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第2章 魔法学院

2-6 魔力の解放

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エリーナとソフィアが出会ってから数週間が過ぎていた。秋も深まり、魔法学院の庭では紅葉が始まっていた。エリーナは毎日、授業の後にソフィアと一緒に特訓を重ね、ヴァレリウス先生の補習にも真剣に取り組んでいた。

ある朝、エリーナは激しい痛みと共に目を覚ました。体の中で何かが暴れているような、押さえつけている何かから解放されようとしている感覚だった。特に目に痛みが集中しているようで、彼女は苦しみながらもベッドから起き上がり、自分の体を確認した。

エリーナは息を呑んだ。体の周りに淡い光の粒子が舞っていたのだ。それは彼女の呼吸に合わせて、ゆっくりと脈動していた。

「これは⋯⋯私の魔力?」

エリーナが呟いた瞬間、バキンと何かが壊れるような音が響くと、光の粒子が一斉に彼女の体内に吸い込まれた。そして次の瞬間、強烈な解放感と共に、魔力が全身を駆け巡るのを感じた。まるで、長年封印されていた力が一気に解き放たれたかのようだった。

「いったい何が⋯⋯」

そう思いながら、エリーナは教室に向かった。

この日の最初の授業は、ヴァレリウス先生の実践魔法学だった。教室に入ると、先生が真剣な表情で生徒たちを見渡していた。

「今日は抜き打ちの実技テストを行う」

その言葉に、教室中がざわめいた。エリーナも緊張で体が強張るのを感じたが、同時に今朝から体の中を駆け巡っている魔力がさらに強まるのを感じていた。

「では、レイヴン。前に出なさい」

ヴァレリウス先生に呼ばれ、エリーナはゆっくりと教壇の前に進み出た。クラスメイトたちの視線を感じたが、以前ほどの重圧は感じなかった。

「基本的な光の魔法を見せなさい」

エリーナは深呼吸をし、目を閉じた。すると、体の中で魔力が激しく脈打つのを感じた。それは、まるで長年の枷から解き放たれた野生動物のように、自由に全身を駆け巡っていた。

目を開けると、自然と手が前に伸びていた。エリーナは魔力を指先に集中させようとしたが、それは彼女の意図以上に反応した。

突然、眩いばかりの光が教室全体を包み込んだ。それは単なる光の球ではなく、複雑な幾何学模様を描きながら、部屋中を舞い踊る光の渦となっていた。

ヴァレリウス先生の目が見開かれた。

「これは⋯⋯前代未聞だ。レイヴン、君の魔力が覚醒したようだね」

エリーナは驚きと戸惑いを感じながらも、なんとか光を制御しようとした。すると不思議なことに、光の渦が彼女の意思に呼応するように動き始めた。それは彼女の指先の動きに合わせて、まるで生き物のように教室内を自在に舞った。

「素晴らしい」

ヴァレリウス先生の声には、明らかな興奮と喜びが混じっていた。

「これは魔力の覚醒⋯⋯しかも、完全な制御下にある。これほどの才能はなかなかお目にかかれないぞ」

エリーナは自分でも信じられない気持ちだった。魔力が体内を自由に流れ、意のままに操れる感覚。これが本当の魔法なのだと、初めて実感した瞬間だった。

「ありがとうございます、先生」

席に戻る途中、エリーナはソフィアと目が合った。ソフィアは満面の笑みで親指を立てている。そして、驚いたことにクラスメイトたちも称賛の眼差しを向けてきた。
サラは、複雑な表情を浮かべながらも、何も口に出さずただ沈黙していた。

翌日、エリーナが教室に入ると、クラスメイトたちの視線が一斉に彼女に向けられた。しかし、その目には以前のような冷たさはなく、好奇心と尊敬の色が混じっていた。

「おはよう、エリーナ!」

ソフィアが明るく声をかけてきた。

「昨日は本当にすごかったわ。私も負けてられないわね」

「ありがとう、ソフィア。あなたのおかげよ」

その時、敵意に満ちた表情でサラが近づいてきた。

「昨日は、たまたまうまくいっただけよ。調子に乗らないことね。あなたのような身分の者が、ここにいる資格なんてないのよ」

サラの態度は相変わらずだったが、もはや動揺することはなかった。

「私は自分の力を信じているわ、サラ」

エリーナは静かに、しかし毅然とした態度で答えた。

「あなたがどう思おうと、私はここで学び続けるわ」

「いいわ。でも覚えておきなさい。いつか必ず、あなたをこの学院から追い出してみせるわ」

そう言い残し、サラは踵を返して去っていった。エリーナは深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。サラとの対立は続くだろうが、それももはや彼女の成長の糧となるはずだ。

教室に入ってきたヴァレリウス先生は、満足そうにクラスを見渡した。

「さて、今日からは更に高度な魔法の練習に入る。昨日のレイヴンの成長を見て、君たちにも大きな可能性があると確信した。さあ、始めよう」
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