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魔道帝国学院 入学②
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「こんにちは。」
金髪に右が青で左が緑のオッドアイという珍しい容姿をした少年が隣の席に腰掛けた。
「僕はミゲル・カンタニエール・トロイ。よろしくね。」
ふわりと優しげに微笑んだミゲルだが、右側の顎にかかるくらいの前髪も相まって、貴族然とした真意の見えない笑顔にエミリアンヌは見えた。
不躾で無い程度にミゲルを観察すると、左耳にピアスを付けているのが見えた。ピンクに近い赤の石を嵌められており、魔力の帯び方と、魔法陣で何かが付与されていることから、魔道具かなとあたりをつける。
素材や魔法陣の定着の仕方からして、相当腕の良い魔道具師の作った物に見える。
一目見ただけでは何の魔道具か分からない、それを作れるだけで魔道具師は一流にカウントされる。
これだけの品は一般人には手が届かないほど高いだろう。
魔力を帯びる物で、人が道具や武器として用いるものは二種類ある。
魔具と魔道具だ。
魔具は作り方が判明しておらず、ダンジョンや迷宮で見つかるものもあれば、人の死をキッカケにその人の持ち物などが魔具に変わるものがある。エミリアンヌが嵌めている指輪がそれだ。
魔道具との大きな違いは二つある。魔道具師のような人に作られたものかどうか、そして使用者を選ぶかどうかだ。
魔具は魔道具と比べ物にならないほど力が強く、人々の憧れだが、手に入れたとしても魔具が使用者を選び、魔具が持つ力は決まっているという難点があり、魔道具は使用者を選ばない代わりに、魔具のような規格外な力を持たない。だが、作り手によってはランクの低い魔具に相当する魔道具を作れ、使用者の希望した魔道具にカスタマイズできるという利点がある。
「私はエミリアンヌ・M・へーヴェル。こちらこそよろしくね。」
貴族だと察しながらもエミリアンヌは人好きのする笑顔を浮かべ、砕けた口調で話した。
この学院では貴族だろうと平民だろうと功績を残す者が尊重される。それに自己紹介する時に家名の説明をしていなかったので、貴族という身分をひけらかすつもりは無いのだと判断したのだ。
「エミリアンヌと呼んでも?」
「ええ。私もミゲルと呼ばせて貰うね。」
もちろん、とミゲルは頷いた。
「エミリアンヌはどこ出身?僕はハンナリアから来たんだ。海に面した綺麗な所だよ。」
「そうなの?ハンナリアには私も一度行った事があるの。家族と一緒に旅行で行って、サントテーゼの丘を登ったのを覚えてる。結構前の事だけど。」
「サントテーゼは良い場所だよね。あそこはパスタが美味しい。」
「へぇ。今度行ったら食べてみようかな。」
前に行った時はかなり幼く、エミリアンヌはもうあまり覚えていない。夏休暇にでもダークライドを誘って行こうかと考えた。
ちなみにここ、魔道帝国学院は王都セイントローナにある。
「私はユーフォリアから来たの。」
「ああ、冒険者の楽園と言われている...」
「そう。喧嘩が多くて騒がしい街だけど、警備隊のほとんどが引退した冒険者だから、犯罪は全くと言って良いほど無いの。街で暮らしている冒険者も犯罪を許さない人が多いし、たまに皆が悪ノリして火に油を注いで小さな喧嘩が決闘に変わってしまう事以外はとっても平和なんだよ。」
「喧嘩が決闘になるのは大丈夫なの?」
「まあ、冒険者の町だから皆戦えるし、戦えない人が怪我をしないように配慮もしているようだから、むしろイベントに近いのかもね。」
気付いたら教室の席のほとんどは埋まっており、先生がホームルームの予定時間ぴったりに教室に入ってきた。
先生は30代くらいの男性だった。いかにも武闘派と言った容貌で、程よく鍛えられた体と、にかりと快活な笑みを浮かべる様からは親しみやすさが見て取れた。
「俺はドルトフリート・ゼン・ザーカイドだ。これから1年間このクラスを担当する事になる。この学院の教員には俺の弟もいるから、ドルトフリートって名前で呼んでくれ。
まず言っておくと、この学校では知っている通り貴族とかいう身分は効かない、実力主義だ。勿論実力というのは戦う能力だけでなく、魔道具師としての能力や学期ごとにある試験の成績の事を指しているから、強いからと言って暴れて良い訳では無いからな。そこら辺履き違えないように。
もうしおりを読んだ人もいるかもしれないが、このクラスで一緒に活動するのは魔導訓練って言う魔導士としての戦い方を学ぶ必修授業と、武闘祭や文化祭と言ったイベントでだけだ。
