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1.Rainy season.
二度目惚れ
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日曜日の夕方。
バイトを終え、駅前をぶらつく。
折角の休みの日にバイトだけなんて味気ないと、バイト後はいつも立ち寄ってしまうのが本屋。
読書は割と好きだ。
一人でいる時間の最強のお供だと思っている。
特別欲しい本がある訳では無かったが、店内を物色する。
雑誌コーナーで足を止めると、TRAPの特集が組まれた雑誌を見つけ、試し読みもせずにレジへと進んだ。
並んでる客はおらず、会計を済ますと直ぐに本屋を後にした。
他に寄るところはあったかと考えながら歩く。
「わっ⋯」
路地に入る曲がり角で、何かにぶつかった。
死角からの突然の衝撃に、盛大に尻もちをつく。
「ごめんなさい、大丈夫ですか?!」
腰をさすりながら片目を開けて見上げると、キャップを深めに被った同年代くらいの女の子が心配そうに覗き込んでいた。
その可愛らしい表情に、一気に視界が明るくなる。
「大丈夫です。こちらこそスイマセン。君は大丈夫?」
「私は何とも」
微笑んだ彼女と目が合う。
彼女はあの時の彼女、だ。
直ぐにそうだと気付いた。
ボーイッシュな容姿にハスキーボイス。
くりっとした大きめの目が印象的だ。
あの時すれ違った時とは大分違う印象だが、間違いない。
その太陽の様な笑顔に、蛍は見惚れた。
街中で見掛けて、今日が2度目。
微笑んだ顔に見蕩れていると、彼女は突然血相を変えてすぐ側で屈んだ。
「あ⋯ごめんなさい。手、怪我してる」
そう言われて初めて、怪我をしていることに気付いた。
ピリッとした痛みが響く。
彼女は蛍の手を掬い上げると、カバンの中からハンカチを取り出して巻き付ける。
「そんな⋯良いのに」
「だめです。私のせいだから」
その後、近くに病院はないかと調べ出す彼女に、大したことないからと必死に断ると、怪我をさせたのだからせめてお詫びしたいと連絡先を聞かれた。
大丈夫だと何度も断ったが、彼女の真剣な瞳に、連絡先を教えるくらいならと最後にはYESと言わせていた。
逆ナン。
そんな状況でも、ニヤッとしそうになるのを抑えながら、連絡先の交換を終えると彼女は用があるからとその場を立ち去った。
色鮮やかで鮮明な、余韻を残して。
それから寄り道はせずに真っ直ぐ家に帰った。
シャワーを済ませて部屋でくつろぐ。
主には先程の事を考えながら、帰りに購入した雑誌をパラパラと捲った。
“ナツ”
そう言ってその場を立ち去った彼女のことが頭から離れなかった。
キャップの中のあの笑顔がとても印象的で、怪我をした事もマイナスではないと感じさせた。
蛍は枕を抱きしめると淡い期待を漏らす。
ー3度目があったら良いな。
そう考えるうちに微睡んでいった。
バイトを終え、駅前をぶらつく。
折角の休みの日にバイトだけなんて味気ないと、バイト後はいつも立ち寄ってしまうのが本屋。
読書は割と好きだ。
一人でいる時間の最強のお供だと思っている。
特別欲しい本がある訳では無かったが、店内を物色する。
雑誌コーナーで足を止めると、TRAPの特集が組まれた雑誌を見つけ、試し読みもせずにレジへと進んだ。
並んでる客はおらず、会計を済ますと直ぐに本屋を後にした。
他に寄るところはあったかと考えながら歩く。
「わっ⋯」
路地に入る曲がり角で、何かにぶつかった。
死角からの突然の衝撃に、盛大に尻もちをつく。
「ごめんなさい、大丈夫ですか?!」
腰をさすりながら片目を開けて見上げると、キャップを深めに被った同年代くらいの女の子が心配そうに覗き込んでいた。
その可愛らしい表情に、一気に視界が明るくなる。
「大丈夫です。こちらこそスイマセン。君は大丈夫?」
「私は何とも」
微笑んだ彼女と目が合う。
彼女はあの時の彼女、だ。
直ぐにそうだと気付いた。
ボーイッシュな容姿にハスキーボイス。
くりっとした大きめの目が印象的だ。
あの時すれ違った時とは大分違う印象だが、間違いない。
その太陽の様な笑顔に、蛍は見惚れた。
街中で見掛けて、今日が2度目。
微笑んだ顔に見蕩れていると、彼女は突然血相を変えてすぐ側で屈んだ。
「あ⋯ごめんなさい。手、怪我してる」
そう言われて初めて、怪我をしていることに気付いた。
ピリッとした痛みが響く。
彼女は蛍の手を掬い上げると、カバンの中からハンカチを取り出して巻き付ける。
「そんな⋯良いのに」
「だめです。私のせいだから」
その後、近くに病院はないかと調べ出す彼女に、大したことないからと必死に断ると、怪我をさせたのだからせめてお詫びしたいと連絡先を聞かれた。
大丈夫だと何度も断ったが、彼女の真剣な瞳に、連絡先を教えるくらいならと最後にはYESと言わせていた。
逆ナン。
そんな状況でも、ニヤッとしそうになるのを抑えながら、連絡先の交換を終えると彼女は用があるからとその場を立ち去った。
色鮮やかで鮮明な、余韻を残して。
それから寄り道はせずに真っ直ぐ家に帰った。
シャワーを済ませて部屋でくつろぐ。
主には先程の事を考えながら、帰りに購入した雑誌をパラパラと捲った。
“ナツ”
そう言ってその場を立ち去った彼女のことが頭から離れなかった。
キャップの中のあの笑顔がとても印象的で、怪我をした事もマイナスではないと感じさせた。
蛍は枕を抱きしめると淡い期待を漏らす。
ー3度目があったら良いな。
そう考えるうちに微睡んでいった。
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