44 / 85
3.Summer vacation.-雨野秋良の場合-
夏休み明けの不安
しおりを挟む
9月に入り学校が始まった。
まだ朝でも暑い日差しの中を歩き学校に行くと、その暑い中グラウンドでの全校集会。
校長の配慮で予定よりも集会は早く終わり、ホームルームでは明日からの卒業旅行についての話が主だ。
配布された修学旅行のしおりなるものを手に入れてしまえば、その時間はただ退屈なだけで、頭の中で単語やメロディを浮かべてはペンを走らせた。
いつの間にか教室内は人も疎らになっていた。
教室を見渡すけど、蛍の姿は見当たらない。
予定があるとも聞いていなかったはずだ。
蛍からの連絡を期待して、ポケットからスマートフォンを取り出してみだが連絡はない。
教室で待っているという内容のメールを送信すると、新学期早々の席替えで引き当てた、窓際の一番後ろの席に腰をおろした。
秋良は頬杖をついて、乾いたグラウンドと帰って行く生徒達、それと机に置いたスマートフォンの時計とメールを交互に確認して、ただ蛍を待っていた。
夏休みが明けてもまだまだ暑い。
青い空をぼんやり見つめると、視界の隅にそれらしき人物が入り込み目で追う。
メガネやコンタクトで無いにしても、そこまで目が良いわけでは無い。
しっかりと認識は出来なかった。
グラウンド脇の木の下で、蛍に見える彼は誰かと話しをしているようだ。
相手は木の陰に隠れていて、わかるのは男子の制服を着ている事くらいだった。
相手は身振り手振り何かを訴えている様で、腕だけが度々見え隠れする。
次の瞬間、校舎の方に向かって走った彼の腕を掴むとすぐに振り払われた。
まるで嫌がるように振り払うと、彼はそのまま校舎の方に走ってくる。
距離が近付くにつれ、その人物は明らかになった。
その人物が蛍だと確信した秋良は、席を立つと彼の番号を呼び出す。
鳴り続けるコール音がもどかしい。
留守番電話に切り替わっては掛け直す。
3度程繰り返したが、蛍は出る事はなかった。
反射的に先程蛍がいた場所に足を向けると、そこには血相を変えた大野が立ち尽くしていた。
「大野」
「⋯⋯⋯」
俯いていた顔がゆっくりと上がる。
目が合うと睨みつけるような強い視線があった。
「お前今、蛍と話してた?」
「⋯⋯⋯」
「答えろ!」
「⋯⋯⋯」
大野は目線を逸らさないで黙り込んだ。
目が合った時からその瞳の奥に強い意志が見えた気がした。
「お前蛍に何したんだよ!」
何も答えない大野の胸ぐらを掴んで揺さぶる。
少しの間の後、先程まで逸らそうとしなかった目線がついに外れると、大野は声を絞り出すように答えた。
「⋯お前には言えない」
そう言うと大野はすぐに、掴んでいた手を振り払って走って行った。
“お前には” という言葉が妙に引っかかった。
いくら考えても決定的な答えは出てこなくて、でも凄く胸騒ぎがする。
その後もう一度蛍に電話を掛けてみたが、やはり繋がらなかった。
電話が繋がらないなら家に行くしか手段はない。
それに、家に向かう途中で会えるかもしれない。
そう思い、家の前までの道のりを辿ってみたけどそう簡単には会えなかった。
『見たら連絡がほしい』
そう入れてはみたけど、結局朝になっても蛍からの連絡は無くて、携帯を見るなり溜息が漏れた。
まだ朝でも暑い日差しの中を歩き学校に行くと、その暑い中グラウンドでの全校集会。
校長の配慮で予定よりも集会は早く終わり、ホームルームでは明日からの卒業旅行についての話が主だ。
配布された修学旅行のしおりなるものを手に入れてしまえば、その時間はただ退屈なだけで、頭の中で単語やメロディを浮かべてはペンを走らせた。
いつの間にか教室内は人も疎らになっていた。
教室を見渡すけど、蛍の姿は見当たらない。
予定があるとも聞いていなかったはずだ。
蛍からの連絡を期待して、ポケットからスマートフォンを取り出してみだが連絡はない。
教室で待っているという内容のメールを送信すると、新学期早々の席替えで引き当てた、窓際の一番後ろの席に腰をおろした。
秋良は頬杖をついて、乾いたグラウンドと帰って行く生徒達、それと机に置いたスマートフォンの時計とメールを交互に確認して、ただ蛍を待っていた。
夏休みが明けてもまだまだ暑い。
青い空をぼんやり見つめると、視界の隅にそれらしき人物が入り込み目で追う。
メガネやコンタクトで無いにしても、そこまで目が良いわけでは無い。
しっかりと認識は出来なかった。
グラウンド脇の木の下で、蛍に見える彼は誰かと話しをしているようだ。
