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七章 侍従長と魔法使い
裏会議
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順調、というありがたい報告である。
兎の登り坂、風竜の飛翔、炎竜の焼却……ではなく、燎原、も変かな、みーの焚き火、くらいにしておこうか。とそんなことを妄想するくらいの余裕はあるが、現実逃避に使えるほどではない。
細々としたところで、問題がないわけではないが、それらは、努力とか気力とか体力とか、現状の竜の民には有り余っているものを使って解決できるものだった。
王様の為に、みーの為に、百竜の為に。そして、竜の国の為に、竜の民の為に。
それが自分の為でもあると、そう思って懸命になってくれている竜の民には、感謝の言葉もない。
「風吹」部隊は乗合馬車で南の竜道に向かい、竜の湖での受け容れ態勢は整っていると連絡があった。里程の半ばといったところだが、さて、僕にとってはどうなのだろう。
「えっと、カレン。呼んでないんだけど」
「私は侍従次長です。その職責の主なところは、侍従長の補佐であると記憶していますが、間違いだったかしら?」
結果的にそうなっただけで、別に除け者にするつもりはまったくなかったのだが。
「風吹」の放出訓練は恙無く終了して、すでに八つ音を過ぎている。
どこで嗅ぎ取ったのか、竜の湖に向かっているはずのカレンが押し掛けてきて、正当性を主張中。フラン姉妹は、扉の外だろうか。さすがにこの面子では、カレンに随伴するのは遠慮したようだ。
「はぁ。多忙な中、参集いただき、ありがとうございます。進捗に問題がある方がいなければ、休息を多く取る為にも、さっそく始めさせてもらいます」
一拍置いて、発言する人はいないようなので、本題に入ろうとすると。
「この中に私が交じっているのは、よろしいのですか?」
いきなり躓かせてくれたのは、ファタだった。
相変わらず、童顔で常に笑っているような顔で、本心が読み難い人である。野暮用ーー組合との出向等に関する話合いーーを済ませて、予定より早く戻ってきたところを捕まえて、もとい捉まえて。帰着の報告をせず、浮いた時間を休息に充てようとしていたので、超過労働を強制というか強請。
明日は治癒術士の交代要員として。もしシャレンが間に合わなかったら、三人目として協力をお願いするつもりである。
「謙遜しなくてもいいですよ。組合の幹部として、この大陸の多くの事情に通じているファタさんの知恵をお借りしたくて、お呼びしたのですから。逆に言うと、裨益するに値しないのなら、竜の国の保証を得られなくなる可能性が無きにしも非ず、と」
こくこくと、笑顔で焦りながら低姿勢、という器用なことをやってくれる雷守。彼には竜地の一つ、雷竜を任せてある。
現在は、冒険者組合の仕事は少ないので、僕の使い走りのようなことをやってもらっている。
そこで気付いたのだが、彼は人を使うのがとても上手い。その分、自分がさぼろうとするので、ときどき発破を掛けてやる必要はあるが、この若さで組合の幹部にまで上り詰めたのは伊達ではない。
侍従長の執務室に来てもらったのは、オルエルさん、バーナスさん、ファタ、……とカレン。老師と纏め役にも参加して欲しかったのだが、老師からの定時連絡でそのことを伝え忘れてしまった為、今回は特別な助言者に出席を依頼しました。
「あら、小娘。気が利かないのですわ。お負けなのですから、お茶ぐらい淹れるのですわ」
「……小娘、とは私のことでしょうか?」
「ふふっ、心外といった顔。どうやら、小娘であるという自覚はあるようですわね。それでいてその感情を呑み込めないとは、小娘であることの証左。これからも小娘と呼ばないと、あなたに失礼であると理解しますわ」
「っ!? っ?!」
「ねぇ、リシェ。あの凶悪な邪竜の目をした小娘が怖いですわ」
僕の隣に座ったレイが、殊更にカレンを煽る。
遊び甲斐のある玩具を見つけたようなものだろうか、カレンには悪いが、スナ、じゃなかった、レイには役不足なのだから、早々に飽きてくれるといいのだけど。
僕は、見えないレイを心象、見当を付けて右手で頬を。右の肘で隠すようにして、左手でスナの頬を、むにゅ、と摘んで。
「レイ。そういうのは、時間がある別の機会でお願いします」
「ふふっ、リシェのお願いなら聞かないわけにはいかないのですわ」
「うー、へっと、あいあとう」
頼んでみると、むにゅむにゅ~、と僕の頬を摘み返してくる。
僕にはスナに見えているわけだが、レイに見えている人たちからすると、いちゃついているように見えるらしく、視線で人を殺せる水準のカレンだけでなく、他の方々もレイが喜びそうな、それはもうひゃっこい目をしておられます。
この空気はもう変えられそうにないので始めてしまおう。
「先程の会議では語りませんでしたが、呪術師や疫病、それらに係わっているかもしれない、敵、について。それと、同盟国の思惑について。忌憚のない意見をお願いします」
竜の民の前では口にしないほうが有益と判断した事柄である。
意見を聞きたい、ということもあるが、僕一人で抱えるには後に与えるかもしれない影響が大き過ぎるので、言い方は悪いが、共犯者的な仲間が欲しい。
「普通に考えるのでしたら、同盟国の戦略の一つ、となるのでしょうが」
「外地という利権を失った貴族共が腹いせにやっているのやもしれぬな」
「ただ、これだけ大掛かり、下手をすれば自分たちにも被害が及ぶような、際どい策を採るとは思えませんが」
「そうなると、やはりそうなってしまうのかのう。背後で、竜の国と同盟国の共倒れを狙っている勢力が居るや否や」
「考えたくないですね。ストーフグレフ国の介入なんて……」
バーナスさんとファタが、敵となりそうな相手を挙げてゆく。
……ストーフグレフ?
