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今日も今日とて昼に誘われることはなく、放課後になった。
数人しか残っていない教室。陸斗や佐々木、渚さん達もいない。まだ部活の仮入部も始まっていないから、俺がぼーっと荷物を整理している間に、きっと四人で遊びにでもいったのだろう。
やっぱり俺はあのグループにはそぐわないと思われているのだ。
それに以前に渚さんや曾根崎さんの会話を聞いてしまったことも、相手も気づいていたのだから当たり前か。今更俺を誘えるわけもない。
わかっていたのにやっぱり苦しい。
自分からは何も行動をしていないくせに、「陸斗をとられた」と感じてしまう自分にも嫌気がさす。
一方で、焦る気持ちはより強く、昨日の催眠術を実行しなければと感じている。
学校ではグループで固まっているから、陸斗に話しかける機会はない。
俺は今晩、陸斗の家を訪ねることにしていた。
ピンポーン……。
「あら、祐介くん? 久しぶりねー!」
「直子さんお久しぶりです。夜分にすみません。陸斗に渡したいものがあったので……」
俺が陸斗の家を訪ね、出迎えてくれたのは陸斗のお母さん、直子さんだった。
幼なじみということで、よくお互いの家を訪れていたため、もちろん俺のこともよく知っている。
「陸斗に渡したいものがある」と伝えたところ、遅くにも関わらずすんなりと家に上げてくれた。
「ごめんね、陸斗なら今ちょっと出かけているみたいで。今お茶でももってくるから、陸斗の部屋で待っていてもらえるかしら?」
「おかまいなく、渡すものを渡したらすぐ帰りますので。ありがとうございます」
直子さんは小学生の頃のように、二階の陸斗の部屋に通した。
なんてことない、いつも見慣れた整理整頓されたシンプルな部屋。
今まで週一回は陸斗の部屋に行って遊んでいたはずなのに、今日はやけにそわそわする。
ガチャ……。
一階から扉が開く音が聞こえた。
陸斗がちょうど帰ってきたのだろうか。
「陸斗~今祐介くん来てるわよー」
直子さんの声も聞こえる。やけに緊張してきた。
「祐介?」
陸斗が部屋に入ってきた。きょとんとした顔をしている。
「あ、陸斗。ごめんな急に……」
「いや、全然いいけど……。どうしたの突然?」
今まで話さない日はなかったからだろうか。
妙に口の中が乾いて、うまく言葉がでてこない。
直子さんには「陸斗に渡したいものがある」と言ったが、そんなものあるはずもない。陸斗の部屋にきた理由は口からでまかせだ。
「あ、いやさ、明日数学の宿題出されてただろ。あれ持って帰るの忘れちゃって。もらったプリントコピーさせてくれないかなと思ってさ」
「そうなの? 全然いいよ。ちょっと待っててね」
陸斗は自分の鞄の中でプリントを探している。
もちろん持って帰るのを忘れたというのは嘘なのだが、
少し不思議なくらいに陸斗はいつも通りだ。
俺と学校で話さなくなったことに対して、何も気にしていないのだろうか。
やっぱり、高校生になったらグループが変わることくらい、当たり前だと思ってた? 親友だと思っていたのは、俺だけだったのだろうか。
「はい。これ、プリント。プリンターうちの使う? なんならオレもこれからやろうと思ってたから、一緒にやる?」
陸斗に数学の宿題を渡される。
「あ、そうだな。ちょっと分からないところあるし、一緒にやってくれると助かる」
陸斗の家のプリンターを借りてコピーし、二人で一緒に宿題をやることになった。思ったより量が多く、俺は一時間くらいして半分程度終わったくらいだった。陸斗はもう終わったようだ。
「祐介、ちょっと休憩する? 良かったら菓子でも持ってくるよ」
「あ、ありがとう」
宿題をやりながらも、俺の頭の中では催眠術のことが頭から離れなかった。
いつ切り出そうか迷っていたのだが、やるとしたら今だろう。
陸斗がクッキーやチョコを持ってきてくれたタイミングで、俺は切り出した。
「陸斗あのさ、実はこの前テレビでちょっと面白いやつやっててさ」
本屋で胡散臭い本を買ったとは言えず、咄嗟にテレビで見たという設定にした。
「ん?」
「催眠術の特集だったんだけど。あれ素人でも出来るらしいよ」
「へー、そうなんだ! どんな催眠術があんの?」
「色々あったんだけど、眠くなるやつとか、嫌いな人を好きになるやつとか。意外とみんなかかってて」
「それ本当なのか? 素人にもできるってことは、祐介にもできるんじゃない?」
くすっと笑いながら、陸斗が言う。
これはチャンスかもしれない。
「実はテレビ見て、俺もちょっと練習したんだよね」
「え! まじで! ちょっと興味あるな~。祐介オレに試しにかけてみてよ!」
俺が何も言わなくても、陸斗の方がノリ気だった。
「あ、うん。じゃあちょっとやってみていい?」