相手は木の陰に隠れていて、わかるのは男子の制服を着ている事くらいだった。
相手は身振り手振り何かを訴えている様で、腕だけが度々見え隠れする。
次の瞬間、校舎の方に向かって走った彼の腕を掴むとすぐに振り払われた。
まるで嫌がるように振り払うと、彼はそのまま校舎の方に走ってくる。
距離が近付くにつれ、その人物は明らかになった。
その人物が蛍だと確信した秋良は、席を立つと彼の番号を呼び出す。
鳴り続けるコール音がもどかしい。
留守番電話に切り替わっては掛け直す。
3度程繰り返したが、蛍は出る事はなかった。
反射的に先程蛍がいた場所に足を向けると、そこには血相を変えた大野が立ち尽くしていた。
「大野」
「⋯⋯⋯」
俯いていた顔がゆっくりと上がる。
目が合うと睨みつけるような強い視線があった。
「お前今、蛍と話してた?」
「⋯⋯⋯」
「答えろ!」
「⋯⋯⋯」
大野は目線を逸らさないで黙り込んだ。
目が合った時からその瞳の奥に強い意志が見えた気がした。
「お前蛍に何したんだよ!」
何も答えない大野の胸ぐらを掴んで揺さぶる。
少しの間の後、先程まで逸らそうとしなかった目線がついに外れると、大野は声を絞り出すように答えた。
「⋯お前には言えない」
そう言うと大野はすぐに、掴んでいた手を振り払って走って行った。
“お前には” という言葉が妙に引っかかった。
いくら考えても決定的な答えは出てこなくて、でも凄く胸騒ぎがする。
その後もう一度蛍に電話を掛けてみたが、やはり繋がらなかった。
電話が繋がらないなら家に行くしか手段はない。
それに、家に向かう途中で会えるかもしれない。
そう思い、家の前までの道のりを辿ってみたけどそう簡単には会えなかった。
『見たら連絡がほしい』
そう入れてはみたけど、結局朝になっても蛍からの連絡は無くて、携帯を見るなり溜息が漏れた。
1
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
【クズ攻寡黙受】なにひとつ残らない
りつ
BL
恋人にもっとあからさまに求めてほしくて浮気を繰り返すクズ攻めと上手に想いを返せなかった受けの薄暗い小話です。「#別れ終わり最後最期バイバイさよならを使わずに別れを表現する」タグで書いたお話でした。少しだけ喘いでいるのでご注意ください。
その部屋に残るのは、甘い香りだけ。
ロウバイ
BL
愛を思い出した攻めと愛を諦めた受けです。
同じ大学に通う、ひょんなことから言葉を交わすようになったハジメとシュウ。
仲はどんどん深まり、シュウからの告白を皮切りに同棲するほどにまで関係は進展するが、男女の恋愛とは違い明確な「ゴール」のない二人の関係は、失速していく。
一人家で二人の関係を見つめ悩み続けるシュウとは対照的に、ハジメは毎晩夜の街に出かけ二人の関係から目を背けてしまう…。
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺
toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染)
※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。
pixivでも同タイトルで投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/3179376
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/98346398
友人とその恋人の浮気現場に遭遇した話
蜂蜜
BL
主人公は浮気される受の『友人』です。
終始彼の視点で話が進みます。
浮気攻×健気受(ただし、何回浮気されても好きだから離れられないと言う種類の『健気』では ありません)→受の友人である主人公総受になります。
※誰とも関係はほぼ進展しません。
※pixivにて公開している物と同内容です。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
王様の恋
うりぼう
BL
「惚れ薬は手に入るか?」
突然王に言われた一言。
王は惚れ薬を使ってでも手に入れたい人間がいるらしい。
ずっと王を見つめてきた幼馴染の側近と王の話。
※エセ王国
※エセファンタジー
※惚れ薬
※異世界トリップ表現が少しあります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる