25 / 45
25. やっぱり貴方だったのね
しおりを挟む「この御令嬢は俺の標的なんでね。ドロシー・ケイ・プライヤーに依頼されてるもんだから、アンタらに殺されると報酬が貰えないんだわ。だからさ、とりあえず俺が預かって行くから。」
「お前は確かにあの日の殺し屋だな!あの女の依頼はもう無効だ!その女は僕が殺す!」
そう喚きながらも、護衛騎士もジョシュア様も動けずにいるのです。
それほど、この刺客の腕は確かなのでしょう。
いつの間にか傍に来ていた彼は、私を抱き上げてその場を去ろうとしています。
「待て!その女を置いていけ!」
ジョシュア様が喚き、護衛騎士がこちらへ向かおうとした時……。
――シュッ……!
護衛騎士の喉元に小刀が突き刺さり、護衛騎士はおびただしい量の血を噴き出しながらその場に倒れました。
騎士は口をパクパクとさせていますが、その度に喉元から血が溢れて声にならないのです。
もう、きっと助からないでしょう。
「なっ……!」
ジョシュア様はその惨劇を目の前にして動けなくなったようです。
こちらを睨みつけるだけで足元は動こうとしておりません。
「じゃ、コイツはもらって行くから。」
そう言って彼は私を横抱きにしたまま林の中を走り抜け、そのうち私は意識が遠のくのを感じました。
血を流しすぎたのかも知れません。
ガタガタと身体が揺れる気配がいたしました。
硬い板の間に寝かされているような感覚で、頭の下にだけ柔らかな物が敷いてあるようです。
それでも、瞼がとても重くて目を開けることが出来ないのです。
また意識が深いところに沈んでいくような気がして、聞こえていた音も感覚も途切れました。
「とりあえず、このまま固定してしばらくは安静にするように。だけどまだ随分痛むと思うから薬はここに置いておくよ。」
「歩けるようになるのか?」
「……分からないな。安静にして、落ち着いたら歩く稽古をしてみることだな。」
「……そうか。すまなかった。助かったよ。」
「お前が頭を下げるなんてな。珍しいこともあるもんだ。ま、しばらく大事にしてやれよ。」
「何かあったらまた頼む。」
誰?あの人と誰か他の男性の声?
もう起きなきゃ……。ああ、瞼が重いわね。
深くて暗いところから、段々と明るいところに急浮上していくような感覚を覚えて、自分の瞼が揺れる気がしたのです。
ゆっくりと目を開けると、邸の天井より低い位置に見たことのない木目の天井が見えました。
「ここ、どこ?」
頭を動かすのも億劫で、目線だけで周りを見渡すと広いとは言えない部屋の中で寝かせられているようなのです。
初めて見る部屋、窓も小さくて可愛らしい大きさで、調度品は華美ではないデザインで全てパイン材でできていているようです。
――ガチャッ……
部屋の扉が開く音でしょうか?頭が重くて身体も動きそうにありません。
「……貴方なの?」
そう問いかけると急いだような足音がして、こちらへと向かってきました。
「エレノア!」
ああ、やっぱり貴方だったのね。
名前も知らない銀髪で紅い宝石眼の人。
安心した私は身体の力が抜け、軽く微笑みました。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。
パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる