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4.Autumn.
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事務所には、予想通り鷹城しかいなかったが、お土産はとても喜ばれた。
それから今後のことについての打ち合わせを始める。
「蛍、佳彦さんに予定聞いた?」
「やば、忘れてた⋯ 今聞く!」
そう言って、スマートフォンを取り出し、番号を呼び出した。
繋がるまでの間、秋良の呆れた顔と鷹城のクスクスと笑う様子を見ながら、蛍は早く電話に出てくれと念を込める。
『もしもし、蛍?』
「ゴメンね、今大丈夫?」
『うん、大丈夫。どうした?』
「今月、家にいる日っていつ?」
『今月?急にどうした?』
「良いから、教えて?」
なかなか話が進まないでいると秋に電話を取り上げられる。
「佳彦さん?秋良です」
『ああ、秋良くん。一緒だったのか』
「はい、突然すいません。近々家にいる時お邪魔して良いですか?1~2時間で済むと思います」
『ああ、構わないけど、ちょっと待って予定を見る⋯⋯ 24日と30日の夜なら家にいるよ』
「では、24日伺っても良いですか?」
『はは⋯ なんか改まって怖いな』
「そんな警戒しないでください。もし、都合が悪くなったら蛍に言ってくださいね」
『ああ、わかった』
「では、お仕事中すいませんでした」
通話終了のボタンを押すとスマートフォンが手元に戻ってきた。
「て事で、鷹城24日ね」
「強引。何か仕事が入ってたらどうするの?」
「2択だったから早い方を選択した。それに少なくともTRAPの仕事は無いだろ?」
鷹城が苦笑いをすると、秋は勝ち誇った顔をした。
「24日の夜ね。何時にしようか?」
「いつも帰ってくる時はだいたい19時位かな」
今までの帰宅時間を思い出すと、丁度夕飯時に帰ってくることが多い事を思い出す。
「じゃあ17時過ぎに事務所までくる。蛍は?家にいる?」
「24日は⋯ 月曜日。祝日か。多分一緒にいるんじゃない?」
「それもそうか」
妙に納得され、吉澤家訪問の話は纏まった。
「じゃあ次。レコーディングとジャケット撮影について」
鷹城が仕切る。
「まじでそんな話までいってんの?」
「社長が結構気に入っててね。
ミュージックフェスの音源が公開される迄にレコーディングだけはしたいって。ラジオとか音源流せるような所のオファーをすぐ受けられるようにね。需要があるときに供給できなければ売れないってさ」
「はあ⋯ 」
秋良と同じ匂いを感じたが、為平社長はそれ以上の人の様だ。
秋良と2人して開いた口が塞がらない。
「⋯ OK.練習は続けているから蛍は問題ない。どうせ一番最後に録ってもらうし。俺に時間をくれ。それこそ24日まで貰おうかな」
決心して立ち向かっていく表情が真剣だった。
それをただ応援することしかできなくて、ひどく無力な気がしてならなかった。
「ジャケットは?」
「ただのデザインでも俺は良いと思ってるけど。ビジュアル有りか無しか⋯ か。
蛍はどう思う?」
「あんまりわからないや、そういうの」
困ったように笑って見せると、鷹城が言った。
「ふたりとも良い顔してるんだし、出せば良いのに。視覚情報も大事だからね」
「俺はなるべく出たくないけど⋯ それも総合的に見てどうか考えてみるよ。撮影するとしてもミュージックフェスの後。間に合わせたいの音源だけだろ?」
「まぁね」
「じゃあ、保留。後は?」
「⋯ 以上かな」
秋良はふうっと息を吐いた。
話し合いと言っても、いつもこんな状態だ。
秋良が言いたいこと言って、鷹城が纏めて、それでに対して簡単な返事をして決定する。
これで話し合いに参加しているのかと笑ってしまうくらいだけど、秋良はそのくらいが丁度良いみたいだ。
あまり協力的な意見を言えなくてごめんと一度言ってみたけど、蛍は歌っていてくれれば良いよなんて甘やかすような言葉を貰ってしまっただけだった。
宣言通り、秋良は曲を音源化するために毎日スタジオに通いつめているらしい。
学校だけは来るものの、放課後になるといつの間にかいなくなっている。
おやすみだとか、くだらない話のメールだけ気まぐれに入って来て、進捗状況は全くわからなかった。
それから今後のことについての打ち合わせを始める。
「蛍、佳彦さんに予定聞いた?」
「やば、忘れてた⋯ 今聞く!」
そう言って、スマートフォンを取り出し、番号を呼び出した。
繋がるまでの間、秋良の呆れた顔と鷹城のクスクスと笑う様子を見ながら、蛍は早く電話に出てくれと念を込める。
『もしもし、蛍?』
「ゴメンね、今大丈夫?」
『うん、大丈夫。どうした?』
「今月、家にいる日っていつ?」
『今月?急にどうした?』
「良いから、教えて?」
なかなか話が進まないでいると秋に電話を取り上げられる。
「佳彦さん?秋良です」
『ああ、秋良くん。一緒だったのか』
「はい、突然すいません。近々家にいる時お邪魔して良いですか?1~2時間で済むと思います」
『ああ、構わないけど、ちょっと待って予定を見る⋯⋯ 24日と30日の夜なら家にいるよ』
「では、24日伺っても良いですか?」
『はは⋯ なんか改まって怖いな』
「そんな警戒しないでください。もし、都合が悪くなったら蛍に言ってくださいね」
『ああ、わかった』
「では、お仕事中すいませんでした」
通話終了のボタンを押すとスマートフォンが手元に戻ってきた。
「て事で、鷹城24日ね」
「強引。何か仕事が入ってたらどうするの?」
「2択だったから早い方を選択した。それに少なくともTRAPの仕事は無いだろ?」
鷹城が苦笑いをすると、秋は勝ち誇った顔をした。
「24日の夜ね。何時にしようか?」
「いつも帰ってくる時はだいたい19時位かな」
今までの帰宅時間を思い出すと、丁度夕飯時に帰ってくることが多い事を思い出す。
「じゃあ17時過ぎに事務所までくる。蛍は?家にいる?」
「24日は⋯ 月曜日。祝日か。多分一緒にいるんじゃない?」
「それもそうか」
妙に納得され、吉澤家訪問の話は纏まった。
「じゃあ次。レコーディングとジャケット撮影について」
鷹城が仕切る。
「まじでそんな話までいってんの?」
「社長が結構気に入っててね。
ミュージックフェスの音源が公開される迄にレコーディングだけはしたいって。ラジオとか音源流せるような所のオファーをすぐ受けられるようにね。需要があるときに供給できなければ売れないってさ」
「はあ⋯ 」
秋良と同じ匂いを感じたが、為平社長はそれ以上の人の様だ。
秋良と2人して開いた口が塞がらない。
「⋯ OK.練習は続けているから蛍は問題ない。どうせ一番最後に録ってもらうし。俺に時間をくれ。それこそ24日まで貰おうかな」
決心して立ち向かっていく表情が真剣だった。
それをただ応援することしかできなくて、ひどく無力な気がしてならなかった。
「ジャケットは?」
「ただのデザインでも俺は良いと思ってるけど。ビジュアル有りか無しか⋯ か。
蛍はどう思う?」
「あんまりわからないや、そういうの」
困ったように笑って見せると、鷹城が言った。
「ふたりとも良い顔してるんだし、出せば良いのに。視覚情報も大事だからね」
「俺はなるべく出たくないけど⋯ それも総合的に見てどうか考えてみるよ。撮影するとしてもミュージックフェスの後。間に合わせたいの音源だけだろ?」
「まぁね」
「じゃあ、保留。後は?」
「⋯ 以上かな」
秋良はふうっと息を吐いた。
話し合いと言っても、いつもこんな状態だ。
秋良が言いたいこと言って、鷹城が纏めて、それでに対して簡単な返事をして決定する。
これで話し合いに参加しているのかと笑ってしまうくらいだけど、秋良はそのくらいが丁度良いみたいだ。
あまり協力的な意見を言えなくてごめんと一度言ってみたけど、蛍は歌っていてくれれば良いよなんて甘やかすような言葉を貰ってしまっただけだった。
宣言通り、秋良は曲を音源化するために毎日スタジオに通いつめているらしい。
学校だけは来るものの、放課後になるといつの間にかいなくなっている。
おやすみだとか、くだらない話のメールだけ気まぐれに入って来て、進捗状況は全くわからなかった。
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