あれ、何かを失念しているような。……紙に、青年に渡して?
ぶわっ。
「ーーっ!?」
思い至った瞬間、全身から溢れて、意識が遠退きそうになる。
ぐぅあ、気持ち悪っ。
体の全部から汗が出ている。息苦しくなって、周囲に悟られないよう、呼吸を早くする。
初めて知った。衝撃が大き過ぎると、人間の体ってこんな風にもなるのか。
首元に手をやってみると、べちゃっ、と音がした。気付かれないよう、顔の汗を袖で拭う。
ーー僕の勝ちです。
そう書いた紙を、ストーフグレフ国の青年に渡した。あのときは、最良の方法であると思ったが、何という碌でもないことをしてしまったのか。
ストーフグレフ王からすれば、王でも大臣でも、将でもない木っ端役人から、礼儀を弁えない、無礼極まりない、ただの書き殴った紙を渡されるのだ。
怒ったかな? 怒ったよね?
まさかファタが口を濁した、その先が、実現するなんてことがあるのだろうか。
「あとは、南方の国々ですかな。竜の国を突いて、同盟国とストーフグレフ国の均衡を危うくしようとしているのかもしれない」
「南は不安定ですから。ストーフグレフ国に同盟国を打破させて、彼の王の庇護を受けようと画策している、などということはあるのでしょうか?」
「出身地を悪くは言いたくないけど、う~ん、南は纏まりがないからね。そこまでの大望を抱くかどうか、まぁ、彼らは野心だけは竜並みなんですけど」
「ええ、そのようですね。お祖父様から『未熟者は近付いてはならん』と厳命される程ですもの」
オルエルさんとカレンが他の穴を埋めてゆく。
ふぅ、いや、ストーフグレフのことも、起こり得る可能性の一つに過ぎない、と今は考えることにしよう。
「ランル・リシェ。〝サイカ〟のカイナス三兄弟のことで何か聞いていますか?」
「特には。戦略ならまだしも、戦術水準で口を出されるのは、指揮官が嫌がるだろうね。従軍はしていないだろうし、ボルンさんが竜の国にちょっかいを出すとも思えない」
出来れば進攻自体を止めて欲しかったが、裏を返せば彼らでも止めることが出来ないくらい同盟国の意志が固かったということか。
皆が考えに沈んで、大切な時間の砂粒が少しずつ減ってゆく。だいたいそんなところだろう。他に意見はないようだ。
そして、今の状況で採れる対策など限られている。だが、その他に忽せに出来ないことが一つ。それについて聞きたくて皆に集まってもらったのだ。
「同盟国に勝ち目はない。僕はそう思っていますが、彼らは攻めてきました。そこでお聞きします。同盟国が勝つとしたなら、どのような手段を用いたときでしょう?」
聞くと、お互いが顔を見合わせるように、牽制というか消極的というか。
「はは、これは私から言ったほうが良いようですね」
頬をぽりぽり掻きながら、言い淀んでいたものの、ファタが口を開く。さっきの僕の脅し(?)が効いているらしい。
「竜の民を捕らえて、人質にして、脅迫ですね。理由は何でも。保護と嘯くも、不法入国を捏ち上げるも、幾らでも手段はあります。私も、これまでフィア様を見てきたからわかります。あの方は、たかが数人の命と引き換えに、統治権を差し出し兼ねない。以前であれば、そのような愚行、鼻で笑っていたでしょうね。ですが今は、私には見通すことは困難ですが、グリングロウ国にとって分水嶺であるような気がします」
ファタの所感に、皆が重たいもの抱えて押し黙る。
「兄さんは、自分であれば竜の狩場に国を造らないと言っていました。そこで、先程の呪術師の一件から考えていました。竜の国が抱えている潜在的な危険は何だろうかと」
畢竟、どこまでいっても、この問題は付き纏うのだ。
それが特別で、重要で、大切であるが故に、切り捨てることなど僕たちには出来ない。してはならないのだ。
「レイ。ストリチナ同盟国に竜が加担、いえ、協力している可能性はあるかな」
「っ!」
「ーーっ」
「!?」
「…………」
レイ以外の四人が、その可能性にまったく思い至っていなかったのだろう、四大竜の咆哮を間近で浴びたような、青天の霹靂、いや、まだ起こっていないのだ、寝耳に雷竜、か。
ん? いや、これは……。
笑顔のまま沈黙しているファタはーー、まさか予測していた、のか?
見様によっては、あ~、ん~、どうだろう、僕の勘違いかな。
「ストリチナ地方の名の由来は、古竜のストリチナ、水竜に因っているのですわ。人が思うほど、竜は人に関心はないのですわ。ただ、竜の狩場の借用、盟約と『千竜賛歌』、嘗てないほどに人への興味が疼いていることは確かですわ」
「えっと、言い忘れていましたが、レイは昔から竜と人の係わりについて研究しているんです。僕が知っている限りですが、最も竜に造詣が深い氷竜だと思います」
レイの耳新しい話に、不自然でないよう補足、というか補完する。
「ふふっ、リシェ家の者、と言えば甘心して頂けると思いますが、あの娘より竜に詳しいとの自負はありますわ」
「疑うわけではありませんが、どうしてそんなにも竜に精通していらっしゃるのかしら?」
「あら、さすが小娘。その程度のことも聞かなければわからないなんて、いったいこれまでどれだけリシェに迷惑を掛けてきたのか、考えるだけで胸が痛みますわ」
「…………」
「リシェの出身地がどこか、それだけで必要な欠片は揃っていますわ。『知恵の極』、『冠絶なる荒魂』など異称は数知れず、根源たる魔力を綾なす至高の主、氷竜ヴァレイスナから授けて頂きましたわ」
「ヴァレイスナ連峰の、竜……?」
ああ、自画自賛が凄いですね。いや、言っていることは間違いじゃないと思うんだけど、自分で言うのはどうなんだろう。
ふむ、やっぱり人と竜の感性は異なっているのだろうか。
種が違うのだ、異なっているのは当然。これまで大きな齟齬がなかったのは、たぶん、スナのほうで僕に合わせてくれていたのだろう、あ~、いや、どうなんだろう、スナは自然体のように見えるし、みーや百竜に鑑みて、ただの嗜好の違いかな?
それらは機会があれば確かめるとして、もう一つの懸念を質す。
「人に関心はなかったとしても、ミースガルタンシェアリ様に関してはどうかな? 盟約を交わしたとはいえ、竜の狩場を使用していることに悪感情を抱く竜はいると思うかい?」
「あの水竜は、よくわからないのですわ。何を考えているのか、若しくは何も考えていないのか、今のところ、塒に隠って動く気配は見せていませんわ。
悪感情を抱く竜がいるか、という疑いですが、何とも言えないのですわ。竜のそれは、人とは尺度が異なりますわ。道端に、蹴り易そうな石が転がっていたから、蹴ってみた。その程度のうっかりで、人の国など滅びてしまうのですわ」
うっかりで滅びたら堪らない。
でも、昔から石を用意したのは人間の側だったのだろう。人の歴史には、竜に対して好意的でなかったり好戦的であったり、そうした記述は枚挙に暇がない。
彼らの大半は、竜の関心を引き出すことも敵わなかったわけだが。
「呪術師のときのように、竜が操られてしまう、という懸念はあるのでしょうか」
レイの気配に感ずるところがあったのか、オルエルさんの態度が上位者を前にしたような改まったものになる。
それはバーナスさんやファタも同様で、レイに呑まれている。
「あれはみーが仔竜で、未熟だからですわ。竜が人如きに操られるなど、竜の角汚しにも程があるのですわ」
「レイ~?」
駄目だよ、地が、本音が出てるよ~。と演技に支障を来してしまったレイに、それとなく仄めかす為に、今度は耳をこりこりする。
ん、あれ? 気に入ったのかな。お返しに、僕の耳をこりゅこりゅしてくるレイは、随分とご機嫌な様子。
レイは、僕との接触を好んでいるような気がしていたが、間違いではなかったようだ。
「竜も赤面する二人は置いておいて、最悪の想定をしておきますか。仮に、同盟国が竜の守護を受けていたとして、対処方法はあるでしょうか?」
羨ま……、もとい呆れたオルエルさんがこの場での最高位として、先に進めてくれる。
「ふむ。姫様、みー様が臥せっておられるとなると、あとは侍従長に出張ってもらわねばなるまいて」
「バーナス殿……、その、侍従長御一人では荷が勝ち過ぎているのでは……」
氷焔と里の関係者以外で、あとレイを除いて、一番僕に詳しいだろうオルエルさんが諌めようと試みてくれるが、効果は薄いようだ。
他者の力であろうと、自分の為に使えるのなら、自分の力と変わらない。そんな風に割り切るのに、罪の意識を感じるのは、相手がレイだからだろう。
それでも、竜の国の命運に係わるかもしれないのなら、尋ねないわけにはいかない。
「レイ。竜が遣って来たとして、僕なら対処が可能かな?」
僕は父親失格である。
娘を危険に晒すことを、就中竜と対立させてしまうことを、それらを天秤に掛けて、選んでしまった。
本当に、自分の至らなさに腹が立つ。
「そうですわね。リシェでしたら、一竜を追い返すことは出来ますわ。二竜で劣勢、三竜以上では遁走をお勧めしますわ」
「あ……、えっと、……複数の、竜?」
レイが僕に力を貸してくれる。安堵した瞬間、突き落とされる。
竜は群れない、とはよく聞く言葉だが、必ず一竜で動く保証なんてない。どうしてそんな簡単なことを見落として、想定していなかったのか。
ぐぅ、僕は……。
詰めの甘さを思い知らされる。失敗した、なんて本当は軽々しく口にしたくないんだけど……。
ふと、遠ざかっていく背中が見えた。そうだ、今はまだ追い付けないのだ。積み重ねていくしかない。そうしていつか、兄さんの横に並べる日を、確かな目標に据えたのだ。
上手くいく保証なんてあるはずない。竜の狩場に遣って来たとき、ミースガルタンシェアリと交渉しようと頭を悩ませていた。
畢竟、力で勝てないのであれば、それ以外を使うしかない。
今度こそ、竜と交渉する破目になるかもしれない。だが、まったく成算がないわけではない。僕自身、未だわかっていないことだが、スナの存在が証明してくれている。
がちゃ。と不意に執務室の扉が開いて。
冒険者時代を彷彿とさせる筆頭竜官の怒声が轟いた。
「今は重要な会議中だ! 確認ぐらいせんかぁっ!!」
「ぅひっ」
伝令なのだろう、慌ただしく部屋に入ってきた竜騎士が、氷竜と雷竜にくっ付かれたかのように身を縮こまらせる。
彼は、慥かエルネアの剣隊の隊員。まだ二十半ばくらいと若そうなので、四十から三十が主流のエルネアの剣隊では新米なのだろう。
固まってしまった彼に、再びオルエルさんの叱責が飛ぶ前に、強張りを解すような柔らかな言葉で促す。
「見たところ、急ぎのようですね。報告をお願いします」
「あっ、はいっ、だ、団長がオルエルさんと侍従長を呼んで来いと言ってました!」
「僕とオルエルさんだけですか? 皆で向かったほうが良いですか?」
「え? それはどうなのかなぁ」
報告することで頭がいっぱいいっぱいで、それ以外のことは疎かになっていたらしい。
常に考えることを放棄してはならない、とはいえ、それで報告の内容がおざなりになってしまっては元も子もない。
業を煮やしたオルエルさんが彼に歩み寄って、直接聞き出す。
「バーナス殿、ファタ殿、時間に余裕がないようでしたら、持ち場に戻られてください」
順繰りに見た後、僕に視線を向けてきたので、頷いて了承する。
会議の本旨は達成できたと言っていい。共通認識を得て、レイの意見から洗い出しも出来た、かな。
「ここで除け者にされると気になって、おちおち眠ってられんでな」
「それは確かに。エンさんがわざわざ……、む? もしかして『風吹』の訓練が嫌で、ーーいや、彼だし……?」
心付いて、ファタが疑心暗竜になっている。
「風吹」の訓練が嫌だったのは確かだろう。ただ、細かな指示が必要となる任務はエンさん向きではないので、初めからフィヨルさんとザーツネルさんに任せるつもりだった。
部隊の指揮官と、それと戦士として、自由に動けるようにしておいたほうが彼の長所を活かせるだろう。
「では。炎竜の間のようです、向かいましょう」
全員が扉に向かう。ああ、付いてくることがわかっていたから、オルエルさんは二人に尋ねなかったのか。
執務室を出て、僕の右に並ぶカレンと、左で腕を絡めて体を密着させるレイ。
スナに見えている僕には、父娘の微笑ましい光景なわけだが、他の人々にとってはそうではない。
前を歩く男性陣は我関せずと傍観を決め込み、女性陣(?)は、いや、もう風竜のように風に乗って大らかな自由な心で俗世の煩わしさのすべてを……、はい、無理でした。凡俗な僕には、短いはずの炎竜の間までの距離が遠く遠く感じるのだった。
ーーというか、カレンは気付いていない?
扉の横で仲良く並んで眠ってしまっているサンとギッタのことはいいのだろうか。
見ると、何だかんだで有能なファタが点数稼ぎ、ではなく、気を利かせて、使用人に指示を出しているところだった。
兎の登り坂、風竜の飛翔、炎竜の焼却……ではなく、燎原、も変かな、みーの焚き火、くらいにしておこうか。とそんなことを妄想するくらいの余裕はあるが、現実逃避に使えるほどではない。
細々としたところで、問題がないわけではないが、それらは、努力とか気力とか体力とか、現状の竜の民には有り余っているものを使って解決できるものだった。
王様の為に、みーの為に、百竜の為に。そして、竜の国の為に、竜の民の為に。
それが自分の為でもあると、そう思って懸命になってくれている竜の民には、感謝の言葉もない。
「風吹」部隊は乗合馬車で南の竜道に向かい、竜の湖での受け容れ態勢は整っていると連絡があった。里程の半ばといったところだが、さて、僕にとってはどうなのだろう。
「えっと、カレン。呼んでないんだけど」
「私は侍従次長です。その職責の主なところは、侍従長の補佐であると記憶していますが、間違いだったかしら?」
結果的にそうなっただけで、別に除け者にするつもりはまったくなかったのだが。
「風吹」の放出訓練は恙無く終了して、すでに八つ音を過ぎている。
どこで嗅ぎ取ったのか、竜の湖に向かっているはずのカレンが押し掛けてきて、正当性を主張中。フラン姉妹は、扉の外だろうか。さすがにこの面子では、カレンに随伴するのは遠慮したようだ。
「はぁ。多忙な中、参集いただき、ありがとうございます。進捗に問題がある方がいなければ、休息を多く取る為にも、さっそく始めさせてもらいます」
一拍置いて、発言する人はいないようなので、本題に入ろうとすると。
「この中に私が交じっているのは、よろしいのですか?」
いきなり躓かせてくれたのは、ファタだった。
相変わらず、童顔で常に笑っているような顔で、本心が読み難い人である。野暮用ーー組合との出向等に関する話合いーーを済ませて、予定より早く戻ってきたところを捕まえて、もとい捉まえて。帰着の報告をせず、浮いた時間を休息に充てようとしていたので、超過労働を強制というか強請。
明日は治癒術士の交代要員として。もしシャレンが間に合わなかったら、三人目として協力をお願いするつもりである。
「謙遜しなくてもいいですよ。組合の幹部として、この大陸の多くの事情に通じているファタさんの知恵をお借りしたくて、お呼びしたのですから。逆に言うと、裨益するに値しないのなら、竜の国の保証を得られなくなる可能性が無きにしも非ず、と」
こくこくと、笑顔で焦りながら低姿勢、という器用なことをやってくれる雷守。彼には竜地の一つ、雷竜を任せてある。
現在は、冒険者組合の仕事は少ないので、僕の使い走りのようなことをやってもらっている。
そこで気付いたのだが、彼は人を使うのがとても上手い。その分、自分がさぼろうとするので、ときどき発破を掛けてやる必要はあるが、この若さで組合の幹部にまで上り詰めたのは伊達ではない。
侍従長の執務室に来てもらったのは、オルエルさん、バーナスさん、ファタ、……とカレン。老師と纏め役にも参加して欲しかったのだが、老師からの定時連絡でそのことを伝え忘れてしまった為、今回は特別な助言者に出席を依頼しました。
「あら、小娘。気が利かないのですわ。お負けなのですから、お茶ぐらい淹れるのですわ」
「……小娘、とは私のことでしょうか?」
「ふふっ、心外といった顔。どうやら、小娘であるという自覚はあるようですわね。それでいてその感情を呑み込めないとは、小娘であることの証左。これからも小娘と呼ばないと、あなたに失礼であると理解しますわ」
「っ!? っ?!」
「ねぇ、リシェ。あの凶悪な邪竜の目をした小娘が怖いですわ」
僕の隣に座ったレイが、殊更にカレンを煽る。
遊び甲斐のある玩具を見つけたようなものだろうか、カレンには悪いが、スナ、じゃなかった、レイには役不足なのだから、早々に飽きてくれるといいのだけど。
僕は、見えないレイを心象、見当を付けて右手で頬を。右の肘で隠すようにして、左手でスナの頬を、むにゅ、と摘んで。
「レイ。そういうのは、時間がある別の機会でお願いします」
「ふふっ、リシェのお願いなら聞かないわけにはいかないのですわ」
「うー、へっと、あいあとう」
頼んでみると、むにゅむにゅ~、と僕の頬を摘み返してくる。
僕にはスナに見えているわけだが、レイに見えている人たちからすると、いちゃついているように見えるらしく、視線で人を殺せる水準のカレンだけでなく、他の方々もレイが喜びそうな、それはもうひゃっこい目をしておられます。
この空気はもう変えられそうにないので始めてしまおう。
「先程の会議では語りませんでしたが、呪術師や疫病、それらに係わっているかもしれない、敵、について。それと、同盟国の思惑について。忌憚のない意見をお願いします」
竜の民の前では口にしないほうが有益と判断した事柄である。
意見を聞きたい、ということもあるが、僕一人で抱えるには後に与えるかもしれない影響が大き過ぎるので、言い方は悪いが、共犯者的な仲間が欲しい。
「普通に考えるのでしたら、同盟国の戦略の一つ、となるのでしょうが」
「外地という利権を失った貴族共が腹いせにやっているのやもしれぬな」
「ただ、これだけ大掛かり、下手をすれば自分たちにも被害が及ぶような、際どい策を採るとは思えませんが」
「そうなると、やはりそうなってしまうのかのう。背後で、竜の国と同盟国の共倒れを狙っている勢力が居るや否や」
「考えたくないですね。ストーフグレフ国の介入なんて……」
バーナスさんとファタが、敵となりそうな相手を挙げてゆく。
……ストーフグレフ?
あれ、何かを失念しているような。……紙に、青年に渡して?
ぶわっ。
「ーーっ!?」
思い至った瞬間、全身から溢れて、意識が遠退きそうになる。
ぐぅあ、気持ち悪っ。
体の全部から汗が出ている。息苦しくなって、周囲に悟られないよう、呼吸を早くする。
初めて知った。衝撃が大き過ぎると、人間の体ってこんな風にもなるのか。
首元に手をやってみると、べちゃっ、と音がした。気付かれないよう、顔の汗を袖で拭う。
ーー僕の勝ちです。
そう書いた紙を、ストーフグレフ国の青年に渡した。あのときは、最良の方法であると思ったが、何という碌でもないことをしてしまったのか。
ストーフグレフ王からすれば、王でも大臣でも、将でもない木っ端役人から、礼儀を弁えない、無礼極まりない、ただの書き殴った紙を渡されるのだ。
怒ったかな? 怒ったよね?
まさかファタが口を濁した、その先が、実現するなんてことがあるのだろうか。
「あとは、南方の国々ですかな。竜の国を突いて、同盟国とストーフグレフ国の均衡を危うくしようとしているのかもしれない」
「南は不安定ですから。ストーフグレフ国に同盟国を打破させて、彼の王の庇護を受けようと画策している、などということはあるのでしょうか?」
「出身地を悪くは言いたくないけど、う~ん、南は纏まりがないからね。そこまでの大望を抱くかどうか、まぁ、彼らは野心だけは竜並みなんですけど」
「ええ、そのようですね。お祖父様から『未熟者は近付いてはならん』と厳命される程ですもの」
オルエルさんとカレンが他の穴を埋めてゆく。
ふぅ、いや、ストーフグレフのことも、起こり得る可能性の一つに過ぎない、と今は考えることにしよう。
「ランル・リシェ。〝サイカ〟のカイナス三兄弟のことで何か聞いていますか?」
「特には。戦略ならまだしも、戦術水準で口を出されるのは、指揮官が嫌がるだろうね。従軍はしていないだろうし、ボルンさんが竜の国にちょっかいを出すとも思えない」
出来れば進攻自体を止めて欲しかったが、裏を返せば彼らでも止めることが出来ないくらい同盟国の意志が固かったということか。
皆が考えに沈んで、大切な時間の砂粒が少しずつ減ってゆく。だいたいそんなところだろう。他に意見はないようだ。
そして、今の状況で採れる対策など限られている。だが、その他に忽せに出来ないことが一つ。それについて聞きたくて皆に集まってもらったのだ。
「同盟国に勝ち目はない。僕はそう思っていますが、彼らは攻めてきました。そこでお聞きします。同盟国が勝つとしたなら、どのような手段を用いたときでしょう?」
聞くと、お互いが顔を見合わせるように、牽制というか消極的というか。
「はは、これは私から言ったほうが良いようですね」
頬をぽりぽり掻きながら、言い淀んでいたものの、ファタが口を開く。さっきの僕の脅し(?)が効いているらしい。
「竜の民を捕らえて、人質にして、脅迫ですね。理由は何でも。保護と嘯くも、不法入国を捏ち上げるも、幾らでも手段はあります。私も、これまでフィア様を見てきたからわかります。あの方は、たかが数人の命と引き換えに、統治権を差し出し兼ねない。以前であれば、そのような愚行、鼻で笑っていたでしょうね。ですが今は、私には見通すことは困難ですが、グリングロウ国にとって分水嶺であるような気がします」
ファタの所感に、皆が重たいもの抱えて押し黙る。
「兄さんは、自分であれば竜の狩場に国を造らないと言っていました。そこで、先程の呪術師の一件から考えていました。竜の国が抱えている潜在的な危険は何だろうかと」
畢竟、どこまでいっても、この問題は付き纏うのだ。
それが特別で、重要で、大切であるが故に、切り捨てることなど僕たちには出来ない。してはならないのだ。
「レイ。ストリチナ同盟国に竜が加担、いえ、協力している可能性はあるかな」
「っ!」
「ーーっ」
「!?」
「…………」
レイ以外の四人が、その可能性にまったく思い至っていなかったのだろう、四大竜の咆哮を間近で浴びたような、青天の霹靂、いや、まだ起こっていないのだ、寝耳に雷竜、か。
ん? いや、これは……。
笑顔のまま沈黙しているファタはーー、まさか予測していた、のか?
