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24. ジェレミーの出自
しおりを挟む「国王陛下、それでもジェレミーは間違いなく貴方の息子ではないのですか? なぜそのような事をおっしゃることができるのです? それに宰相の言葉よりも、何故息子の言葉を信じないのですか?」
もう敬称も何も関係なく、私は気持ちを国王陛下へぶちまけた。
今までも、ずっとこうだったんだろうか?
ジェレミーの出自を、その紛れもなく父親である国王陛下が罵っていたのだろうか?
「み、美香様……。我が国の優秀な宰相が……、第二王子であるジェレミーが美香様を利用した謀反を企てていると儂に知らせて参ったのです。それは確かなことだと……。それに、そのジェレミーは卑しい血筋が混じっておるのです。いつ儂やロレシオの寝首をかかれるか分かりません。あなた様も、ジェレミーに騙されているのではないですか?」
私がジェレミーの方を見やると、ジェレミーはとても傷ついた顔をして首を左右に振って否定している。
もちろん私もそんな国王陛下の言葉を信じるつもりはなかった。
ただ、酷い言葉を浴びせられたジェレミーが心配だっただけ。
「宰相がなぜそのような事を陛下に仰ったのかは分かりませんが、ジェレミーはそのような恐ろしい事を企ててはいません。ただ、私と共に生きたいと言ってくれてるだけなんです」
「しかし!」
「国王陛下、今日のところは失礼いたします。少し頭を冷やされた方がよろしいかと」
私は深くお辞儀をして、そばに立つジェレミーの腕を引っ張って共に謁見室を出た。
謁見室の入り口を守る衛兵たちは、私の泣きそうな顔を見てまたギョッとした顔をしていたけど、そんなことどうでも良かった。
「ジェレミー、部屋に帰ろう」
そう言ってジェレミーの顔を見たら、彼はもう悲しそうな顔はしておらず、視線は前を向いて何かを堪えるように口元を引き結んでいた。
「すまなかった」
ただ一言だけ口にして、ジェレミーは私の手を引いて部屋に向かった。
モーリスは部屋の入り口でソワソワと歩き回っていたが、私たちを見つけると近寄ってどうだったか尋ねてきたけど、ジェレミーの表情を見てからは黙って部屋の扉を開けてくれた。
「美香、隠していたわけではないんだが……」
「何を? ジェレミーのお母さんのこと?」
「ああ。実は既に亡くなった母上は国王陛下の妾で、たまたまこの城へ来た踊り子だったんだ」
モーリスも加わって話してくれたのは、ジェレミーの出自で。
別に秘密にされているわけではないが、この城では触れてはならないタブーのような事柄なのだという。
ジェレミーの母親はこの城に催し物のために呼ばれた売れっ子の踊り子だったそうだ。
その時すでにロレシオが生まれていたこともあって、王妃との仲がマンネリ化していた国王陛下のお手つきになった踊り子は強制的に妾として城で暮らすことになった。
しかし王妃からは疎まれて、好きでもない国王陛下の子を授かったジェレミーの母親はそのうち臥せりがちになり、最後には国王陛下を呪いながら亡くなったという。
王妃も歳を重ね、ジェレミーに対しては大した恨みの気持ちもないようだが、王太子であるロレシオと第二王子のジェレミーへの待遇の格差はかなりあったそうだ。
そして、第二王子であるジェレミーが神の使いである私を見つけてしまった。
国王陛下も王妃も、それが面白くないのだという。
国内の貴族の中には、今の国王陛下の政治をよく思ってない人たちもいるらしく、新しい風を吹かせるために第二王子であるジェレミーを担ぎ出そうとしている者がいることは確からしい。
「俺は国王などなるつもりなど、全くないのにな。兄上のことを一家臣として手伝いながら生きていこうと思っていた」
なぜ宰相はジェレミーが謀反を企てていると国王陛下に話したんだろう……。
「宰相はリッシュ伯爵家の伯爵夫人の実兄だ。アニエス嬢とは関係がないと思いたいが、俺がアニエス嬢よりも美香を優先したことが関係しているのかも知れない」
アニエス嬢、そういえば……。
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