ホームルームも週に一度といった感じだから、注意事項を俺が何度も言って思い出させる事は出来ない。出さないといけない書類、直近だと授業の申請書だな。これは出せなくても人気のある授業に出られない程度だが、今後出さないと退学になってしまう書類や試験がある。
くれぐれも、こういった事には気を付けて学校生活を謳歌してくれ。書類を出さなかったから退学なんて事は辞めてくれよな。」
最後の方は熱意を込めて言ったドルトフリートに生徒達は笑う。
そんな生徒達を見てドルトフリートは「笑い事じゃないからな!」と念を押す。
過去に書類が原因で退学した人でもいたのかという程の熱の込め方だった。
「入学式は明後日だ。今日は今隣に座っている人と二人一組で学校を探検して、このスタンプカードを埋めて貰う。二人ずつ違う場所に転送するから、そこから地図を頼りに指定された場所に行ってスタンプを貰っていってくれ。スタンプを貰うにはちょっとしたクイズやゲームをクリアしないといけない。
まあ、上級生による歓迎会ってやつだな。早く学院に慣れて貰うために毎年やってる事だ。
終わったら武闘場に来てくれ。最初の30組には景品がある。あ、因みにこれは他の学科の新入生と合同のイベントだ。
スタンプラリーが終わったら寮の説明がされ、希望する寮に向かって貰うことになる。寮によっては入寮試験があるが、詳しくは俺は知らん。
まあ、とりあえず武闘場で担当の先生が説明してくれることになってるから、そんなものだと思ってくれ。」
全学科同時に始めるとの事で、一組ずつにスタンプカードが配られ、各自始めるまで自由に過ごしていて良いとドルトフリートは言った。
「図書室が多いね。」
エミリアンヌはスタンプカードを見ながら言った。スタンプカードには10個程度の四角があり、そのうちの3つが図書室だった。
「普通教科用と魔術や武術用、それと総合図書館があるけど、しおりには寮ごとにも図書室があって、研究所にある総合図書館にはは論文がほとんど全部揃ってるって書いてあるよ。管理が大変そうだね。」
同調したミゲルはしおりの地図のページを開いた。
「凄いね。全図書室の蔵書をコンプリートした人は居るのかな?」
「分からないけど、僕は魔術の図書室に興味があるな。」
「ね、私も。錬金術に興味があるんだ。あと魔道具作りもね。」
地図を見ると、学院が実に広い事が分かる。大陸屈指の学院と呼ばれ、他国からの留学生が多い事も納得の設備も整っている。
基本自己責任だが、学びたい事があればそれを後押しして支援してくれる。
やりたい事が沢山あるエミリアンヌにはぴったりの学院であった。
金髪に右が青で左が緑のオッドアイという珍しい容姿をした少年が隣の席に腰掛けた。
「僕はミゲル・カンタニエール・トロイ。よろしくね。」
ふわりと優しげに微笑んだミゲルだが、右側の顎にかかるくらいの前髪も相まって、貴族然とした真意の見えない笑顔にエミリアンヌは見えた。
不躾で無い程度にミゲルを観察すると、左耳にピアスを付けているのが見えた。ピンクに近い赤の石を嵌められており、魔力の帯び方と、魔法陣で何かが付与されていることから、魔道具かなとあたりをつける。
素材や魔法陣の定着の仕方からして、相当腕の良い魔道具師の作った物に見える。
一目見ただけでは何の魔道具か分からない、それを作れるだけで魔道具師は一流にカウントされる。
これだけの品は一般人には手が届かないほど高いだろう。
魔力を帯びる物で、人が道具や武器として用いるものは二種類ある。
魔具と魔道具だ。
魔具は作り方が判明しておらず、ダンジョンや迷宮で見つかるものもあれば、人の死をキッカケにその人の持ち物などが魔具に変わるものがある。エミリアンヌが嵌めている指輪がそれだ。
魔道具との大きな違いは二つある。魔道具師のような人に作られたものかどうか、そして使用者を選ぶかどうかだ。
魔具は魔道具と比べ物にならないほど力が強く、人々の憧れだが、手に入れたとしても魔具が使用者を選び、魔具が持つ力は決まっているという難点があり、魔道具は使用者を選ばない代わりに、魔具のような規格外な力を持たない。だが、作り手によってはランクの低い魔具に相当する魔道具を作れ、使用者の希望した魔道具にカスタマイズできるという利点がある。
「私はエミリアンヌ・M・へーヴェル。こちらこそよろしくね。」
貴族だと察しながらもエミリアンヌは人好きのする笑顔を浮かべ、砕けた口調で話した。
この学院では貴族だろうと平民だろうと功績を残す者が尊重される。それに自己紹介する時に家名の説明をしていなかったので、貴族という身分をひけらかすつもりは無いのだと判断したのだ。
「エミリアンヌと呼んでも?」
「ええ。私もミゲルと呼ばせて貰うね。」
もちろん、とミゲルは頷いた。
「エミリアンヌはどこ出身?僕はハンナリアから来たんだ。海に面した綺麗な所だよ。」
