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3.Summer vacation.-雨野秋良の場合-
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「蛍、本当料理上手いよね」
事務所にいても全く進まない仕事を蛍の部屋で済ませると、夕飯が用意されていた。
蛍はそういった、さり気ないフォローが上手い。
それでいて料理も上手いなんて反則だ。
「そんなことないよ」
「いや、そんなことある」
ご飯に煮魚、野菜炒め、味噌汁、ポテトサラダ。
シンプルながらも品数も多く、慣れている様子が伺える。
「あ⋯ありがとう」
一緒にいる時のこの雰囲気が蛍を照れさせるのか、それとも照れる顔に敏感になっているだけなのか。
どちらにしても、頻繁に蛍の照れる顔が見れて満足だと秋良は一人頷いた。
昨日からバタバタと、色々と穏やかではない事件が起きて気持ちもささくれていたが、この出来すぎた待遇に気持ちもすっかり静まっていた。
上機嫌で食事の後の片付けを申し出たけど、上手い具合にかわされてしまった。
お風呂入って仕事してなんて、本当にどれだけ出来た嫁なんだ、とニヤつくのを抑えられなかった。
その気持ちだけで一曲書けそうな気がして、その言葉に甘える事にした。
“閃き = 仕事” なのだから、そういう意味では終わりがない。
ベットに背もたれて、先ほど作成した進行表に目を通しながらも頭の中では別の事を考える。
鷹城の反応から、歌う事には反対しない筈だ。
社長にも早く話しに行かないといけないだろう。
何故か反対される気はしていなかったのだが、殆ど企画が変わっているんだ。
昼間はついカッとなって半分は自身に決定権があると主張したが、それは雪弥も同じ事。
関わってきた全ての人間に断りを入れるのは筋だろう。
先にアポを取ろうとスマートフォンを手に取ると、為平社長の電話番号を探した。
「仕事は終わりそう?」
濡れた髪を拭きながら部屋に入ってきた蛍を見て秋良はハッとした。
社長の前に本人に話すのが優先なのではないだろうかと、立ち上がって蛍の手を引き、ベットに座らせる。
その前に向かい合うように立ってタオルを奪うと蛍の頭を丁寧に拭いた。
また赤くなるんだろうなんて予想したが、蛍は目を瞑って大人しく頭を拭かれていた。
その、猫のような振る舞いに段々と込み上げる笑いを堪える。
蛍と一緒にいる時間が増えて、秋良の蛍に対する印象は大分変わった。
素っ気ない、取っ付き難い人間だと思っていたが、今は人懐っこく可愛らしい印象だ。
締りのない顔を引き締めるための念入りなタオルドライが終わると、タオルを引き抜きながら秋良は口を開いた。
「蛍、話がある。大事な話」
瞑っていた目を開くと、真剣な目が覗いた。
聞く準備は出来ていると言う様に、蛍はゆっくり頷いた。
少しでも真面目に見えるように、その場で正座をし向き合う。
「蛍の歌を、俺に預けてくれない?」
「⋯どういうこと?」
目を見張る蛍の手を両手で包み込むと、その重なり合った手を見つめた。
緊張なのか、蛍は少しだけ震えていた。
「俺とユニットを組んで欲しい」
目線を移し蛍を見上げると、黒目がちの目が大きく見開かれ、時が止まったようにこちらを見つめた。
蛍からの反応を待つ様に、目線はそのまま逸らさずに待ち続ける。
だんだんと顔の緊張が解けてくると、眉を下げて微笑した。
「あの⋯」
言葉を詰まらせ俯いた。
この距離が緊張させているのだろうか。
包み込んだ手は片手だけ残して体を反転させると蛍の隣に腰掛け、指の隙間を掴んだ。
密着させた体から蛍の体温が伝わってくる。
横並びであれば目を合わせずに話すことが出来るだろうと、返事を促すように問い掛ける。
「俺の気持ちは考えないで、蛍が感じた事だけ教えて?」
少しでも話しやすいように気遣ったつもりだが、蛍はどのように受け取っただろうか?
