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2章 アルバイト開始
秘密の部屋へのご招待?
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ユーゴに連れてこられた場所は、テーブルとイス、ソファとチェス板が置いてあるだけというシンプルな部屋だった。
ここは、何処なのだろうと思っていると「ここは、隠れ部屋みたいなものだよ。限られた人間しか来ない」と説明してくれるが、限られた人間というのが気になる。
王宮内のことを外部の者に詮索されるのは、よくないだろうに、こんなにも簡単に連れて来てくれたのだろう。
考えていると「さあ、お姫様。お座りください」と、給仕のようにイスを引き座らせようとする。その動作があまりにも洗礼されていて、一瞬だが見惚れてしまう。
「もう、ふざけないで」
「ふざけてないよ。アンは僕だけのお姫様だから」
抗議してみるが、その視線は優しくて、胸の高鳴りは最高潮に達している。
「お父様やお兄様も同じことを言っているわ」
「…家族以外には言われていないよね?」
ずっと、綺麗に笑っているユーゴだけれど最後だけ目元が笑っていないように見えた。勘違いだと思うが。
「それより、アンがグラッチェに行ったことがあるとは思わなかったよ」
「さ最近、お兄様に連れていかれたの。屋敷の中ばかりではなくて外出しろと言われて」
「ケイなら言いそうですね」
敬語に変わっている。それが、私の嘘に気付いているような気がして仕方がない。
ふたりっきりの場合は、素の表情をいつも見せてくれていたのに、急に敬語で話されると怖い。
言い訳を叱られた子どもの気持ちになってしまい、黙ってしまうと「飲み物が必要だね。僕としたことが失念していた。少し待っていてくれ」と、部屋から出て行ってしまう。
いま出て行ってくれたことに、ほっとし改めて室内を見回す。
日当たりがいいとはあまりいえないが、少し入る日の光から此方は城の裏側なのだろうか。
建物構造なのはわからないが、日が入らないことからそう思う。ただ、それでもこの部屋はお日様の香りが少しだけれどする気がする。
立ち上がり、深呼吸をすると後ろからクスクスと笑いを堪える声がしたので、振り返ればユーゴが侍女を伴い戻ってきたのだ。
「アン、ここを気に入ってくれましたか」
「ああ、…はい」
恥ずかしくなってしまい声が小さくなる。お転婆だった私から淑女になった私をみて欲しくて大人ぶっていたのだが、どうやら今ので、色々と崩れた気がする。
クスクスと笑っていたユーゴは侍女からティーセットを受け取り、テーブルに設置する。
何故、こんなにも手際がいいのか気になってしまう。
もしかして、ユーゴはシルビア殿下の従者をしているのではないだろうか。そうでなければ、ミーシャが言っていた公務の同行だってありえないはずだ。
設置い終わったのか、侍女に下がるように言う。不服そうな表情は見せなかったが、侍女と目が合った気がした。侍女の視線は、「何故お前の様な女が」、と語っているようだった。あの侍女が、シルビア殿下の息のかかっている者だったらと思うと、紅茶に何か盛られているのではないかと勘繰ってしまう。
ジェード殿下に似ているユーゴはどうやら令嬢だけではなく、王宮に出仕している侍女たちにも人気の様だ。
「僕のお姫様は、少しお転婆の様だから大人しく待っていてくれるかな?」
扉を眺めていたら、背後から抱きしめられる。耳元で囁かれるその声に大人しくするというよりも、腰が抜けて立っていられない。
いつから彼は、こんなにも積極的な男性になったのだろう。やはり、私は彼のことがわからない。
ここは、何処なのだろうと思っていると「ここは、隠れ部屋みたいなものだよ。限られた人間しか来ない」と説明してくれるが、限られた人間というのが気になる。
王宮内のことを外部の者に詮索されるのは、よくないだろうに、こんなにも簡単に連れて来てくれたのだろう。
考えていると「さあ、お姫様。お座りください」と、給仕のようにイスを引き座らせようとする。その動作があまりにも洗礼されていて、一瞬だが見惚れてしまう。
「もう、ふざけないで」
「ふざけてないよ。アンは僕だけのお姫様だから」
抗議してみるが、その視線は優しくて、胸の高鳴りは最高潮に達している。
「お父様やお兄様も同じことを言っているわ」
「…家族以外には言われていないよね?」
ずっと、綺麗に笑っているユーゴだけれど最後だけ目元が笑っていないように見えた。勘違いだと思うが。
「それより、アンがグラッチェに行ったことがあるとは思わなかったよ」
「さ最近、お兄様に連れていかれたの。屋敷の中ばかりではなくて外出しろと言われて」
「ケイなら言いそうですね」
敬語に変わっている。それが、私の嘘に気付いているような気がして仕方がない。
ふたりっきりの場合は、素の表情をいつも見せてくれていたのに、急に敬語で話されると怖い。
言い訳を叱られた子どもの気持ちになってしまい、黙ってしまうと「飲み物が必要だね。僕としたことが失念していた。少し待っていてくれ」と、部屋から出て行ってしまう。
いま出て行ってくれたことに、ほっとし改めて室内を見回す。
日当たりがいいとはあまりいえないが、少し入る日の光から此方は城の裏側なのだろうか。
建物構造なのはわからないが、日が入らないことからそう思う。ただ、それでもこの部屋はお日様の香りが少しだけれどする気がする。
立ち上がり、深呼吸をすると後ろからクスクスと笑いを堪える声がしたので、振り返ればユーゴが侍女を伴い戻ってきたのだ。
「アン、ここを気に入ってくれましたか」
「ああ、…はい」
恥ずかしくなってしまい声が小さくなる。お転婆だった私から淑女になった私をみて欲しくて大人ぶっていたのだが、どうやら今ので、色々と崩れた気がする。
クスクスと笑っていたユーゴは侍女からティーセットを受け取り、テーブルに設置する。
何故、こんなにも手際がいいのか気になってしまう。
もしかして、ユーゴはシルビア殿下の従者をしているのではないだろうか。そうでなければ、ミーシャが言っていた公務の同行だってありえないはずだ。
設置い終わったのか、侍女に下がるように言う。不服そうな表情は見せなかったが、侍女と目が合った気がした。侍女の視線は、「何故お前の様な女が」、と語っているようだった。あの侍女が、シルビア殿下の息のかかっている者だったらと思うと、紅茶に何か盛られているのではないかと勘繰ってしまう。
ジェード殿下に似ているユーゴはどうやら令嬢だけではなく、王宮に出仕している侍女たちにも人気の様だ。
「僕のお姫様は、少しお転婆の様だから大人しく待っていてくれるかな?」
扉を眺めていたら、背後から抱きしめられる。耳元で囁かれるその声に大人しくするというよりも、腰が抜けて立っていられない。
いつから彼は、こんなにも積極的な男性になったのだろう。やはり、私は彼のことがわからない。
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