見様によっては、あ~、ん~、どうだろう、僕の勘違いかな。
「ストリチナ地方の名の由来は、古竜のストリチナ、水竜に因っているのですわ。人が思うほど、竜は人に関心はないのですわ。ただ、竜の狩場の借用、盟約と『千竜賛歌』、嘗てないほどに人への興味が疼いていることは確かですわ」
「えっと、言い忘れていましたが、レイは昔から竜と人の係わりについて研究しているんです。僕が知っている限りですが、最も竜に造詣が深い氷竜だと思います」
レイの耳新しい話に、不自然でないよう補足、というか補完する。
「ふふっ、リシェ家の者、と言えば甘心して頂けると思いますが、あの娘より竜に詳しいとの自負はありますわ」
「疑うわけではありませんが、どうしてそんなにも竜に精通していらっしゃるのかしら?」
「あら、さすが小娘。その程度のことも聞かなければわからないなんて、いったいこれまでどれだけリシェに迷惑を掛けてきたのか、考えるだけで胸が痛みますわ」
「…………」
「リシェの出身地がどこか、それだけで必要な欠片は揃っていますわ。『知恵の極』、『冠絶なる荒魂』など異称は数知れず、根源たる魔力を綾なす至高の主、氷竜ヴァレイスナから授けて頂きましたわ」
「ヴァレイスナ連峰の、竜……?」
ああ、自画自賛が凄いですね。いや、言っていることは間違いじゃないと思うんだけど、自分で言うのはどうなんだろう。
ふむ、やっぱり人と竜の感性は異なっているのだろうか。
種が違うのだ、異なっているのは当然。これまで大きな齟齬がなかったのは、たぶん、スナのほうで僕に合わせてくれていたのだろう、あ~、いや、どうなんだろう、スナは自然体のように見えるし、みーや百竜に鑑みて、ただの嗜好の違いかな?
それらは機会があれば確かめるとして、もう一つの懸念を質す。
「人に関心はなかったとしても、ミースガルタンシェアリ様に関してはどうかな? 盟約を交わしたとはいえ、竜の狩場を使用していることに悪感情を抱く竜はいると思うかい?」
「あの水竜は、よくわからないのですわ。何を考えているのか、若しくは何も考えていないのか、今のところ、塒に隠って動く気配は見せていませんわ。
悪感情を抱く竜がいるか、という疑いですが、何とも言えないのですわ。竜のそれは、人とは尺度が異なりますわ。道端に、蹴り易そうな石が転がっていたから、蹴ってみた。その程度のうっかりで、人の国など滅びてしまうのですわ」
うっかりで滅びたら堪らない。
でも、昔から石を用意したのは人間の側だったのだろう。人の歴史には、竜に対して好意的でなかったり好戦的であったり、そうした記述は枚挙に暇がない。
彼らの大半は、竜の関心を引き出すことも敵わなかったわけだが。
「呪術師のときのように、竜が操られてしまう、という懸念はあるのでしょうか」
レイの気配に感ずるところがあったのか、オルエルさんの態度が上位者を前にしたような改まったものになる。
それはバーナスさんやファタも同様で、レイに呑まれている。
「あれはみーが仔竜で、未熟だからですわ。竜が人如きに操られるなど、竜の角汚しにも程があるのですわ」
「レイ~?」
駄目だよ、地が、本音が出てるよ~。と演技に支障を来してしまったレイに、それとなく仄めかす為に、今度は耳をこりこりする。
ん、あれ? 気に入ったのかな。お返しに、僕の耳をこりゅこりゅしてくるレイは、随分とご機嫌な様子。
レイは、僕との接触を好んでいるような気がしていたが、間違いではなかったようだ。
「竜も赤面する二人は置いておいて、最悪の想定をしておきますか。仮に、同盟国が竜の守護を受けていたとして、対処方法はあるでしょうか?」
羨ま……、もとい呆れたオルエルさんがこの場での最高位として、先に進めてくれる。
「ふむ。姫様、みー様が臥せっておられるとなると、あとは侍従長に出張ってもらわねばなるまいて」
「バーナス殿……、その、侍従長御一人では荷が勝ち過ぎているのでは……」
氷焔と里の関係者以外で、あとレイを除いて、一番僕に詳しいだろうオルエルさんが諌めようと試みてくれるが、効果は薄いようだ。
他者の力であろうと、自分の為に使えるのなら、自分の力と変わらない。そんな風に割り切るのに、罪の意識を感じるのは、相手がレイだからだろう。
それでも、竜の国の命運に係わるかもしれないのなら、尋ねないわけにはいかない。
