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33. 遊び相手は幽霊
しおりを挟む「奥様! おめでとうございます! 珍しい双子の姉弟ですよ!」
リュシエンヌは妊娠中も特に問題はなく過ごしていたが、通常よりも大きなお腹にミカエルや幽霊たちは心配していたが、産まれてみれば双子の姉弟であった。
王家の血筋の紫目を持つ双子の姉弟は、二人とも髪色はプラチナブロンドという両親ともの色味を備えた美しい赤子である。
ダリガード王国では双子の赤子は吉兆と言われ、甥のミカエルを可愛がっていた国王も大層喜び二人の名付け親となった。
そうして姉はアリエル、弟はラファエルと名付けられた。
「ねえ、アリエルとラファエルがこっちを見てるわよ」
「赤子のうちから我らが見えておるのか?」
「ほんとに見えてるか、試してみようか?」
ゆりかごに寝かされたアリエルとラファエルにエミールが近づき、世にも恐ろしい顔を見せて脅かした。
その瞬間、二人は紫目に涙の膜を張り小さな鼻をピクピクとさせて大声で泣き始めた。
「あらあら、アリエルとラファエル急に泣いてどうしたの?」
リュシエンヌが二人の赤子に声をかけるが、泣き声を上げながらも二人の視線は宙に浮くエミールの方へと向けられている。
「エミール、この子たち幽霊が見えているのかしらね。もしかして、エミールがフワフワ飛んでいるからびっくりしたのかしら?」
「さ、さあ? 見えてるかどうかなんて、まだ小さいし分からないんじゃないかな?」
「そうかしら? もう少し大きくなったら分かるのかしらね。楽しみだわ」
エミールは赤子を脅かしたことがミカエルに露呈すれば恐ろしい報復が待っていると思い、そそくさとファブリスとマリアの傍へと戻った。
「ねえ、あの子達僕のこと見えてたよ」
「そんなこと言わなくてもここからでも見えたわよ。あんな恐ろしい顔をして脅かすなんて、ひどいわねえ」
「リュシエンヌだけでなく、最近では双子たちも溺愛するミカエルに知られたら即刻祓われるやも知れんぞ」
エミールはもう二度と子どもたちを脅かすようなことはするまいと心に誓った。
「「エミール! こっち来てー!」」
「アリエル、ラファエルこんなとこで遊んでるのがお父様たちにバレたら怒られるよー」
成長し、五歳になった双子たちはヤンチャ盛りで毎日幽霊たちを振り回している。
今日も、邸内の階段の手すりに登って滑り台のように遊ぼうとしているのだ。
「「いいからいいから。乗せて乗せてー!」」
特にエミールはもっぱら双子たちの遊び相手に認定されており、毎日あっちこっちに連れまわされている。
「「キャハハハハ……!」」
手すりを腹で滑り降りる双子たちを、下で待ち構えていたリュシエンヌが受け止めた……が、大きく成長した双子たちを受け止めることは無謀なことであった。
突進してきた双子たち共々後ろに倒れそうになったリュシエンヌを、ミカエルが支えて難を逃れた。
「「父様!」」
パアアーッと目を輝かせた双子たちはリュシエンヌの手から逃れて我先にと騎士服のミカエルに飛びついた。
「リュシエンヌ、大丈夫か?」
「ミカエル様、大丈夫です。ありがとうございます」
そうして大好きな父に飛びついた双子たちだったが、危ない遊びをしていた罰としてコッテリと叱られたのであった。
一方でエミールはその一部始終を見て自分もミカエルに怒られては叶わないと暫く姿を見せなかった。
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