22 / 45
22. 不穏な噂が流れています
しおりを挟む「何も考えていないなんて、理性的なエレノアらしくないわね。珍しいこと。」
「そうかも知れないわね。でも、そんなこと考えてなかったの。思えば、好きだって伝えたのも衝動的だったわ。」
そんなこと、今までの私ならあり得ないことだったはず。
「エレノア、本気なのね。貴女はとても理性的で、いつも家族のために我慢していたから心配していたの。自分の為に何かすることと言えば、『お忍びスタイル』くらいだったしね。そのくらいの我儘があったほうがきっと人生楽しいわ!」
シアーラは笑って私を抱きしめました。
彼女は私のことを理解してくれて、そしてどんな時でも応援してくれる貴重な存在なのです。
「シアーラはご両親の持つ商会の一つを継ぐという夢があるものね。自立している御令嬢なんて、まだまだこの国には少ないもの。そんな貴女を心から尊敬しているわ。私が万が一侯爵家を出て行かなければならなくなった時は貴女の商会で働かせてもらうわね。」
二人で抱きしめ合ったまま、クスクス笑って冗談を言い合えることがとても嬉しかったのです。
シアーラと二人で教室へと向かっていると、廊下の向こうからドロシー嬢がお一人で歩いてくるのが見えました。
御令嬢方はドロシー嬢と距離を置いているので、大概はジョシュア様と過ごしています。
ジョシュア様がいらっしゃらない時は取り巻きの男子生徒と一緒にいることが多いのですが、今日は珍しくお一人のようなのです。
「あら、ドロシー嬢。今日は珍しくお一人なんですのね。」
シアーラがわざと高飛車な風にドロシー嬢に声をかけます。
「あらぁ、エレノア様。先日の夜会で具合が悪くなったようでしたけど、もう大丈夫ですの?」
「少し人に酔っただけでしたので大丈夫ですわ。」
「ふうん……。」
つまらなさそうに返事をしたドロシー嬢は、それ以上私に何か言うこともなく去って行ったのです。
「どうしたのかしらね?取り巻きもいないし、珍しい。」
「さあ?ジョシュア様も今日はお休みかしら?」
二人で首を傾げながら午後の授業も無事終えたのでした。
「ねえ、皆さまお聞きになった?ドロシー嬢のウワサ。」
「ドロシー嬢?どうなさったの?」
「あの方、本来はどうやら御令嬢らしからぬ方らしいわよ。おかしいと思ったのよ。だってあの方、どう見ても同い年には見えないじゃない?」
「まあ、確かに時々話が合わない時もあったわ。それに時々感じたお肌の衰えは気になっていたわ。」
「実は私たちより十は年上なんですってよ。」
「ええっ?……ということは二十七?どうしてそのようなお方がこの学院に?」
「プライヤー伯爵がかなりこの学院に寄付をしているらしいですし、お金とコネさえあれば戸籍など何とでもできるじゃない。」
「それじゃあもしかして伯爵の情婦でもなさっているのかしらね。」
そして放課後、教室中がドロシー嬢の当たらずとも遠からずというか、ほぼ当たりのお話をなさっているのです。
「エレノア、どういうことかしら?誰かがドロシー嬢の秘密をリークしたっていうこと?」
「分からないわ。あれだけ夜会でも派手に振る舞っていらっしゃったからどなたかお知り合いがいて、そこから話が広がったのかもしれないわ。」
あの日の夜会ではジョシュア様という知られたお顔の方とあのように台風ダンスを踊ったドロシー嬢を、彼女を知る人が見ていてもおかしくはないでしょう。
「ジョシュア様もお休みみたいだし、何もなければいいけど……。エレノア、貴女も気をつけてね。なんだか気味が悪いわ。」
学院全体の不穏な雰囲気と、ドロシー嬢の普段にはない大人しい態度にシアーラはどこか不安を感じているようです。
「分かったわ。気をつけるわね。また明日、シアーラ。」
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。
パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる