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最終話
しおりを挟むつい先日出産したばかりの妻の為に休みを取っている騎士団長の執務室。
その部屋と扉一枚隔てて隣接された部屋が、デュオンが普段から過ごす副団長執務室だ。
余計な飾りのない重厚な造りをした家具の数々は、代々の副団長が使ってきた歴史のある物である。特に誰もが憧れるのが、副団長が使う机と椅子。そして第三騎士団の紋章が入った印である。
騎士団長の次に権限のある副団長は、以外にも騎士団長よりも書類仕事が多く、騎士団の印は副団長執務室に保管しているのだった。
その大切な印が、今は毛足の長い絨毯の上に転がり、毛並みに埋もれている。
机の上に置いてあった書類は同じく絨毯の上に無造作にばら撒かれ、これまでたくさんの重要な書類にサインをしたためて来た高級な羽ペンも、書類の上に無造作に落ちていた。
「ん……んん……、デュオ……ンっ、こんな所……でっ、駄目だよ……あぁ……ッ」
無骨な部屋に似合わない婦人用のドレスやストッキングが床に脱ぎ散らかされ、デュオンが美桜に贈った高価な髪飾りも、ソファーの上で輝きを放っている。
美桜はというと、歴史ある副団長の机の上にうつ伏せに組み敷かれ、背後からデュオンの熱い楔を打ち込まれたばかりだった。
「駄目と言いつつ、お前の此処はこんなにも濡れているぞ。先程まで入っていた俺の指にも、はしたなく糸を引いていたくらいだからな」
「あん……っ、そんな……言わないで……っ、や……ッ、はぁ……んっ!」
「お前はこれが好きだろう?」
ズンと奥まで打ち込んだ後、デュオンは浅い所まで一気に引き抜き、そこからまた思い切り奥まで突いた。
美桜が一番弱いやり方でどんどん快感の波を高めていくものだから、ついつい此処が執務室だということも忘れてしまいそうになる。
次第に我を忘れてしまい、高い喘ぎ声を上げてしまう美桜の口を、背後からデュオンが大きな手で覆った。
決して無理矢理されているわけでは無いのだが、美桜はこんな風に時折強引な拘束をされたりする交わりに、一層高まりを覚えてしまう。
「ん、うう……っ」
苦しいのに、自然と下腹部がキュンキュンと切なく引き締まる。そうする事でデュオンの呼吸が乱れるのを背中で聞いて、余計に気持ちが昂るのだった。
「お前のよがり声を他に聞かせるのは癪だ。お前は俺の為だけに啼けばいい」
「あ……ふ、う、あぅ」
小さな唇にグッと差し込まれるデュオンの指を、美桜は夢中になってしゃぶった。舌と口蓋を使って丁寧に。
そうする事によって美桜のナカに収まるデュオン自身が、なお一層硬く聳り立つように感じられて嬉しい。
「く……ッ、ミオ……、ミオ……っ」
悪魔と呼ばれる程強いデュオンのこんな苦しげで切ない声を聞けるのは、きっと自分だけだ。
そう思えば思う程、デュオンへの愛おしさが溢れてくる。
「は……っ、あん……っ! あ! あぁん……っ!」
頑丈なはずの立派な机がガタガタと音を立て、美桜の体は激しく揺さぶられた。
次第に目の前がチカチカと明滅し、自分が幾度目かの頂きを迎えつつあると分かると、美桜は背後に向かって手を差し出す。
「デュオン……っ、はぁ……んっ、デュオン……ッ! もう……っ、また……イッちゃう……! 気持ち良過ぎて……怖いよ……ぉ!」
過ぎた快感に不安を覚えた白くて小さな美桜の手を、デュオンの硬い手が掴む。繋がれた手の温もりと力強さに、眦に涙を溜め込んだ美桜は安心して身を委ねる。
滅茶苦茶にぶつかり合う二人の肌と肌が、じっとりと湿り気を帯びていた。
苦悶の表情を浮かべたデュオンの動きがますます激しくなり、美桜は掠れた悲鳴のような喘ぎ声を上げるだけで精一杯となる。
「……ッ、ミオ……っ! お前の……腹の奥で……しっかりと受け取れ……!」
「あ……やあぁ……ッ」
律儀にも手をギュッと繋いだままデュオンは最奥に己の欲を吐き出した。
同時に体をぐんと強張らせて絶頂に達した美桜は、そのままぐったりと机に突っ伏し、脱力して瞼を閉じてしまう。
「ふん……我が妻はいつまで経ってもか弱いな」
体力も体格差もある二人の交わりはあまりに激しく消耗するので、いつも終わりに美桜は気を失うかのようにして眠ってしまうのだった。
だから美桜は知らない。
眠る美桜に触れるデュオンの手つきが、どれ程優しいのかを。
愛していると滅多に口にしないデュオンが、美桜が眠っている時にだけはしつこいくらいに耳元で囁いているのを。
「ほら、起きろミオ。俺はまだし足りないんだ」
絶倫で鬼畜の旦那様を美桜が満足させられるのは、まだまだ随分と先の話のようだ。
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