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炎の凪唄
課題達成
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空が明るくなってきた。
「ーーはぁ」
わかっていたことだ。
球を百個、割る。
そんな単純な課題ではないことは。
ただ、今日は、徹夜二日目になるから。
ーー今日は、日を跨がずに帰ってきます。
アルの言葉。
希望的観測。
難易度は、それくらいだと思っていた。
ーー甘かった。
アルは、俺の常識が通じる相手ではない。
兎にも角にも、俺の前には、百個の球がある。
一個も、割れなかったのではない。
割ると、一定時間で元に戻ってしまうのだ。
アルたちが戻ってきたときには、五十個くらい割れるようになっていた。
そこから、コツがつかめたのか、一気に数が増したのだが、九十個くらいで頭打ちになった。
「ーーふぅ~」
じっと座っているが、諦めたわけではない。
日付が変わってから、しばらく経ち、割れる個数が減った。
体の内の、熱の総量がわずかしかないことに気づいた。
ーーたぶん、あと一回か二回で、熱が尽きる。
「おはようございます」
「…………」
茂みから、にょきっとアルの顔が生えた。
「ーーぉはよう……。もっと普通に現れてくれ」
音はしなかったから、魔法で空間移動か何かをしているのかもしれない。
本来なら驚くところだが、連続の徹夜で精神が蕩けているのか、自分でも反応が鈍いという自覚がある。
「さすがです、ラクンさん。体の内を、巡っていますね」
アルの言う通り、手のひらだけでなく、体の内側で熱を移動させている。
熱が失われたことで、逆に、それを強く感じられるようになった。
「ーーさてと、じゃあ、やってみるか」
準備は、済んでいる。
試行錯誤を行った結果、五個を、二十列。
これまで、腕の一振りで割れた、最高の個数は、六個。
だが、失敗してしまうと、球が転がっていってしまうので、五個が最も効率が良い。
両手を意識し、息を吐く。
それだけで、両手に熱が宿る。
失敗しても、もう一回、できるだけの余力があるかもしれないが、体から絞り出すような心象ーーではできなかったので、仕方がなく、妄想をぎゅっとする。
ーーこれまでで、一番、熱い。
その熱さに、焦がれるように、勢いよく腕を振る。
「よしっ!」
地面に並べた、五個の透明な球が、綺麗に、ばりんっと割れる。
半歩踏み出し、二列目、更に三列目も全球、割ることができた。
「くっ!」
上手く、手のひらに熱が集まらなかった。
二つ、球が転がっていく。
構わず、次の列に。
それから二十列で、七列、一個、割れなかった。
ーー四列目の二個と合わせ、九個。
恐らく、この時点で、すでに最高記録。
だが、そんなことに意味はない。
ぜんぶ、割らなければいけないのだ。
ーー運が良い。
「せいっ!」
間隔を開け、三つ並んでいた球を、滑るように手のひらで割り、近くにあった球を足で踏みつける。
これまでは、踏んでも叩きつけても、ビクともしなかったが、一瞬で足の裏に熱が集まり、小気味よい音を立て、球が割れる。
全力疾走しながら、二つ、球を踏む。
一番、離れていた球に向かい、飛び込む。
残り二つは、体の下敷きにする。
指先が触れた、風のように軽い球が、ぱりんっと割れる。
「…………」
そぉ~と、体をどかしてみると。
体の下敷きにした、二個も、ーーなくなっていた。
「……最後、体から、熱が溢れ出たみだいだったな」
限界だ。
経験から、二日の徹夜は大丈夫だとの自負はあったが、体力的にも、精神的にも、すっからかん。
「ごくろうさまです。日が昇りました。課題は達成できませんでしたが、九十個、割ることができたので、及第点です」
「……すまん。今は、頭が、駄目駄目だ。説明、……頼む」
風の女神に感謝を捧げようと思ったところで、どん底に突き落とされる。
「昨日、僕が何と言ったか、覚えていますか?」
本当に、容赦がない。
答えないと、教えてくれないようだ。
残りカスを濾すように、おぼろげな記憶を探る。
「……百個、ある……とは言っていたが、百個、割れ……とは言っていなかった……」
「はい。その通りです。この球が再生される条件は、二つです。一定時間が経過した場合と、もう一つが、九十個、割れた場合です」
「あー、えー、つまり……、『九十個以上、割ることができない』ということを、アルに報告できたら……、クリアという……わけか」
「残念ながら、僕を起こしにきてはくれませんでしたね。今のは、九十個の縛りを解きました。一定時間で百個、割れたので、着実に進歩しています」
「…………」
「これは、意地悪ではありましたが、目的がないわけではありません。ラクンさんの言う『熱』が、すっからかんになる、その感覚をつかんで欲しかったからです」
もう、何も考えたくないというのに。
「……で。その立てた、両手の人差し指は……、何だ?」
ごろりと仰向けになると、両の人差し指と、アルの、にんまりな笑顔。
分水嶺っぽい、何かの選択を迫られているらしい。
「言ってくれ」
「はい。自覚はあるでしょうが、ラクンさんは、限界が近いです。ですので、睡眠を取ってもらいます」
「……で?」
「一つは。このまま、普通に寝てもらいます。下手すると、夕方くらいまで、ぐっすりでしょうね」
「で」
「もう一つは。僕の魔法で、眠ることです」
「?」
「前者の眠りですと、今、最適な状態にある、ラクンさんの『熱』が、失われてしまいます。とはいえ、それは、対魔法使い用の手段を得るのが遅くなるというだけのことです。後者を選べば、魔雄ハビヒ・ツブルクの名に懸けて、最速で仕込んでーーあげます」
アルが言い切る前に、ぎゅっと人差し指を握る。
「……俺は、馬鹿だ」
アルの睡眠時間は、二、三時間ーーと言っていた。
アルのことだから、それより短いのかもしれない。
「俺は、どれくらい……寝られるんだ」
聞かないほうが良かったのかもしれないが、時間の貴重さを、ありがた味を知るために、聞いておいたほうが良いと、眠すぎる、今にも寝落ちしそうな胡乱な頭で判断した。
「十秒です」
「……十秒?」
新しく、生まれ変わらないといけないくらいの勢いで、間違えたかもしれない。
「大丈夫です。ラクンさんは、まだ若いので、一回か二回、無理をしたところで、たぶん、問題ありません」
「……重病」
「はは、その通りです。この世界からすると、魔雄は、悪性腫瘍のようなものなのでしょう」
ーー一秒一秒を、大切に生きなければならない。
とある物語の台詞だ。
輝ける時を失った、男の独白だったが、ーー今やっと、その本当の意味がわかった気がする。
「ーーーー」
魔法を行使するのか、アルの手が、俺の額に近づいてくる。
「これでは、味気ないですね」
「……?」
ふわりと、優しい匂いがする。
ネーラと、同じ匂い。
「おやすみなさい」
もふもふの兎人とは違うのに、何故か、懐かしいと思える、感触。
ーー母さんのことなど思い出していない。
最後の抵抗で、そんなことを思いながら、俺は、アルの胸に抱かれながら、穏やかに意識を失うのだった。
「…………」
俺は、目を覚ました。
アルは、いない。
殆ど寝ていないと、体の感覚でわかる。
そうであるのに、呆れるほど、意識がスッキリとしている。
「……一秒は、本当に、大切なんだな」
両手を、顔に当てる。
今すぐには、起き上がりたくない気分。
風の女神の悪戯だろうか、小さな、葉擦れの音がする。
悪戯小僧が、朝飯の準備が終わったことを知らせに来たのかと思い、顔を上げるとーー。
「ーー兎?」
何で、兎?
危険ではない動物は、『結界』を素通りできるのかどうか、アルからは聞いていない。
「ネーラに、似ているな。ネーラの子供ということで、『コネーラ』なんてどうだ?」
逃げる気配はない。
つぶらな目で、不思議そうに、俺を見ている。
「ほ~ら、こっちこ~い、こっちこ~い」
迎え入れるように、笑顔で手を広げると、警戒心の欠片も見せず、もふもふが近づいてくる。
「うわ、本当に近寄ってくるぞ」
人のことは言えない。
ボルネアとオルタンスを撫でられない、アルの顔が脳裏に浮かぶ。
ずっとネーラを撫でていない、俺も今、あんな顔をしているのかもしれない。
「よ~し、いいぞいいぞ~、そのまま来ぉ~い来ぉ~い、コネーラ……」
もふもふの予感に、ほっこりとしていた、俺の心が、ーー凍った。
ーー細い、氷の針。
何故か、時間が止まったように感じ、針の数が、七本であると認識できてしまった。
ーー三本。
音は、聞こえなかった。
吸い込まれるように、刺さり、風に押されるように、倒れた。
ーー撫でてほしかったんだけど、ごめんね。
コネーラの目は、そう、訴え掛けていた。
「よしっ! やったわ!!」
ボルネアが現れる。
「これで、アル様に頭を撫でてもらえる!」
オルタンスが後ろから現れる。
ボルネアが、コネーラを仕損じたときの、後詰めだろう。
「…………」
シビレを切らした、アルは、難易度の低い、達成可能な課題を、二人に出したようだ。
「ラクン!? 何でこんなところにいるのよ! 危うく誤射ーーできなかったわ!!」
「そんな些事は、どうでも良い。早く、アル様に褒めてもらう」
興奮気味の二人は、心に氷針が刺さり、身動きができない俺を残し、去っていく。
「……コネーラ」
ーー俺は、駄目な奴だ。
両耳をつかまれ、コネーラが乱暴に連れ去られていったというのに、見ていることしかできなかった。
ーー俺にできることは、一つだけ。
魂のすべてで、全身全霊で、コネーラを味わった。
美味しかった。
それから。
ご満悦な三人を残し、独りになれる場所に行き、俺は、ーー泣いた。
「ーーはぁ」
わかっていたことだ。
球を百個、割る。
そんな単純な課題ではないことは。
ただ、今日は、徹夜二日目になるから。
ーー今日は、日を跨がずに帰ってきます。
アルの言葉。
希望的観測。
難易度は、それくらいだと思っていた。
ーー甘かった。
アルは、俺の常識が通じる相手ではない。
兎にも角にも、俺の前には、百個の球がある。
一個も、割れなかったのではない。
割ると、一定時間で元に戻ってしまうのだ。
アルたちが戻ってきたときには、五十個くらい割れるようになっていた。
そこから、コツがつかめたのか、一気に数が増したのだが、九十個くらいで頭打ちになった。
「ーーふぅ~」
じっと座っているが、諦めたわけではない。
日付が変わってから、しばらく経ち、割れる個数が減った。
体の内の、熱の総量がわずかしかないことに気づいた。
ーーたぶん、あと一回か二回で、熱が尽きる。
「おはようございます」
「…………」
茂みから、にょきっとアルの顔が生えた。
「ーーぉはよう……。もっと普通に現れてくれ」
音はしなかったから、魔法で空間移動か何かをしているのかもしれない。
本来なら驚くところだが、連続の徹夜で精神が蕩けているのか、自分でも反応が鈍いという自覚がある。
「さすがです、ラクンさん。体の内を、巡っていますね」
アルの言う通り、手のひらだけでなく、体の内側で熱を移動させている。
熱が失われたことで、逆に、それを強く感じられるようになった。
「ーーさてと、じゃあ、やってみるか」
準備は、済んでいる。
試行錯誤を行った結果、五個を、二十列。
これまで、腕の一振りで割れた、最高の個数は、六個。
だが、失敗してしまうと、球が転がっていってしまうので、五個が最も効率が良い。
両手を意識し、息を吐く。
それだけで、両手に熱が宿る。
失敗しても、もう一回、できるだけの余力があるかもしれないが、体から絞り出すような心象ーーではできなかったので、仕方がなく、妄想をぎゅっとする。
ーーこれまでで、一番、熱い。
その熱さに、焦がれるように、勢いよく腕を振る。
「よしっ!」
地面に並べた、五個の透明な球が、綺麗に、ばりんっと割れる。
半歩踏み出し、二列目、更に三列目も全球、割ることができた。
「くっ!」
上手く、手のひらに熱が集まらなかった。
二つ、球が転がっていく。
構わず、次の列に。
それから二十列で、七列、一個、割れなかった。
ーー四列目の二個と合わせ、九個。
恐らく、この時点で、すでに最高記録。
だが、そんなことに意味はない。
ぜんぶ、割らなければいけないのだ。
ーー運が良い。
「せいっ!」
間隔を開け、三つ並んでいた球を、滑るように手のひらで割り、近くにあった球を足で踏みつける。
これまでは、踏んでも叩きつけても、ビクともしなかったが、一瞬で足の裏に熱が集まり、小気味よい音を立て、球が割れる。
全力疾走しながら、二つ、球を踏む。
一番、離れていた球に向かい、飛び込む。
残り二つは、体の下敷きにする。
指先が触れた、風のように軽い球が、ぱりんっと割れる。
「…………」
そぉ~と、体をどかしてみると。
体の下敷きにした、二個も、ーーなくなっていた。
「……最後、体から、熱が溢れ出たみだいだったな」
限界だ。
経験から、二日の徹夜は大丈夫だとの自負はあったが、体力的にも、精神的にも、すっからかん。
「ごくろうさまです。日が昇りました。課題は達成できませんでしたが、九十個、割ることができたので、及第点です」
「……すまん。今は、頭が、駄目駄目だ。説明、……頼む」
風の女神に感謝を捧げようと思ったところで、どん底に突き落とされる。
「昨日、僕が何と言ったか、覚えていますか?」
本当に、容赦がない。
答えないと、教えてくれないようだ。
残りカスを濾すように、おぼろげな記憶を探る。
「……百個、ある……とは言っていたが、百個、割れ……とは言っていなかった……」
「はい。その通りです。この球が再生される条件は、二つです。一定時間が経過した場合と、もう一つが、九十個、割れた場合です」
「あー、えー、つまり……、『九十個以上、割ることができない』ということを、アルに報告できたら……、クリアという……わけか」
「残念ながら、僕を起こしにきてはくれませんでしたね。今のは、九十個の縛りを解きました。一定時間で百個、割れたので、着実に進歩しています」
「…………」
「これは、意地悪ではありましたが、目的がないわけではありません。ラクンさんの言う『熱』が、すっからかんになる、その感覚をつかんで欲しかったからです」
もう、何も考えたくないというのに。
「……で。その立てた、両手の人差し指は……、何だ?」
ごろりと仰向けになると、両の人差し指と、アルの、にんまりな笑顔。
分水嶺っぽい、何かの選択を迫られているらしい。
「言ってくれ」
「はい。自覚はあるでしょうが、ラクンさんは、限界が近いです。ですので、睡眠を取ってもらいます」
「……で?」
「一つは。このまま、普通に寝てもらいます。下手すると、夕方くらいまで、ぐっすりでしょうね」
「で」
「もう一つは。僕の魔法で、眠ることです」
「?」
「前者の眠りですと、今、最適な状態にある、ラクンさんの『熱』が、失われてしまいます。とはいえ、それは、対魔法使い用の手段を得るのが遅くなるというだけのことです。後者を選べば、魔雄ハビヒ・ツブルクの名に懸けて、最速で仕込んでーーあげます」
アルが言い切る前に、ぎゅっと人差し指を握る。
「……俺は、馬鹿だ」
アルの睡眠時間は、二、三時間ーーと言っていた。
アルのことだから、それより短いのかもしれない。
「俺は、どれくらい……寝られるんだ」