横目で見た表情からは読み取れない。
すると蛍は繋いだ手をぎゅっと握り返してから、ぽつぽつと話し始めた。
「俺は⋯歌うことは好き。でも正直人前で歌うことには興味がない。そんなこと考えたこともなかった。
違うな、興味が無いというより⋯ステージに抵抗があるのかも。何度もたった舞台のはずなのに、抵抗なく立てるのかって思った、かな」
蛍はふっと息を吐いてから続けた。
「もうとっくに開放された筈なのに、まだ母親の影が邪魔をしてる。そんなのにいつまでも囚われていたくない、変わりたい。そう思ってるけど⋯そんなに簡単じゃないなって」
それは終始真剣な表情だったが、冗談を言う様に一瞬崩した顔が、切なげだった。
「雨野の曲は大好き。同じ歳なのに凄いなって本当に思う。憧れてたし、雨野と組めるなら⋯雨野が一緒なら、やっても良いかなって思った。
だけど、それだけの気持ちでは失礼だから⋯」
喋り終わった合図なのか、こちらを一瞬だけチラッと見た。
「今大事なのは少しでも興味ややる気があるかだと思ってる。
ちゃんと本気になってもらうし、させるから。俺いないと生きていけないってくらい、虜にしてやる」
得意気にニヤリと笑うと、蛍からも笑顔が溢れた。
その笑顔は “承諾” という事で良いのだろうか。
否定をしてこないなら、ひとまず都合良く解釈させてもらおうと、秋良は笑った。
「蛍、アコギ貸して?」
ベッドと壁の隙間に立て掛けてあったアコースティックギターに手を伸ばして抱き抱える。
「じゃあまずは、 “マゴコロ” ・・・One,Two」
この前、蛍の弾いていたアコースティックバージョンのマゴコロ。
記憶の限り寄せて弾く。
あのアレンジはすごく良かった。
優しく柔らかな曲調で、TRAPの原曲とは大分雰囲気の違うアレンジ。
夜だからと気を使って少し抑え目に音を出すなんて必要ないくらいの曲の雰囲気と、それにマッチした蛍の声。
初めて聞いた時から鳥肌が止まらなかった。
2度目の歌声もまたイメージが違い、これからが楽しみだと秋良は感じていた。
歌い終わると間髪入れずに別の曲を弾き始める。
昭和歌謡の匂いがするモダンジャズ。
蛍の声質なら絶対にこれが良いと思っていた。
知らない曲の筈なのに、蛍は戸惑う事なくメロディーを奏でる。
蛍の鼻歌で一層昭和歌謡感が増し、目が合うと口角を上げてみせる。
狙い通りの音過ぎて、楽しい。
蛍の才能を感じ、秋良の興味は確信へと変わっていった。
場の空気がガラッとかわると、思い詰めていた表情から一転、蛍の楽しそうな顔が見れた事に胸を撫で下ろした。
このなんでもない様な日常を、心の底から幸せだと感じる。
考えてみれば好きな人と物の融合なんだ。
ごく当たり前のことなんだろう。
その日の夜は不思議と、例の何かに追われる夢は見なかった。
蛍が与える影響は秋良が考えるよりもとても大きなものの様だ。
心の底から幸せを感じ、いつまでも笑い合って、
安らぎも喜びも与えてくれる。
蛍は秋良にとっての薬のような役目をしているのかもしれない。
まだ薄暗い中で目を覚ますと、腕の中には蛍がスッポリと収まっていた。
斜め後ろから見る寝顔により大きな幸せを感じ、秋良はそのまま蛍を抱きしめる。
少し体を起こすと、髪も避けずに顳かみにそっとキスをして、また眠りに落ちていった。
事務所にいても全く進まない仕事を蛍の部屋で済ませると、夕飯が用意されていた。
蛍はそういった、さり気ないフォローが上手い。
それでいて料理も上手いなんて反則だ。
「そんなことないよ」
「いや、そんなことある」
ご飯に煮魚、野菜炒め、味噌汁、ポテトサラダ。
シンプルながらも品数も多く、慣れている様子が伺える。
「あ⋯ありがとう」
一緒にいる時のこの雰囲気が蛍を照れさせるのか、それとも照れる顔に敏感になっているだけなのか。
どちらにしても、頻繁に蛍の照れる顔が見れて満足だと秋良は一人頷いた。
昨日からバタバタと、色々と穏やかではない事件が起きて気持ちもささくれていたが、この出来すぎた待遇に気持ちもすっかり静まっていた。
上機嫌で食事の後の片付けを申し出たけど、上手い具合にかわされてしまった。
お風呂入って仕事してなんて、本当にどれだけ出来た嫁なんだ、とニヤつくのを抑えられなかった。
その気持ちだけで一曲書けそうな気がして、その言葉に甘える事にした。
“閃き = 仕事” なのだから、そういう意味では終わりがない。
ベットに背もたれて、先ほど作成した進行表に目を通しながらも頭の中では別の事を考える。
鷹城の反応から、歌う事には反対しない筈だ。
社長にも早く話しに行かないといけないだろう。
何故か反対される気はしていなかったのだが、殆ど企画が変わっているんだ。
昼間はついカッとなって半分は自身に決定権があると主張したが、それは雪弥も同じ事。
関わってきた全ての人間に断りを入れるのは筋だろう。
先にアポを取ろうとスマートフォンを手に取ると、為平社長の電話番号を探した。
「仕事は終わりそう?」
濡れた髪を拭きながら部屋に入ってきた蛍を見て秋良はハッとした。
社長の前に本人に話すのが優先なのではないだろうかと、立ち上がって蛍の手を引き、ベットに座らせる。
その前に向かい合うように立ってタオルを奪うと蛍の頭を丁寧に拭いた。
また赤くなるんだろうなんて予想したが、蛍は目を瞑って大人しく頭を拭かれていた。
その、猫のような振る舞いに段々と込み上げる笑いを堪える。
蛍と一緒にいる時間が増えて、秋良の蛍に対する印象は大分変わった。
素っ気ない、取っ付き難い人間だと思っていたが、今は人懐っこく可愛らしい印象だ。
締りのない顔を引き締めるための念入りなタオルドライが終わると、タオルを引き抜きながら秋良は口を開いた。
「蛍、話がある。大事な話」
瞑っていた目を開くと、真剣な目が覗いた。
聞く準備は出来ていると言う様に、蛍はゆっくり頷いた。
少しでも真面目に見えるように、その場で正座をし向き合う。
「蛍の歌を、俺に預けてくれない?」
「⋯どういうこと?」
目を見張る蛍の手を両手で包み込むと、その重なり合った手を見つめた。
緊張なのか、蛍は少しだけ震えていた。
「俺とユニットを組んで欲しい」
目線を移し蛍を見上げると、黒目がちの目が大きく見開かれ、時が止まったようにこちらを見つめた。
蛍からの反応を待つ様に、目線はそのまま逸らさずに待ち続ける。
だんだんと顔の緊張が解けてくると、眉を下げて微笑した。
「あの⋯」
言葉を詰まらせ俯いた。
この距離が緊張させているのだろうか。
包み込んだ手は片手だけ残して体を反転させると蛍の隣に腰掛け、指の隙間を掴んだ。
密着させた体から蛍の体温が伝わってくる。
横並びであれば目を合わせずに話すことが出来るだろうと、返事を促すように問い掛ける。
「俺の気持ちは考えないで、蛍が感じた事だけ教えて?」
少しでも話しやすいように気遣ったつもりだが、蛍はどのように受け取っただろうか?
