23 / 32
23. 国王陛下は温かいお方でしたのよ
しおりを挟む本日、多忙でなかなか叶わなかった国王陛下へ御目通り願うこととなりましたのよ。
私は皇太子殿下の婚約者として陛下に拝謁するという久々の緊張感に身体を硬くしていましたわ。
「殿下、私おかしくはないでしょうか?」
「タチアナ、緊張しているのか?大丈夫だ。私が傍にいるから心配するな。」
あれ以降とても甘々な雰囲気を醸し出すのが当然となった皇太子殿下は、常に私を勇気づけてくれるのです。
謁見室の重厚な扉がゆっくりと開き、赤い絨毯が敷かれた数段の階段の先に豪華な玉座が見えました。
私と殿下は玉座の前へと進み、跪いて頭を垂れましたわ。
そのうち衣擦れの音がして、陛下が玉座へと進み席へつかれた気配がいたしましたの。
「セドリック、ドゥイエ伯爵令嬢タチアナ。面をあげよ。」
「「国王陛下へ拝謁いたします。」」
今日は正式なご挨拶ですから、セドリック皇太子殿下も私の傍で陛下へ拝謁いたしました。
「タチアナ嬢、此度我が愚息セドリックの婚約者となってくれたことは大変喜ばしいことだ。今後妃教育を経て立派な皇太子妃となるべく努力を重ねなさい。」
「承知いたしました。今後も精進を重ねます。」
「陛下、タチアナは美しいだけではなくとても聡明な御令嬢です。きっと私の政を助けてくれるでしょう。」
「よろしくお願いいたします。」
「良い良い、そのように堅苦しいのはもうなしにしようぞ。これからセドリックと仲良くこの国の為、そして民の為に尽くしてくれれば良い。タチアナ、もうお前は私の娘も同然だ。幼い頃に決めた婚約者が妃教育から逃げ出して、セドリックはもう二度と自ら望んで結婚をしないのではないかと心配していたところにタチアナを選んだ。それだけで私は安心したからな。」
見た目は厳しくも見える陛下は、皇太子殿下と同じでとても温かなお方でしたのね。
――無事謁見を終えた私は、続けて妃教育の教師たちとの顔合わせ、そして本日から早速この国では初めての妃教育へ取り組むことになりましたのよ。
妃教育の内容は……「ラガルド王国についての総論」「国内の宗教・祭祀について」「王室制度史」「王室法制」「王族の儀式、行事及び王室典範」「ラガルド王国の歴史」「乗馬」「音楽(楽器演奏、歌唱、ダンス)」「絵画」「礼儀作法の確かめ」「ラガルド王国憲法について」「近隣諸国の言語」など多岐に渡りますわ。
私はブーランジェ王国の妃教育は受けてまいりましたが、ラガルド王国の詳細なことについてはタチアナ嬢に成り代わった時に自分なりに学んだだけですのでまだ不十分なのです。
それでも、久しぶりの緊張感と私の学んできたことを発揮できる場があるということは、とても良い刺激になりましたのよ。
2
お気に入りに追加
504
あなたにおすすめの小説
【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした
楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。
仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。
◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪
◇全三話予約投稿済みです
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
王女殿下のモラトリアム
あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」
突然、怒鳴られたの。
見知らぬ男子生徒から。
それが余りにも突然で反応できなかったの。
この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの?
わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。
先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。
お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって!
婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪
お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。
え? 違うの?
ライバルって縦ロールなの?
世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。
わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら?
この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。
※設定はゆるんゆるん
※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。
※明るいラブコメが書きたくて。
※シャティエル王国シリーズ3作目!
※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、
『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。
上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。
※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅!
※小説家になろうにも投稿しました。
守護神の加護がもらえなかったので追放されたけど、実は寵愛持ちでした。神様が付いて来たけど、私にはどうにも出来ません。どうか皆様お幸せに!
蒼衣翼
恋愛
千璃(センリ)は、古い巫女の家系の娘で、国の守護神と共に生きる運命を言い聞かされて育った。
しかし、本来なら加護を授かるはずの十四の誕生日に、千璃には加護の兆候が現れず、一族から追放されてしまう。
だがそれは、千璃が幼い頃、そうとは知らぬまま、神の寵愛を約束されていたからだった。
国から追放された千璃に、守護神フォスフォラスは求愛し、へスペラスと改名した後に、人化して共に旅立つことに。
一方、守護神の消えた故国は、全ての加護を失い。衰退の一途を辿ることになるのだった。
※カクヨムさまにも投稿しています
出来の悪い令嬢が婚約破棄を申し出たら、なぜか溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
学術もダメ、ダンスも下手、何の取り柄もないリリィは、婚約相手の公爵子息のレオンに婚約破棄を申し出ることを決意する。
きっかけは、パーティーでの失態。
リリィはレオンの幼馴染みであり、幼い頃から好意を抱いていたためにこの婚約は嬉しかったが、こんな自分ではレオンにもっと恥をかかせてしまうと思ったからだ。
表だって婚約を発表する前に破棄を申し出た方がいいだろう。
リリィは勇気を出して婚約破棄を申し出たが、なぜかレオンに溺愛されてしまい!?
サラシがちぎれた男装騎士の私、初恋の陛下に【女体化の呪い】だと勘違いされました。
ゆちば
恋愛
ビリビリッ!
「む……、胸がぁぁぁッ!!」
「陛下、声がでかいです!」
◆
フェルナン陛下に密かに想いを寄せる私こと、護衛騎士アルヴァロ。
私は女嫌いの陛下のお傍にいるため、男のフリをしていた。
だがある日、黒魔術師の呪いを防いだ際にサラシがちぎれてしまう。
たわわなたわわの存在が顕になり、絶対絶命の私に陛下がかけた言葉は……。
「【女体化の呪い】だ!」
勘違いした陛下と、今度は男→女になったと偽る私の恋の行き着く先は――?!
勢い強めの3万字ラブコメです。
全18話、5/5の昼には完結します。
他のサイトでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる