転生したら使用人の扱いでした~冷たい家族に背を向け、魔法で未来を切り拓く~

沙羅杏樹

文字の大きさ
上 下
21 / 58
第3章 再会と真実

3-2 両親の真実

しおりを挟む
エリーナとリュシアンが部屋を出ようとした瞬間、カタリナの声が響いた。

「待って、エリーナ」

その声には、今までにない切実さがあった。エリーナは足を止め、振り返った。カタリナの目には、涙が光っていた。

「話があるの。あなたの本当の両親のことを」

ロバートが驚いた表情で妻を見た。

「カタリナ、やめろ!!」

しかし、カタリナは夫の言葉を無視し、エリーナに向かって歩み寄った。

「もういい。これ以上、真実を隠し続けるわけにはいかないわ。エリーナ、あなたは⋯⋯私たちの実の子ではないの」

部屋に重い沈黙が落ちた。エリーナの目が大きく見開かれる。

「どういう⋯⋯意味ですか?」

エリーナの声は震えていた。カタリナは深呼吸をし、話し始めた。

「あなたの本当の母は、ロバートの弟の婚約者だった。彼女は⋯⋯古代の魔法使いの血を引いていたの」

ロバートが苛立たしげに割り込んだ。

「カタリナ、黙れ!」

「ロバートは優秀な弟に嫉妬していた。そして⋯⋯」

「そして?」

「彼の弟は死んだ。⋯⋯もしかしたら、ロバートが⋯⋯と私は思っているわ。でも、証拠は何もないの。もしあったとしてももう残ってないと思う⋯⋯」

カタリナの声は震えていた。

「その時、あなたの母はすでに身ごもっていた。あなたを産んだ後、彼女は亡くなった」

エリーナは言葉を失った。リュシアンが彼女の肩に手を置き、支えた。

「なぜ⋯⋯なぜ今まで黙っていたんですか?」

エリーナの声は怒りに満ちていた。カタリナは顔を伏せた。

「ロバートは、あなたの母親に執着していた。弟に対する劣等感からか、彼女を手に入れようと画策していたわ。私は、それが許せなかったの⋯⋯」

ロバートは激しい怒りの表情を浮かべていた。

「黙れ、カタリナ! これ以上話すな!」

しかし、カタリナは夫を無視し、エリーナに向かって歩み寄った。

「あなたを疎ましく思っていた。でも⋯⋯どんなに冷たくあしらっても慕ってくるあなたを愛おしく思うこともあった。でも、あの女の顔がちらついて⋯⋯ごめんなさい、エリーナ。あなたを苦しめてしまって⋯⋯本当にごめんなさい」

エリーナは動揺を隠せなかった。彼女の中で、怒り、悲しみ、そして混乱が渦巻いていた。

「家族なのに、どうして私だけあんな扱いを受けるのかっていつも思ってました。そもそもが違ったんですね。私は家族じゃなかった⋯⋯」

「私たちは家族になれなかった。けれどあなたの中に眠る力、それはあなたの本当の血筋からのものよ。古代の魔法使いの末裔として」

エリーナは自分の手を見つめた。今まで感じていた不思議な力の源が、ようやく理解できた気がした。

「エリーナ、どうする?」

彼女は深く息を吐き、両親⋯⋯いや、育ての親たちを見つめた。

「私は⋯⋯自分の道を歩みます。あなたたちのしたことを許すことはできません。でも、真実を話してくれたことには感謝します」

エリーナは部屋を後にしようとした。しかし、カタリナの声が再び彼女を呼び止めた。

「エリーナ、あなたの力には大きな意味があると思うの。あなたには果たすべき使命があるかもしれない」

エリーナは立ち止まり、カタリナを見つめた。

「使命⋯⋯ですか?」

カタリナはうなずいた。

「詳しいことは私にもわからないわ。でも、アリアナは⋯⋯あなたの母親はいつか蘇る偉大なる魔法使いのために自分の血を伝えなければならないと言っていた。あなたの力が目覚めたのには、きっと理由があるはず」

エリーナは黙ってカタリナの言葉を聞いていた。そして、昔を懐かしむように遠くを見つめるようにしてカタリナは呟く。

「アリアナとは⋯⋯昔は親友だったのよ。ロバートとのことがあるまでは本当に仲の良い、姉妹のような関係だったの⋯⋯」

エリーナは決意を固めたように顔を上げた。

「わかりました。私の力の意味を、自分で見つけ出します」

リュシアンがエリーナの横に立ち、静かに頷いた。

「最後に、両親の名前を教えてください」

「あなたの父親はウィリアム・レイヴン、母親は⋯⋯アリアナ・エヴェリストよ」

エリーナは最後に部屋を見渡した。ロバートは苛立たし気に部屋の中を歩き回っており、カタリナはただこちらを見つめ涙を流していた。

「さようなら」

エリーナが両親との決別を静かに告げた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?

りーさん
恋愛
 気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?  こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。  他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。 もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!  そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……? ※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。 1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前

本日より他人として生きさせていただきます

ネコ
恋愛
伯爵令嬢のアルマは、愛のない婚約者レオナードに尽くし続けてきた。しかし、彼の隣にはいつも「運命の相手」を自称する美女の姿が。家族も周囲もレオナードの一方的なわがままを容認するばかり。ある夜会で二人の逢瀬を目撃したアルマは、今さら怒る気力も失せてしまう。「それなら私は他人として過ごしましょう」そう告げて婚約破棄に踏み切る。だが、彼女が去った瞬間からレオナードの人生には不穏なほつれが生じ始めるのだった。

貴方誰ですか?〜婚約者が10年ぶりに帰ってきました〜

なーさ
恋愛
侯爵令嬢のアーニャ。だが彼女ももう23歳。結婚適齢期も過ぎた彼女だが婚約者がいた。その名も伯爵令息のナトリ。彼が16歳、アーニャが13歳のあの日。戦争に行ってから10年。戦争に行ったまま帰ってこない。毎月送ると言っていた手紙も旅立ってから送られてくることはないし相手の家からも、もう忘れていいと言われている。もう潮時だろうと婚約破棄し、各家族円満の婚約解消。そして王宮で働き出したアーニャ。一年後ナトリは英雄となり帰ってくる。しかしアーニャはナトリのことを忘れてしまっている…!

愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた

迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」  待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。 「え……あの、どうし……て?」  あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。  彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。 ーーーーーーーーーーーーー  侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。  吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。  自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。  だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。  婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。 ※基本的にゆるふわ設定です。 ※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます ※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。 ※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。 ※※しれっと短編から長編に変更しました。(だって絶対終わらないと思ったから!)  

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

7年ぶりに帰国した美貌の年下婚約者は年上婚約者を溺愛したい。

なーさ
恋愛
7年前に隣国との交換留学に行った6歳下の婚約者ラドルフ。その婚約者で王城で侍女をしながら領地の運営もする貧乏令嬢ジューン。 7年ぶりにラドルフが帰国するがジューンは現れない。それもそのはず2年前にラドルフとジューンは婚約破棄しているからだ。そのことを知らないラドルフはジューンの家を訪ねる。しかしジューンはいない。後日王城で会った二人だったがラドルフは再会を喜ぶもジューンは喜べない。なぜなら王妃にラドルフと話すなと言われているからだ。わざと突き放すような言い方をしてその場を去ったジューン。そしてラドルフは7年ぶりに帰った実家で婚約破棄したことを知る。  溺愛したい美貌の年下騎士と弟としか見ていない年上令嬢。二人のじれじれラブストーリー!

【完結済み】婚約破棄致しましょう

木嶋うめ香
恋愛
生徒会室で、いつものように仕事をしていた私は、婚約者であるフィリップ殿下に「私は運命の相手を見つけたのだ」と一人の令嬢を紹介されました。 運命の相手ですか、それでは邪魔者は不要ですね。 殿下、婚約破棄致しましょう。 第16回恋愛小説大賞 奨励賞頂きました。 応援して下さった皆様ありがとうございます。 リクエスト頂いたお話の更新はもうしばらくお待ち下さいませ。

処理中です...