10 / 29
10. ロルフ船長は良い人
しおりを挟む「これとこれですか?」
「そうだ、多分ソフィアの言ってるやつに近いのはこれだと思うぞ。」
目の前に大きめのカツオに似た魚だけど、色合いが思ったよりも白っぽいもの、それとカタクチイワシに似てるけど思ったより倍くらい大きいものがある。
「確かに、雰囲気はすごく似てます。」
「コイツらはもう金払ってるから、試しに食べてみるか?」
「え?いつの間に。すみません、お金払います。」
「いいよいいよ。ほんとにコイツらがソフィアの探してる魚かどうか分かんねぇしな。ま、食べてみろって。」
港にある厨房のような場所をお借りして、ロルフ船長が捌いてくれた魚たちを食べてみた。
「カツオ……。」
「カツオ?」
「いや、すごく探してた魚にそっくりな味だったんでびっくりして……。」
見た目の色は白っぽいカツオなのに、味は脂身の少ないカツオそのまんまで、これを鰹節にしたら絶対美味しいだろうなぁと思う。
「もう片方も食ってみろよ。」
「…………イワシです。」
「探してたやつか?」
「そう、そうです!ちょっとサイズは大きいんですけど、味と見た目はそのまんまです!」
ロルフ船長によると、この魚たちはスキプジャクと、ザディヌというらしい。
「今日は本当にありがとうございました。早速この魚たちを加工してみます。」
「おう、それでそれが何になるんだ?」
「うーん……。説明が難しいんですけど、美味しい讃岐うどんのダシになります。」
ロルフ船長はよく分からないといった顔をしていたけど、そのうちニカッと笑ってくれた。
「……ソフィア、お前いくつなんだ?」
「私ですか?二十歳です。」
「二十歳か……。俺より八つも年下なんだな。それにしては大人びてて落ち着いてるから、もっといってるかと思ったがな。」
「それって……、老けてるってことですか?」
思わずジーっと睨んでみたら、慌てた様子で両手を振りながらロルフ船長は謝った。
「いや!そういうわけじゃねぇんだけどさ!ソフィアは俺なんかオッサンだなぁと思うだろ?」
「ロルフ船長がですか?別に思いませんよ。それにワイルド系イケメンってことで店でも人気なんですよ。」
「そうなのか?それは知らなかったな。じゃあソフィアも俺はアリか?」
ロルフ船長が笑いながら冗談を言うものだから、私は思っていたことを正直に答えた。
「ロルフ船長はワイルドでかっこいいし、まだ若いのに自分の船を持ってて乗組員の方も乗せて漁に出るなんて、正直ずっと尊敬してました。」
「……そうなのか?」
「はい。私より少しだけ年上なだけなのに凄いなあって。」
「そっか。そっか!」
エメラルドグリーンの瞳をキラキラ輝かせながらニカっと笑うロルフ船長は、お客さんのお姉さん方が見たら失神したかも知れないくらいカッコよく感じた。
「ロルフ船長、今日はほんとにありがとうございました。またお店に来た時にサービスさせてもらいますね。」
「おう、そんなの気にすんな!」
「ではまた。」
「気をつけて帰れよ!」
ブンブンと手を振って見送ってくれるロルフ船長は、さすが海の男だけあって後ろ側に見える海がとてもよく似合っていた。
0
お気に入りに追加
109
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ハッピーエンドを待っている 〜転生したけど前世の記憶を思い出したい〜
真田音夢李
恋愛
『やぁ‥君の人生はどうだった?』86歳で俺は死んだ。幸せな人生だと思っていた。
死んだ世界に三途の川はなく、俺の前に現れたのは金髪野郎だった。もちろん幸せだった!悔いはない!けれど、金髪野郎は俺に言った。『お前は何も覚えていない。よかったな?幸せだ。』
何言ってんだ?覚えてない?何のこと?だから幸せだったとでも?死ぬ前の俺の人生には一体何が起こってた!?俺は誰かも分からない人物の願いによってその人生を幸せに全うしたと?
一体誰が?『まさに幸せな男よ、拍手してやろう』そう言って薄ら笑いを浮かべてマジで拍手してくるこの金髪野郎は一体なんなんだ!?そして、奴は言う。ある人物の名前を。その名を聞いた途端に
俺の目から流れ落ちる涙。分からないのに悲しみだけが込み上げる。俺の幸せを願った人は誰!?
