ある雪の降る日に

喜市

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24話

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「お腹空いたー!もう魔力すっからかんだよ…」

実習は1度、昼で休憩を挟むことになった。
今は食堂に向かうべく4人で構内を歩いていく。

6学年もある学園の食堂はとてつもなく広く、混んでいても座れない状況にはならなそうだ。
相変わらず賑わいのある食堂の丸テーブルをひとつ借り、皆で囲んで座る。

「フレイの隣で大丈夫ですかニールさん。いやぁ、見られても知りませんよう。」

隣の椅子を引いたニール先輩に、調子よく向かいに座る天鬼先輩が煽ってきた。

「…いや、別にこんな所で何かする訳無いだろ。そもそもずっと気になってたんだが何故今日は敬語を使ってるんだ?気持ち悪いぞ、さん付けもやめてくれ。」

バッサリと切り捨てたニール先輩に驚いたように目を見開く先輩。
隣にいたハルラスもうんうんと頷いていた。

「…気持ち悪い?やめだやめだ、やってられん。この実習前に教員から言われてしまってから差し直したが、やはり心地違う。」

周りの同調した空気に呆れたように敬語をあっさりと辞めた天鬼先輩。   
両手を振って宙を仰いだ後、席に着くなり頼んでいたテンドン?とやらを食べ始めていた。

次いでニール先輩の昼食も届き、食べ始めている。

「僕達の分を早く届くといいねぇ…。」

ぐぅぅ…と鳴るお腹を抑え、ハルラスに話しかける。


「やあ、久しいな。」

突然、天鬼先輩が顔を上げ話しかけてきた。
そう思い目線を辿るが、その視線は僕を越え背後の人物に向けられていた。

「どうも。お久しぶりです、天鬼先輩。」

そう言うなり肩に乗せられた手。
僕はその重みを、上から雪のように落ち溶け込むようなその声を知っている。

バッと振り返れば、やはりその声の主はシヴァン先輩だった。
空いた丸椅子を持ち、ニール先輩と僕の間に座り込む。

「初めまして、4年のシヴァン・ディズリーです。ニール先輩のお噂は予々。昼食をご一緒できて光栄です。」

反対側を向いた先輩の表情は見えず、浮き沈みのないその淡々とした口調からも何も感じ取ることが出来なかった。

薄らと目を細めて、人差し指を鼻に当てた仕草をしながら相手を観察するニール先輩。
小さく息を吐くとそれに答えるように口を開いた。

「…それはどうも、私も流石に君の事は知っているよ。最年少であの現場に駆り出されていたからな。…君とは長い付き合いになりそうだ、よろしく頼むよ。」

どちらも単調な雰囲気で言葉を紡ぐ。

あれ、普通に挨拶してるのかと思ってたけどめちゃくちゃ険悪ムードじゃない?

どうしていいのか分からない空気に、ハルラスに視線を送る。
いつ届いたのか分からなかったオムライスを黙々と食べているハルラスはまるで

『面倒事には関わらないのが1番。』

なんて言うような感じで、気にも止めずにお昼を取っていた。

「…ハッハッハ。これは傑作だ!本人は気づいていないのに外野同士で闘諍しようとしていると来た。」

「「……」」

高笑いをしながら手を叩く天鬼先輩を2人の先輩はやや呆れたように見つめる。

それをきっかけに、吹っ切れたように空気が軽くなったように思えた。いや、実際は僕の勘違いなのかもしれないけれど。

僕はその事ばかりに気を取られ、何を言っていたかなんてさっぱりだったけれども。
後から遅れてやって来た、シヴァン先輩と早く会えた高揚感が僕を安心させた。

「…フレイ、今日は魔力だいぶ使ってるな。ご飯食べたら少し回復させるよ。」

くるっと振り返った先輩は、いつもの表情で。
僕はその提案についつい乗ってしまう。

「良いんですか?シヴァン先輩ありがとうございます!」

シヴァン先輩も満足気な表情になってきた。
それに気づいた僕もまた、顔が惚けていたりするんだろうか。



「…なぁ、言ったろう?」

「ここまでなんて、聞いてないぞ。」

ニールと天鬼はコソコソとそんな話をする。
ハルラスもそれに同調し、うんうんと頭を上下させた。

「天鬼先輩、はありがとうございました。」

ふと、フレイと会話していたシヴァンはそう言った。一瞬のそれに、天鬼とシヴァン以外はフリーズしてしまう。


「…私の後輩は何故こうも頭のイカれた奴ばかりなんだ。」

ニールの頭がその言葉に理解が追いついた時には、既にシヴァンはフレイとの会話に戻っていた。
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