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1章 開始までのあれこれ
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ニコライさんの発言で部屋の空気が悪くなった気がする。
だけれど、いまは私の心は兄のことよりもスカート丈です。
兄の元婚約者で、クリス様の現婚約者のカミリア・サザンドーラ侯爵令嬢のことなど、どうでもいいのです。
「ニコライさん。兄のことを口説き落としたいのなら、この場ではないところでしてくださいな。私は、スカート丈の長いものがみたいです」
空気を読めとよく言われるが、最初は私の給仕服についてだったのが兄を口説き落とすことになった。
そもそも、兄がここに来たのがいけないのだが。
「私も丈の長いものがみたいのだが、勿論持参しているのだよね?」
父が話の流れを変えるようにしてくれたことは有り難い。
というよりも、契約を交わしているときから傍にいたのだから、兄のことで私の存在を忘れないで欲しい。
絶対に私が発言するまで忘れていただろう。
「ええ、勿論ありますよ」
「はやく見せてください」
「既にアンジュ嬢は見ているではないですか」
既にみている?
どういうことだろう。
辺りを見回すが、全く理解できない。
父は何かに気付いたようで、「なるほど」とひとりで頷いている。
先程までの話題の人物だった兄に至っては「本当に気付かないのか」と言うのだが、わからないものはわからない。
肩に手を置かれ、右正面を向くようにニコライさんに言われたので、視線を向ければ部屋付の侍女が目に入る。
彼女が着ている侍女服がいつもと違うと思っていたが、それが何だと言うのだろう。
ニコライさんをみれば驚かれる。
「本当にわからないのかい?」
「彼女の服は試作品なのではないのですか?」
「あれが先程言っていた丈の長いものだよ」
今度は此方が驚く番だ。
質問を質問で返していたが、試作品と思ったのには理由がある。
母様とお茶を楽しんでいたときに「そろそろ侍女服のデザインを変えたい」と言っていたからだ。
だから、私は伯爵家の新しい侍女服と思い込んでしまった。
思い込みは怖いとことき、初めて知ったので先入観や思い込みをしなようにしようと、心の中でそっと神に誓う。
そもそも、神など信じていないのだけれども。
「でしたら、はやく言ってくれてもよかったのではないですか!」
「アンジュ嬢があの丈で納得してくれたら、面白いことになっていた思うのだけれどね」
この人のを笑みを胡散臭いと初めて思った。
いままでは、カロリーナの兄だからかガサツでも優しい人という印象しかなかったが、今日この数時間で胡散臭い人という印象に変わった。
「そろそろ、アンから手を放してください」
「そうだったね。未婚の女性にいつまでも触れていては、彼女の婚約者にもお叱りを受けてしまう」
本当によく笑っている人だと思う。
そして、何故ユーゴが怒るのだろう。
そもそも、ユーゴと給仕服の丈については関係ないだろうに。
兄は威嚇するような声を出しながらも、手が置かれていなかった反対側の肩を掴み後ろに引き寄せる。
後ろに倒れ込みそうになりながら、兄の胸に頭が当たったことで無事に立っていられる。
それにしても、兄は何がしたいのかはわからない。
「私もカロリーナとじゃれあいたいので、そろそろお暇しよう。では、アンジュ嬢。あとで、給仕服は届けさせるよ」
嵐のように去るニコライさん。
あの人が兄の心をかき混ぜたことだけは、わかったので本当に何がしたのかっただろう。
私の契約のために来たのではなかったのかと何度も問いただしかった。
だけれど、いまは私の心は兄のことよりもスカート丈です。
兄の元婚約者で、クリス様の現婚約者のカミリア・サザンドーラ侯爵令嬢のことなど、どうでもいいのです。
「ニコライさん。兄のことを口説き落としたいのなら、この場ではないところでしてくださいな。私は、スカート丈の長いものがみたいです」
空気を読めとよく言われるが、最初は私の給仕服についてだったのが兄を口説き落とすことになった。
そもそも、兄がここに来たのがいけないのだが。
「私も丈の長いものがみたいのだが、勿論持参しているのだよね?」
父が話の流れを変えるようにしてくれたことは有り難い。
というよりも、契約を交わしているときから傍にいたのだから、兄のことで私の存在を忘れないで欲しい。
絶対に私が発言するまで忘れていただろう。
「ええ、勿論ありますよ」
「はやく見せてください」
「既にアンジュ嬢は見ているではないですか」
既にみている?
どういうことだろう。
辺りを見回すが、全く理解できない。
父は何かに気付いたようで、「なるほど」とひとりで頷いている。
先程までの話題の人物だった兄に至っては「本当に気付かないのか」と言うのだが、わからないものはわからない。
肩に手を置かれ、右正面を向くようにニコライさんに言われたので、視線を向ければ部屋付の侍女が目に入る。
彼女が着ている侍女服がいつもと違うと思っていたが、それが何だと言うのだろう。
ニコライさんをみれば驚かれる。
「本当にわからないのかい?」
「彼女の服は試作品なのではないのですか?」
「あれが先程言っていた丈の長いものだよ」
今度は此方が驚く番だ。
質問を質問で返していたが、試作品と思ったのには理由がある。
母様とお茶を楽しんでいたときに「そろそろ侍女服のデザインを変えたい」と言っていたからだ。
だから、私は伯爵家の新しい侍女服と思い込んでしまった。
思い込みは怖いとことき、初めて知ったので先入観や思い込みをしなようにしようと、心の中でそっと神に誓う。
そもそも、神など信じていないのだけれども。
「でしたら、はやく言ってくれてもよかったのではないですか!」
「アンジュ嬢があの丈で納得してくれたら、面白いことになっていた思うのだけれどね」
この人のを笑みを胡散臭いと初めて思った。
いままでは、カロリーナの兄だからかガサツでも優しい人という印象しかなかったが、今日この数時間で胡散臭い人という印象に変わった。
「そろそろ、アンから手を放してください」
「そうだったね。未婚の女性にいつまでも触れていては、彼女の婚約者にもお叱りを受けてしまう」
本当によく笑っている人だと思う。
そして、何故ユーゴが怒るのだろう。
そもそも、ユーゴと給仕服の丈については関係ないだろうに。
兄は威嚇するような声を出しながらも、手が置かれていなかった反対側の肩を掴み後ろに引き寄せる。
後ろに倒れ込みそうになりながら、兄の胸に頭が当たったことで無事に立っていられる。
それにしても、兄は何がしたいのかはわからない。
「私もカロリーナとじゃれあいたいので、そろそろお暇しよう。では、アンジュ嬢。あとで、給仕服は届けさせるよ」
嵐のように去るニコライさん。
あの人が兄の心をかき混ぜたことだけは、わかったので本当に何がしたのかっただろう。
私の契約のために来たのではなかったのかと何度も問いただしかった。
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