横目で見た表情からは読み取れない。
すると蛍は繋いだ手をぎゅっと握り返してから、ぽつぽつと話し始めた。
「俺は⋯歌うことは好き。でも正直人前で歌うことには興味がない。そんなこと考えたこともなかった。
違うな、興味が無いというより⋯ステージに抵抗があるのかも。何度もたった舞台のはずなのに、抵抗なく立てるのかって思った、かな」
蛍はふっと息を吐いてから続けた。
「もうとっくに開放された筈なのに、まだ母親の影が邪魔をしてる。そんなのにいつまでも囚われていたくない、変わりたい。そう思ってるけど⋯そんなに簡単じゃないなって」
それは終始真剣な表情だったが、冗談を言う様に一瞬崩した顔が、切なげだった。
「雨野の曲は大好き。同じ歳なのに凄いなって本当に思う。憧れてたし、雨野と組めるなら⋯雨野が一緒なら、やっても良いかなって思った。
だけど、それだけの気持ちでは失礼だから⋯」
喋り終わった合図なのか、こちらを一瞬だけチラッと見た。
「今大事なのは少しでも興味ややる気があるかだと思ってる。
ちゃんと本気になってもらうし、させるから。俺いないと生きていけないってくらい、虜にしてやる」
得意気にニヤリと笑うと、蛍からも笑顔が溢れた。
その笑顔は “承諾” という事で良いのだろうか。
否定をしてこないなら、ひとまず都合良く解釈させてもらおうと、秋良は笑った。
「蛍、アコギ貸して?」
ベッドと壁の隙間に立て掛けてあったアコースティックギターに手を伸ばして抱き抱える。
「じゃあまずは、 “マゴコロ” ・・・One,Two」
この前、蛍の弾いていたアコースティックバージョンのマゴコロ。
記憶の限り寄せて弾く。
あのアレンジはすごく良かった。
優しく柔らかな曲調で、TRAPの原曲とは大分雰囲気の違うアレンジ。
夜だからと気を使って少し抑え目に音を出すなんて必要ないくらいの曲の雰囲気と、それにマッチした蛍の声。
初めて聞いた時から鳥肌が止まらなかった。
2度目の歌声もまたイメージが違い、これからが楽しみだと秋良は感じていた。
歌い終わると間髪入れずに別の曲を弾き始める。
昭和歌謡の匂いがするモダンジャズ。
蛍の声質なら絶対にこれが良いと思っていた。
知らない曲の筈なのに、蛍は戸惑う事なくメロディーを奏でる。
蛍の鼻歌で一層昭和歌謡感が増し、目が合うと口角を上げてみせる。
狙い通りの音過ぎて、楽しい。
蛍の才能を感じ、秋良の興味は確信へと変わっていった。
場の空気がガラッとかわると、思い詰めていた表情から一転、蛍の楽しそうな顔が見れた事に胸を撫で下ろした。
このなんでもない様な日常を、心の底から幸せだと感じる。
考えてみれば好きな人と物の融合なんだ。
ごく当たり前のことなんだろう。
その日の夜は不思議と、例の何かに追われる夢は見なかった。
蛍が与える影響は秋良が考えるよりもとても大きなものの様だ。
心の底から幸せを感じ、いつまでも笑い合って、
安らぎも喜びも与えてくれる。
蛍は秋良にとっての薬のような役目をしているのかもしれない。
まだ薄暗い中で目を覚ますと、腕の中には蛍がスッポリと収まっていた。
斜め後ろから見る寝顔により大きな幸せを感じ、秋良はそのまま蛍を抱きしめる。
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