分からないまま、目覚めると銀髪に暁色の瞳をもった人間に転生していた!けれど、金髪野郎の記憶はある!なのに、聞いた名前を思い出せない!!俺は第二の人生はテオドールという名の赤ん坊だった。此処は帝国アレキサンドライト。母親しか見当たらなかったが、どうやら俺は皇太子の子供らしい。城下街で決して裕福ではないが綺麗な母を持ち、まさに人知れず産まれた王子と生まれ変わっていた。まさか小説のテンプレ?身分差によって生まれた隠された王子?おいおい、俺はそんなのどうでもいい!一体誰を忘れてるんだ?そして7歳になった誕生日になった夜。夢でついに記憶の欠片が・・・。
『そんな都合が言い訳ないだろう?』
またこいつかよ!!お前誰だよ!俺は前世の記憶を取り戻したいんだよ!
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
外では氷の騎士なんて呼ばれてる旦那様に今日も溺愛されてます
刻芦葉
恋愛
王国に仕える近衛騎士ユリウスは一切笑顔を見せないことから氷の騎士と呼ばれていた。ただそんな氷の騎士様だけど私の前だけは優しい笑顔を見せてくれる。今日も私は不器用だけど格好いい旦那様に溺愛されています。
告白さえできずに失恋したので、酒場でやけ酒しています。目が覚めたら、なぜか夜会の前夜に戻っていました。
石河 翠
恋愛
ほんのり想いを寄せていたイケメン文官に、告白する間もなく失恋した主人公。その夜、彼女は親友の魔導士にくだを巻きながら、酒場でやけ酒をしていた。見事に酔いつぶれる彼女。
いつもならば二日酔いとともに目が覚めるはずが、不思議なほど爽やかな気持ちで起き上がる。なんと彼女は、失恋する前の日の晩に戻ってきていたのだ。
前回の失敗をすべて回避すれば、好きなひとと付き合うこともできるはず。そう考えて動き始める彼女だったが……。
ちょっとがさつだけれどまっすぐで優しいヒロインと、そんな彼女のことを一途に思っていた魔導士の恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~
咲桜りおな
恋愛
前世で大好きだった乙女ゲームの世界にモブキャラとして転生した伯爵令嬢のアスチルゼフィラ・ピスケリー。
ヒロインでも悪役令嬢でもないモブキャラだからこそ、推しキャラ達の恋物語を遠くから鑑賞出来る! と楽しみにしていたら、関わりたくないのに何故か悪役令嬢の兄である騎士見習いがやたらと絡んでくる……。
いやいや、物語の当事者になんてなりたくないんです! お願いだから近付かないでぇ!
そんな思いも虚しく愛しの推しは全力でわたしを口説いてくる。おまけにキラキラ王子まで絡んで来て……逃げ場を塞がれてしまったようです。
結構、ところどころでイチャラブしております。
◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆
前作「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」のスピンオフ作品。
この作品だけでもちゃんと楽しんで頂けます。
番外編集もUPしましたので、宜しければご覧下さい。
「小説家になろう」でも公開しています。
女嫌いな騎士団長が味わう、苦くて甘い恋の上書き
待鳥園子
恋愛
「では、言い出したお前が犠牲になれ」
「嫌ですぅ!」
惚れ薬の効果上書きで、女嫌いな騎士団長が一時的に好きになる対象になる事になったローラ。
薬の効果が切れるまで一ヶ月だし、すぐだろうと思っていたけれど、久しぶりに会ったルドルフ団長の様子がどうやらおかしいようで!?
※来栖もよりーぬ先生に「30ぐらいの女性苦手なヒーロー」と誕生日プレゼントリクエストされたので書きました。
竜人のつがいへの執着は次元の壁を越える
たま
恋愛
次元を超えつがいに恋焦がれるストーカー竜人リュートさんと、うっかりリュートのいる異世界へ落っこちた女子高生結の絆されストーリー
その後、ふとした喧嘩らか、自分達が壮大な計画の歯車の1つだったことを知る。
そして今、最後の歯車はまずは世界の幸せの為に動く!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる