「暫くは無理できないが、安静にしたのちは歩く稽古をするように医者から言われてる。まあ、不自由があれば俺が食う事から何からずっと面倒見てやるよ。」
ルーファスは冗談めいた言葉を紡ぐけれど、私は少しだけ不安でもあったのです。
足の不自由な私はこれから帰って侯爵令嬢としての責務を果たす事ができるのかと思う気持ちと、どうせ侯爵令嬢として役に立たないのであればもしかしたらルーファスと生きる道もあるのではないかと思う気持ちがせめぎ合って複雑な思いでした。
「ねえ、ルーファス。私は貴方に気持ちを伝えたけれど、貴方からは何もきちんとしたことを聞いていないわよね?」
不安な気持ちが膨らんで、せめてきちんとしたルーファスの気持ちを知りたくて……嫌われてはないと思っていても、何故か聞くことが怖かったけれどとうとう尋ねてしまいました。
「そうだっけ?俺はとっくにアンタに伝えたつもりだったけど。大体、アンタのこと好いてなけりゃこんな危ない橋渡らないだろ。」
かなり勇気を振り絞って尋ねたのに、ルーファスからは飄々とした答えが返ってきたので何だか力が抜けてしまったのです。
「貴方はいつも冗談めいたことしか言わないから、本当の気持ちが分かりにくいのよ。」
「そうか?結構ストレートに言ってるつもりだったけどな。悪かったな。もしかしてずっと不安だったとか?」
意地悪めいた顔をして、それでも整った顔立ちをなお引き立てていることに無性に腹が立つわ。
「不安に決まってるじゃない。元通りに歩けるようになるか分からない、これから先に貴方とどうなるかも分からないんだもの。」
鼻の奥がツンとして、我慢できずに涙が伏せたまつ毛に溜まります。
とても胸が痛くて苦しいのです。
「おいおい、悪かったって。泣くなよ。」
「悪いと思っているなら抱きしめてよ。」
寝台の上でクッションを背もたれに座ったまま両手を左右に大きく広げてみます。
するとルーファスは寝台の脇からギュッと抱きしめてくれました。
やっぱり彼の身体は熱くて、ずっと動けないでいたせいで体温が低くなってしまった私にはとても心地良く感じました。
「ねえ、私がずっと侯爵家に戻らなければずっと一緒にいてくれるの?もし私が貴族の暮らしを捨てて貴方と二人で暮らしていくことを望んだら?」
「俺はアンタが望むならそれでもいいけど。そうなると俺は職を失って一からやり直しだから、アンタの暮らしぶりからすると随分質素な暮らしになるぞ。」
ルーファスが私の願いをさらりと肯定してくれたことをとても嬉しく思いました。
「まず、アンタの家族がすんなりと許してくれるとは思えないがな。あー、とりあえずあの父親と兄貴には殺されるだろうな。」
「ふふっ……貴方は手練れの殺し屋なんだから大丈夫でしょう。」
私たちのしているのは夢のような話かも知れないけれど。
それでもしばらくは侯爵令嬢という立場も忘れて、ルーファスとただのエレノアとして日々を過ごそうと思ったのです。
0
あなたにおすすめの小説
これって私の断罪じゃなくて公開プロポーズですか!?
桃瀬ももな
恋愛
「カタリーナ・フォン・シュバルツ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」
卒業パーティーの最中、第一王子アルフォンスから非情な宣告を突きつけられた公爵令嬢カタリーナ。
生まれつきの鋭い目つきと、緊張すると顔が強張る不器用さゆえに「悪役令嬢」として孤立していた彼女は、ついに訪れた「お決まりの断罪劇」に絶望……するかと思いきや。
(……あれ? 殿下、いま小さく「よっしゃあ!」ってガッツポーズしませんでした!?)
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
彼女の離縁とその波紋
豆狸
恋愛
夫にとって魅力的なのは、今も昔も恋人のあの女性なのでしょう。こうして私が悩んでいる間もふたりは楽しく笑い合っているのかと思うと、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる