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4. 貴族名鑑を二冊分覚えるなど大変ですのよ
しおりを挟む「とにかく、ここが一体どこなのか分かる手掛かりはないかしら……。ドゥイエ伯爵家もカルザティー侯爵家も、ブーランジェ王国の貴族名鑑には載ってなかったはずですわ。」
時間軸はタチアナ嬢の日記を見たところ私のいた時間とはほぼ変わらないはずですけれど、ここは確実に私が以前暮らしていたブーランジェ王国ではない場所。
「また一から学び直しですのね。」
幼い頃から私は皇太子であるヒューバート様の婚約者として、将来はブーランジェ王国の妃になるべく厳しい妃教育を受けてきたのですけれど。
「それも運命。イライザが死んでしまった今、今更抗うことはできないのでしょう。私はタチアナ嬢の分もこの命を大切に生きることにいたしましょう。」
伯爵令嬢であるタチアナ嬢のお部屋は、真っ白な調度品で統一されており、唯一寝台の天蓋だけが血のような赤という変わったつくりですの。
「他人のお部屋といった感じで、落ち着ける空間というようにはまだ思えませんわね。」
室内の本棚に目をやると『ラガルド王国貴族名鑑』という黒くてやたら重そうな厚みの背表紙が一番目立つところに見受けられました。
手に取るとやはり重みがあり長時間は持っていられないと、机の上に広げてゆっくりと目を通していきましたの。
「ここは、ブーランジェ王国の隣国であるラガルド王国だということ……?」
ドゥイエ伯爵家も、カルザティー侯爵家もラガルド王国の貴族名鑑にきちんと記載されておりました。
「言葉の問題と宗教的な問題は、ブーランジェ王国もラガルド王国も大差ありませんから安心ですわ。あとは、タチアナ嬢の家族関係や人間関係が日記ではほとんど分かりませんから注意が必要ですわね。」
私が貴族名鑑を読み終わった頃には、なんだか身体が気怠くて本当に体調が悪くなってしまいましたの。
それから二日間高熱で寝込んでしまいましたわ。
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