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第1章 目覚め
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しおりを挟む「正解は神でした♪」
部屋に入った俺達を待っていたのは見渡す限り真っ白な空間とこの世界を創造した神アトゥルだった。
やぁと手を上げるアトゥルの横には緑色の髪に緑色の布を纏った眠たそうな緑色の目をした幼女がいた。
「彼女は?」
「なんだい? せっかく現世に現れたのにぞんざいな扱いだねぇ。……まぁいいか、彼女は風の女神アウラだよ。このダンジョンに封印されてしまってたんだ」
「たすけて、くれて、ありがとう」
俺の問いにアトゥルが答えてくれて、彼女が救ってもらいたかった女神の1人、アウラだと教えてくれた。
アウラは少し頭を下げて、お礼を言った。
「俺は何もしていないんだけど……」
「守くんがダンジョンを踏破してくれたお陰で、僕が此処に顕現できて、彼女の封印を解くことができたんだよ」
「……なるほど。これが称号の使徒の効果か」
使徒はどうやらアトゥルを現世に顕現させれるカギとなっているわけだ。
……待てよ?
現世に顕現?
バッと後ろを振り返ると、状況についていけずに驚いた表情で固まっているリリィ達がいた。
「……あ、な、だ、れ? マ、マモル様、ど、どなたなの、でしょうか?」
一番最初にガルムがフリーズから再起動し、混乱しながらも誰なのか聞いてきた。
「あー、この世界を創った神様……らしい。創造神のアトゥルと隣の幼女が風の女神アウラ」
「なっ!?」
「えっ!?」
「ばっ!?」
それぞれ驚きまたフリーズした。
しかし、苗場か。
また、スキーに行きたくなってきたな。
「また、そんなこと考えて。もっと真面目に考えなよ」
「……心を読むなよ」
バカなことを考えた俺をアトゥルが呆れたように突っ込んできた。
「今回、彼らの前にも姿を表したのは色々あるんだけど、簡単に言えば守くんの味方だからかな」
「そうなのか。……ちょっとニュアンスが違う気がするんだが、俺の名前は守じゃなくて、護だからな」
「別にいいじゃないか。マモル君はマモル君だろ?」
良かねぇよ。
「言葉にしなよ。まぁ、いいや。アウラを助けた手助けをしてくれたお礼に報酬があるんだよ」
「……あまり助けた気がしないが、貰えるものは貰っておくよ」
「元々、から、あげる、予定の、もの、だった。これ、ドワーフ、ちゃんは、解る?」
アウラが懐から出してきたピンポン玉サイズの玉は綺麗な緑色に輝いており、清浄な光を感じる。
再起動したクロムは玉を凝視し、真理眼を発動させた。
「……シルフという宝玉です、か? 風の女神様の恩恵を授かれるようです」
「せいかい。シルフは、わたしの、ちからを、こめてる。とりこめば、かぜの、ちからが、ぞうふくする。……ビャッコ」
俺の影から姿を現したビャッコへアウラがシルフを投げる。
口を開き、シルフを飲み込んだビャッコが力強い咆哮をあげ、自身の周りに風を巻き起こす。
俺の脚甲にも変化が訪れ、荒れ狂う風を彷彿させる翡翠色の流線が描かれる。
「奴隷君にはアウラの加護を与えるよ。もちろん護くんにも」
アトゥルがアウラに目配せをすると、アウラが俺達の方へ右手を向ける。
俺達は緑色に光る風に包まれていく。
風の隙間から見えるアトゥルは手を降っていた。
これで終わりなのかと言おうとしたとき、プツリと意識が切られた。
「これで、よかったのですか?」
マモル達の居なくなった白い空間でアウラはアトゥルに劣等種とはいえ竜の素材を渡さなかったことに疑問を感じていた。
「いいんだよ。武具は強力なモノを与えているからね」
思い出したようにハッとした表情をしたアウラは奴隷達に与えればよかったんじゃないかと思った。
「奴隷は別だよ。僕が関与できるのは護くんにだけなんだから」
「しかし、加護をお与えになられたのでは?」
「あれは、護くんが仲間にした者の制限を解除するためさ。……あー、なるほど。僕がやってることが娘達にばれちゃうね」
舌を出してふざけるアトゥルにアウラは眠たげな目のまま、何もなかったように無言を貫く。
「……厳しいねぇ。アウラは風の勇者のところに今までの夢で会う感じじゃなくて、直接彼に会っておいで」
封印から解放されたのだから、勇者を強化しに行きなさいとアトゥルが言うと、今までの眠たげはどこへいったのかというほど満面の笑みを浮かべてその場からスッと消える。
「……その笑顔を僕にはもう向けてくれないのか。お父さん悲しい」
悲しげな言葉を呟くアトゥルだった。
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