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3章

穏やかな朝

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「お嬢様、朝です。起きてください」
 ミーナが私を起こすがもう少し寝ていたいので、寝た振りをする。
 少し静かになったから、諦めたのかと思い安眠に入ろうとすれば、掛け布団を奪われ、寒さに震えながらゆっくりと起き上がり、いま目が覚めましたといった顔をする。
「おはようございます。中々、起きないので次はビンタでもしようかと思いましたよ」
「お、おはよう」
 ビンタと言う言葉を聞いて、寝た降りを続行していなくてよかったと思う。
 そして、部屋の様子がいつもと違うことに気付く。
 私の部屋は、もっとピンクっぽい感じで調えていかにも女子を主張しているのに、この部屋は当たり障りがない部屋になっている。
 その前に、昨日ハミルトン家から帰宅したのだろうか。
 恐る恐るミーナを見れば「ユーゴ様がお待ちです」と、呆れた顔をされる。
 やっぱり、私は帰宅していなかった。
 とまうしよう。無断で外泊。
 しかも、婚約者の家に。
 社交界の噂とは恐ろしいもので、身内だけが知っていたことを何故か他の者が知っている。
 この話だって、いつかは知れ渡るのだろう。
 そして、母の耳にでも入れば、ものすごく怒られ、噂が消えるまで屋敷に軟禁されるかもしれない。
 血がサーッと引く。
「では、お手数をお掛けしますがお嬢様の着替えをお願いします」
 ミーナは気にしていないのか、後ろに控えていた侍女たちに着替えの手伝いをお願いしている。
 いまは、それどころではないのに!と目で訴えようとすれば「奥様や旦那様は、此方に泊まることは事前に把握済ですのでご安心ください」と、言われてホッとした。
 だけれど、何故母や父は知っているのだろう。
 そう考えながら、着せ替え人形のごとく綺麗に調えられた。
 私の昨日着ていた物ではなく、屋敷から持参された物でもないため、オリヴォア様が以前身に付けていた物だろうか?それとも、侯爵夫人の物か?
 わからないが、可愛らしい黄色のデザインのドレスを纏いながら、ユーゴの待つ部屋を目指す。





 やって来た場所は温室だった。
 朝から温室を利用するとは、普段の私からは考えられない。何故なら、ベットが友達なのだから。ゆっくりと、ベットの上で朝食を摂るのが私だ。
 ユーゴは朝からやっぱりお洒落なのか。
 案内された温室には、季節の花が咲き乱れていて、とても綺麗ではしゃぎたくなってしまう。
「素敵」
 溜め息を漏らすように自然と感想が出てきた。
 案内してくれた侍女はとても嬉しそうな顔をしながら「此方でユーゴ様がお待ちになっております」と、サンルームに誘導してくれた。
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