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第二話①

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「……っん!」

 唇同士が重なり、思わずメアリーは声を上げた。視界を端正なエドガーの顔が占め、思わず顔が熱くなる。女性よりも睫毛が長く、体から漂う清潔感のある石鹸のような香り。唇のぬくもりの心地よさにぼんやりとしてしまう。

「目…………閉じないの?」

 気づけば呆れたような面持ちでメアリーを見つめていたエドガー。あまりの怒涛の出来事の連続で惚けていたメアリーは、顔をかっと赤らめた。顔を背けた拍子に涙が目尻からこぼれおちる。
 それを見て、エドガーは熱い息をついた。

「そんなに泣かれると、滅茶苦茶にしたくなるでしょ。僕が我慢嫌いって知らないの? ……ああもう!」

 エドガーは先ほどのキスよりも激しく、唇を重ね合わせた。獣のような全てを奪うようなそれにメアリーは抵抗することもできず、ただひたすらに貪り尽くされる。
 歯で柔らかな唇を甘噛みされると、まるで体中に電気が流れたようだった。エドガーは舌先で頑な唇を強引にこじ開けた。
 ぬるりと、生暖かい舌が縦横無尽に口内を動き回り、メアリーは体を震わせる。

 室内にまた、水音が響く。
 二人の唾液が混ざり合い、ぴちゃぴちゃと音がする。

 メアリーの口端から垂れそうになったそれをエドガーは器用に舌で掬い上げ、全ての唾液と一緒にメアリーへと流し込んだ。驚いて思わずこくりと飲み込むと、エドガーの満足気な様子が伝わる。そしてようやく唇は離れていった。
 真っ赤な顔で息を荒げるメアリーに対し、彼は余裕そうに唾液で濡れた己の口元を拭う。

「上手に飲み込めたね。よく出来ました、メアリー」
「はあ……はあ……ひ、ひど……っぐすっ」

 反射的に言い返すが、嗚咽でうまく呼吸が出来ない。
 恥ずかしくて、息苦しくて、目の奥が熱くなる。じわりと視界が揺れ、溜まった涙がまたこぼれ落ちていった。

「ああほんと、かわいい。僕のせいで泣いてるなんて興奮するよ」

 エドガーのいつもより上ずった声が耳に届く。大きな手が陶器のように白いメアリーの頬を包み、そっと撫であげる。
 彼は彼女の唇に向けていた視線を上げた。


「ねえ…………僕のためにもっと泣いて」


 鋭く、凶暴な視線に呼吸が乱れる。
 だけど嫌な気分はしなかった。ご主人様を好きだと認めたからなのだろうか。
 ただ純粋に胸がどきどきして苦しく、嗜虐的な言葉に感情が高まってしまう。

「君は酷いことされるの、好き?」
「……す、好きなんかじゃ……ないです」
「うそつき」

 笑みを深めながらエドガーは、メアリーのメイド服に手をかけた。右手にはどこから取り出したのか小型のナイフが握られていて、突然の刃物に身を竦ませる。

「…………っ!」
「大丈夫、傷……つけないから」

 そう言ってエドガーは微笑む。
 と、その瞬間。
 右手のナイフでメイド服のシャツを首元からいっきに切り裂く。器用な手さばきで、エドガーの言う通り彼女の柔肌は一切傷をつくことはなかった。エドガーは何故だか楽しそうな様子だ。
 己の服が切り裂かれたというのに動くことすらできない。混乱した頭では何が起こってるのか分からず、目を見開き固まっていた。
 それに気づいたエドガーは片眉を上げ、瞳の奥に怯えの感情を滲ませる彼女に嗜虐的な笑みを向ける。

「脱がすのさ……面倒でしょ。それに――――君はもうメイドじゃないでしょ?僕の、僕だけの……」

 その先は言わず、無残に切り裂かれたシャツの下に手を這わせる。下着も同時に切り裂かれて、もはや意味をなしていないことに気づいたメアリーが「きゃっ」と小さく悲鳴を上げる。
 エドガーは小馬鹿にするかのように小さく鼻で笑った。

「かわいい飾りだね」

 冷えた手に体を反射的に震わせる。
 抵抗する間もなく、彼はメアリーの乳房の先端を摘み、くにくにと捏ねまわした。
 痛みともに変な感覚が体の奥底から這い上がってくるのを感じ、身をくねらせる。こみ上げてくるそれは――快楽だ。
 気づけば涙は止まっていた。

「や、やめっ……」
「抵抗しないで。すぐ気持ちよくなるから」

 恥辱に溺れて、思わず顔を背けるメアリー。エドガーは亜麻色の髪を撫で、口を塞いだ。
 二人の唾液が混じり合い、一つに溶けていく。メアリーの頭は酸欠くらくらしていた。
 唇を離すと、彼はもう一つの飾りに口付ける。

「…………ぅっ」
「こっちの方はもうこんなになってる」

 先ほどから捏ね回され続けた胸の先端は、ぴんと上を向き、固くなっていた。敏感な乳房はささやかな大きさではあるが、真っ白な初雪のようで。そのきめ細やかさのせいか、真っ赤に売れた飾りがひどく淫猥さを際立たせていた。
 エドガーはもう一つの主張の弱い方の飾りを口に含み、舌先で舐める。ちろちろと先端を弄れば、あっという間に固く立ち上がり主張をはじめた。

「気持ちよくなってきたって顔してる」

 メアリーはふるふると震えながら、鋭い感覚に打ち震える。最初は痛みすら感じていたが、気がつけばそれは快楽へと転じた。甘く敏感な飾りを上下左右に動かされるだけで、下腹部がきゅんとする。なにかが奥底からこぼれていく。
 それを見透かしたかのように、エドガーの指先は胸から腹を通り、そしてナイフでは切り裂くことのなかったスカート部分へと達した。乙女の秘密を暴こうと、指先がその中へと潜り込む。
 けれど。

「……んんっ!!」

 いきなり体をなぞっていなかった方の指先が胸の飾りを強くつぶし、敏感な神経に鞭を与えた。鋭い痛みが真っ赤に熟れた頂を襲い、眦に生理的な涙が溜まる。

「気持ちいだけじゃ、満足出来ないでしょ」

 溜まった雫が流れ落ち、エドガーはくすりと笑った。

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