18 / 32
18. 仮面舞踏会で不埒な真似をなさる方はお断りしたいですわね
しおりを挟む「タチアナ、最近俺が夜会やサロンに誘っても断り続けているが一体どういうつもりだ?ふざけるなよ。」
出ましたわ。アルバン様の『ふざけるな』。
「申し訳ございません。近頃はカスペール公爵夫人マルグリット様に個人的なお茶会へお誘いして頂くことが多く、他の御令嬢からのお誘いも増えたのでなかなかアルバン様と同伴の社交に参加できないのです。」
アルバン様は私の話を聞いて、お相手が元王女様の公爵夫人ということもありそれ以上は言葉にしませんでしたの。
「まあいい。今日の舞踏会には久しぶりにお前と話したがっている紳士が多くいるからな。」
そう言ってアルバン様がニヤリと笑ったように見えて、本当にこの方のことを生理的に無理だと感じてしまったのは否めませんわ。
「分かりました。それでアルバン様が宜しいのでしたら。」
「当然だ。俺の性癖を知っているだろう。今日も頼んだぞ。」
なんだかもうこのお気立てに難がおありな方には私もウンザリしてきましたの。
今日の夜会はベニシュ伯爵家で開かれるもので、特殊な舞踏会なんですのよ。
思い思いの仮面や鬘を付けて身分や素性を隠し、ダンスをしたり交流を図るのです。
私はたとえ仮面を付けてもウェーブがかったピンクブロンドの髪とラベンダーの瞳が目立ってしまいますから、鬘を付けようとしましたのにアルバン様がお許しになりませんでしたの。
金髪でクルクルとした癖っ毛のアルバン様も仮面を付けたとしてもすぐに分かってしまいますわ。
参加者の中で私たちだけが、仮面をつけてもタチアナとアルバン様だということが丸わかりの状態の方が寝取られ願望が強いアルバン様には都合が良いのでしょうね。
「穢れない白の仮面の御令嬢。宜しければ私とダンスを。」
青い仮面を付けた殿方が、私とアルバン様のところへ近寄り私にダンスを申し込みましたの。
私が隣のアルバン様の方を見上げますと、行ってこいというように目線を動かされましたわ。
「はい。」
青い仮面の殿方にエスコートされて、皆が踊っているホールの方へと近づいていきましたの。
そして新たな曲の始まりになるとダンスが始まりました。
青い仮面の殿方はやたらと身体を密着してきたり、褒め言葉ではありますが言葉を顔の近くまで寄ってお話されるので、私はなんだか気分が悪くなってまいりましたわ。
仮面舞踏会とは自らの素性を隠すので羽目を外しやすいとは聞いておりましたが、普段の舞踏会よりも身体を密着したダンスは本当に不快でしたのよ。
やっと曲が終わり、やはり壁際からこちらを見ているアルバン様の方へとエスコートされている時に目の前に黒の仮面を付けた殿方が立ちはだかりましたの。
「美しい仮面の御令嬢、どうか私に貴女との時間をお与えください。」
この艶やかなブルーブラックの髪色と色彩の混じり合った神秘的な瞳の色、そしてこの声は皇太子殿下ではありませんか。
その髪色と瞳の色は、私とアルバン様と同じく素性を隠すつもりはないようで。
隣でエスコートしてくださっていた殿方も相手が殿下だとお気づきになったようですわ。
「私の方はお気になさらず。」
青の仮面の殿方は、そう言ってエスコートをしていた手を離しそそくさとその場を離れて行かれましたのよ。
「ダンスでお疲れのようですから、テラスで休憩いたしませんか?」
「はい。」
私と黒の仮面を付けた皇太子殿下はカーテンの向こうのテラスへと場所を変えましたの。
「美しい瞳の紳士様、お声をかけていただき感謝いたします。」
「今日、こちらへ参加されると聞いてね。遠くから見守っていたんだが、先程の不埒なダンスを見ていてどうにも我慢出来なくなったのでつい貴女を攫ってしまった。」
「まあ、そうでしたの。とても困っておりましたから助かりましたわ。」
お互い仮面をつけていても、髪色も瞳の色も普段と変わらないお色味ですからこの様な環境で気を張り詰めていた私は、どこかホッといたしましたの。
2
お気に入りに追加
504
あなたにおすすめの小説
サラシがちぎれた男装騎士の私、初恋の陛下に【女体化の呪い】だと勘違いされました。
ゆちば
恋愛
ビリビリッ!
