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57. シルシと気持ち※

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 やっぱりこんな時でも僕はきちんと処置してからって言って、さっさとシャワーを浴びた。

「俺もさっと浴びてくる。待ってて」

 僕が浴室からタオル一枚でリビングに戻ると、宗次郎がそう言って浴室へ足を向ける。
 その背中に僕はぎゅっと頬を寄せ、宗次郎の逞しい身体へ手を回し、行かせないって抱き締めた。

「宗次郎はそのままでいい。……僕もう、すぐにシタい。待てないよ……」

 宗次郎の胸がヒュッと息を飲んて上下したのを、回した手に感じ取った。

 こんなはしたない事、宗次郎にしか言えない。
 でも、僕はもうすぐにでも宗次郎と一つになりたくて……。

 ガバッと振り向いた宗次郎は、突然僕の両手を自分の首に回させた。
 
「ちゃんと捕まってて」

 そう言ったかと思うと、僕の上半身とお尻の辺りに手を回した。
 驚いているうちに、いとも簡単に僕の身体をサッと持ち上げた。

「お、お姫様抱っこ……」
「そう、こういう事すぐ出来るように鍛えてるから」

 ふふっと笑った宗次郎は、本当か嘘か分かんないようなことを言ってそのままベッドまでスタスタと運んでいく。

 そっとベッドに下ろすと、僕の唇に宗次郎の柔らかな唇を当てて軽く口づけを落とした。

「こういうの、伊織にはすっげぇ似合う。可愛い」
「僕、女の子じゃないんだけど」

 そう言いつつも、実は嫌いじゃない。
 宗次郎は僕が女性向けの恋愛小説を読んで色々勉強してるのを知ってる。
 読みながらポーッとしてたのを見られてたのかも。

「伊織は伊織だから、女とか男とか俺はどうでも良いよ」

 宗次郎のその考えは、付き合う前から変わらない。
 ずっとそう告げてくれる。

「僕は宗次郎が男で良かったよ。逞しくて男らしくて、色っぽい宗次郎が好きだから」
「それは僥倖ぎょうこう

 仰向けで寝かせられた僕を嫣然えんぜんと見下ろしながら、宗次郎はシャツのボタンを外し始めた。
 プチンプチンとボタンを外すその姿さえ、色っぽくてかっこいい。

 僕はそっと手を伸ばして、ズボンのベルトに手を掛けた。
 そんなこと普段しないから、宗次郎は驚いた顔をしたけど一気にズボンがきつそうになったから喜んでるんだろう。

 カチャカチャとベルトを外して、ボタンを外してファスナーを慎重に下ろす。
 不意に触れた硬いモノは、既にキツくなった下着から早く出たそうなほどに昂っていた。
 
 僕はそっと下着を下げると、宗次郎の凶暴そうな杭が現れた。
 こんなに凶暴そうなモノが愛しく思えるんだから不思議だ。

 やがて二人分の体重がかかったベッドはギシッと軋む。

 宗次郎がタオルをはらりと解いて、ひ弱で薄っぺらい裸体を晒した僕はブルリと身体を震わせた。
 だって、僕を見つめる宗次郎の目はギラギラと獲物を狙う獣みたいに熱を帯びていたから。

「寒い?」
「ううん、宗次郎が今にも食べそうなやらしい目で見るから興奮した」
「はあー……、今日はえらく煽ってくれるね」

 そう言って、突然宗次郎は貪るような激しいキスをした。
 宗次郎の優しさは十分知ってる。
 だけどもう僕も、今日は宗次郎にめちゃくちゃに食べられたい。
 
「んっ……ふぁ……あ……」

 グチュグチュと早くから舌と唇を絡ませた激しい口付けは、僕の下半身にキュンとした刺激を与える。

「伊織の声……本当可愛い。まじで腰にクルんだよな」
「はあ……っ、わざと……じゃ……な……ッ」
「知ってる。自然と出るんだよね」

 口付けだけで、僕はもうトロンとしてしまうほどに今日は興奮していた。

 言葉でお互いの気持ちを確認して、僕らのこの不安定で危うい関係性を確かなものにしようとしてる。
 夫婦にはなれないけど、僕らは言葉と身体でお互いを繋ぎ合う。

「んあ……っ、やあぁ……」

 僕の首筋、鎖骨、胸に次々と鬱血痕を残す。
 これは僕らの気持ちのシルシ。

 宗次郎から僕への『逃げないで』の気持ち。
 僕から宗次郎への『逃げないよ』の気持ち。

 僕も、今日は目の前に見える宗次郎の丸く盛り上がる逞しい肩にキスをした。
 宗次郎がビクッと身体を揺らしたから、僕はそこに歯を立てた。

 ガリっと優しく噛んで、ペロっと舐めたら少しだけ赤くなった。

「宗次郎ばっかり僕に痕を付けるから。これは宗次郎が僕のだってシルシだよ」

 僕はゆるっと微笑んで告げた。
 
「やばいな……。今日の伊織はいつもより可愛いんだけど。何ならもっと噛んで、俺にちゃんとシルシ付けていいよ」
「痛いことが好きなんて、変だね」
「伊織も変だろ。お互い様」

 そう言って、宗次郎はスルスルと僕の下半身の方へ降りてく。
 僕の脚をカパっと開いて、ピクピク震える僕の陰茎には触れずに、すぐに後蕾へ舌を這わせた。

「んあァァ……っ、そうじろ……! や……ぁッ」
「伊織が今日は早くシタいって言うから……。早くここ慣らそうな」
「んっ、あ……っ、や……ァァっ」

 グニグニと舌先で僕の後蕾のシワを伸ばすように刺激して、やがて尖らせた舌先は僕のナカへ入った。

「や、やあ……ッ! んあぁ……ん、やだ……ぁ」
やらやだって言っても、ひゅき好きひょしょ
「な、舐めながら……ッ、しゃ、べんないで……ぇ」

 フッと笑った宗次郎は、ぐちゃぐちゃに濡れそぼった後蕾へベッドサイドのジェルを垂らす。
 ひんやりとしたジェルは、段々と熱を帯びてきた。

 ジュブンと突然指を一本挿し入れられても、僕のだらしなくよだれを垂らしてヒクつく孔はすんなりとそれを受け入れる。

「はあ……っ、やァ……ん、んあ……」
「ここ、好きなとこ」
「やぁぁ……ッ!」

 ジュルンと指をナカで回転させて、指をすぐに増やして前立腺への刺激を開始される。
 僕は与えられる快感に、女みたいにだだ喘ぐことしかできない。

「ああァァ……っ、あ、ア、はあ……ッ」

 トントンと叩くように刺激したり、グイッと押されたりするともう目の前にチカチカと光が散った。

「三本目、挿れるよ」
「んん……ッ、んあぁ……、あっ……」

 直腸壁を三本の指でバラバラに刺激され、十分に入り口とナカを柔らかく解したら、宗次郎は再びサイドテーブルに手を伸ばす。

 僕は朦朧としながらも宗次郎の手に自分の手を添えた。

「宗次郎、着けないで……今日はそのまま、ナカで出してよ……」
「ッ……!」

 一度喘ぐような短い呼吸をして、壮絶な色気を放つ雄の目をした宗次郎は、僕の願いを叶えてくれた。
 
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