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炎の凪唄
ノウ幻想団
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家族だった。
俺にとっては、そうだった。
団員になれなかった者は、去っていった。
俺だけが、去ることができず、団員と一緒にいた。
大陸を巡った。
ーー名誉伯。
或いは、幻想伯。
俺の親父だ。
獣種が知っている人種は、主に二人。
四英雄の唯一の人種であった、魔雄ハビヒ・ツブルク。
ノウ幻想団の団長である、ウーリ・ノウ名誉伯。
幼い頃、純粋に、息子であることが誇らしかった。
誰かが悪かったわけではない。
勝手に、俺が罅割れていった。
親父以外の団員は優しかった。
ただ、団員は正直でもあった。
団員。
天才の中の、選った、神に祝福された者だけが、幻想団に所属できる。
俺だけが、例外。
正直な団員は、いつも決まった目で、俺を見ることになる。
ーーどうして、わからないのだろう。
不思議そうにする団員。
眉を顰める団員。
納得とともに、苦笑を浮かべる団員。
対応はまちまちだが、結論は、行き着くところは同じ。
何一つ、団員と、共有できなかった。
ーー幻想団。
幻想、とは、言い得て妙だ。
届かない者には、触れることさえできない。
だからこそ、人獣と獣人、人種と別なく。
種族にも拘らず、皆が惹かれる。
天の高みの、遥かなる場所で、輝ける団員。
幻想ーーそこに現実が一人、紛れ込んでいる。
遅すぎた。
何が俺を引き留めていたのか、今でもわからない。
偶々だ。
何でも良かった。
誘われたから、冒険者にーー団に所属した。
そして、また、逃げた。
俺は俗物だ。
だから、妬まれる。
幻想団なら、そうした煩わしい感情など、圧倒的な才で吹き払ってしまう。
それから、三度、団を変えた。
捨て駒にされた。
俺には、お似合いの結末。
小鬼退治のはずが、二十匹以上の大鬼との遭遇。
逃げる。
それにも飽きたから、戦った。
一匹、倒すことができた。
俺の人生は、そこで終わったはずだった。
ーー幻想。
美しささえ伴う、凄絶な殺戮。
彼もまた、団員と同じように、輝ける側の存在だった。
何故だか、現実を気に入った幻想。
ーー二人の、短い旅が始まった。
俺にとっては、そうだった。
団員になれなかった者は、去っていった。
俺だけが、去ることができず、団員と一緒にいた。
大陸を巡った。
ーー名誉伯。
或いは、幻想伯。
俺の親父だ。
獣種が知っている人種は、主に二人。
四英雄の唯一の人種であった、魔雄ハビヒ・ツブルク。
ノウ幻想団の団長である、ウーリ・ノウ名誉伯。
幼い頃、純粋に、息子であることが誇らしかった。
誰かが悪かったわけではない。
勝手に、俺が罅割れていった。
親父以外の団員は優しかった。
ただ、団員は正直でもあった。
団員。
天才の中の、選った、神に祝福された者だけが、幻想団に所属できる。
俺だけが、例外。
正直な団員は、いつも決まった目で、俺を見ることになる。
ーーどうして、わからないのだろう。
不思議そうにする団員。
眉を顰める団員。
納得とともに、苦笑を浮かべる団員。
対応はまちまちだが、結論は、行き着くところは同じ。
何一つ、団員と、共有できなかった。
ーー幻想団。
幻想、とは、言い得て妙だ。
届かない者には、触れることさえできない。
だからこそ、人獣と獣人、人種と別なく。
種族にも拘らず、皆が惹かれる。
天の高みの、遥かなる場所で、輝ける団員。
幻想ーーそこに現実が一人、紛れ込んでいる。
遅すぎた。
何が俺を引き留めていたのか、今でもわからない。
偶々だ。
何でも良かった。
誘われたから、冒険者にーー団に所属した。
そして、また、逃げた。
俺は俗物だ。
だから、妬まれる。
幻想団なら、そうした煩わしい感情など、圧倒的な才で吹き払ってしまう。
それから、三度、団を変えた。
捨て駒にされた。
俺には、お似合いの結末。
小鬼退治のはずが、二十匹以上の大鬼との遭遇。
逃げる。
それにも飽きたから、戦った。
一匹、倒すことができた。
俺の人生は、そこで終わったはずだった。
ーー幻想。
美しささえ伴う、凄絶な殺戮。
彼もまた、団員と同じように、輝ける側の存在だった。
何故だか、現実を気に入った幻想。
ーー二人の、短い旅が始まった。
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