「む……、胸がぁぁぁッ!!」
「陛下、声がでかいです!」
◆
フェルナン陛下に密かに想いを寄せる私こと、護衛騎士アルヴァロ。
私は女嫌いの陛下のお傍にいるため、男のフリをしていた。
だがある日、黒魔術師の呪いを防いだ際にサラシがちぎれてしまう。
たわわなたわわの存在が顕になり、絶対絶命の私に陛下がかけた言葉は……。
「【女体化の呪い】だ!」
勘違いした陛下と、今度は男→女になったと偽る私の恋の行き着く先は――?!
勢い強めの3万字ラブコメです。
全18話、5/5の昼には完結します。
他のサイトでも公開しています。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
最愛の幼馴染みと親友に裏切られた俺を救ってくれたのはもう一人の幼馴染みだった
音の中
恋愛
山岸優李には、2人の幼馴染みと1人の親友がいる。
そして幼馴染みの内1人は、俺の大切で最愛の彼女だ。
4人で俺の部屋で遊んでいたときに、俺と彼女ではないもう一人の幼馴染み、美山 奏は限定ロールケーキを買いに出掛けた。ところが俺の凡ミスで急遽家に戻ると、俺の部屋から大きな音がしたので慌てて部屋に入った。するといつもと様子の違う2人が「虫が〜〜」などと言っている。能天気な俺は何も気付かなかったが、奏は敏感に違和感を感じ取っていた。
これは、俺のことを裏切った幼馴染みと親友、そして俺のことを救ってくれたもう一人の幼馴染みの物語だ。
--
【登場人物】
山岸 優李:裏切られた主人公
美山 奏:救った幼馴染み
坂下 羽月:裏切った幼馴染みで彼女。
北島 光輝:裏切った親友
--
この物語は『NTR』と『復讐』をテーマにしています。
ですが、過激なことはしない予定なので、あまりスカッとする復讐劇にはならないかも知れません。あと、復讐はかなり後半になると思います。
人によっては不満に思うこともあるかもです。
そう感じさせてしまったら申し訳ありません。
また、ストーリー自体はテンプレだと思います。
--
筆者はNTRが好きではなく、純愛が好きです。
なので純愛要素も盛り込んでいきたいと考えています。
小説自体描いたのはこちらが初めてなので、読みにくい箇所が散見するかも知れません。
生暖かい目で見守って頂けたら幸いです。
ちなみにNTR的な胸糞な展開は第1章で終わる予定。
行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される
めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」
ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!
テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。
『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。
新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。
アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【完結】義母が斡旋した相手と婚約破棄することになりまして。~申し訳ありませんが、私は王子と結婚します~
西東友一
恋愛
義母と義理の姉妹と暮らしていた私。
義母も義姉も義妹も私をイジメてきて、雑用ばかりさせてきましたが、
結婚できる歳になったら、売り払われるように商人と結婚させられそうになったのですが・・・・・・
申し訳ありませんが、王子と結婚します。
※※
別の作品だと会話が多いのですが、今回は地の文を増やして一人の少女が心の中で感じたことを書くスタイルにしてみました。
ダイジェストっぽくなったような気もしますが、それも含めてコメントいただけるとありがたいです。
この作品だけ読むだけでも、嬉しいですが、他の作品を読んだり、お気に入りしていただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる