7 / 7
7(最終話)
しおりを挟む
**
Side:陸斗
オレはずっと考えていた。
どうしたら、「親友」という枠を崩さずに、もっと深い関係になれるのか。
高校に入り、新しくオレ達にかまっている奴らもいたけど、オレはそんなことは望んでなかった。
今まで通り、祐介と一緒にいられるなら。
オレが佐々木、片岡、渚、曾根崎と一緒にいるときの祐介は、どこか寂しそうな、ちょっと怒ったような、それでいてどこか驚いたような……様々な感情が入り交じった表情をしていて、祐介にも独占したいという気持ちがあったことに、どうしようも嬉しくなった。
でも、それはまだ「親友」という枠であることも知っていた。
その日は、オレだけが放課後、カラオケに誘われた日だった。
祐介はオレがあの四人と遊ぶと知ったらどんな顔をするんだろう。その場では祐介の反応が見たくて、適当に返事をしたが、校舎を出ようとしたところで「用事を思い出した」と断った。
オレは祐介との貴重な時間を、他の奴らに費やすわけにはいかなかった。
四人がとても残念そうにしながら先に校舎を出るのを見送り、祐介の下駄箱を確認した。祐介は既に帰宅してしまったようだ。
祐介を追いかけて、いつもの帰り道を小走りで駆けていく。
少し行った先に、祐介の背中が見えた。
走って追いつくこともできたのだが、祐介があまりにも寂しそうな背中をしていて、今祐介の頭の中にはオレのことしかないのかな、なんて考えたら、もっと見ていたくなってしまった。
そこからなんとなく、オレは祐介に気づかれないように後を追っていた。
学校から五分ほど歩いた所に、オレたちがよく行っていた本屋がある。
祐介がそこに入っていったので、不思議に思いながらも、バレないようにオレも本屋に入った。
祐介が何気なく手に取った本には、「催眠術」と書かれている。
なぜそんな本を?
不思議に思いながらも、祐介がその本を購入し、家に帰宅するまで見送ったのだった。
次の日も、四人組はオレを誘い、祐介は誘わなかった。
オレにとっては祐介がいないとなんの意味もないのだが、祐介がオレに対して独占欲を見せてくれるのがたまらなかったので、祐介の視線には気づかないふりをしていた。
ただ、そろそろ潮時だろう。これで祐介の方が他の友達を作ってしまったりしたら元も子もない。それに、オレが祐介の声を聞けなくなってしまうのが何よりも苦しい。
その日は四人組の誘いを断り、昨日祐介が来ていた本屋に向かった。
そして平積みされている同じ催眠術の本を手にとり、購入する。
正直胡散臭いことこの上ないのだが、祐介は催眠術にかけたい相手が誰かいるのだろうか?
近くのカフェに入り、そんな考えをぐるぐると巡らせながら、オレはその本を隅から隅まで読みふけった。
オレが帰宅したとき、祐介が来ていると知って驚いた。
祐介もオレと話したくなったのか。
はやる気持ちを抑えて二階に上がり、オレの部屋にいる祐介を見る。
祐介はなんだかそわそわしているような感じで、少し落ち着きがない様子に見えた。
宿題が切りの良いところまで進むと、祐介は突然催眠術の話題を口にした。
テレビで見た、なんてすぐ嘘だとわかった。
今日見た催眠術の本の内容を頭の中で反芻する。
催眠術をかけてみる、という祐介の言う通り、素直に目を閉じる。
「あなたが目を開けると、そこには人生で一番大切な人がいます」
その言葉を聞いた瞬間、パズルのピースが埋まっていくような感覚がした。
もしかして、祐介は離れていきそうなオレをつなぎ止めるために、催眠術をかけようとしたのか?
