まだ、言えない

怜虎

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4.Autumn.

疲労

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事務所に入ると、ミーティング用のテーブルの上に突っ伏している秋良が目に入る。

そのままの姿勢で頭だけ動かすとこちらを見た。


「え⋯ 大丈夫なの?」


大分疲れが溜まってそうな顔だ。

寝不足なんだろう。


「秋、他の楽器にも滅茶苦茶拘ってさ。TRAPの時はそれぞれの楽器の専属に演奏してもらってるんだけど、今回は自分でやったみたい」

「鷹城、これ以上俺のHP削らないで」

「はい⋯ 」


「⋯ じゃあ蛍も来たし行こうか」


そう言うと、ふらふらとした足取りで出口を目指す。


「本当、大丈夫?」


手を持って自分の肩に回すと、秋良はふっと笑い大丈夫と言った。


ビルの地下から車に乗り込むと吉澤家を目指す。


「少し眠れば?」

「うん、そうする」


秋良は蛍の肩に頭を預けると、すぐに寝息を立て始めた。



─本当、頑張ってたんだな。

お疲れ様。



「秋、学校でもこんな感じ?」


秋良が眠ったのを確認すると、鷹城が話しかけてきた。


「うーん⋯ 外の顔なのか、いつも笑顔でもっと爽やかくんの印象でした。初めて話した時とは結構印象違うかも⋯ 」

「爽やかくんか。あっはっは⋯ 」


あまりにも普段の印象と違いすぎた様で、なかなか笑いは止まらない。

バックミラー越しに秋良の顔を見ては笑っていた。


「仲良くなると黒い部分が出てくるのかも知れないです」

「そうだね⋯ くくく。⋯ 雪弥とも知り合いだったんだよね?」

「はい、小・中の時に所属していた劇団の先輩でした」

「お。じゃあ蛍くんは役者という可能性も秘めているのか」


にこにことした笑顔に釣られて笑顔になったが、作り笑いになってしまったことに気づく。


まだステージに上がれるのか、本当に自分は大丈夫なのかと思う気持ちが強く、ステージ上でのパフォーマンスに自信が無かったからだ。

秋良がいるというだけで心強さは確かに感じたが、何の保証もないことに不安が残った。

車は40分程で吉澤家に到着した。

自宅の前の駐車スペースに車を止めてもらうと秋良を起こす。


「着いたよ、起きて」

「んー⋯  」


「蛍くん、そんなんじゃ起きないから」


後ろの席の扉を開けると、鷹城が秋良を激しく揺さぶった。


「秋!起きて!挨拶行くよ!」


今度は大きな声で秋良に話しかけると、その激しさからかすぐに目覚めた。


「⋯⋯⋯ 鷹城」



ー目が据わっている。

これは確かにまずそうだ。



目覚めが最悪だと言っていた山口の言葉を思い出した。

いつも秋良の方が先に起きているから、寝起きの秋良は初めて見た。


鷹城の命の危険を感じると蛍は、秋良を止めに入る。


「待って待って、落ち着いて!」

「ああ、蛍⋯ そうか。佳彦さんに挨拶に来たんだっけ」


全く動じていない鷹城と目が合う。

欠伸をしながら動き始める秋良を見ると、車の外に出た。

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