「そうなの?ハンナリアには私も一度行った事があるの。家族と一緒に旅行で行って、サントテーゼの丘を登ったのを覚えてる。結構前の事だけど。」
「サントテーゼは良い場所だよね。あそこはパスタが美味しい。」
「へぇ。今度行ったら食べてみようかな。」
前に行った時はかなり幼く、エミリアンヌはもうあまり覚えていない。夏休暇にでもダークライドを誘って行こうかと考えた。
ちなみにここ、魔道帝国学院は王都セイントローナにある。
「私はユーフォリアから来たの。」
「ああ、冒険者の楽園と言われている...」
「そう。喧嘩が多くて騒がしい街だけど、警備隊のほとんどが引退した冒険者だから、犯罪は全くと言って良いほど無いの。街で暮らしている冒険者も犯罪を許さない人が多いし、たまに皆が悪ノリして火に油を注いで小さな喧嘩が決闘に変わってしまう事以外はとっても平和なんだよ。」
「喧嘩が決闘になるのは大丈夫なの?」
「まあ、冒険者の町だから皆戦えるし、戦えない人が怪我をしないように配慮もしているようだから、むしろイベントに近いのかもね。」
気付いたら教室の席のほとんどは埋まっており、先生がホームルームの予定時間ぴったりに教室に入ってきた。
先生は30代くらいの男性だった。いかにも武闘派と言った容貌で、程よく鍛えられた体と、にかりと快活な笑みを浮かべる様からは親しみやすさが見て取れた。
「俺はドルトフリート・ゼン・ザーカイドだ。これから1年間このクラスを担当する事になる。この学院の教員には俺の弟もいるから、ドルトフリートって名前で呼んでくれ。
まず言っておくと、この学校では知っている通り貴族とかいう身分は効かない、実力主義だ。勿論実力というのは戦う能力だけでなく、魔道具師としての能力や学期ごとにある試験の成績の事を指しているから、強いからと言って暴れて良い訳では無いからな。そこら辺履き違えないように。
もうしおりを読んだ人もいるかもしれないが、このクラスで一緒に活動するのは魔導訓練って言う魔導士としての戦い方を学ぶ必修授業と、武闘祭や文化祭と言ったイベントでだけだ。
ホームルームも週に一度といった感じだから、注意事項を俺が何度も言って思い出させる事は出来ない。出さないといけない書類、直近だと授業の申請書だな。これは出せなくても人気のある授業に出られない程度だが、今後出さないと退学になってしまう書類や試験がある。
くれぐれも、こういった事には気を付けて学校生活を謳歌してくれ。書類を出さなかったから退学なんて事は辞めてくれよな。」
最後の方は熱意を込めて言ったドルトフリートに生徒達は笑う。
そんな生徒達を見てドルトフリートは「笑い事じゃないからな!」と念を押す。
過去に書類が原因で退学した人でもいたのかという程の熱の込め方だった。
「入学式は明後日だ。今日は今隣に座っている人と二人一組で学校を探検して、このスタンプカードを埋めて貰う。二人ずつ違う場所に転送するから、そこから地図を頼りに指定された場所に行ってスタンプを貰っていってくれ。スタンプを貰うにはちょっとしたクイズやゲームをクリアしないといけない。
まあ、上級生による歓迎会ってやつだな。早く学院に慣れて貰うために毎年やってる事だ。
終わったら武闘場に来てくれ。最初の30組には景品がある。あ、因みにこれは他の学科の新入生と合同のイベントだ。
スタンプラリーが終わったら寮の説明がされ、希望する寮に向かって貰うことになる。寮によっては入寮試験があるが、詳しくは俺は知らん。
まあ、とりあえず武闘場で担当の先生が説明してくれることになってるから、そんなものだと思ってくれ。」
全学科同時に始めるとの事で、一組ずつにスタンプカードが配られ、各自始めるまで自由に過ごしていて良いとドルトフリートは言った。
「図書室が多いね。」
エミリアンヌはスタンプカードを見ながら言った。スタンプカードには10個程度の四角があり、そのうちの3つが図書室だった。
「普通教科用と魔術や武術用、それと総合図書館があるけど、しおりには寮ごとにも図書室があって、研究所にある総合図書館にはは論文がほとんど全部揃ってるって書いてあるよ。管理が大変そうだね。」
同調したミゲルはしおりの地図のページを開いた。
「凄いね。全図書室の蔵書をコンプリートした人は居るのかな?」
「分からないけど、僕は魔術の図書室に興味があるな。」
「ね、私も。錬金術に興味があるんだ。あと魔道具作りもね。」
地図を見ると、学院が実に広い事が分かる。大陸屈指の学院と呼ばれ、他国からの留学生が多い事も納得の設備も整っている。
基本自己責任だが、学びたい事があればそれを後押しして支援してくれる。
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