――なんてかわいいんだろう。オレの一番大切な人は目の前にいるのに。
どうしようもなく愛おしくて、表情にでないようにするのを必死でこらえた。
次に脳裏に過ぎったのは、ずっとしまい込んでいたこの気持ちを、今こそ祐介に伝えられるのではないか? ということだった。
「大切な人」の定義は曖昧だ。
だったら、オレが抱えていた恋愛感情も含めて「大切」という解釈ができる。
オレは祐介の催眠術にかかったふりをして、恋愛感情もぶつければいい。
祐介がオレのことをどう思っているのかを知って、意識してもらえるチャンスなのではないか。
もし失敗しても、全部祐介の催眠術にかかったせいにしてしまえばいい。
オレは一瞬のうちに様々なことを考えながら、目を開けた。
催眠術にかかったふりをするなんて、簡単だった。
今まで祐介に対してしまい込んできた気持ちを、そのままぶつけるだけで良かったから。
今はまだ、親友を失いたくないという独占欲かもしれない。
でも、絶対に祐介にも親友の枠を超えて、オレを意識させてみせる。
「オレ、祐介のこと好きだ」
そうやって熱の籠もった目で、祐介を見つめた。
Side:陸斗
オレはずっと考えていた。
どうしたら、「親友」という枠を崩さずに、もっと深い関係になれるのか。
高校に入り、新しくオレ達にかまっている奴らもいたけど、オレはそんなことは望んでなかった。
今まで通り、祐介と一緒にいられるなら。
オレが佐々木、片岡、渚、曾根崎と一緒にいるときの祐介は、どこか寂しそうな、ちょっと怒ったような、それでいてどこか驚いたような……様々な感情が入り交じった表情をしていて、祐介にも独占したいという気持ちがあったことに、どうしようも嬉しくなった。
でも、それはまだ「親友」という枠であることも知っていた。
その日は、オレだけが放課後、カラオケに誘われた日だった。
祐介はオレがあの四人と遊ぶと知ったらどんな顔をするんだろう。その場では祐介の反応が見たくて、適当に返事をしたが、校舎を出ようとしたところで「用事を思い出した」と断った。
オレは祐介との貴重な時間を、他の奴らに費やすわけにはいかなかった。
四人がとても残念そうにしながら先に校舎を出るのを見送り、祐介の下駄箱を確認した。祐介は既に帰宅してしまったようだ。
祐介を追いかけて、いつもの帰り道を小走りで駆けていく。
少し行った先に、祐介の背中が見えた。
走って追いつくこともできたのだが、祐介があまりにも寂しそうな背中をしていて、今祐介の頭の中にはオレのことしかないのかな、なんて考えたら、もっと見ていたくなってしまった。
そこからなんとなく、オレは祐介に気づかれないように後を追っていた。
学校から五分ほど歩いた所に、オレたちがよく行っていた本屋がある。
祐介がそこに入っていったので、不思議に思いながらも、バレないようにオレも本屋に入った。
祐介が何気なく手に取った本には、「催眠術」と書かれている。
なぜそんな本を?
不思議に思いながらも、祐介がその本を購入し、家に帰宅するまで見送ったのだった。
次の日も、四人組はオレを誘い、祐介は誘わなかった。
オレにとっては祐介がいないとなんの意味もないのだが、祐介がオレに対して独占欲を見せてくれるのがたまらなかったので、祐介の視線には気づかないふりをしていた。
ただ、そろそろ潮時だろう。これで祐介の方が他の友達を作ってしまったりしたら元も子もない。それに、オレが祐介の声を聞けなくなってしまうのが何よりも苦しい。
その日は四人組の誘いを断り、昨日祐介が来ていた本屋に向かった。
そして平積みされている同じ催眠術の本を手にとり、購入する。
正直胡散臭いことこの上ないのだが、祐介は催眠術にかけたい相手が誰かいるのだろうか?