聞かないほうが良かったのかもしれないが、時間の貴重さを、ありがた味を知るために、聞いておいたほうが良いと、眠すぎる、今にも寝落ちしそうな胡乱な頭で判断した。
「十秒です」
「……十秒?」
新しく、生まれ変わらないといけないくらいの勢いで、間違えたかもしれない。
「大丈夫です。ラクンさんは、まだ若いので、一回か二回、無理をしたところで、たぶん、問題ありません」
「……重病」
「はは、その通りです。この世界からすると、魔雄は、悪性腫瘍のようなものなのでしょう」
ーー一秒一秒を、大切に生きなければならない。
とある物語の台詞だ。
輝ける時を失った、男の独白だったが、ーー今やっと、その本当の意味がわかった気がする。
「ーーーー」
魔法を行使するのか、アルの手が、俺の額に近づいてくる。
「これでは、味気ないですね」
「……?」
ふわりと、優しい匂いがする。
ネーラと、同じ匂い。
「おやすみなさい」
もふもふの兎人とは違うのに、何故か、懐かしいと思える、感触。
ーー母さんのことなど思い出していない。
最後の抵抗で、そんなことを思いながら、俺は、アルの胸に抱かれながら、穏やかに意識を失うのだった。
「…………」
俺は、目を覚ました。
アルは、いない。
殆ど寝ていないと、体の感覚でわかる。
そうであるのに、呆れるほど、意識がスッキリとしている。
「……一秒は、本当に、大切なんだな」
両手を、顔に当てる。
今すぐには、起き上がりたくない気分。
風の女神の悪戯だろうか、小さな、葉擦れの音がする。
悪戯小僧が、朝飯の準備が終わったことを知らせに来たのかと思い、顔を上げるとーー。
「ーー兎?」
何で、兎?
危険ではない動物は、『結界』を素通りできるのかどうか、アルからは聞いていない。
「ネーラに、似ているな。ネーラの子供ということで、『コネーラ』なんてどうだ?」
逃げる気配はない。
つぶらな目で、不思議そうに、俺を見ている。
「ほ~ら、こっちこ~い、こっちこ~い」
迎え入れるように、笑顔で手を広げると、警戒心の欠片も見せず、もふもふが近づいてくる。
「うわ、本当に近寄ってくるぞ」
人のことは言えない。
ボルネアとオルタンスを撫でられない、アルの顔が脳裏に浮かぶ。
ずっとネーラを撫でていない、俺も今、あんな顔をしているのかもしれない。
「よ~し、いいぞいいぞ~、そのまま来ぉ~い来ぉ~い、コネーラ……」
もふもふの予感に、ほっこりとしていた、俺の心が、ーー凍った。
ーー細い、氷の針。
何故か、時間が止まったように感じ、針の数が、七本であると認識できてしまった。
ーー三本。
音は、聞こえなかった。
吸い込まれるように、刺さり、風に押されるように、倒れた。
ーー撫でてほしかったんだけど、ごめんね。
コネーラの目は、そう、訴え掛けていた。
「よしっ! やったわ!!」
ボルネアが現れる。
「これで、アル様に頭を撫でてもらえる!」
オルタンスが後ろから現れる。
ボルネアが、コネーラを仕損じたときの、後詰めだろう。
「…………」
シビレを切らした、アルは、難易度の低い、達成可能な課題を、二人に出したようだ。
「ラクン!? 何でこんなところにいるのよ! 危うく誤射ーーできなかったわ!!」
「そんな些事は、どうでも良い。早く、アル様に褒めてもらう」
興奮気味の二人は、心に氷針が刺さり、身動きができない俺を残し、去っていく。
「……コネーラ」
ーー俺は、駄目な奴だ。
両耳をつかまれ、コネーラが乱暴に連れ去られていったというのに、見ていることしかできなかった。
ーー俺にできることは、一つだけ。
魂のすべてで、全身全霊で、コネーラを味わった。
美味しかった。
それから。
ご満悦な三人を残し、独りになれる場所に行き、俺は、ーー泣いた。
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