数人しか残っていない教室。陸斗や佐々木、渚さん達もいない。まだ部活の仮入部も始まっていないから、俺がぼーっと荷物を整理している間に、きっと四人で遊びにでもいったのだろう。
やっぱり俺はあのグループにはそぐわないと思われているのだ。
それに以前に渚さんや曾根崎さんの会話を聞いてしまったことも、相手も気づいていたのだから当たり前か。今更俺を誘えるわけもない。
わかっていたのにやっぱり苦しい。
自分からは何も行動をしていないくせに、「陸斗をとられた」と感じてしまう自分にも嫌気がさす。
一方で、焦る気持ちはより強く、昨日の催眠術を実行しなければと感じている。
学校ではグループで固まっているから、陸斗に話しかける機会はない。
俺は今晩、陸斗の家を訪ねることにしていた。
ピンポーン……。
「あら、祐介くん? 久しぶりねー!」
「直子さんお久しぶりです。夜分にすみません。陸斗に渡したいものがあったので……」
俺が陸斗の家を訪ね、出迎えてくれたのは陸斗のお母さん、直子さんだった。
幼なじみということで、よくお互いの家を訪れていたため、もちろん俺のこともよく知っている。
「陸斗に渡したいものがある」と伝えたところ、遅くにも関わらずすんなりと家に上げてくれた。
「ごめんね、陸斗なら今ちょっと出かけているみたいで。今お茶でももってくるから、陸斗の部屋で待っていてもらえるかしら?」
「おかまいなく、渡すものを渡したらすぐ帰りますので。ありがとうございます」
直子さんは小学生の頃のように、二階の陸斗の部屋に通した。
なんてことない、いつも見慣れた整理整頓されたシンプルな部屋。
今まで週一回は陸斗の部屋に行って遊んでいたはずなのに、今日はやけにそわそわする。
ガチャ……。
一階から扉が開く音が聞こえた。
陸斗がちょうど帰ってきたのだろうか。
「陸斗~今祐介くん来てるわよー」
直子さんの声も聞こえる。やけに緊張してきた。
「祐介?」
陸斗が部屋に入ってきた。きょとんとした顔をしている。
「あ、陸斗。ごめんな急に……」
「いや、全然いいけど……。どうしたの突然?」
今まで話さない日はなかったからだろうか。
妙に口の中が乾いて、うまく言葉がでてこない。
直子さんには「陸斗に渡したいものがある」と言ったが、そんなものあるはずもない。陸斗の部屋にきた理由は口からでまかせだ。
「あ、いやさ、明日数学の宿題出されてただろ。あれ持って帰るの忘れちゃって。もらったプリントコピーさせてくれないかなと思ってさ」
「そうなの? 全然いいよ。ちょっと待っててね」
陸斗は自分の鞄の中でプリントを探している。
もちろん持って帰るのを忘れたというのは嘘なのだが、
少し不思議なくらいに陸斗はいつも通りだ。
俺と学校で話さなくなったことに対して、何も気にしていないのだろうか。
やっぱり、高校生になったらグループが変わることくらい、当たり前だと思ってた? 親友だと思っていたのは、俺だけだったのだろうか。
「はい。これ、プリント。プリンターうちの使う? なんならオレもこれからやろうと思ってたから、一緒にやる?」
陸斗に数学の宿題を渡される。
「あ、そうだな。ちょっと分からないところあるし、一緒にやってくれると助かる」
陸斗の家のプリンターを借りてコピーし、二人で一緒に宿題をやることになった。思ったより量が多く、俺は一時間くらいして半分程度終わったくらいだった。陸斗はもう終わったようだ。
「祐介、ちょっと休憩する? 良かったら菓子でも持ってくるよ」
「あ、ありがとう」
宿題をやりながらも、俺の頭の中では催眠術のことが頭から離れなかった。
いつ切り出そうか迷っていたのだが、やるとしたら今だろう。
陸斗がクッキーやチョコを持ってきてくれたタイミングで、俺は切り出した。
「陸斗あのさ、実はこの前テレビでちょっと面白いやつやっててさ」
本屋で胡散臭い本を買ったとは言えず、咄嗟にテレビで見たという設定にした。
「ん?」
「催眠術の特集だったんだけど。あれ素人でも出来るらしいよ」
「へー、そうなんだ! どんな催眠術があんの?」
「色々あったんだけど、眠くなるやつとか、嫌いな人を好きになるやつとか。意外とみんなかかってて」
「それ本当なのか? 素人にもできるってことは、祐介にもできるんじゃない?」
くすっと笑いながら、陸斗が言う。
これはチャンスかもしれない。
「実はテレビ見て、俺もちょっと練習したんだよね」
「え! まじで! ちょっと興味あるな~。祐介オレに試しにかけてみてよ!」
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「あ、うん。じゃあちょっとやってみていい?」
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