転生JKの推しはワンコ系王子様!推しの恋愛後押ししてたはずが何故か私が溺愛されていました

蓮恭

文字の大きさ
上 下
10 / 33

10. 突然のお茶会ですか?

しおりを挟む

 突然聞こえた透き通った声に顔を向ければ、王太子殿下がこちらを見て華やかに微笑んでいる。

「は、はい」

 この王太子殿下、お姉ちゃんの小説の中では大人っぽくて常にヒロインを包み込むような優しいキャラだったけど、今目の前にしてみればどこかその笑顔に腹黒いものを感じるのは私だけだろうか。

「天使様とお話したことはこれが初めてです。私も色々と話を聞きたいものですから、是非近々お茶にお誘いしても?」

 お茶のお誘い……。
 まさか王太子殿下からそのような提案があるとは思いもよらず、つい隣のジェレミーに視線を向ける。

 ジェレミーはまだ陛下たちに許されていないから、頭を下げたままでチラリと私へ目を向けて頷いた。

 そうか、断るべきではないか。
 ジェレミーの恋敵を知ることも何かの役に立つかも知れない。

「はい、是非」
「それは喜ばしいな。では、またお会いできるのを楽しみにしていますよ」

 壮絶に美しい笑顔を王太子殿下に向けられて、私はふふふっと曖昧に微笑んでやり過ごした。

 お姉ちゃん、さすがお姉ちゃん好みのイケメンは破壊力抜群だよ。
 でも、私はやっぱりジェレミーが推し!
 
 こういう場には慣れないからさっさとおいとましよう。

「すみません、このような場には慣れていなくて……。そろそろお暇してもいいですか?」
「おお! まだこちらに着いて間がないにも関わらずお呼び立てして申し訳なかった。ジェレミー、美香様のことくれぐれも頼んだぞ。」

 ここで初めて国王陛下はジェレミーに声を掛けた。
 
「はい、陛下」

 そう言って立ち上がったジェレミーは、まだ跪いたままの私の方へと手を伸ばす。

 これは、手を乗せろという意味かな?

 そおっとジェレミーの手に自分の手を乗せて立ち上がると、国王陛下と王太子殿下に一礼したジェレミーは私の手を掴んだままで謁見室の扉の方へと歩き出した。

 これは、手繋ぎというやつでは?

 入院生活が長く、異性と手を繋いだこともなかった私にとってと手を繋いで歩くということは夢のようなことであった。

 いやいや、ジェレミーはアニエスのことが好きなんだから……。
 勘違いするな、私。
 ジェレミーの優しさは王子様として当然のもので、特別な感情はヒロインであるアニエスへ向けられているのだ。

 謁見室の大きな扉から廊下へ出ると、扉を守る衛兵たちはギョッとしていた。

 そりゃあこの国の王子様が訳の分からない娘と手を繋いで謁見室から出てきたら驚くよね。
 変な噂にならなきゃいいけど。

「ジェレミー、これからどうするの?」

 廊下をズンズンと進むジェレミーに手を引っ張られるようにして私も歩くが、広い王城内でどこへ向かっているのか検討もつかない。

「美香、お茶しよう」
「へ?」

 ただそう言ったっきりでジェレミーはどんどん歩く。

 すれ違う城の中の人(何て言うのか分かんない)たちは好奇の目線を向けるか、不思議そうに私たちを見ていた。

 やがて着いたのは城の庭園に作られたガゼボで、テーブルと椅子が備え付けてある。
 周りには美しい薔薇が咲き誇っていて、まさに王子様とお姫様にふさわしい場所である。
 
 ジェレミーは、いつのまにか現れた侍従に何かしらの指示を出して椅子へ座るようにと私を促した。

「綺麗な場所だね」
「ここが城の中で一番気に入ってる。母上の自慢の庭なんだが、ここでのんびり過ごすのが気晴らしになるんだ」
「そうなんだ」

 テーブルに向かい合わせで座ったものの、何だか気恥ずかしくてジェレミーの方を見ることはできない。

「国王陛下も王太子殿下も、観光ってこと信じてくれたかな?」
「……ははっ! 美香、お前嘘を吐くのが下手だな」
「え? やっぱり嘘ってバレたかな? だってまさか恋敵である王太子殿下の前で本当のこと言う訳にはいかなかったし……」

 ジェレミーは急に静かになって、何かを考えているようだ。

「それのことだが……」

 暫くして口を開いたジェレミーの言葉を、鈴を転がしたような可愛らしい声が遮った。

「まあ! ジェレミー様!」

 



 




 

 






 



 

 
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

痩せすぎ貧乳令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とあるお屋敷へ呼ばれて行くと、そこには細い細い風に飛ばされそうなお嬢様がいた。 お嬢様の悩みは…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴッドハンドで世界を変えますよ? ********************** 転生侍女シリーズ第三弾。 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 『醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!

ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。 もう一度言おう。ヒロインがいない!! 乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。 ※ざまぁ展開あり

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)

夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。 ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。  って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!  せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。  新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。  なんだかお兄様の様子がおかしい……? ※小説になろうさまでも掲載しています ※以前連載していたやつの長編版です

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった! しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢? 私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

処理中です...