姫さまっ イキる!

風結

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次話  「父さまっ キバる!」

じわじわ

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 あ。そういえば、姫さまからアオポンを逃がさないよう、策を練るよう頼まれていたのでしたか。今頃思い出しても、後の祭りなのですが。

 なるほど、左足の小指を全力で踏まれたのは、そのような理由からでしたか。

 ただ、あれは完全にわたくしも見落としていました。

 まさか、戦いの決着がつく前に、アオポンがとんずらいてしまうとは。やはり、通常の竜とは、どこか違うようですね。

 姫さまは、私が態とやったものだと誤解しているようですので、そういうことにしておきましょう。

 姫さまは、その後も「生きる」というか「イキる」と言いますか、元気に跳ね回っておられます。貧弱神とはいえ、神と交わったからでしょうか、十三年経った今も二十歳ほどの容姿で、数々の男を堕落させてぶんなぐってゆきました。

 閑話休題それはさておき。次回からですが、ーー私が主人公です!

 と言いたいところですが、主人公なんて面倒くさそうなもの、私がやるわけがないではないですか。

 父さまが、「気張る」というか「キバる」と言いますか、そんな物語ほんぺん(?)が続いてゆきます。ただ、「父さま」次第によっては、あっさり物語風味がいでんで終わってしまうかもしれませんね。

 ちなみに、「父さま」とは貧弱神アークナルタスさまではございません。

 さても、相変わらず姫さまは、私を驚かせ、楽しませてくれます。

 子供を産む場所が必要だからと、国を造ってしまわれました。そして、自分が前面に出るわけにはいかないからと、スリン様を女王に。

 まったく、姫さまに貸しを作ると、碌でもないゆかいな目に遭うという良い例です。

 意外や意外、フォーノ様も愛玩貴族だめにんげんのような感じで、反面教師というか、国民に慕われ、国を安んじるのに貢献しています。

 困ったことに、姫さまが二人目を産んでくださるのに、十年も掛かってしまいました。

 三人目も翌年に産んでくださったので、これからぽこぽこ産んでくださるのだと、期待しております。

 もう、十二歳になりますか。様も姫さまと同じく、かがやかしい魂を表したかのような赤髪です。

 で。ーー私としたことが、未だに姫さまが何を企んでいるのか見当がついていないのです。何故か、シロンもこの件については、私に教えてくれません。

 竜のためーーシロンはそう言っていましたが、姫さまが子を生すことが、わたくしたちにどうつながってくるのでしょう?

 ……いえ、もしかしたら、わたくしのため、なのでしょうか?

 ……、ーー。ーー、……ぷぷっ。

 ああ、どうしたことでしょう、楽しみすぎて、体の内側がよじれてしまいそうです。

 なんだか、答えに辿り着けそうな気もするのですが、ずっとこのままにしておきたいような、そんな気もしてしまって。

 姫さまには内緒で、リップル様に会いにゆこうかと。まずはお土産のお菓子を買うために、クロッツェは翼を広げました。

          聖暦一四四四年 黒の月 三十四日  夜半
          クロッツェ(ハクイルシュルターナ)
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