近くのカフェに入り、そんな考えをぐるぐると巡らせながら、オレはその本を隅から隅まで読みふけった。
オレが帰宅したとき、祐介が来ていると知って驚いた。
祐介もオレと話したくなったのか。
はやる気持ちを抑えて二階に上がり、オレの部屋にいる祐介を見る。
祐介はなんだかそわそわしているような感じで、少し落ち着きがない様子に見えた。
宿題が切りの良いところまで進むと、祐介は突然催眠術の話題を口にした。
テレビで見た、なんてすぐ嘘だとわかった。
今日見た催眠術の本の内容を頭の中で反芻する。
催眠術をかけてみる、という祐介の言う通り、素直に目を閉じる。
「あなたが目を開けると、そこには人生で一番大切な人がいます」
その言葉を聞いた瞬間、パズルのピースが埋まっていくような感覚がした。
もしかして、祐介は離れていきそうなオレをつなぎ止めるために、催眠術をかけようとしたのか?
――なんてかわいいんだろう。オレの一番大切な人は目の前にいるのに。
どうしようもなく愛おしくて、表情にでないようにするのを必死でこらえた。
次に脳裏に過ぎったのは、ずっとしまい込んでいたこの気持ちを、今こそ祐介に伝えられるのではないか? ということだった。
「大切な人」の定義は曖昧だ。
だったら、オレが抱えていた恋愛感情も含めて「大切」という解釈ができる。
オレは祐介の催眠術にかかったふりをして、恋愛感情もぶつければいい。
祐介がオレのことをどう思っているのかを知って、意識してもらえるチャンスなのではないか。
もし失敗しても、全部祐介の催眠術にかかったせいにしてしまえばいい。
オレは一瞬のうちに様々なことを考えながら、目を開けた。
催眠術にかかったふりをするなんて、簡単だった。
今まで祐介に対してしまい込んできた気持ちを、そのままぶつけるだけで良かったから。
今はまだ、親友を失いたくないという独占欲かもしれない。
でも、絶対に祐介にも親友の枠を超えて、オレを意識させてみせる。
「オレ、祐介のこと好きだ」
そうやって熱の籠もった目で、祐介を見つめた。
353
お気に入りに追加
240
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。

弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!
灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」
そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。
リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。
だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。
みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。
追いかけてくるまで説明ハイリマァス
※完結致しました!お読みいただきありがとうございました!
※11/20 短編(いちまんじ)新しく書きました!
※12/14 どうしてもIF話書きたくなったので、書きました!これにて本当にお終いにします。ありがとうございました!

嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪



彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

ガラス玉のように
イケのタコ
BL
クール美形×平凡
成績共に運動神経も平凡と、そつなくのびのびと暮らしていたスズ。そんな中突然、親の転勤が決まる。
親と一緒に外国に行くのか、それとも知人宅にで生活するのかを、どっちかを選択する事になったスズ。
とりあえず、お試しで一週間だけ知人宅にお邪魔する事になった。
圧倒されるような日本家屋に驚きつつ、なぜか知人宅には学校一番イケメンとらいわれる有名な三船がいた。
スズは三船とは会話をしたことがなく、気まずいながらも挨拶をする。しかし三船の方は傲慢な態度を取り印象は最悪。
ここで暮らして行けるのか。悩んでいると母の友人であり知人の、義宗に「三船は不器用だから長めに見てやって」と気長に判断してほしいと言われる。
三船に嫌われていては判断するもないと思うがとスズは思う。それでも優しい義宗が言った通りに気長がに気楽にしようと心がける。
しかし、スズが待ち受けているのは日常ではなく波乱。
三船との衝突。そして、この家の秘密と真実に立ち向かうことになるスズだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
すごく面白かったです!
その後の二人が気になってしょうがないです。
長編で読みたい作品でした(^^)♡
かえるのめだまやき様
お読みいただき、さらにご感想までありがとうございます!
本当ですか!??めちゃくちゃ嬉しいです🥹最高に舞い上がっております!笑
あらためて私も、その後の二人のことを考えてしまいました🥰
こうしてコメントをくださって、とっても励みになります!!✨
最高です!!
あむ様
長編だけでなく、短編もお読みいただいて、さらにコメントもいただけるなんて‼︎ あ、ありがたすぎる……😂
最高だなんて……本当に嬉しいです!!!
ありがとうございます(土下座)