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3. これから徐々に仲良くしていただきます

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「……アレックス・エル・フルノーと申します。アドリエンヌ嬢におかれましては、婚約破棄とは大変おいたわしいことでございます。……えっと、それでは。」

 アレックス・エル・フルノーと名乗った伯爵令息は一息に言い切るとさっさと踵を返してその場を去ってしまった。

 残されたフルノー伯爵は、不機嫌な様子のシャトレ侯爵とその紅い瞳を潤ませてアレックスの去った方を見やるアドリエンヌの前でじっと動けないでいる。

「あ、あの……。アレックスが失礼をして申し訳ありません。」

 とりあえずここは謝っておこうと思ったのか伯爵は、アドリエンヌと侯爵に頭を下げた。

「まあ、。そのように頭をお下げにならずとも宜しいのですよ。アレックス様にはこれから徐々に私と仲良くなっていただきますから。お気になさらずに。」

 そう言ってアドリエンヌは頬を上気させ、少し苦し気に胸を押さえた。

「アドリエンヌ嬢!国王陛下がお呼びでございます!」

 広い会場内でやっとアドリエンヌを見つけたのか、侍従が国王陛下との面会を告げた。

「はあ……。お父様、行ってまいりますわ。」
「アドリエンヌ、私も行こう。」
「ダメですわ。お父様が行けば、あの痩せぎすの国王陛下が心労で倒れてしまいます。私がお話してきますから、心配なさらないで。」

 主役の国王陛下が去った大広間では、ざわつく貴族たちを他所に王太子が婚約者だと宣言したネリー嬢とのダンスを楽しんでいた。

 玉座の隣の妃の椅子に腰掛けた王妃は、その顔に満足気な笑みを浮かべて踊る二人を見つめている。

「この国も現国王の代で終わりかもしれんな。」

 不敬なことを独りごちた侯爵は、娘が帰るまで大広間の喧騒に耳を傾けて情報収集を行うのであった。

 アドリエンヌは陛下付きの侍従に連れられて広間を出た。

 そうして話は冒頭へと戻るのであった。


 
 
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