「レイ。竜が遣って来たとして、僕なら対処が可能かな?」
僕は父親失格である。
娘を危険に晒すことを、就中竜と対立させてしまうことを、それらを天秤に掛けて、選んでしまった。
本当に、自分の至らなさに腹が立つ。
「そうですわね。リシェでしたら、一竜を追い返すことは出来ますわ。二竜で劣勢、三竜以上では遁走をお勧めしますわ」
「あ……、えっと、……複数の、竜?」
レイが僕に力を貸してくれる。安堵した瞬間、突き落とされる。
竜は群れない、とはよく聞く言葉だが、必ず一竜で動く保証なんてない。どうしてそんな簡単なことを見落として、想定していなかったのか。
ぐぅ、僕は……。
詰めの甘さを思い知らされる。失敗した、なんて本当は軽々しく口にしたくないんだけど……。
ふと、遠ざかっていく背中が見えた。そうだ、今はまだ追い付けないのだ。積み重ねていくしかない。そうしていつか、兄さんの横に並べる日を、確かな目標に据えたのだ。
上手くいく保証なんてあるはずない。竜の狩場に遣って来たとき、ミースガルタンシェアリと交渉しようと頭を悩ませていた。
畢竟、力で勝てないのであれば、それ以外を使うしかない。
今度こそ、竜と交渉する破目になるかもしれない。だが、まったく成算がないわけではない。僕自身、未だわかっていないことだが、スナの存在が証明してくれている。
がちゃ。と不意に執務室の扉が開いて。
冒険者時代を彷彿とさせる筆頭竜官の怒声が轟いた。
「今は重要な会議中だ! 確認ぐらいせんかぁっ!!」
「ぅひっ」
伝令なのだろう、慌ただしく部屋に入ってきた竜騎士が、氷竜と雷竜にくっ付かれたかのように身を縮こまらせる。
彼は、慥かエルネアの剣隊の隊員。まだ二十半ばくらいと若そうなので、四十から三十が主流のエルネアの剣隊では新米なのだろう。
固まってしまった彼に、再びオルエルさんの叱責が飛ぶ前に、強張りを解すような柔らかな言葉で促す。
「見たところ、急ぎのようですね。報告をお願いします」
「あっ、はいっ、だ、団長がオルエルさんと侍従長を呼んで来いと言ってました!」
「僕とオルエルさんだけですか? 皆で向かったほうが良いですか?」
「え? それはどうなのかなぁ」
報告することで頭がいっぱいいっぱいで、それ以外のことは疎かになっていたらしい。
常に考えることを放棄してはならない、とはいえ、それで報告の内容がおざなりになってしまっては元も子もない。
業を煮やしたオルエルさんが彼に歩み寄って、直接聞き出す。
「バーナス殿、ファタ殿、時間に余裕がないようでしたら、持ち場に戻られてください」
順繰りに見た後、僕に視線を向けてきたので、頷いて了承する。
会議の本旨は達成できたと言っていい。共通認識を得て、レイの意見から洗い出しも出来た、かな。
「ここで除け者にされると気になって、おちおち眠ってられんでな」
「それは確かに。エンさんがわざわざ……、む? もしかして『風吹』の訓練が嫌で、ーーいや、彼だし……?」
心付いて、ファタが疑心暗竜になっている。
「風吹」の訓練が嫌だったのは確かだろう。ただ、細かな指示が必要となる任務はエンさん向きではないので、初めからフィヨルさんとザーツネルさんに任せるつもりだった。
部隊の指揮官と、それと戦士として、自由に動けるようにしておいたほうが彼の長所を活かせるだろう。
「では。炎竜の間のようです、向かいましょう」
全員が扉に向かう。ああ、付いてくることがわかっていたから、オルエルさんは二人に尋ねなかったのか。
執務室を出て、僕の右に並ぶカレンと、左で腕を絡めて体を密着させるレイ。
スナに見えている僕には、父娘の微笑ましい光景なわけだが、他の人々にとってはそうではない。
前を歩く男性陣は我関せずと傍観を決め込み、女性陣(?)は、いや、もう風竜のように風に乗って大らかな自由な心で俗世の煩わしさのすべてを……、はい、無理でした。凡俗な僕には、短いはずの炎竜の間までの距離が遠く遠く感じるのだった。
ーーというか、カレンは気付いていない?
扉の横で仲良く並んで眠ってしまっているサンとギッタのことはいいのだろうか。
見ると、何だかんだで有能なファタが点数稼ぎ、ではなく、気を利かせて、使用人に指示を出しているところだった。
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